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どんな武器だって、きっと女の子にはかなわない

作者: れたす

 お日様がやわらかく照らす、木立の中の道を走り抜ける。

 もうすぐ夏がくる空は、見渡す限りに青い。


「……はあ、はあっ……!」

 家からずっと走っているせいで、とても体があつい。服の隙間から首元に熱がのぼってきて、むっとしかめつらをしてしまう。


 そんなとき、びゅうと、ひときわ強い風が吹いた。揺らされて、ざわざわと葉が忙しくざわめく。

 汗ばむ体をすずしい風が撫でる。ひやりとした心地に思わず、ほっとした息がもれた。


 聞こえるのは、木のざわめきと、私の足音、それに荒い息だけ。


 小石や木枝の散らばる、でこぼこな獣道を通り抜ければ、新築に近い一軒の家が見えてくる。庭先で洗濯物を干す黒髪の青年の姿を見つけた私は、勢いよくその身体に飛びついた。


「ユーキ、ユーキー、おーはーよー!」

「ぅわ! あはは、おはよう、マーレ」

 驚いて身体を揺らしたユーキのやわらかい声に、私は嬉しくなって、腰の辺りに回した腕に力をこめた。

 ユーキからはお日様のいい匂いがして、私は鼻をこすりつけるように、顔ごとぎゅうっとしがみつく。ユーキは一瞬だけ、う、と詰ったような声を出したけれど、やさしい手つきで私の髪を梳いてくれた。地肌に触れる指が、すごくこそばゆい。


 ちらりと見上げると、彼は微笑みをこちらに向けていて、何だか嬉しいような、恥ずかしいような、くすぐったいような、そんな不思議な気持ちになる。

 思わず口元が緩むのを自覚しながら、私はおずおずとユーキから離れた。


「ねえユーキ、お洗濯してたの? マーレも手伝う!」

「本当? なら、僕が干すから、マーレはそこのカゴから洗濯物を持ってきてくれる?」

「うん、わかった!」

 ユーキに言われる通りに、洗濯物を一枚ずつ運ぶ。水を吸った衣服は重たくて冷たかったけど、少しでもユーキのお手伝いができると思うと、全然苦にはならなかった。ついつい、鼻歌まで歌ってしまう。

 だけど、洗濯物の数はあまり多くなくて、私のお仕事はすぐに終わってしまった。楽しいわけじゃなかったのに、すごくすごく残念だった。


「マーレ、ありがとう。マーレのお陰で、こんなに早く終わっちゃった。じゃあ、家に入ろうか」

「うんっ!」

 カゴを持つユーキの隣を歩く。

 にやけた顔で腕にじゃれつきながら、家の中にお邪魔した。




 この町には、勇者さまが住んでいる。この国の王様によばれて、別の世界からやってきたその人は、魔王を倒したあと、この町に住むことにした。

 ……別の世界がどういうことなのか、私にはあんまりよくわからない。海を越えた先に、別の国があることは知っているけど、そこから来たわけじゃないんだって。


 この町に住むほとんどの人たちは、この町に勇者さまが住んでいることを……ユーキが勇者さまだってことを、知らない。私も、少し前まで全然知らなかったけど、ちょっとしたきっかけでユーキと出会ったの。


 私は、もっとみんなにユーキはすごいんだって知ってほしいけど、ユーキは嫌がるから、みんなにはないしょ。もちろん、パパとママにもね。




 すでに見知ったユーキの家を我が物顔で歩き、リビングのテーブルを囲う椅子につく。もちろんそこは、座り慣れた私の場所だ。ユーキは洗濯カゴをいつものところに置きながら、私に問いかけてくる。


「いつものお茶でいいかな?」

「うん! マーレは、ユーキのお茶ね、すごくすごーく好きだから、それでいいよ!」

「そう言ってもらえると嬉しいな」

 そう笑って、ユーキはキッチンの方に姿を隠した。私はぷらぷらと足をぶらつかせながら、すっかり見慣れた家の中をぐるりと見回す。

 床を埋め隠すように積み重なった厚い本や、窓辺に飾られた植物、飾り棚に並ぶ茶色い丸薬の入った透明な瓶。

 ユーキの部屋には色々なものがあったけれど、一番目を引いたのは、灰色の紙だった。一番、色的には地味なはずなのに、でも気になってじいっと見てしまう。それは、部屋の隅にある小さなチェストの上に、畳まれてあった。私は椅子から降りてチェストに近付く。そこら中に積まれた本を足で崩してしまわないよう、慎重に。


 チェストの上の灰色の紙は、ユーキがとっても大事にしているものだと知っていたから、私は手を触れずにじいっと見つめるだけにする。びっしりと黒く小さな文字で埋め尽くされたその紙は、どこか古びて見えるし、あまり綺麗なものとはいえない。だから、どうしてユーキが大事そうにしてるのかも、私にはよくわからない。

 でも、きっとだけど、すごい呪文書なんだと思う。本じゃないから、呪文紙かな?

 ユーキは勇者さまで、勇者さまの使う呪文はすごくて、きっとこの灰色の紙も、すごい魔法が込められているんだと思う。どんなすごい魔法が込められてるのかな、ってこの紙を見るたびに私はわくわくしちゃう。


「マーレ、お茶できたよ」

「あ、はーい!」

 振り返ると、テーブルの上にカップが置かれているのが見えた。私は急いでテーブルに戻る。ユーキは私とすれ違うように、チェストの方に向かった。

 そんなユーキを横目で見ながら、カップの中の、緑色のお茶を一口含む。ユーキの国にあったお茶に似せて作ったというそれは、あまりかいだことのない匂いがする。だけど、とても冷たくて、美味しい。甘くて、ふわりと優しい気持ちになれる。

 あ。本当は苦いお茶なんだけど、私のために甘くしてくれているみたい。前にユーキのを間違って飲んだら、すごく苦くて、泣きそうになったから。

 灰色の紙を手にテーブルに戻ってきたユーキは、私の斜め前に座って、私と同じようにお茶に口をつける。ユーキのカップからは、白い湯気がのぼっていたから、きっと熱いお茶なんだと思う。私のは、わざわざ冷たくしてくれたのかな。すごく、汗掻いてたし。そう思ったら、ユーキの気遣いが嬉しくて、にまにましてしまった。


 私と同じように、飲み終わってほうっと一息ついたユーキは、カップを置いてこちらに視線を向ける。


「マーレは、新聞に興味あるの?」

「“シンブン”ってなーに?」

「これのことだよ」

 テーブルの上の灰色の紙を指差して、ユーキが言った。私は笑って、うん、と頷く。


「この紙、シンブンって言うんだ! でも、変なお名前だね?」

「確かに、変な名前に聞こえるかもね」

「ねえ、ユーキ! シンブンって、どんな魔法が使えるの!?」

「魔法?」

 不思議そうな声を出すユーキに、私もつられてしまって首を傾げる。


「こんなにいっぱいの呪文が書かれてるのに、魔法は使えないの?」

「う、うーん、魔法は使えないんだ。でもその代わり」

 えい、とユーキが小さな声と共に、シンブンを軽く振る。するとまばたきするような一瞬の内に、そのシンブンは棒状の姿になっていた。私はあまりの驚きに、声もなく、目を丸くする。


「こうやって武器になるし」

 ユーキがそこで区切って、またシンブンを軽く振る。次の瞬間には、シンブンは三角の形になっていた。ユーキはそれを広げて、私の頭にぽすりとかぶせてくる。


「こうやって防具にもなるんだ。……あと、寝具にもなるかな」

「わあ! ユーキすごい! シンブンもすごい!」

 頭に乗せられたシンブンを手で押さえて、えへへ、と笑う。

 ユーキは、たくさんのないしょを隠してる。だけど、私には少しずつだけど、ないしょを教えてくれる。それが、とてもとても嬉しかった。


「本当、この新聞は無駄にすごいよね」

 ユーキは私の頭からシンブンを取って、元の姿に戻す。ユーキは、じっと、シンブンを見た。その視線はどこか遠いところを見ているように見えて。私は、ユーキが消えてしまうんじゃないかと、恐くなった。私とユーキの距離は変わってないのに、ユーキが遠くに感じる。

 ぎゅう、と胸が絞られるような気持ちだった。私は思わず、ユーキの服を握り締める。


「……ねえ、ユーキ、大丈夫?」

「うん? ああ、大丈夫だよ。ただね、ちょっと懐かしいなって思って」

 テーブルの上でシンブンを広げるユーキ。一瞬だけ、ユーキに浮かんだのは、見ているだけで切なくなるような、そんな表情で。まるで、うっかり苦いお茶を飲んでしまった私みたいに、辛そうな表情で。

 私は立ち上がる。そして、座るユーキの膝の上によじ登った。ユーキは少し驚いたようだったけど、私の自由にさせてくれて、加えて私が乗りやすいように手まで添えてくれた。


「ねえねえ、ユーキ! これ、なんて読むの?」

 呪文の内容にまで興味があったわけじゃないけれど、ユーキにそんな顔をさせたくなくて、私はシンブンの一部を指差して聞く。ユーキは私を抱え込むようにして、シンブンに手を伸ばした。


「ん? ええとね、これは“不景気”って読むんだ」

「“フケーキ”? フケーキって、前にユーキが作ってくれた、“パンケーキ”みたいなもの?」

「ぷっ、あははは!」

「んもー、何でユーキ笑うの!」

 そう怒り口調で言った私だったけど、でも痛い顔をされるよりは、よっぽど笑ってくれたほうがいい。和やかな会話に、私は微笑んで、わざとらしく力を込めて背中をユーキに預けた。

 ユーキも私を支えてくれながら、頭を撫でてくれる。それがとても嬉しくて、もっと甘えるようにユーキの手に頭を押し付けた。


「ねえねえ、じゃあユーキ、こっちは?」

 目に付いた、赤い丸とそれを囲むように線が描かれている部分を指差す。


「ああ、これはね、お日様を表しているんだよ」

 ユーキの説明に、ぴんとひらめく。

 お日様は、きらきらしてるからきっと光属性だ。光は闇をはらう属性で、魔王は闇属性。

 と、いうことは、もしかして。


「ねえねえ、ユーキ! もしかして、ユーキはこのシンブンで魔王を倒したの?」

「ん? あ、うん、確かにこれで魔王を倒したよ」

「やっぱり! わあ、これが魔王を倒した武器なんだあ!」

 その言葉に、だからユーキはこれをすごく大事にしてたんだ、と納得した。呪文が書かれているとはいえ、私にはただの古い紙にしか見えなかったから、ユーキが大事にしていた理由が、よくわからなかった。

 でも、やっとわかった。シンブンは、お日様の力が込められた、ユーキの大切な武器だったんだ。


「お日様の力って凄いね!」

「え?」

「この呪文でお日様の力を借りて、魔王を倒したんでしょ!」

「あー……う、うーん、そうかな?」

「やっぱりそうなんだ! シンブンってすごいね!」

「あ、あはは、なんせ、“勇者と共に召喚された伝説の武器”だからね」

 すごい、すごいとはしゃいでいれば、苦笑まじりの言葉が上から降ってきた。首を捻って見上げれば、ユーキはどこか困ったような表情をしている。シンブンはとってもすごいのに、どうしてそんな顔をしているのか、私にはわからなかった。


「褒めてくれてありがとうね、マーレ。マーレは、本当にいい子だね」

「もー、ユーキ! さっきからマーレを子供扱いしないで!」

「あはは、ごめんごめん」

 誤魔化すように頭をなでられて、私はむすっと頬を膨らませる。でも頭を撫でられるのは心地良くて、頬の膨らみもやがてしぼんでいくのだった。







 外が赤くなり、段々と薄暗くなっていく。パパとママが心配するから、そろそろ帰らなくちゃ、と寂しい気持ちになった。ユーキともっと一緒にいたいけど、楽しい時間はあっという間にすぎてしまう。


「あのね、ユーキ! マーレね、暗くなってきたからそろそろ帰る!」

「なら、送っていくよ」

 ユーキの言葉に、私は首を横に振る。いつも危ないからって家の近くまで送ってもらうけど、でももう私は一人で帰れるのに。こんな時までユーキは私を子ども扱いする。私は、むー、と口を尖らせた。


「マーレ、今日は一人で帰る!」

「駄目だよ、マーレ。暗いから一人じゃ危ないよ」

「大丈夫なの! ユーキ、またね!」

「あっ、マーレ!」

 ユーキの言葉を振り切って、私はユーキの家を飛び出した。


 外は赤く染まっている。葉っぱも、地面も、赤く染まっている。

 空を見上げれば、空の端っこが黒くなっているのが見えた。

 まるで、お空の向こうから闇が追ってくるみたいだと思う。


「ユーキなら、闇もえーいって消せないのかなあ」

 闇は魔物が喜ぶ属性で、私たちには害にしかならないもの。だから、魔王を倒すついでに、闇も全部消してくれたらよかったのに。そうしたら、ずっとユーキと遊んでいられる。

 歩きにくい道をとぼとぼと進みながら、そんなことをぼんやり思っていた。


 そんなときだった。

 茂みから、何かが飛び出してきたのは。

 ぴたりと足を止めて、それを見る。そこにいたのは、大きな黒い何かだった。


「ひうっ……!?」

 喉の奥から、小さな悲鳴が漏れる。

 黒くてかてかと光る姿に、全身が凍りつく。縦に丸く、私の二倍ほどもある大きな巨体に、全身が震えた。


 はぐれ魔だ。


 私はめまぐるしくそう思ったけれど、身体が全く動かない。

 魔王を倒した今では、魔物はほとんどいない。でも、ほとんどいないだけで、ほんの少しだけ、残っている。今ではその魔物たちは“はぐれ魔”と呼ばれている。

 私からあと十歩ほど離れた先にいる、多足で黒く光る生き物は、そのはぐれ魔だった。


 はぐれ魔は、頭から伸びる触覚をこちらに向け、ぎしぎしと鳴く。その鳴き声は笑っているように聞こえたけど、でも足がすくんだ私には何も出来なかった。

 どうしよう。どうしよう。そんな言葉は私の中をぐるぐると回るのに、のどに何かが詰まったように、助けを求めるための声すら出ない。


 はぐれ魔がのそりと、こちらに近付いてくる。一歩、二歩。どんどんと近付いてくる。

 ああ、もう駄目だ。そう思ってぎゅっと目をつむった時、はぐれ魔のいたほうから鈍い音がした。ママがお料理の時に、まな板の上のお肉を叩くような、そんな音だと思った。

 恐る恐る、目を開ける。そこに居たのは、ユーキと、ひっくり返ってもがくはぐれ魔だった。ユーキの手には、丸められたシンブンが握られていて。ユーキが私を守ってくれたのだと、理解した。

 ユーキは、こちらを見て、笑う。安心したのも束の間、次の瞬間、ユーキがいなくなった。


「え? ……あっ」

 当たり前だけど、ユーキはいなくなったわけじゃなかった。

 ユーキは、私の目が追いつかないくらいに、早く動いていた。シンブンを振り、はぐれ魔を叩く。叩いて、殴って、潰す。その流れるような動作は、まるで踊っているようで、凄く綺麗だと思った。

 ……どすん、ぼすんという殴る時の音は、ちょっとだけ、恐かったけど。


 正に、あっ、という間に。ひっくり返っていたはぐれ魔は、潰されて、空の闇に溶けるように消えてしまった。


 緊張がとけて、私はその場にへなへなと崩れ落ちる。ユーキが恐い顔で、こちらにきた。


「マーレ、だから危ないって言ったのに」

「ご、ごめんなさい、ユーキ」

 必死に頭を下げる。嫌われたらどうしよう。そればかりが頭をぐるぐると回って、ユーキの顔が見れない。ずきずきと胸が痛むような沈黙に、どうしよう、どうしよう、とその言葉ばかりが回る。

 顔を上げられず俯く私に、声が降ってきた。


「マーレが無事でよかったよ」

 その言葉に、私はゆっくりと顔を上げて、ユーキを見上げた。夕闇の中でユーキは、いつもの微笑みを浮かべていた。その顔に、私はつめていた息を、少しずつ吐き出す。嫌われてない。そのことに、はぐれ魔が倒されたときよりも、私はほっとしてしまった。


 ユーキが私の頭へと手を伸ばす。

 その最中、ちらりと見えた指に私は目を見開いた。指は、まるで闇に侵されたように黒く汚れていたからだ。見間違いだと思いたくて、私はユーキの手を取る。ユーキは驚いたように手をぴくりと震わせて、だけど私の好きにさせてくれた。

 私は、恐る恐る、もう一度だけユーキの指を見る。その指は、確かに、黒ずんでいて。


「ねえ、ユーキ。この指、どうしたの……?」

 私の震える声に応えるように、ユーキは自身の指を見た。

 それから、どこか真面目な顔つきで口を開く。


「……僕の武器はね、お日様の力を借りてる。でもその強すぎる力のせいで、使うたびに僕は少しずつ闇に囚われてしまうんだ。この指は、その証拠なんだよ」

 ユーキの言葉に、頭の後ろをがつんと殴られたような気分になった。


「だからマーレ、あんまり危ないこと、したら駄目だ。僕じゃ、いつまでもマーレを助けてあげられるか、わからないから」

 ユーキの声が、ぐるぐると頭を回る。どうしよう、私のせいだ。私がユーキの言葉を無視して一人で出てきたから、私がはぐれ魔に出会ってしまったから、私を助けるためにユーキが、ユーキが、闇に連れて行かれちゃう!


「なんちゃっ――」

「ごめんなさい、ユーキ、私がっ、ぅ、私のせいだ! 死なないで、死なないでユーキ!」

「――て……え、マーレ!?」

 目の奥が痛くなって、そこから熱いものが零れ出す。ぼろり、ぼろりと大きな粒ばかりがあふれて、止まらない。頬を濡らす涙を拭うことも忘れて、私はユーキにしがみついた。


「ユーキ、死んじゃ嫌だよう……! ひぐ、ユーキ、ユーキ、ごめんなざああいぃい! ぅあああんっ!」

「あ、あー……」

 困ったような声に、ますます涙が溢れる。きっとユーキは、全部わかった上で、私を助けてくれた。闇に囚われることを知りながら、私を守ってくれた。

 それが悔しくて、嬉しくて。心も、顔もぐちゃぐちゃになってしまう。


「ユーキは渡さないもんっ……!」

 私は、闇なんかに取られてなるものかと、ユーキを必死に抱きとめる。

 大声で泣き続ける私と、ぎこちない手つきで私の頭を撫でるユーキ。あたりが暗くなって、闇がユーキを連れていかないと確信できるまで、私はずっとずっとユーキを離さなかった。



「ユーキ! ユーキ!」

「あれ、どうしたの、マーレ?」

「あのね、マーレ、シンブン触ってたら、マーレの指も黒くなっちゃった! ねえ、ユーキ! マーレも闇に連れてかれるの!? マーレ、はぐれ魔ーレになっちゃうの!? どうしようユーキ、どうしよう!?」

「マーレ、落ち着いて! お願いだから! 大丈夫だから!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 子どもに絵本を読んであげたあとのような、優しい気持ちになれました。 マーレかわいいですね。
2013/04/18 14:40 退会済み
管理
[良い点] ほのぼのとして癒されました。「女の子が最強!」、なるほど、その発想はありませんでした。にやにやが止まりませんでした。 [気になる点] ほのぼので良いんですけれど、ちょっと物足りない気がしま…
2012/11/13 08:18 退会済み
管理
[一言] 武器っちょ企画作品集から来ました。 いや、ある意味これは最強ですね! あとはユーキがアレでどう魔王を…詳しく知りたかったりしました(笑) 面白かったです。
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