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ランドシン伝記  (アーカーシャ・ミソロジー) 作者:キール・アーカーシャ

第2章  プロローグ、 魔王の系譜-編

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第51話  傭兵の剣

 第51話  傭兵(ようへい)の剣

 それから、シオンは一日の全てを剣に費やした。
 それをガルンは-かたわらで歯を食いしばりながら、
指導し続けた。
ガルン「どうして、シオンッ!腰が曲がっとるぞ!
    そんな-へっぴり腰で騎士とは笑わせるな!」
シオン「はいッ!」
 それは-あまりに厳しい修行だった。
 さらに、理不尽な要求も多々あった。
 しかし、シオンは文句一つ言わなかった。
 何故なら、ガルンはシオン以上に辛い事を分かっていた
からだった。
シオン(父さん、普通の人間だったら、倒れても-おかしくない
    程の激痛に(さいな)まれているだろうに、俺のために。
    絶対に、弱音など吐くモノかッ!絶対に!)
 そして、シオンは心を(ふる)()たせるのだった。

 ガルンは単なる剣術だけで無く、戦場で生き残る(すべ)
シオンに叩き込んだ。
 シオンは泥まみれになりながら、大剣を背に
匍匐(ほふく)前進(ぜんしん)をしていた。
シオン「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
ガルン「動きが遅くなってるぞッ!敵はゴブリンどもだ。
    人間相手と違い、まともに名乗りをあげて戦って
    は-くれんぞ。地を()いつくばり、敵に-にじり寄り、
    奇襲をかけろッ!」
シオン「はいッ!」
 こうした地道な訓練もシオンは-ひたすらに続けた。

 すると、ある日、ガルンはシオンに休みを命じた。
ガルン「シオン、今日は休みだ。体を休めるのも鍛錬(たんれん)のうちだ。
    まぁ、今のうちに、お前の(おも)(びと)に会って来い。
    案ずるな。ワシも一日くらいなら自分の事は出来る」
 そして、シオンはガルンの言葉に従い、
ターニャに会いに娼館(しょうかん)に訪れた。
 それは本当に久しぶりに、シオンは感じた。
 シオンの顔を見ると、ターニャは-その日の仕事をキャンセル
して、シオンの(そば)に居る事にするのだった。

 気付けばシオンは眠っていた。
 それは-とても心地よい一時だった。
 ターニャの肌の温かさは-何より安心できた。
 シオンは夢見(ゆめみ)心地(ここち)でターニャの髪を撫でた。
 そのサラサラとした感触もシオンの心を(なぐさ)めた。
 ターニャは何も言わず、ただ、シオンの(そば)
()()い続ける
のだった。
 そして、幸せな一時は、(またた)()に過ぎ去った。
 シオンは再び、死の訓練へと身を投じるのだった。

 後半の訓練は、前半の体力向上の訓練では無く、
剣技の習得を中心とした訓練だった。
 しかし、この訓練こそ、真に過酷と言えた。
 水や食料は-ほとんど与えられず、夜中、何の前触れも無く
叩き起こされ、昼夜を問わずに訓練が続けられた。
 もちろん、それは弱っているガルンにとりも、
非常に厳しいモノであった。
 しかし、シオンもガルンも決して、弱音だけは()かなかった。

 シオンは半狂乱になって剣を振るっていた。
 頭が-ぼんやりとし、目は(かす)み、それでも剣技を発動し続けた。
 口にこそ出さなかったが、何度も-へこたれそうになった。
 しかし、折れそうな心を支えたのは、ターニャの記憶だった。
 愛する人のために、シオンは最後の力を振り(しぼ)り、
とうとう訓練を耐えきったのだった。

 気づけばシオンもガルンも泣いていた。
ガルン「よく・・・・・・よく、ここまで耐えたな。よく頑張ったな、
    シオン」
 そして、ガルンは-よろめきながら、シオンを抱きしめた。
シオン「父さん・・・・・・父さんこそ、体、ボロボロじゃないか」
 そう答え、シオンは父の小さくなった体を抱きしめ返すのだった。
ガルン「シオン・・・・・・もう、俺から-お前に教えられる事は無い。
    本当に良く頑張ったな。シオン。お前はワシの誇りだ」
シオン「父さん・・・・・・」
 すると、ガルンは突然、(うめ)いた。
 そして、ガルンは血を()いて、倒れるのだった。

 ・・・・・・・・・・
 シオンは急ぎ、ガルンを医者に運んだ。
 命には別状(べつじょう)は無かったが、ガルンの体は相当に
弱り切っていた。
 ()いつくばってトイレだけは自分で済ませたが、
それ以外の時は、ガルンは一日中、寝たきりだった。
 一方で、シオンも体調を崩しており、ガルンの面倒を見れる
状態では無かった。
 そこに来たのが、娼婦(しょうふ)のカシュアだった。
 彼女こそ、ガルンが毎回-指名していた相手だった。
 カシュアはガルンの世話を献身的(けんしんてき)(おこな)った。
 そんな二人の微笑(ほほえ)ましい姿を、シオンは(かげ)から
見守るのだった。

シオン「カシュアさん。お店の方は良いんですか?」
カシュア「私は、ちょうど借金を返し終わったのよ。
     長かったけどね・・・・・・。だから、これから
     の人生は、好きに生きようと思って」
シオン「そうですか・・・・・・。カシュアさん、父さんを
    頼みます」
カシュア「ええ。任せてちょうだい」
 と言い、カシュアは微笑(ほほえ)むのだった。

 それからシオンは旅の支度(したく)(ととの)えた。
 シオンの体力は若さ故に完全に戻っていた。
シオン「よし・・・・・・」
 シオンは荷物をまとめ、一人-(うなず)いた。
 それから、荷物を置いて、ターニャに会いに行くのだった。

 シオンはターニャに体を寄せていた。
ターニャ「シオン・・・・・・」
シオン「ターニャ・・・・・・」
 と、二人は互いの名を(つぶや)き、口づけを(かわ)した。

 別れの時は無情(むじょう)にも訪れた。
 シオンは荷物と剣を背負い、旅立とうとしていた。
 それをガルンとカシュアとターニャが見送ろうと
していた。
ガルン「・・・・・・シオン。気を付けるんだぞ」
シオン「うん、父さんこそ体に気を付けて」
ガルン「ああ。だが、ワシの方は大丈夫だ。カシュアも
    居てくれるしな」
 とのガルンの言葉に、カシュアは頼もしげに(うなず)いた。
シオン「カシュアさん、よろしく-お願いします」
カシュア「ええ。任せてちょうだい」
 そして、シオンは最愛のターニャへと歩み寄った。
ターニャ「シオン・・・・・・」
シオン「ターニャ、じゃあ、行ってくるよ。
    絶対に帰ってくるから、それまで
    待っててくれ」
ターニャ「うん、待ってるよ、ずっと待ってるから。
     あなたを待ってるから。だから、どんなに
     時間が-かかっても良いから必ず帰ってきて」
シオン「うん。愛してるよ、ターニャ」
ターニャ「私もよ、シオン」
 そして、二人は-別れの口づけを(かわ)すのだった。
 シオンは名残惜(なごりお)しげにターニャから口を離した。
シオン「じゃあ、行ってくる」
ターニャ「気を付けて」
ガルン「シオン、死ぬなよ」
シオン「うん」
カシュア「必ず、帰ってくるのよ」
シオン「はい。父さんを頼みます」
 そして、シオンは無言で立ち止まった。
ターニャ「シオン、シオン・・・・・・ッ」
シオン「ターニャ、ごめん、もう行かなきゃ。
    愛してるから。ずっと、君の事を(おも)って
    いるから」
ターニャ「私も、私もよッ!シオン、あなたをずっと
     想っている。だから・・・・・・」
 そして、ターニャは泣き出すのだった。
 そんなターニャをシオンは優しく-その頭を()でるのだった。
シオン「じゃあ、行ってきます」
ターニャ「行ってらっしゃい」
 と、ターニャは瞳を涙で-うるませながら、言うのだった。
 そして、シオンは今度こそ、旅立つのだった。
 そんなシオンを三人は手を振り、その姿が見えなくなるまで
見送るのだった。

 これこそが、(のち)に剣聖シオンと呼ばれる男の
始まりであった。
 この時、彼が狂気を()びる事になると、一体、誰が予想した
だろうか。
 彼が魔剣の王と呼ばれ、真の剣聖ヴィルと記憶世界にて
死闘を繰り広げるのは、遠い未来にして近い過去であった。

 ・・・・・・・・・・

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