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ランドシン伝記  (アーカーシャ・ミソロジー) 作者:キール・アーカーシャ

第2章  プロローグ、 魔王の系譜-編

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第48話  決裂

 第48話  決裂(けつれつ)

シオン「兄さん・・・・・・」
 と言い、シオンは兄のゼオスをにらみつけた。
ゼオス「お前を待っていた。これで、ようやく俺も、この家を
    旅立てる」
シオン「本気で言ってるのか?」
ゼオス「ああ。俺は-いつだって本気だ」
シオン「姉さんは-どうなる?」
ゼオス「既にコーリアにだけは話してある。
    お前が帰ってきたら、家を出ると」
シオン「・・・・・・そうか」
ゼオス「止めないのか?」
シオン「別に・・・・・・。兄さんの好きにすれば良い」
ゼオス「そうか。俺は明日の朝に()つ」
シオン「どこへ?」
ゼオス「さぁ、どこかな?特に考えて無い。南の方かな?
    そっちには、当分、ゴブリンも押し寄せる事は
    ないだろう」
シオン「そうかよ・・・・・・」
ゼオス「ともかく、中に入れよ」
シオン「ああ・・・・・・」
 そして、シオンとゼオスは家に入るのだった。
ゼオス「父さん、シオンが帰って来たよ」
 と、ゼオスは先程の会話が無かったかのように、明るく
声を出すのだった。
 すると、養父のガルンが飛んで来た。
ガルン「おお、シオン、よく戻ったな。心配したんだぞ」
シオン「うん。ごめん」
ガルン「いや、しかし良かった。お帰り、シオン」
シオン「ただいま」
 と、シオンは気恥ずかしく答えるのだった。
 すると、神妙な顔をしたコーリアが歩いて来た。
コーリア「シオン、お帰りなさい」
 と、無理に笑顔を作って、言うのだった。
シオン「・・・・・・ただいま」
 全ての事情を知るシオンは、あえて何も知らないふりを
するのだった。

 そして、食卓を家族四人が(そろ)って囲むのだった。
ガルン「いやぁ、やはり家族は一緒でなくてはな」
 と言って、ガルンは豪快に笑うのだった。
 一方で、シオンとコーリアは何とか作り笑いで
返すのだった。
 そんな3人をゼオスは、見下すように冷め切った目を
向けるのだった。

 その深夜、寝床についたシオンは物音で起きた。
 どうも、誰かが外に出たらしかった。
 シオンは嫌な予感がして、こっそりと外に出た。
 すると、遠くにコーリアとゼオスの(かげ)が見えた。
シオン(兄さん、まさか、姉さんを連れて出てくのか?)
 と、思いつつ、シオンは二人を追いかけるのだった。
 そして、しばらく気配を断ちながら-尾行を続けると、
二人は草むらの中に入っていった。
シオン(あそこは・・・・・・昔、3人で遊んだ秘密基地。
    もしかして、やる事やる-つもりなのか?
    しかし、だとすると-このまま追い続けて
    いいのか?
    ・・・・・・しかし、何か変だ。兄さんは姉さんに
    気が無いみたいだし。何か嫌な予感がする。
ともかく、追おう。
    もし、単に二人でイチャイチャしたいだけ
    なら、黙って帰れば良い)
 と、シオンは結論づけ、音を立てずに進むのだった。
 草むらをゆっくりと進むと、虫の()が響いた。
シオン(はぁ・・・・・・。何をやってるんだ、俺は)
 そして、シオンは秘密基地の裏手(うらて)に身を寄せた。
 中からは話し声がした。
コーリア「ゼオス、お願い。行かないで」
ゼオス「無理だよ」
コーリア「ッ・・・・・・なら、せめて私を一緒に連れて行って」
 とのコーリアの懇願(こんがん)に、ゼオスは-ため息を()いた。
ゼオス「それも無理だ。俺ではコーリアを幸せに出来ない」
コーリア「どうして?私はゼオスと一緒なら何処(どこ)だって
     幸せだよ」
ゼオス「たとえ、それが煉獄(れんごく)でも?」
コーリア「え・・・・・・?う、うん。そうよ。たとえ、それが
     地獄でも、私は」
ゼオス「駄目だ。諦めてくれ」
コーリア「どうしてッ?あなたを愛してるの、ゼオス。
     あなたをッ・・・・・・」
ゼオス「俺も家族としてコーリアを愛してる。
    だからこそ、君には幸せに生きて欲しいんだ」
 すると、コーリアのすすり泣く声が聞こえた。
ゼオス「コーリア・・・・・・」
 と、ゼオスがコーリアを慰めようとすると、
衣擦(きぬず)れの音が響いた。
シオン(なんだ?)
 と思い、シオンは隙間(すきま)の小さな穴から(のぞ)()むと、
そこには(はだか)のコーリアが居た。
 それは一種の芸術品の(ごと)き美しさを-たたえていた。
 その肌は-きめ細かく、体格や輪郭(りんかく)も指先を含めて
絶妙なバランスで調和しており、()そのモノと言って
()(つか)えは無かった。
 シオンは思わず、(つば)を飲み込んだ。
シオン(姉さん、あんなに綺麗(きれい)だったか?
    (こい)すると女は()わると言うけど、
    それにしても・・・・・・。
    まぁ、単純に()ぐと(すご)い、とも
    言えるかも知れない)
 などと、緊迫した場にそぐわぬ事を考えていた。
 そして、コーリアは-その魅惑的(みわくてき)肢体(したい)
さらしながら、ゼオスに迫った。
 しかし、ゼオスは首を横に振り、自分の上着を()ぎ、
コーリアに()けた。
 コーリアは-そのまま床に両膝(りょうひざ)をつき、激しく泣き出した。
ゼオス「ごめん・・・・・・」
 そう言い残し、ゼオスは秘密基地を後にした。
 シオンは今見た光景を信じたくなかった。
シオン(兄さんが姉さんを振った・・・・・・本当に。
    嘘だ。こんな形で終わるのか?本当に)
 頭が-ガンガンと痛んだ。
シオン(違うッ・・・・・・。終わらせは-しないッ!
    俺はッ!)
 そして、シオンは急ぎ-ゼオスの後を追うのだった。

 草むらを出た所でゼオスは立ち止まっていた。
ゼオス「シオン。出てこい」
 との言葉に、シオンは素直に草むらから体を出した。
シオン「ばればれってか?」
ゼオス「いや、途中まで気づかなかった。コーリアが
    裸になった時、ゴクリと喉が鳴る音がして、
    気づいた。微かな音では-あったがな」
シオン「・・・・・・びっくりしたんだ」
 と、ごまかすシオンをゼオスは楽しげに笑った。
シオン「笑うな・・・・・・」
ゼオス「これは、すまなかった。しかし、あれを見て、
    反応するのは男として当然さ。
    むしろ、あれを見て、何も感じなかったら
    むしろ男として不能か、もしくは-そっち系
    か・・・・・・」
シオン「そんな事は-どうでも良い」
ゼオス「じゃあ、どんな事が良いんだ?」
シオン「決闘だ、兄さん。俺が勝ったら、家を出るのを
    ()めてくれ」
ゼオス「それだけで良いのか?コーリアと結婚しろ、とか
    そういうのを付け足しても良いぞ」
シオン「強者の余裕か・・・・・・」
ゼオス「そうだ。今のお前なら、逆立(さかだ)ちしてたって勝てるさ」
シオン「確かに・・・・・・そうかもな」
 そう言って、シオンは木刀を構えた。
 それに対し、ゼオスは片手で同じく木刀を抜き、
シオンに向けた。
ゼオス「実力差を分かった上で挑んでくるか」
シオン「ああ」
ゼオス「面白い、かかって来い。ハンデとして片手で戦って
    やる」
シオン「ッ、後悔するなよッ!」
 そして、シオンはゼオスに挑みかかるのだった。
 シオンは高速でゼオスに迫り、連撃を放った。
 それをゼオスは鮮やかに受け流した。
 そして、シオンの肩に衝撃が走った。
 ゼオスの突きが炸裂したのだった。
 しかし、シオンは-ひるむ事なく、木刀を振った。
 その一撃は後ろに避けるゼオスの髪をわずかにかすった。
ゼオス「ほう・・・・・・しばらく見ぬ間に強くなったな。
    遊んでいたワケじゃないようだ」
シオン「鍛錬(たんれん)は積んでた。()いている時間に」
ゼオス「しかし、その強さ。それだけが理由じゃない。
    あぁ、そうか。お前・・・・・・女が出来たな」
シオン「なッ・・・・・・?」
 と、戸惑うシオンを、ゼオスはフッと笑った。
ゼオス「恥ずかしがるな、シオン。様々な経験が、剣士を成長
    させる。女も知らない剣豪(けんごう)などあり得ない」
シオン「・・・・・・兄さんも知っているのか?」
ゼオス「ああ。成人した日にな。どうでもいい女さ。
    水商売のな。誘ってきたから-やった。
    体だけの関係。お互い納得ずみでの事だ。
    コーリアとも-そんな感じに割り切れれば、
    いっそ、楽なのにな。
    あぁ、別に水商売の汚い女以外とも
    経験は-それなりにあるぞ。とはいえ、
    自慢できる程の人数では無いが」
 との言葉に、シオンは怒りで顔を(ゆが)めた。
シオン「兄さん・・・・・・あまり、女性を馬鹿にするな」
ゼオス「ん?何故、怒っている?ああ、そうか・・・・・・。
    そういう事か。シオン、お前、水商売系の女を
    愛したのか。なる程・・・・・・。じゃあ、言い方を
    変えよう。水商売系の馬鹿な女とやったのさ」
シオン「黙れッ!」
 と、シオンは叫んだ。
ゼオス「何故だ?それは真実だ。水商売をする女の大半は
    それ以外の道も-あったはずだ。少なくとも、本気
    で逃げれば、逃げれない事も無かっただろう。
    もっとも、水商売にも色々は-あるが・・・・・・。
    いずれにせよ、愚かな奴らに変わりは無いさ。
    お前の彼女もな」
シオン「それ以上、ターニャを愚弄(ぐろう)したら許さない」
ゼオス「そう熱くなるな。前にも言っただろう?
    剣士は常に冷静でなければ-ならないと。
    そう山々のようにな。
    怒りに身を任せれば、魔導制御が(おろそ)かになり、
    ロクな事にならない」
シオン「分かっているさ・・・・・・」
ゼオス「なら-それで良い。さぁ、かかってこい。
    彼女の名誉を守りたいんだろう?
    俺を打ち負かし、訂正させてみせろ」
シオン「望む所だッ!」
 そして、シオンはゼオスに突っ込んでいった。
 それを見て、ゼオスはフッと笑い、剣技を発動する
のだった。

 いつしか雨が降り出していた。
 その(しずく)は、地面に倒れるシオンの肉体から-熱を奪っていった。
 シオンは荒い息をして、体を(ふる)わせていた。
ゼオス「終わりか、シオン?」
 と、ゼオスは冷たく問いかけた。
シオン「違うッ・・・・・・俺はッ・・・・・・」
 そして、何とか立ち上がろうとするも、(ひざ)が言う事を聞かなかった。
ゼオス「寝ていろ」
 そう言って、ゼオスはシオンを蹴った。
シオン「グッ・・・・・・」
 シオンは受け身をとる事すら出来ずに、ぬかるんだ地面に
倒れた。
 それでも泥まみれになりながらも、シオンは上半身を
起こした。
ゼオス「しぶとさ-だけは一級だな。
    お前は、本当に-その女を愛してると見える」
シオン「ああ、愛してるさ。俺はターニャを愛している。
    いずれ結婚するつもりだ。・・・・・・なぁ、兄さん。
    俺は、騎士になろうと思うんだ。ターニャと結婚
    するには金が必要だから」
ゼオス「・・・・・・シオン。お前は(だま)されているんじゃないのか?
    はぁ・・・・・・兄として情けないよ。水商売の女に
    それ程、入れ込むとは。どうせ、どれだけ金を
    みついでも、その女は-どうせ他の男と浮気を
    したりするんだろう」
シオン「違うッ!ターニャに限って、そんな事は無いッ!」
ゼオス「水商売に入れ込む男は皆、そう言うのさ。
    大体、他の男に使い古された穴を独占したとして、
    それが本当に嬉しいのか?お前も-どうせ-いずれ、
    飽きて、他の清楚(せいそ)な女を抱きたくなる日が来る。
    そう、飽きが来るんだよ、水商売の女にはな」
シオン「・・・・・・そうかよッ!だが、俺は俺だ。
    俺はターニャだけを愛し続ける」
ゼオス「無理だな、シオン。お前とその女では釣り合いが
    取れなすぎる。
    夫婦は両輪(りょうりん)
    どちらが(おと)ってても(まさ)ってても上手くいきはしない。
    そう、外見、知力、体力、そういったモノが同程度の
    相手としか、結局は長続きしないのさ」
シオン「ご高説(こうせつ)どうも。だがッ・・・・・・」
 そして、シオンは(ひざ)を笑わせながらも、何とか立ち上がった。
シオン「俺はターニャを愛し続ける。絶対にだ」
 とのシオン見て、ゼオスは-ため息を()いた。
ゼオス「若いな・・・・・・」
シオン「兄さんだって、同じくらいの(とし)だろう?」
ゼオス「・・・・・・そうだったな」
 と言って、ゼオスはフフッと笑うのだった。
シオン「あんたを倒して、証明してみせる」
ゼオス「そうか・・・・・・なら、かかって来い」
 そして、ゼオスは-クイクイッと手招(てまね)きをした。
 しかし、シオンは挑発に乗らず、残った魔力を高める
だけだった。
ゼオス「・・・・・・それで良い。なら、こちらから行くぞッ!」
 次の瞬間、ゼオスの姿が消えた。
 シオンはとっさに木刀を左横に移した。
 そして、強烈な一撃が、木刀を(かい)して伝わってきた。
 しかし、次の瞬間には、ゼオスの姿は消えていた。
シオン(早すぎる・・・・・・。これが兄さんの本気。
    残像(ざんぞう)を捕らえるのが精一杯(せいいっぱい)だ。
    勝てない・・・・・・いや・・・・・・。
    それでも、勝つんだ!
    ターニャへの愛を証明するためにもッ!)
 その時、シオンの脳裏にターニャの笑顔が浮かんだ。
 シオンは-その優しい笑顔が大好きだった。
 そして、シオンは一瞬で剣技を展開し、一気に
振り返り、背後に放った。
 まさに、その瞬間、ゼオスは背後からシオンに襲いかかろうと
しており、シオンの剣技は不意の一撃となった。
 そして、ゼオスの剣技とシオンの剣技が-ぶつかり合った。
 だが、ゼオスの剣技が不完全だったにもかかわらず、
(はじ)()ばされるのはシオンだった。
シオン「グゥッ・・・・・・」
 シオンは地面を転がり、うめいた。
 一方で、勝者であるハズのゼオスは呆然(ぼうぜん)としていた。
 その(ほほ)には、血が一筋(ひとすじ)-(つた)っていた。
ゼオス「・・・・・・初めてだ。俺が本気を出して、傷をもらったのは-
    今生(こんじょう)においてこれが初めてだ。
    シオン、お前は素晴らしい。
    いずれ-お前は剣豪(けんごう)として、世に名を()せるだろう。
    いや、もしくは-それ以上として。
    フフッ、フハハハッ、面白い、面白いな。
    なる程。これは興味深い。
    いいよ、シオン。お前の言う事を聞いてやろう。
    コーリアは俺のモノだ。
    俺は彼女と結婚しよう。
    そして、お前は-その水商売の女と結婚すると良い。
    あぁ、楽しくなってきた。
    俺とお前、そして、俺とお前の子孫が戦い合う姿が
    手に取るように想像が付く。
    さぁ、壮大(そうだい)なゲームを始めよう」
 と、豹変(ひょうへん)したかのように雄弁(ゆうべん)に語るゼオスに、
シオンは困惑を隠せなかった。
シオン「兄さん・・・・・・兄さんは一体・・・・・・」
 しかし、シオンの体力に限界が訪れ、シオンの意識は
薄れていった。
 ゼオスはシオンが気絶したのを傍目(はため)で確認すると、
コーリアの居るである秘密基地へと向かおうとした。
 すると、声が()けられた。
「待て、ゼオス・・・・・・」
 ゼオスは仕方なしに振り返ると、そこには、木刀を手にした
養父のガルンの姿が-あった。

 ・・・・・・・・・・

+注意+
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