割戸学園高校より(19/401)PDFで表示縦書き表示RDF


割戸学園高校より
作:春野エックス



光輝の評価(3)


「小、小寺井君!」
 村山先生の怒りは爆発しそうになったが、
『このクラスで暴力は拙い!』
 そう思って自重した。憎々しげに先生は光輝を睨みつけたが、終業のチャイムが鳴ると結局何もせずに教室を後にした。

「へへへ、やるじゃねえか!」
 ハルカは先生が立ち去った後、直ぐに飛んで来て、小さな声でそうささやき、直ぐまたその場を立ち去った。光輝には今一つ意味が分からなかった。ちょっと珍しかったのは夢見ココが光輝の顔を数秒間見たことだった。もっともそれっきりまた顔を背けたが。

 その後は特に変った事も無く昼食の時間になった。彼は自分で弁当を作ることもあるのだが、今日は時間も無かったので、買い置きしてあったパック詰めの牛乳と菓子パンを自宅から持って来ていた。
 他の女子達はお手製のサンドイッチが主流だったが、あっと言う間に食べ終わって、直ぐに勉強を始めたのである。

『綾姫さんまでサンドイッチだ。それも小さいのが二つだけ。てっきり豪華なお弁当を持って来て、華麗な箸さばきでも見せてくれるのかと思ったら、あっと言う間に食ってしまって、もう勉強している。驚いたな、これじゃあ俺もやらない訳には行かないな』
 そう思って辺りを見回すと、一人だけ緑川清美だけがちょっとのんびりしていた。その清美が静かに光輝の所に歩いて来て、
「ねえ、ところで五葉高校の件はどうなったのかしら? 昨日分校がどうのとか言っていたわよね」
 極小さな声でそう言った。
「ミルクさんが何も言わなかった所を見ると、納得したんじゃないのか?」
 光輝も小声で答える。
「へえーっ、お高くとまっているのね、謝りもしないで……」
 清美はチラッとミルクの方を見て、軽蔑的な表情をした。

「ところで清美さんは良いの? 勉強しなくても」
「するけど、ちょっと迷ってもいるのよ。このクラスに残るべきかどうか、憧れのクラスだったんだけどな。誰かさんは綾姫さんと仲が良いみたいだし、元彼はB組だし、……」
『だ、誰かさんって、俺のことかな? 昨日もそう思ったけど、どうして俺が持てるんだ? ココさんには徹底的に嫌われているんだけど。持てない事には自信があったんだがな、いや、そんな自信は無い方が良いか、……」
 光輝は、
『このクラスはやはり超変なクラスだ。持てるにせよ持てないにせよ、極端過ぎる!』
 と思った。その後は皆の調子に合わせて一番苦手な英語の猛勉強をした。

「フリータイムは美術になったのね、嬉しい!」
 昼食時間が終ると、綾姫は大喜びで光輝と一緒に美術室に向かった。しかし何故か青空ハルカまでついて来る。
「ヘヘへ、悪く思うなよ、アタシも美術なんでね。仲良くやろうぜ」
 光輝の左隣には綾姫が、右隣にはハルカが並んだ。綾姫は不快そうな表情になった。

「まあ、なんだな、アタシは小寺井君にちょっと話があるんだよ。綾姫、先に行ってくれないか、直ぐ済むからさ」
 ハルカは馴れ馴れしく綾姫に言った。
「ハルカさん、呼び捨てにしないでくれませんか。そこまで私は貴方と親しくありませんから」
「あははは、じゃあ、綾姫さん、お先にどうぞ」
「……はい」
 綾姫は仕方なく了承した。

 ミルクと舞とが行き過ぎて音楽室に入るのを見届けてから、ハルカは廊下の隅で話し始めた。
「胸がスーッとしたんだよな。初めて見るぜ、あのミルクが赤っ恥を掻く所をな。お前だったらやるんじゃないかって思っていたら、ものの見事にやってくれた。嬉しかったよ。誰も見ていなかったら、あんたに抱き付いてキスしていた所だったよ」
「えっ、ちょ、ちょっと過激なんじゃないのか?」
 光輝は、
『ヤンキー娘は、やっぱり過激だな!』
 と感じた。

「そんな事はねえよ。アタシの事ヤンキーだと思っているかも知れないけど、本物のヤンキーだったら、皆が見ている前でキスしてるよ。今ここでキスしても良いか?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。それはちょっと……」
「へへへ、冗談だよ。それは後の楽しみに取って置く事にしてだな、アタシの事、変だと思ったんじゃないのか? 最初はミルクの味方みたいだと思ったろう?」
「ま、まあね」
「色々複雑な事情があってね、あいつを助けなくちゃなんないのさ。でも本心からじゃない。仕方無しになんだ。そういう状態だったから、今日の様な事があると胸がスーッとするんだよな。あのさ、あたしと付き合いなよ。三年A組、またの名をモンスター組の秘密を色々教えてやるからさ」
「モンスター組の秘密?」
「ああ、知りたいんだろう? あんただって只者ただものじゃないよな?」
「はははは、ハルカさんにはかなわないな。今度の土曜日辺り、どっかでじっくりと話をしたいな。場所と時間は任せるよ。この街の事は良く分からないんでね」
「了解。明日かあさってまでには知らせるよ」
「うん、分かった」
 廊下談義はそこで終って、二人は美術室に入って行った。意外に長く掛った事に、綾姫が気を揉んでいた事は言うまでも無い。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう