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第七話 雪女
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 昔々の事、武蔵の国(東国、現在の神奈川付近)のとある村に、茂作と言う年寄りのきこりと、巳之吉と言う若い弟子の樵が住んでいました。ある日の事、外は雪が降り積もっていましたが、頭の弱い茂作が寒さに耐えられん、焚き木を取りにいくぞ、と言うので、巳之吉は住み込み見習いの立場上嫌とは言えず、二人は横殴りの吹雪の中、山へと向かいました。

 案の定猛吹雪になり、視界も利かぬほど降る雪に顔を打たれ、空は何処までも暗く、分かりやすく言うと二人は遭難したのでした。
「いかん、このままじゃ凍死するわい」
「いつもの小屋に避難しましょう」
「わかっとるわいアホ。今探してるんじゃ」
 アホはどっちだ、と巳之吉が寒さに凍えながら一人文句を言いながら歩いていると、ようやくそのあばら家が見えてきました。
 中へ入り、ともかく手に入れたほんのわずかな木の枝を囲炉裏にくべて暖を取り、吹雪が止むまでは、とそこで休憩する事にしました。やがて、夜も更けて、巳之吉が消えかけの囲炉裏の炎を見ながら、マッチ売りの少女のごとく、ああ、鯛のおかしら付きが見える、白いおにぎりが見える、などと幻覚の世界にまどろんでいると、突然木戸が開き、誰かが入ってきました。夢見心地で眺めていると、それは真っ白な着物に身を包んだ長い髪の女性でした。茂作のほうへ行き、足元に立って、口から何かを吹き出し始めました。それは凍てつくような冷たい息で、見るみる茂吉の体が真っ白に凍っていくではありませんか。巳之吉が、これも夢か、と思って生きた心地もなくいると、今度はその女は巳之吉のほうへゆっくりとやってきました。が、その顔を見下ろし、しばし考え込んだ後、そっと体を寄せて、こう言いました。
「お前もあの老人のように、魂を奪わねばいけないのだけれども、お前の美しさと若さは殺すには惜しい」
 こう言うと、少しだけ間を置いて言いました。巳之吉は横たわったまま身動きも出来ません。
「だから、助けてあげる。でも、今日あった事は絶対に誰にも言ってはいけないからね。言ったらお前は死んでしまうよ」
 と言うと、巳之吉の口に乾燥した草のような物を含ませました。そして、すぅっと体をそむけ、開いたままの木戸から出て行ったのでした。巳之吉はそのまま意識を失ってしまい、翌朝になってみると、茂吉は冷たくなって死んでしまっていたのでした。

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 樵の師匠を謎の事故で失った巳之吉は、その後は舟渡しの仕事などしておりました。ある日、乗ってきた乗客に、大変色の白い奥ゆかしい女性がおりました。薄黄色の木綿着をまとったその姿は、どことなくやんごとなき風貌でした。その日の川は流れが激しく、しばし揺れました。ある急流にさしかかると、あわや、その女性が落ちそうになり、巳之吉はとっさに体を抱きしめ守りました。若い二人はあるがまま、という事で、二人は急激に恋に落ち、やがて一緒に暮らすようになりました。その女性の名前はお雪といい、天涯孤独で身寄りもないとのことで、美しい風貌に加え、哀れな身の上という事で、巳之吉は深くお雪を愛し、言葉だけでなく行動でもそれを実践し、やがて二人の間には三人の子供が生まれました。

 幸せな日々が続いたある冬の夜、外では激しい雪が舞い散らしており、家にも風が吹きつけ、ガタゴトと扉が鳴るのでした。
「そう言えば思い出すなぁ、あの日の事を」
 針仕事をしていたお雪は、小首をかしげ、何をですか?と聞きました。巳之吉は藁沓わらぐつを編みながら話し続けます。
「いや、二年ぐらい前のことだったんだが、雪山で遭難したことがあってな、小屋に避難していたんだが、夜中に雪女が入ってきてなぁ、一緒にいた樵のお師匠さんに口から吹雪をかけてな、お師匠さんは死んでしまったんじゃ」
 針の手を止め、お雪はじっと巳之吉の顔を見つめている。
「それで、次は俺のところにきたんじゃ。ああ、俺も殺されるのかな、と思ったら、その雪女が情け深くてな、俺は若いから助けてやるって言ったんじゃ。夢だったんだろうけど、大層美しい女だった。そう言えば、どこかで見たような・・・・・・」
 そこまで話して、巳之吉は愕然とした。二つの事実が脳裏を激しくよぎった。あの時の雪女の顔と、目の前のお雪は瓜二つじゃないか、と言う事と、あの時の雪女の最後の言葉。それは、あの日の事を誰にも言ってはならない、と言う事・・・・・・。
「言ってはいけない、と戒めたではありませんか」
 お雪は突如泣き崩れた。泣きながら事情を話しはじめた。
「私はあの日、あなたに惚れました。だから、命を助けたのです。私たちは、雪山に迷い、助からない人間を冥土に送ってあげるのが仕事なのです。でも、私は役割に背き、あなたに体力を回復する食べ物を与えました。それゆえ、私は罰として人間に墜ち、そして愛するあなたの元へ嫁いだのです。うぅぅ・・・・・・」
 突然の告白に、巳之吉は言葉もありません。そうだったのか・・・・・・。巳之吉が思わず彼女の涙をぬぐおうとすると、お雪はきつい目で言います。
「これから、私たちは裁きの試練を受けねばなりません」
 裁き?何の事だ?と巳之吉が思ったとたん、世界が真っ黒になり、体が歪み、意識が失われました。

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 気づけば、辺りは風も凍る大雪山。曇天の空に、生命の全く感じられない静けさ。横には、まなじりを決したお雪がいます。
「来ました。私たちは、奴に打ち勝たねば黄泉の世界に放り込まれるのです」
 黄泉の国?何で?何が?と巳之吉が事態を飲み込めないでいると、重い足音が響いてきます。やがて、二人の目の前に青白く体の燃えた怪物が現れました。
「アイスブリザードよ。HPは200。見て分かると思うけど冷気の攻撃をしてくるから!」
 言うなり、お雪はなにやら呪文を唱えはじめた。巳之吉がただおろおろしていると、青い炎のような化け物の口が開き、そこからすごい勢いで冷たい吹雪が噴出してきました。二人に激しく吹きつけ、みのきちに39のダメージ!おゆきにはきかなかった!おゆきはフバーハをとなえた!ふたりをやさしいひかりのころもがつつみこんだ!
「巳之吉!腰の薬草を使って!」
 巳之吉は言われるがままに凍傷で痛む手でいつの間にか付いている腰の袋を開け、薬草を食べました。みのきちはやくそうをつかった。みのきちのHPが31かいふくした!アイスブリザードはわらっている!
「チャンス!」
 おゆきはスクルトをとなえた!みのきちのしゅびりょくが14あがった!おゆきのしゅびりょくが12あがった!
「さあ、攻撃して!」
 と言われて、巳之吉はやけくそでアイスブリザードに体当たりした。アイスブリザードに3のダメージ!アイスブリザードはヒャダルコをとなえた!みのきちに38のダメージ!おゆきにはきかなかった!おゆきはバイキルトをとなえた!みのきちのこうげきりょくが2ばいになった!アイスブリザードのこうげき!おゆきに36のダメージ!
「巳之吉、薬草を使って。私は回復魔法は使えないの」
「あ、ああ、これか」
 みのきちはやくそうをつかった。みのきちのHPが28かいふくした!
「バカ!アンタにじゃないよ、あなたはまだ余裕あるでしょ!私のHPは70しかないの!」
 と言うと、お雪は巳之吉の腰の袋を奪い取りました。
「私は回復と補助呪文に専念するから、あなたはひたすら体当たりしてちょうだい」
 そう言うなり足で巳之吉の背中を蹴った。巳之吉はその勢いでアイスブリザードにぶつかった。かいしんのいちげき!アイスブリザードに43のダメージ!おゆきはやくそうをつかった。おゆきのHPが33かいふくした!アイスブリザードはつめたくかがやくいきをはいた!みのきちに78のだめーじ!おゆきにはきかなかった!巳之吉の残りHPは4になっています。瀕死の状態です。お雪は急いで薬草を使いました。みのきちのHPが31かいふくした!
「薬草じゃ追いつかない。ジリ貧だわ。とりあえず巳之吉は防御してて!」
 みのきちはみをまもっている!アイスブリザードはザラキをとなえた!しかしみのきちにはきかなかった!しかしおゆきにはきかなかった!おゆきはやくそうをつかった!みのきちのHPが29かいふくした!
「渾身の力を込めて体当たりしてきて!勝たないと殺されるのよ!」
 その言葉で、鬼気迫る現状をようやく掴んだ巳之吉は、愛するお雪を守るため、突如覚醒しました! タラララッターラッターン♪
 みのきちはレベルがあがった!ちからが43あがった!すばやさが36あがった!かしこさが14あがった!うんのよさが22あがった!さいだいHPが28あがった!せいけんづきをおぼえた!とびひざげりをおぼえた!たいあたりをおぼえた!
 アイスブリザードはようすをみている。おゆきはバイキルトをとなえた!みのきちのこうげきりょくが2ばいになった!
「食らいやがれぇええ!怒りのゴブリンパンチ!」
 それゲームが違う、とお雪は内心突っ込みを入れました。みのきちはせいけんづきをはなった!アイスブリザードに178のダメージ!アイスブリザードをたおした!経験値2500をてにいれた!1500ゴールドをてにいれた!
「勝った!勝てたわ!」
 とお雪と巳之吉が抱き合って喜んでいると、そこへ空から厳かな服に身を包んだ女性が光と共に舞い降りてきました。
「雪の女王様!」
「お雪や、よくぞ魔物を倒したね。人間との愛、その力見せてもらったよ。さぁ、あちらの世界へお帰り」
 言うなり、雪の女王は手をかざし、すっと降ろした。二人は抱き合ったまま、少しずつ薄らいで消えていきました。
 
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 二人は無事にもとの世界に帰ってきました。どちらともなく微笑み、抱き合って床を転がりまわるのでした。こうして、死の試練を乗り越えた二人は、いつまでもいつまでも仲睦まじく暮らしたのでした。(終わり)


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