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それから数日後、ブラン達「太陽の家一行」は、誰一人欠くことなく、ツアコンのネルガの手配した馬車で帰路についていた。
「ニーゲルン。無事に復興できますかね」
馬車の窓から外を眺めながらブランがつぶやく。
雪妖によりニーゲルンが受けた痛手は深く、家の奥に籠もり、何を逃れた人々もいたが、住民・観光客の半数以上が帰らぬ人となった。
「皆さんと知り合えて、本当によかったです。これからは、おじいちゃんと力を合わせて、ニーゲルンを復興させていきます」
出発前、湯〜ゲルンの駐車場まで見送りに来た、ミミの気丈な言葉が思い出される。
長老のニコライは、従者の者たちに運ばれ、ユガルタのアリッサ達が入った癒しの湯につかり、どうにか健康を取り戻したが、公務に復帰するほどの気力や体力は、もはや望めないだろう。
街の復興や、亡くなった観光客への賠償など、これからニーゲルンには、長く苦しい道のりが待っている。
近しい人々を亡くした悲しみを抱えながら、それに立ち向かわねばならぬ、ミミを始めとしたこの街の人々の事を思うと、ブランの心は重くなった。
「もはや気候すらも変わってしまったからねぇ」
先ほどのブランの疑問を聞いたポッテヌがつぶやく。
「大丈夫さ。森の所にでっかい温泉もできたし、地下には怪我を直しちまう温泉まであるんだろ??いつかまた、みんなで行こうじゃないか」
前向きなメディナの言葉に、ブランは「そうですね」と自分を納得させるように大きく頷いた。
ボロロン……
フェルナンドが、そんなブランの前に何か紙を差し出す。
「え?これは……」
それは、白黒の紙版画であり、老魔導師と雪妖の戦いが描かれていた。
「ミズル版画か。よく手に入れましたなぁ」
ポッテヌが関心した声を上げる。
ドルクロスの呪具カタログを見ていたアリッサも目を上げる。
「ブラン君、その絵を逆さまにしてごらん」
「はい………ああっ!!」
それは、逆さ絵になっており、雪妖が老魔導師に、老魔導師が雪妖になっていた。
「ロジ・マジとヴィシュメイガの封印についての暗示……やはり、古くからの伝承をあなどってはいかんというわけか」
ポッテヌがそうまとめると、馬車の中は再び静かになり、ガンダルガのいびきだけが響いていた。
ブランは、フェルナンドに版画を返すと、再び窓の外を眺め始めた。
ロジ・マジの飄々とした姿が目に浮かぶ。
古き時代を生きた者達は去り、もはや版画に描かれた伝承は完結してしまった。
いつか、アリッサさんを見送る日が来る。その時、自分はどのような気持ちになっているのだろう…
ふとそのような考えが頭に浮かんできたその時ー
パァン!!!
「いって!!」
アリッサのスリッパ魔法がブランの頭に放たれたのだ。
「何するんですか、アリッサさん!!」
「いやさ、何かろくでもない事考えてそうだったから、ついな」
ニヤリと笑うアリッサを見て、ブランは、先ほどの事はまだしばらく考える必要はないのかもしれないと、苦笑した。
馬車の景色からは、いつの間にか雪が消え、フィン国の国境が近づいて来ていた。
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