「おはよう、名探偵♪」
「…朝っぱらから夜の名前で呼ぶなよな」
「もうっ!すねちゃやだよ、コナンちゃん」
「コナンちゃん、は止めろって言ってんだろ?」
毎日のように繰り返される2人の会話。
今、彼らは携帯と言う他のものに邪魔されることのない空間の中で話している。
他の者が誰も起きていないこの時間…太陽すらも起きていない時間…
辺りは暗闇で、でも彼らはこの時間が1番明るく感じている。
「…ねぇ、キッド。ちょっと話聞いてよ?」
「いいでしょう。なんですか?」
1人は世間でも有名な"工藤新一"、高校生兼探偵。
もう1人はこちらも世間で有名な"黒羽快斗"、高校生兼怪盗。
しかし、今はどちらも仮の姿…
1人は江戸川コナン、小学生(兼探偵)。
もう1人は怪盗キッド、怪盗。
として話している。
それはなぜか?
この2人の、周囲の誰にも話すことの出来ない事をそれぞれが分かっているから。
「…あのね、「ちょっと待ってください、名探偵」
と、キッドがコナンの話を遮る。
「やっぱさ、俺、新一の話を聞きたいな?」
「…わぁったよ。…なぁ、お前はさ、自分が嫌になるときってどんなときだ?」
「俺が俺を嫌いになる時?…そんなのないよ。1秒たりとも」
「なんでだ?」
「だって、俺、黒羽快斗だもん。新一も、新一の事は好きでしょ?」
「…そうだな。じゃあ、もう1人のお前はどうなんだよ?」
「ん〜…やっぱり、青子に嫌いって言われたときかな?名探偵は?」
「俺は…蘭に泣かれた時だよ。俺は側にいるのに、そう言ってやることが出来ない…そんな時だよ」
そんな誰にも言えない自分の弱みや悩みを言えるのも2人の間柄。
新一には"服部平次"という人もいるけれど、彼では自分のもつこの気持ちを分かち合うことはできない。
彼はいつでも真の姿で彼女といられて、彼女に言えない秘密を持っていない。
しかし。
この2人はそれぞれに秘密を持ち、時には対極した位置にいても、同じ位置にいる。
同じように周りに居る全ての人に秘密を持ち、
その上、同じような心優しい…それ故に秘密を話すことの出来ない彼女を持ち、大切な人を持つ。
そんな彼らだからこそ、なんでも言い合える。
…しかし、彼らには約束…暗黙の了解をしている…事があった。
それは、対決する時に手加減をしないこと。
そして、時と場合によって呼び方を変えること。
普段は新一・快斗と呼び、それ以外の時は名探偵・キッドと呼ぶ。
「ふぅん。そっか…」
「また聞いてもらっちゃったな」
「いいんだよ、俺もよく聞いてもらうしさ。…もう時間だね」
「ああ。…じゃ、また明日な」
「うん」
彼らの電話の終わる時…
それは日の出と同じとき。
日の出と共に二人は電話を切り、自らの"今"を過ごす。
それは表だったり裏だったりするけれど…それらは対極な位置だけど…
彼らは心のずっと奥深くで、いつも、どんなときも繋がっている。
彼らはそれぞれの表裏を知り、その上で付き合っている。
それはそのすべてが本当の事だから。
すべてを認めてくれる、そんな人が彼らには必要で、それがお互いであったから。 |