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「……あれ?」

「……何ともないぞ」

ヴィシュメイガからの攻撃にひるんだ一同であったが、それはどうやら皆の感じた「毛針ですべてを刺しつらぬく」ものではなかったようだ。

「結界が攻撃を防いだんですか??」

一同の中では比較的冷静なブランが、アリッサに問う。

「いいや違う。まあ見てな」

『グォォォォ!!!』

「ええっ!?」

地面に突き立った無数の毛針は、ヴィシュメイガと同じ氷でできた狼へと次々に変身していったのだ!!

『グォォォォ!!!』

氷狼たちは、獰猛な唸り声を上げ、皆の結界のまわりをうろつきはじめた。

「どうやら奴は、今の攻撃で、この里じゅうに氷狼をばらまいたようだね」

「なっ……なんだと!?」

ガロンが先ほどまでとは違った種類の悲鳴をあげる。

「何てことを!!今この里にどれだけの観光客がいると思ってるんだ!?」

商魂のたくましさが恐怖心に勝ったようで、ガロンは上空にいる妖魔に大声で文句を言い放った。

『……人間どもよ、せいぜいあがくがよいぞ』

もとの髪に戻ったヴィシュメイガは、ガロンの抗議を無視したまま、上空へと一気に飛んで行き、そのまま見えなくなってしまった。

「アリッサさん、これは…」

困惑顔のブランの問いに、老魔法使いは憎々しげな表情で上空を見上げた。

「おそらく奴は、大規模な天候を操る術を使うつもりだろう」

「天候を?」

「ああ。もうすぐこの里は、かつてない豪雪に見まわれるだろうね」

「ええっ!?」

「ま、今のあたしらにゃ、目の前の問題を片づける方が先だがね」

アリッサの言うとおり、彼らの周囲には、十数匹の氷狼たちがうろついている。

不安と恐怖に満ちた人間達のはるか上空では、すでに空がじわり、じわりと曇りはじめていた。


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