☆9☆
パチパチと手を叩きながら美奈子が呆然とする2人の前にやってきた。
「予想以上よ。咲夢ちゃん」
にっと冷笑を浮かべながら言う美奈子に咲夢は何も言えずに座りこんでいた。
美奈子が短く何か呟くと理歩が水面をすぅと移動してプールサイドまで運ばれてきた。
はっと我に返った咲希が慌てて理歩のところまで行き美奈子からかばうように抱きしめる。
そんな様子を見た美奈子は冷笑を浮かべたまま背を向けると歩き出しながら言った。
「今日はもう帰っていいわ。
ますますあなたたちが欲しくなった。
特に咲夢ちゃん、あなたは素晴らしい。
手荒な真似して悪かったわ。理歩ちゃんにも謝っておいて」
そう言うと振り返ることなく美奈子は去って行った。
☆★☆
「理歩!理歩!」
咲希が呼びかけると理歩は直ぐに目をさました。
「…ん?咲希…?」
ゆっくりと体を起こしながら理歩が呟く。
「痛いとことかない??大丈夫??」
「ん。平気。ってかあたしどうしたの?」
「何も覚えてないの?」
「ん〜…昼休みにトイレに行って…そこから覚えてない。」
「…そっか。立てる?」
「うん。」
理歩に軽く手を貸して立たせるとまだ座り込んだままぼーっとしている咲夢のところへ行き腕を引っ張り立たせる。
そのまま咲夢の腕を左手で、右手で理歩の手を掴むと咲希はプールをあとにした。
☆★☆
理歩を部屋まで送り、茉美に任せると2人は自分たちの部屋に戻った。
ベッドに並んで座る。
「……」
「……」
「…咲夢。さっき、なんて言ったの?」
暫しの無言の後、咲希が咲夢に話しかけた。
お互い状況が理解できていないため何から話したらいいのかよくわからなかったのだ。
「…理歩を助けた時…だよね?」
咲夢の言葉に咲希は頷く。
「…わかんないんだ。
勝手に口が動いてて。何語だったのかも、言葉だったのかもわからない」
「無意識に言ったってこと?」
「うん。もう1回やれって言われてもできないと思う…。」
そう言われて咲希は考える。
「咲夢。明日…家、行ってみよっか?」
「へっ?」
「昔、ママと住んでた家。なんか残ってるかも。」
2人は美咲が死んでから美咲の両親、つまり2人にとっては祖父母にひきとられ、寮に入るまでは祖父母の家で暮らしていた。
しかし美咲と住んでいた家は祖父母の気遣いでまだ残されているのだ。
2人の父親は産まれる前に亡くなったと聞かされている。
「明日、文化祭の代休でしょ?ママが魔法とか、そういうことについてなんか日記とか書いてないか調べてみよう。」
咲夢はその言葉に頷くと何かを思い出すように瞳を閉じた。
☆★☆
翌日。
咲夢と咲希の2人は外出許可をもらって家に向かった。
家の前に来ると咲希が首にかけたペンダントの鎖を引っ張る。
服の中から出てきた鎖の先には鍵がついていた。
ペンダントを首から外すとその鍵をドアの鍵穴に差し込み、回した。
カチャという小さな音をたて鍵があいた。
祖母が定期的に掃除をしてくれているらしく中は綺麗なままだった。
2人は別れて日記などがないか探すことにした。
☆★☆
ー咲希
「…ないなぁ。」
物置のようにいらないものが詰め込まれている部屋の中を探しながら咲希は呟く。
あまりにも物が溢れているため何があるのかを見ていくだけでも大変だ。
普段使わないものや使わないが捨てられないものなどが箱に入れられ、高く積み上げられているのだ。
物の多さにため息をつきながらも咲希は黙々と作業を進めていくー
☆★☆
ー咲夢
咲希が物置で苦戦している時、咲夢は美咲の寝室を探していた。
咲夢は物置を調べるのを手伝うと言ったのだが、運動音痴な咲夢が物置に入ったら余計な手間が増えることが咲希には目に見えてわかっていた。
そのため効率が悪いからと咲希は咲夢に言い、咲夢は寝室を調べることにしたのだ。
ベッドの下、マットレスの下、ドレッサーの中、戸棚の中、後ろ……
目につくところはとりあえず手当たりしだいに調べてみる。が、
「ない。」
日記はおろか手紙、紙すら見当たらない。
「ここにはないのかな。」
寝室を探し尽した咲夢は他の部屋を探すことにした。
☆★☆
家の中を捜索し始めてから数時間ー
未だ物置の中を調べていた咲希は気になるものを発見した。
振ると中身がカタカタとなるお菓子の空き缶。
ーこれだ!
咲希の勘がこれは重要なものだと告げている。
早速中を見てみるとー
「手紙…?」
その中には美咲宛ての手紙や葉書がたくさん詰まっていた。
差出人を確かめながら手紙を外へだしていく。
するとー
『咲夢、咲希へ』
美咲の字で書かれた手紙がでてきた。
それをもって咲希は咲夢の元へと走り出した。
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