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割戸学園高校より
作:春野エックス



ミルクの館(3)


「そうですわね、私達は休憩室で休みましょう。舞さんは二階の展望室に小寺井さんを連れて行って差し上げて。少しの間そこで二人きりでお話すれば良いと思います。
 三十分以内に食堂に来て下さいね。それから石田さん、倉内さんのお二人は、今日はもう宜しいですわ。ご苦労様でした」
「はい、それでは失礼致します」
 二人の如何にもミルクのボディーガードと思われる、ごつい男達はやかたの外へ出て行った。

 ミルクとハルカとは一階の右の壁のドアを開けて部屋に入った。そこが休憩室の様である。長いテーブルとイスとが見えた。
「こちらです……」
 必要最小限度の言葉しか発せずに、舞は光輝を案内した。車に乗り込む時のハルカの様に真っ青な顔をしている。
 左の階段を上って短い廊下を少し歩くと、周囲の壁の殆どがガラス張りになっている展望室があった。テーブルとソファも幾つか置いてあって、喫茶店の様な感じである。

「わーっ! これは見晴らしが良い! 二階建ての家とも思えないな。随分高い様な気がする」
「一般の住宅よりもかなり天井が高く作られていますから、本当なら三階から見ている様なものなんです」
「へえーっ、夢の様な屋敷だな」
「あのう、それでお話と言うのは?」
「ああ、そうそう、景色に見とれて忘れる所だった。まあ、座って下さいよ」
「あ、済みません、気が付きませんでした」
 舞は非礼を詫びながら光輝がソファに座るのを待って、自分も向き合ってソファに座った。それから少し間を置いてから光輝が口を開いた。

「車の中ではちょっと感情的になったけど、舞さんに敵意がある訳じゃないんですよ。そこの所を分かって欲しいんです」
「そうらしいですわね」
「それから勿論ミルクさんにも。……ただ、秘密を守れますか?」
「えっ、秘密? 時と場合によります」
「じゃあ、秘密は守って貰えるものとして話します。……舞さんのお察しの通り、あの校長にノーと言ってただで済む訳がありません」
「じゃ、じゃあ、やっぱり!」
 舞は目をむいた。

「勘違いしないで頂きたい! 私は校長の一派等ではありませんよ。貴方やミルクさんの一派でもない」
「じゃあ、何なんですか!」
「今は言えません。ただ校長の言う事に、ムカついてちょっと脅して置きました。素手では勝てませんから、道具を使ってね」
「道具? 道具って何ですか!」
 舞の言葉はかなりきついものになった。気持ちを静める為に光輝はそこで少し間を置いてから、再び話し始めた。

「ふーむ、そう感情的になられると言えないな。もう少し穏やかに出来ませんか?」
「うぐぐぐ、……す、済みません。あの、この所私眠れないんです。小寺井さんは、私の理解を超えているからです。やっぱり普通の人ではないんですよね?」
「ふう、簡単に言えばそういう事になります。いつかそう遠くない将来にきっと分かる日が来ると思います。申し訳無いんだけど、今はこれ以上言えません」
「分かりました。ただ私の直感は間違ってはいなかったんですよね?」
「はい、そのことを言いたかったんです。舞さんは悲観する必要は全く無いんだ、という事をです」
「ふふふ、私を励ましてくれたんですね?」
「まあ、その積りなんですが」
「……あ、あの、そろそろ時間です。下の食堂へ行きましょう」
 舞は少し元気を取り戻した様だった。

 二人が下に降りて行くと、玄関ホールではミルクとハルカが待っていた。直ぐハルカが光輝に寄って行って、
「な、何の話だったんだ? 舞の奴、何だか明るくなった様な気がするけど」
 ハルカはかなり想像をたくましくしてそう言った。
『ひょっとして光輝が慰める為に舞を優しく抱きしめたのか?』
 等と妄想していた。 

「ああ、ちょっと話し合って誤解を解いただけだよ。少しだけど分かって貰えた気がする」
「そ、それだけか?」
「うん、別に喧嘩とかした訳じゃないよ」
「そ、そうじゃなくって、抱擁というか、そういう事は?」
「ほうよう? 何の事だ?」
「い、いや、何でも無い」
 何も無かった様なのでハルカはほっとした。

 ハルカの母親の入った部屋は厨房になっている。そこから少し離れたドアから入ると、そこは食堂だった。ドアは別々でも中では幾つかの出入り口があって、厨房と食堂とは繋がっている。
 食堂に入ると、既に食器等がテーブルの上に並べられていて、料理を運び込むばかりに準備が整っていた。
 テーブルは円形で中央に花が生けられている。ミルクが先ず光輝の座る位置を指定した。それから左にハルカその隣にミルク、更に隣に舞が座る事になった。
 全員座ったが、しかし何故かもう一人分光輝と舞の間に食器が置いてある。

「それじゃあ、青空さん、料理の方お願いします」
 ミルクの一声で、数人のメイド達が次々に料理を運んで来た。光輝はただもう驚いた。彼にとっては名前も知らない様な料理ばかりだったのだ。
 更に不思議だったのは、誰も居ない席の分の料理もちゃんと運び込まれた事だった。
『予備に一人分置いておくのかな?』
 そんな風に思っていると、
「遅くなって御免なさい。でも何とか間に合ったようね。本当に売れっ子は辛いわ」
 一人遅れて入って来たのは、夢見ココだった。












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