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ランドシン伝記  (アーカーシャ・ミソロジー) 作者:キール・アーカーシャ

第2章  プロローグ、 魔王の系譜-編

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第50話  残されたモノ

 第50話  残されたモノ

 シオンは目を覚ました時には、全ては終わっていた。
シオン「・・・・・・兄さん」
 そして、痛む体を引きずり、シオンは歩き出した。
 その時、シオンは倒れる養父のガルンを見つけた。
シオン「父さんッ!」
 シオンは体の傷も忘れ、ガルンへと駆けだした。
シオン「父さんッ!父さんッ!しっかりして。父さん!」
 すると、ガルンは薄目を開いた。
ガルン「シオンか・・・・・・?」
シオン「そうだよ、父さん。しっかりしてよ」
ガルン「・・・・・・ゼオスは?」
シオン「兄さん?分からない。俺、兄さんと決闘して、
    やられて、気づいたら兄さんは居なくて、父さんが
    倒れてて・・・・・・それより、医者の所に行かないと!」
ガルン「・・・・・・大丈夫だ。少し、腰をやられただけさ。
    大丈夫だ。医者は呼ばないでくれ。
    決闘の傷を医師に見せるなど末代(まつだい)までの恥だ」
シオン「決闘?父さん、まさか・・・・・・」
ガルン「ああ、そうだ。ゼオスと戦った。二度もな。
    あいつは、ワシとは(かく)が違ったよ」
 と、ガルンは寂しげに(つぶや)いた。
シオン「そんな、そんな事ないよ。父さんは強いよ」
ガルン「・・・・・・いや、厳然(げんぜん)たる壁を感じたよ。奴はワシを
    倒した時、実力の3割も出して居なかっただろう。
    いや、それどころか・・・・・・」
 そう言って、ガルンは言葉を区切った。
ガルン「シオン、ワシはな二度目の決闘の時、ゼオスを
    殺すつもりで戦いを挑んだ。結果は、一撃で-
    やられたワケだがな」
シオン「殺すって・・・・・・」
ガルン「そうせねば-ならない理由があった。あいつは文字通り
    化け物だったのだ。だが、今は負けてホッとしているんだ。
    ワシが馬鹿だった。
    あいつが化け物だとしても、それでもワシの大切な
    息子だという事実に変わりは無いと言うのに。
    謝りたいよ・・・・・・謝りたい。
    ワシは息子を殺そうとしてしまった。
    何と言う愚かしさか・・・・・・」
 そして、ガルンは-にじみ出た涙を(ぬぐ)った。
シオン「父さん・・・・・・」
 シオンは-それ以上、何も言えなかった。
ガルン「シオン・・・・・・すまなかった。ワシはな、かつて剣の道
    から逃げたんだ。兄弟子に-どうしても勝てなくてな。
    それで、傭兵として生きた。
    様々な戦いを経験した。
    しかし、身も心もすさび、とうとう限界が来て、
    傭兵(ようへい)稼業(かぎょう)()め、この港町に
    やって来た。
    そして、さびれた教会で-お前達と出会った」
シオン「うん・・・・・・父さんが俺達を拾ってくれなきゃ、
    俺達は-まっとうには生きて来れなかったと
    思う」
ガルン「ロクに育ててやる事が出来なかった。特に
    コーリアには苦労をかけた」
シオン「でも、姉さんも-いつも感謝してたよ。
    父さんッ!」
 そして、シオンは-うなだれ涙をこぼした。
ガルン「泣くな、シオン。まぁ、ワシも涙もろい
    からな。血は繋がってなくとも親子だけ
    は-あるか」
 と言い、弱々しく微笑(ほほえ)んだ。
ガルン「ワシはな、シオン。お前とゼオスに夢を(たく)して
    いたんだ。ワシの進めなかった剣豪(けんごう)への道を。
    ある意味、夢は叶ったな。ゼオスは最強の剣士
    へと成長した。ワシの知る限り、あいつを越える
    剣の使い手は存在しないだろう。
    だが、それは-あいつの天賦(てんぷ)の才によるモノであり、
    ワシが教えずとも(おの)ずとあいつは今の実力を得た
    だろう」
シオン「そんな事ないよ。父さんの教え方が上手(うま)かったから
    だよ」
ガルン「いや、そもそもワシに教えられる事など-ありは
    しないんだ。何故なら、ワシは-かつて、師範(しはん)(もと)
    を教えの途中で去ってしまったのだから。
    ワシの剣は素人に毛が生えた程度のモノさ。
    それなのに、偉そうに人を教えているのさ。
    笑える(はなし)だろう?」
シオン「そんな事ないッ!そんな事ないよッ!
    父さんの教えは最強だ。
    俺は、父さんの剣で最強になるよ。
    そうして、父さんの教えが-いかに素晴らしいかを
    証明してみせるよッ!
    この国で一番の剣士にも-なってみせるよ。
    だから、だから・・・・・・」
 と、シオンは声を震わせながら言うのだった。
 それに対し、ガルンも体を震わせるのだった。
ガルン「シオン・・・・・・すまない、すまない。
    そして、ありがとうな」
シオン「いいんだよ、父さん。ともかく、家に戻ろう。ほら」
 そう言って、シオンは-しゃがんでガルンに背を貸すのだった。
ガルン「ああ」
 ガルンは-成長した息子の背を感慨深(かんがいぶか)く見つめた。
 そして、シオンはガルンを背負って、家に戻るのだった。

 ・・・・・・・・・・
 ゼオスはコーリアを両手で抱えて、歩いていた。
 その後ろをコウモリが付いていった。
コウモリ『ずいぶんと急がれるのですね』
ゼオス「シオンに起きられると面倒だからな」
コウモリ『また、気絶させれば良いのでは?』
ゼオス「どうかな?真に本気を出したあいつが相手では
    こちらも無傷ではすまない」
コウモリ『ほう・・・・・・』
 と、コウモリは興味深そうに言った。
コウモリ『しかし、だとすれば、まだ花開(はなひら)かぬ今のうちに』
 すると、ゼオスは首だけ振り向かせ、コウモリに
殺気をこめた視線を放った。
ゼオス「殺すぞ。あいつは俺の獲物だ」
コウモリ『これは、申しワケございません。
     おお、怖い、怖い』
 そして、コウモリはケタケタと笑うのだった。
 すると、コーリアが(なま)めかしい寝起きの声をあげた。
 次の瞬間には、コウモリは煙のように姿を消していた。
コーリア「ん・・・・・・ゼオス?」
 すると、コーリアは自分が-お姫様だっこされている事に
気づき、顔を赤らめた。
ゼオス「おはよう、コーリア」
コーリア「お、おはよう。あ、あの、これって」
ゼオス「俺の姫を(かか)えているだけさ。ちょっと、急いでてね。
    寝てるのを起こすのも悪いかと思って。駄目だった
    か?」
コーリア「え?う、ううん。大丈夫だよ。でも、もう出発なの?
     父さんやシオンに-お別れは?」
ゼオス「あの二人は俺達が旅立つのに反対だからさ。
    大丈夫、いつか落ち着いたら会いに行こう」
コーリア「そう・・・・・・」
 コーリアは-それ以上は何も言わなかった。
 ゼオスの機嫌(きげん)(そこ)ねる事を彼女は何よりも
(おそ)れたからだった。
ゼオス「さぁ、行こう。新天地へ」
 そう言って、ゼオスはコーリアに微笑みかけるのだった。
 それに対し、コーリアも満面の笑みを浮かべるのだった。
 そして、二人は南へと向かう。
 他の全てを捨てて。

 ・・・・・・・・・・
 ガルンの怪我は見た目は-ひどくなかったが、後遺症(こういしょう)を残した。
 腰がやられてしまい、ガルンは寝たきりに近い状態と
なっていた。
ガルン「・・・・・・シオン。これから-お前は、どうする?」
シオン「俺、騎士になるよ。やっぱり、祖国のために戦いたいし、
    それに父さんの剣を証明するチャンスだと思うし、
    何よりターニャのために-お金を(かせ)がないと」
ガルン「そうか、だが、それは一ヶ月後にしろ」
シオン「どうして?」
ガルン「これから、一ヶ月、ワシの剣の全てをお前に(さず)ける。
    騎士になるのは、それからに-するんだ」
シオン「でも、父さん。今の父さんの体じゃ」
ガルン「問題ないッ!」
 そう言い、ガルンは全身に魔力を通し、無理に体を
起こした。
シオン「父さんッ、無茶だ!そんな事したら、体が-おかしく
    なっちゃうよ!」
ガルン「(かま)うモノかッ!シオン、お前は-これから戦争に行くのだぞ。
    その途中で腰をやられたら-どうする?
    動けませんと、上官に言うのか?
    無理にでも動くんだ。さもなくば死あるのみだ。
    だから、この程度の事を見て、わめいては-ならん」
 そして、ガルンは立ち上がった。
ガルン「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・しかし、思ったより(つら)い。
    (とし)はとりたく無いな。シオン、杖を取ってくれ」
シオン「う、うん」
 そして、シオンは杖を二つ渡した。
 それをガルンは受け取り、二つの杖をつき、体を(ささ)えた。
ガルン「さぁ、始めるぞッ!」
 そして、ガルンによる地獄の特訓が始まった。
 しかし、それはガルンにとり、寿命(じゅみょう)(ちぢ)める程の
労力を必要としたのだった。

 ・・・・・・・・・・

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