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第四話 猿蟹合戦
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 昔むかしのこと、とあるのどかな村を、嫌われ者の根性の悪い猿野郎と、人が良く、誰とでも仲良くしてあげるカニさんが一緒に歩いていました。猿は意地汚く何か落ちていないか、と道を探していました。すると、柿の種が落ちているのを見つけました。浅ましくそれを拾い上げてキキッと嬉しそうにしました。さらに少し歩くと、今度はカニさんが草むらに落ちている握り飯を見つけました。
「お、おい、カニ、それをくれよ、この、柿の種と交換しようぜ」
「うーん、私もこの握り飯を食べたいなぁ」
 子どもを身ごもっているカニさんは栄養が必要なのでした。しかし、猿は問答無用に握り飯を取り上げ、瞬く間に食べてしまいました。そして、カニさんに柿の種を放り、お腹がふくれたのでその場に横になって、居眠りをはじめてしまいました。しょうがないので、カニさんは家に帰って、庭に柿の種を植えて、水をやりました。
 すると、あっという間に芽を出し、すくすくと成長し、立派な大木に育ち、柿の実を結びました。
「うわー、魔法の木だぁ。でも、私はこの木に登れないよ。どうしよう」
 と、カニさんが思案していると、昼寝を終えたサルがよだれを垂らしてやってきました。
「すげぇ、山ほど柿の実がなってるじゃん。ウキッ!」
 と鳴くと、スルスルっと木の上に登り、熟した柿を片端から食べはじめました。
「サルさん、私にも一個取ってちょうだい」
 と、下からカニさんが言っても無視です。お腹の減ったカニさんが何度かお願いすると、
「ああ、うるせぇな、じゃあこれでも食ってろ」
 と言い、猿はまだ青い熟していない柿をカニさんに何個も投げつけました。
「うぅっ」
 身重であったカニさんのお腹に固い熟す前の柿が命中してしまい、カニさんは昏倒して倒れました。
「あっ、なんかやべぇ。俺、知らねっと」
 猿はさっさと逃げてしまい、意識の混濁したカニさんは、這うように自分の家に戻ろうとしました。
「カニさん、どうしたんだ!」
 空から友達のハチさんが飛んできて、カニさんに肩を貸しました。
「サルさんにお腹に柿をぶつけられて、もう生まれそうなの」
「なんだと!よし、まず家に入ろう。俺は産婆のフンババを呼んでくるからな」
 そしてカニさんを家の布団に寝かせ、ハチさんは牛の糞のフンババばあさんを連れて戻ってきました。
「いかん。胎盤が損傷しているわい。カニさんの命が危ない、ハチさんや、お医者を呼んできておくれ」
「あ〜っ、生まれる」 
 カニさんは歯を食いしばって五人の子どもを生みました。フンババばあさんが一人ずつ湯桶で荒い、綺麗な布で拭いてあげました。が、残念な事に、一人を除き全員死んでいました。フンババばあさんが泣いているところに、医者の臼どんと友達の栗さんもやってきました。が、虫の息だったカニさんは、やがて息をひきとってしまいました。

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 カニさんの葬儀が終わった後、カニさんの家で、臼どん、栗さん、ハチさん、フンババばあさんは一人残されたカニさんの息子、カニくんを囲い、あの猿野郎だけは許せない、復讐をせねばならない、と言う事で一致しました。まだ生まれたばかりなのに、事情を理解したカニくんは怒りのオーラを燃やしています。五人は綿密に打ち合わせをし、決行を明日に決め、解散しました。

 翌日、猿は悪びれもせず、カニさんの家の横の柿の木によじ登り、たらふく柿を食べ、そして家に戻ってきました、すでに復讐の宴の準備は整っているのです。
「あー、寒い寒い」
 と、猿がいろりに木をくべ、暖まっていると、いろりの灰の中から、栗さんが飛び出してきました。
「食らえ!南斗栗身砲弾!」
 猿は頬に栗さん渾身の体当たりを食らい、大きくよろめき、熱さに飛び回りました。慌てて、玄関の水を溜めている壺のふたを開けると、その中にはハチさんが待っていました。
「猛毒で地獄へ行けぃ!スカーレットニードル!アンタレスまで我慢できるんかぁ!?」
 と、何箇所も毒針を刺され、猿は痛みにもがきながら家から逃げようとしました。が、玄関口にはフンババが君臨していたので、猿は惨めにすっころんでしまいました。そこへ、屋根の上から臼どんが飛び降りてきました。
「キング・ザ・100トンプレス!カニさんの恨みを思い知れぃ!」
 猿は息もつけず必死に臼どんを払いのけ、よろめく足で逃げようとしました。が、そこへ、カニくんが待ち受けていました。
「おめぇはオラの大切なお母さんを奪ってしまった……絶対に許さねぇ」
 家の中から様子を見ていた栗さん、ハチさん、フンババばあさんは目を見開きました。カニくんの体が黄金に輝きだしたのです!
「あぁあー!あれはまさか」
「で、伝説の超カニヤ人!?」
「千年に一度生まれるという格闘の超天才のことかぁぁーーー!」
 猿は逃げる事も出来ず立ち尽くしています。カニくんが、雄叫びと共に地面を蹴りました。小さな体が、信じられないほどの速さで蹴り突きを打ち込みます。
「これで終わりだーーーッ!!」
 猿を空に蹴り上げたカニくんは、全身を震わせて黄金の波動を猿へ向けて放ちました。
「うぎゃあああーーーっ」
 空中で大爆発が起こりました。ただ見守るしか出来なかった臼どんの足元に、猿のちぎれた手首が落ちてきました。
「これで全てが終わりましたよ……ありがとうみなさん」
 カニくんの輝きが消えた。敵討ちを果たした。空は限りなく澄んでいた。(終わり)

 


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