第三話 かぐや姫(竹取物語)
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今は昔、遥か千数百年も前の頃、竹取の翁と呼ばれるお爺さんがいました。山の竹林へ行き、比較的柔らかい竹を切り、それを切り取って筒や籠を作って売る仕事をしていました。ある日、いつものように山奥の竹林へ行くと、そこに何やら光が見えます。なんじゃろう、と近寄ると、一本の竹が淡い光を湛えています。不思議に思った竹取の翁は、ともかく切ってみることにしました。すると、中にはなんと小さな女の子がいるではありませんか。三寸 (10cm程度)ほどの体で、上品な着物をまとい、髪も黒く長く、顔立ちも大変美しく、翁は最初は人形かと思いました。しかし、
「おじいさん。どうか私を家に連れて行って育ててください」
と口を開いたので、翁は二度驚いて、ともかく家に連れて帰り、恐る恐るご飯や漬物などを与えたところ、すくすくと育ち、あれよあれよと言う間に、三ヶ月程度で成人ほどの体の大きさに育ったのでした。名前は、と聞くと「なよ竹のかぐや姫と申します」と答えましたが、フルで呼ぶと長いし言いにくいので、翁はかぐや姫と呼んでいました。どんどん成長するので、着物を買っても買っても追いつかず、翁が細々貯めていた僅かな貯蓄はあっという間に消え去りました。安い木綿の着物を買ってくると、
「私は月から来た姫なのです。そのような下賎のものが着る服は着とうございませぬ」
と悲しそうにかぶりを振ります。この小娘、と翁は内心怒りを覚えましたが、根が善人なので、言われるがままに、貴族が着るような京染めの質の高い着物を着せてやったのでした。
「月から来たとはどういうことじゃ?」
と聞くと、
「翁に説明してもわからないでしょうし、また、する必要性も感じません」
とだけ言うと、プイと横を向く。翁は、このメンヘラめが、何が月から来ただ、こいつが成長したら女郎屋(売春宿)にぶち込んで元をとってやる、と息巻いておりました。
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しかし、かぐや姫は大層美しかったですし、翁が私財をはたいてお洒落にしてやっていたので、近隣に評判になり、毎日のように遠路はるばる様々な種類の男達がかぐや姫を見物に来ました。その多くは、かぐや姫にお近づきを願いましたが、その一人ひとりの額をじっと見つめ、やがてため息をつき、交際を断るのでした。噂が噂を呼び、ある時は摂関家の子息である、藤原固真理と言う貴族の男がやって参りました。貴族特有の傲慢さで、断ってもろくに耳を貸しません。そこで、かぐや姫は一つのお願いをしました。
「では、『佛の御石の鉢』を探してきてください。それを持ってくればあなたと結婚しましょう」
固真理はそんな鉢を聞いた事もなかったので、しぶしぶその場は帰り、探してみましたが、全くわからないので諦めたのでした。
ある時は、豪放で知られる名のある武士がやってきました。慇懃無礼、態度も申し分なく武士そのものでした。これもまた聞く耳を持っていない強引な男であったので、またかぐや姫はお願いをしました。
「ならば、『龍の頸の玉』を持ってきてください。それを下さるならあなたの妻となりましょう」
「なに、龍だと?龍は実在する生き物ではないはずだが」
などと言いながら、武士は去っていきましたが、やはり二度とかぐや姫の前には現れませんでした。横で聞いていた翁は、この小娘、わざとありもしないそれらしいお宝の名前を言っておるな、と思いました。なんでもいいからとっとと名家の子息辺りと結婚してくれれば、わしも楽隠居できるのにのぅ、と思いながら、今日も明日も竹林へと向かうのでした。
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やがて、かぐや姫は家にじっとしておらず、外を出歩くようになりました。歩いているとすぐにナンパされるので、財布などは一切必要ありません。かぐや姫は、瞬く間にアッシー君を二十人ほど集め、近隣から、遠出まで様々に出歩くようになりました。そして、どうやって手に入れるのか、色々な贈り物やお金などを翁に手渡すので、翁的には無問題と言う事で、この不良娘が何をしていようが我関せず、と言う態度を取っていたのでした。
しかし、かぐや姫は決して遊び回っているのではありませんでした。ある目的を持って、各地の男性を物色しているのでした。そして遂に、捜し求めていた男性を発見しました。その男は宮廷の警護についている衛士で、真面目そうな男でした。が、絶世の美女のかぐや姫にかかってはイチコロで、あっさり交際を承諾し、翁の家へと連れて行かれるのでした。
「お爺様、ただいま帰りました」
「おぉかぐやよ、今日のお土産はなんだい」
もはやかぐや姫=お宝を持って帰ってくる人となっているので、翁は今宵は何か、と思って門を開けると、一人の男が伴っているのみで、興ざめになりました。
「その男は誰だい」
と、一応確認すると、かぐや姫は慇懃な態度になって、
「竹取の翁様、今日まで本当にお世話になりました。手の平程度の大きさであったこの私を、ここまで育ててくださって、また、着物や化粧道具なども買っていただいて、このお礼はいずれ必ず致します。お別れの時がやってきたのです」
竹取の翁と、もと衛士の青年が何事か、と驚いていると、空が突如暗くなり、一気に夜がやってきました。
「なんだ!?」
と青年が驚いていると、青年の額の三日月模様のあざが光りだしたではありませんか。翁が驚いていると、かぐや姫の首元も輝き始めました。
「これから、月に帰ります。今お迎えの飛空挺が来ます」
「飛空挺って……あ、あれは!?」
満月の空から、眩く輝く大きな船が静かにやってきました。腰の抜けた翁を尻目に、ゆっくりと地面に着陸した船から伸びてきたタラップにかぐや姫と青年が足を乗せます。と言いますか、青年は殆ど引きずられるように乗せられた、と言うほうが正しいでしょう。
「では翁様ごきげんよう、さようなら」
かぐや姫の別れの言葉と共に、その大きな船は再び天空に舞い上がり、一直線に満月に向かって飛び、やがて見えなくなりました。
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船内には、銀色や白色の簡素な服を纏った人々が乗っていました。かぐや姫は、直ちに奥のほうへ消え去り、もと衛士の青年、徳丸は取り残されました。そこへ、上品そうな白髪の老人が近づき、待っておりましたぞ、月の七勇士の一人、舞月殿、と声をかけました。
「いえ、僕は徳丸と言う」
「いや、あなたは舞月殿です。他に、翔月殿、蹴月殿、咬月殿、激月殿、守月殿、勝月殿、合わせて月の七勇士なのです。全員が揃って、初めて月下に潜り邪悪の瘴気を溜めつくしている魔怨獣弩羅悟を倒す事が出来ますのじゃ。あなたが最後のお一人だったのです」
と言う中二病設定のラノベのような話に徳丸が声も出せずにいると、
「お願いします、舞月殿、月の未来と平和のために」
気づけばかぐや姫が着替えてそばにやってきています。徳丸はその露出の多い服装に唾を飲みました。一面煌くゴールドの生地で、胸は大きく開いて谷間が見え、臍も見えているし、下はなんとレオタード状態で、僅かに腰にフリルのようなものが申し訳程度についているだけ。頭にはティアラのようなものが載っています。首のあざはまだ光っています。
「私の本当の名前はムーン・トゥエル・カグヤ。月の平和のために戦う聖戦士なのです。舞月、共に戦ってくれますね」
こんな状況で嫌も何もあったものではありません。こうして、徳丸こと舞月は、月の未来を賭けて、魔怨獣弩羅悟とやらと戦うハメになったのでした。(終わり)
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