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ランドシン伝記  (アーカーシャ・ミソロジー) 作者:キール・アーカーシャ

第0章  輪廻-編

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   第Ω話  再誕 ⑨

 第Ω話  再誕 ⑨


 魔王城の中心、すなわち帝都とでも呼ぶべき無人の高層-建造物-群を紅蓮(ぐれん)の炎が包んでいた。
 それこそシオネスの剣撃によるマナの烈火(れっか)だった。

 不死王レヴィストルは荒れ狂う炎の隙間(すきま)をかいくぐり、時空をも()つ暗黒の一撃を放った。
 炎と暗黒がぶつかり対消滅(ついしょうめつ)していく中、二人は直接に剣を()()わすのだった。


 一方で、小人族の女魔術師ユークは、ウィルとティアを治癒(ちゆ)し続けていた。
 その時、ユークの手が小刻(こきざ)みに震え、その身が一瞬半透明(はんとうめい)(うす)れた。

 これを見て、同じく小人族のモロンは心配そうにした。

「あ、あの。大丈夫ですか?」

 しかし、ユークは首を横に振るのだった。

「二人の傷は星霊(アストラル)(たい)まで(およ)んでいる。これを急激に回復させるためには、私の生命力を分け与える必要がある」

 とのユークの言葉にモロンはハッとした。

「ユークさん。消えちゃうんですか?」

 それに対し、ユークはフッと笑った。

「十分に長生きはした。最後に面白いものも見れた」

 ユークの体が段々と薄れていくのが目に見えて分かった。

 するとティアが目を()け、言葉を(はっ)した。

「駄目よ、ユーク。そんなのッ!」

「駄目じゃ無い。ヒトは死ぬもの。それがいつかが違うだけ。私は人でなしの化け物だけど、最期(さいご)の時くらい自分で選びたい」

 そう告げる異端(いたん)なる(おんな)魔術師(まじゅつし)ユークは、(きわ)めて穏やかな表情を浮かべていた。

 すると、ユークの全身から(ひかり)(つぶ)(あふ)れていった。
 彼女を構成しているマナが急速に失われているのだった。

「ユークッ!」

 ティアは叫ばずには居られなかった。

『傷だらけに道を進む貴方(あなた)(たち)だからこそ、これ程までに(たましい)(かがや)く。()きなさい、()()よ。たとえ結末がどうあれ、私は貴方(あなた)(たち)を誇りに思っているわ』

 ユークは星母(せいぼ)(ごと)微笑(ほほえ)みを(たた)え、彼らを祝福した。

 そして、ユークは治療(ちりょう)を完了させ、達成(たっせい)安堵(あんど)を浮かべ、虚空(こくう)に散っていくのだった。
 光と()したユークが最期(さいご)に思うのは、仲間達、そして遠い追憶(ついおく)の騎士王の姿であった。

『アルカイン・・・・・・』

 かつて彼女が魔術師として(つか)えた騎士王の名を(つぶや)き、彼女の魂は(むね)に愛を()めながら、天におはす彼のもとへと帰っていくのであった。

 その時、ウィルの閉じられた目蓋(まぶた)から涙が(こぼ)れた。

「ウィル・・・・・・」

 ティアの声と共に、ウィルは目を開き体を起こした。

「聞こえていた。ユークの声、言葉が。()こう、ティア。魔王アセルミアのもとへと。彼女の(おも)いと死を無駄にしない(ため)にも」

「ええ」

 ティアは自身の涙を(ぬぐ)い、そう答えるのだった。

「モロン。お前はどうする?」

 ウィルは最も古い仲間の一人に(たず)ねた。

「団長。僕、ここに残るよ。僕でも何かやれる事があると思うんだ」

「そうか。後は任せたぞ」

「うん」

 と、モロンは力強く答えるのだった。

 そして、ウィルとティアは(うなず)()い、魔王城の中枢(ちゅうすう)である《深淵(しんえん)(とう)》へと突入するのだった。


 ・・・・・・・・・・

 妖艶(ようえん)なる不死王テレ・ネアは無数の魔弾に加え、立体(りったい)交差(こうさ)するレーザーを打ちだしていた。
 乱れ飛ぶ6色の魔弾とレーザーの光が空間を(いろど)り、美しき死を周囲に振りまいていた。

 一方で、それに対抗するポポンは汗をまきちらしながら、丸太で魔弾を次々と(はじ)いていった。

「フンヌゥゥゥッッッ!ドッセェェェェイッ!」

 ポポンの必死な形相(ぎょうそう)は、どうもテレ・ネアの美的(びてき)感覚(かんかく)と合わなかったようで、彼女は一刻(いっこく)も早く(みずか)らの視界から彼を消滅させようとしていた。

 とはいえ、カシムと茶猫のケシャの補助(サポート)もあり不死王はポポンを殺しきる事が出来ていなかった。
 テレ・ネアは舌打(したう)ちをし、まんべんなく放たれる魔弾群(まだんぐん)()らめかせ、ポポンに集中させた。

「ヌグゥゥゥッ!」

 さしものポポンも押し寄せる美麗(びれい)なる魔弾群(まだんぐん)(あせ)りを見せた。

 テレ・ネアは詠唱を高め、一気にけりをつけようとした。
 精霊なる音魔法を(つむ)ぐ彼女は、今、指揮者(しきしゃ)であり(うた)()であると言えただろう。

 テレ・ネアは一人で多重(たじゅう)詠唱(えいしょう)(おこな)っており、さながらにコーラスのように(うた)は鳴り響いた。

 その時、カシムと茶猫のケシャの姿が煙のように消えた。
 彼らは魔弾の隙間(すきま)をかいくぐり、テレ・ネアに迫っていた。
 ポポンに攻撃が集中していたため、不死王に(すき)が出来ていたのだ。

 そして、カシムとケシャは不死王テレ・ネアにそれぞれ波動を叩きこむのだった。
 すると、テレ・ネアの魔術が一瞬、解除された。

『なッ!』

 テレ・ネアが驚愕(きょうがく)の声をあげた時には、ポポンの丸太が豪速(ごうそく)で迫っていた。

 テレ・ネアはとっさに両腕でそれを(ふせ)ぐも、衝撃で後方に飛ばされた。
 しかし、彼女はその勢いを利用し、華麗(かれい)に一つの高層-建造物の瓦礫(がれき)の上に()()った。

 テレ・ネアは無言で眼下(がんか)のポポン達を(にら)()えた。
 その両腕は深く傷ついていたが、自動回復の力で(またた)()に再生していった。
 これこそ彼女が不死王と呼ばれる所以(ゆえん)の一つであっただろう。

『そう・・・・・・そうなのね。私の()(どう)制御(せいぎょ)(くず)したのね。なる程、なる程。素晴らしい。なら、お礼に見せましょう。《天魔(てんま)》なる力を』

 そう告げ、不死王テレ・ネアは天に向けその右手を高々と(かか)げた。
 刹那(せつな)膨大(ぼうだい)な魔力が天に渦巻(うずま)き、邪悪なる波動がテレ・ネアに収束(しゅうそく)せんとしていた。

「ウォォォォォッ!

 ポポンは()()つ恐怖を叫ぶ事で抑え、テレ・ネアに突進していった。

 この()(のが)せば、絶対なる死が自分達を(おそ)う事を本能で理解していたのだ。

 しかし、ゴウッと振り下ろされた丸太はテレ・ネアの細い腕と手で易々と(つか)まれていた。

 いや、それは本当にテレ・ネアと呼んでよいかはばかられた。
 そこには白き人型の異形が存在した。
 大理石(だいりせき)(ごと)くに硬質化し-それでいて(やわ)らかさも見せる表皮、刃物のように鋭利(えいり)な羽に、頭上に浮かぶ(ゆが)んだ()、さながらその姿は白き()天使(てんし)とでも言って()(つか)えは無いだろう。

 不死王なる()天使(てんし)は邪悪な笑みを浮かべ、見えざる何かを軽く放った。
 それは恐るべき速度でポポンに(おそ)いかかり、彼の右腕をもぎ取っていった。

さらに、その何かは綺麗な曲線(カーブ)を描き、カシムに迫った。
 とっさにカシムは結界を張るも、その攻撃は易々と結界を切断し、カシムの腹部を(えぐ)るのであった。

 その何かは大きく楕円(だえん)を軌道し、テレ・ネアのもとへと戻って行った。
 このわずかな時間で、ポポンとカシムは戦闘に(いちじる)しく支障(ししょう)が出るであろう傷を()ってしまった。

 そんな二人に対しテレ・ネアはフフッとあざ笑い、放った何か、それは光輪(チャクラム)と呼ばれる武器であるのだが、を指でクルクルと回していた。

『お前ッッッ!』

 激昂(げっこう)した茶猫のケシャは力を解放し、その姿を変えていった。
 今、ケシャは人型と化しており、耳や尻尾(しっぽ)などを除き、人間の女性に非常に近い姿形(すがたかたち)をしていた。

『アハッ!猫が猫人(ねこびと)になったァッ!』

 テレ・ネアはさぞ可笑(おか)()に声をあげた。

『許さないッ!』

 ケシャは魔力を全開にして、テレ・ネアに迫った。

 そして、ケシャとテレ・ネアの肉弾戦が始まった。
 しかし、テレ・ネアは余裕を崩さなかった。

『アハハッ。猫パンチ、かわいーッ!』

 テレ・ネアはケシャの(こぶし)(かわ)しながら言うのだった。

 逆にテレ・ネアの()りがケシャに炸裂(さくれつ)し、ケシャは建物に直撃した。
 さらに、テレ・ネアは魔力をケシャに向かい放っていった。

 魔力が直撃しその建物が爆発する頃には、ケシャは瞬間移動しており、テレ・ネアの背後に迫っていた。
 ケシャの蹴りがテレ・ネアの首に叩きこまれようとするも、それは残像であった。

 テレ・ネアはケシャの背後で笑みを浮かべており、次の瞬間、反撃が始まった。
 最初の一撃は何とか(かわ)すも、分身するテレ・ネアの多方向からの攻撃に、ケシャは()すすべも無く(ちゅう)を舞っていった。

 しかし、ケシャは瞬間移動を(おこな)い、追撃を()け、致命傷(ちめいしょう)だけは()けていった。
 とはいえ、ケシャの限界も近かった。
 元々、変化できる時間は限られている上に、
肉体への負荷(ふか)も大きいのだった。

 その上、敵の攻撃をモロに喰らっては、体が()つはずも無かった。
 どれ程に姿を変えようと、ケシャは小さな茶猫なのだから。

「ケシャッ・・・・・・」

 脇腹(わきばら)の傷を魔力の糸で()()けたカシムは、激痛(げきつう)で顔をしかめながらもケシャの身を(あん)じた。

「グッ・・・・・・ウゥ・・・・・・」

 一方で、ポポンは切断された右腕をきつく(しば)血止(ちど)めをしていた。

『ハァァァァァァッッッッ!』

 ケシャは流星の(ごと)きオーラを次々と不死王テレ・ネアに向けて放っていった。
 しかし、その直後、まるで時空転移(ワープ)したかにテレ・ネアはケシャの眼前(がんぜん)に迫っていた。

『終わりよ』

 その刹那(せつな)、ケシャの心臓部をテレ・ネアの魔力が無慈悲(むじひ)(つらぬ)いた。
 空中のケシャの体は力を失い、糸の切れた人形のように、ゆっくりと地に落ちていった。

「アアアアアアアッッッ!」

 半狂乱(はんきょうらん)となったカシムは(なん)(さく)も無くも、不死王テレ・ネアに襲いかかった。

 カシムは次々に掌底(しょうてい)をテレ・ネアに放っていくも、そのことごとく全てをテレ・ネアは手で受け止めていた。

()きたわ』

 次の瞬間、テレ・ネアの両腕は(やいば)()し、カシムの左腕と右足を切断していった。

「このォォォォォォッッッ!」

 ポポンは雄叫(おたけ)びをあげ、テレ・ネアに突進するも、放たれた波動を()らい、歩道(ほどう)(きょう)に激突するのだった。


 ・・・・・・・・・・


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