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ナキサケブ

作者:要徹
 最近、どうも夜は寝苦しい。
 もう直に秋となるというのに熱帯夜が続くし、交通量が多い場所に住んでいるからか、車の音が絶えない。特にバイクの音は凄まじい。
 それでも、深夜になればそれらの騒音は落ち着いてくる。完全な静寂に包まれるその時が、丁度良い眠りのタイミングなのだが、最近――といってもかなり前からだが――はその静寂すら訪れない。おかげで、私は不眠症だ。
 不眠症の原因は分かっている。何でも昔、私が住んでいる団地の近くにある幼稚園で大量殺人が起こったらしく、この辺りには子供の霊が多く浮遊しているという噂がある。私は、静寂を阻害する要因を幼稚園で殺された霊の泣き叫ぶ声なのだと考えている。つまり、霊の仕業で眠れぬ日々を過ごしているということだ。いや、私だけではない。付近の住民もそう考え、ずっとそれに悩まされているのだ。
 布団に包まって騒音が去るのを待つと、今日もまた、子供の泣き叫ぶ声が聞こえてくる。その声は闇を切り裂き、周囲に響き渡っていく。誰の耳で聞いても不快なことは間違いないが、騒音と違って、これが霊の仕業だとすれば、何を言っても無駄だ。この付近の住民たちも、これが霊の声なのだと思っているからだろう。誰も苦情なんて言わないし、誰に相談するということもない。一度「これはお化けの仕業なんだ」と口にすれば、狂人というレッテルを貼られてしまう。そんなこと、誰が望むだろうか。
 恐怖に身を震わせ、息を殺して、じいっとして、ただただ、これから殺されると言わんばかりの痛烈な声を聞いていると、背中が粟立ってぞわぞわとして、全身から血の気が引いていくようだ。あまりの恐ろしさに体は硬直し、木偶人形のようになる。
 一体、幼稚園で起こった殺人事件はどれだけ凄惨なものだったのだろうか。ここらに漂っている霊や、この悲痛な声を聞くと、それがいかに凄まじかったのか、想像に易い。
 胃の内容物をぶちまけそうな気持ちに一時間程耐えると、その声は嵐が過ぎ去ったかのようにぴたりと止んだ。
 私は途端に緊張が解け、一瞬のうちに夢の中へ落ちていった。

 翌日、付近の家が赤色灯に照らされ、妙に慌ただしかった。その日一日、多くの人が訪れてきて面倒臭いことこの上なかったが、それ以来、子供の霊が泣き叫ぶことはなくなった。
 それにしても、あの霊は、あの声は一体何だったのだろうか。今では、そのことを考えて眠れない夜が続いている。

 さて、声の正体は何だったのでしょうね。


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