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ランドシン伝記  (アーカーシャ・ミソロジー) 作者:キール・アーカーシャ

第2章  プロローグ、 魔王の系譜-編

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第42話  少年時代

 第42話  少年時代

 シオンは「私は・・・・・・」としか言う事が出来なかった。
 そして、場には痛い程に沈黙が流れた。
シオン(駄目だ・・・・・・正直に答えよう。後は野となれ山と
    なれだ。死ぬ事は無いだろう)
 そして、シオンは口を開いた。
シオン「お答え(いた)します。ここにいる-どの騎士も、非常に
    優れていると思われますが、もし、1対1で戦えば、
    五分(ごぶ)以上の確率で私が勝つと思われます」
 とのシオンの宣言に、場は(かす)かに色めき立った。
 それに対し、エシュタスは「ほう」と、興味深げに
(つぶや)くのだった。
エシュタス「若き剣聖よ。そなたの力量は確かに、ワシも
      認める所だ。しかし、この場の騎士も、そう
      生半可(なまはんか)な腕の持ち主では-あらんぞ。
      特に-この玉座を守護する二人、
      《王の右手》たる守護騎士カリエス、
      《王の左手》たる守護騎士リーネル、
      この二人をも、そなたは陵駕(りょうが)しておる
      というのか?」
 とのエシュタス(おう)の威圧感に満ちた言葉に対し、
シオンは-ひるむ事なく答えた。
シオン「はい。その通りに御座(ござ)います」
 それに対し、エルフの宰相(さいしょう)を含め、王立-騎士達は、
不快そうな表情を(あらわ)にした。
 一方で、玉座の守護者たる2名の騎士達は、
顔色を変えずに、ただ、シオンに()るような
眼差(まなざ)しを向けるのだった。
エシュタス「剣聖シオンよ。そなたはエストネア最強を
      (うた)うか」
シオン「いえ、私は自身の力を、良く知っています。
    私の剣は未熟(みじゅく)です。あの男に比べれば」
 とのシオンの言葉に、エシュタスは目を細めた。
エシュタス「ほう、その言い方、まるで、そなた以上の
      剣士を知っているかのような口ぶりだな」
シオン「はい、王陛下」
エシュタス「ふむ・・・・・・その者の名を申してみよ、
      剣聖シオン・イリヒムよ」
 との言葉に、シオンは一瞬、迷い、それでも答えた。
シオン「それは、私の義理の兄で御座(ござ)います」
エシュタス「ほう、義理の兄が-おるのか」
シオン「はい。私は赤児の頃に親に捨てられ、
    ある-孤児院のような家で育ちました。
    そこには、私より一つ年上のエルフが
    居ました。その者こそ、私を越える剣士
    です」
 との言葉に、場は-ざわめきたった。
 すると、それをエシュタス(おう)が手で制した。
 それと共に、静かすぎる程の沈黙が()りた。
エシュタス「にわかには信じがたい話だ。
      そなたの話が本当だとすれば、
      その者は、剣聖を超えた存在、
      すなわち剣帝とでも称される-
      べき者という事になる。
      そのような者が、そなたの
      義理の兄とは・・・・・・。
      しかも、よもや-その者の名は
      世に知られて居ないのでは-
      無いか?」
シオン「左様(さよう)御座(ござ)います」
 とのシオンの()()ぐな返答に、エシュタス皇は
考え込んだ。
エシュタス「ふむ・・・・・・ならば、剣聖シオンよ。
      その者の話を聞かせて-もらおうか」
シオン「かしこまりました。()(きみ)
 と答え、シオンは-かつてを語り出すのだった。

 後にシオンは同じように語る事となる。
 自らの息子に、自らの過去を。
 そして、(たく)すのだった。
 自らの()せなかった、最も大切な願いを。

 ・・・・・・・・・・
 幼いシオンは砂浜を駆けていた。
 それを一人の少女が追っていった。
 そして、それを少し離れた所から、一人の少年が
見ているのだった。
少女「待ってよ、シオンッ!」
シオン「嫌だねッ。この星の貝殻(かいがら)は俺のだ」
 と、星の形をした大きな貝殻(かいがら)を手に、言うのだった。
少女「別に取ろうなんて-してないわよッ!」
シオン「嘘だぁ」
 すると、エルフの少年が口を開いた。
少年「シオン。それくらいにしておけよ。
   見せるくらい-いいだろう」
シオン「えぇ、でも兄さん。姉さんに見せると絶対、
    欲しいって言い出して聞かないんだよ」
少女「そんな事、ないもんッ」
シオン「だって、前、ツルツルした白い石、見せたら、
    取られちゃったよ」
少女「だ、だって、あれはシオンがくれるって言うから」
シオン「だって、あげないと、口こんなに-ふくらませて、
    不機嫌になったから」
 と言って、自分の頬をふくらませて見せた。
少女「何よ-それ。私は-もっと可愛(かわい)らしく、プクッて-ほっぺを
   ふくらませるわよ」
シオン「えぇ、嘘だぁ」
 すると、少年が苦笑した。
少年「シオン。あまり、姉さんを-いじめるな」
シオン「えぇ、人聞(ひとぎ)きが悪いなぁ」
少年「シオン」
 との少年の言葉に、シオンは逆らえなかった。
シオン「分かったよ。はい、姉さん」
 と言って、シオンは少女に貝殻(かいがら)を見せた。
少女「うわぁ、すごい綺麗(きれい)。お星様みたい」
シオン「星は-もっと丸いと思うんだ。これ、どっちかって
    言うと、ヒトデみたいだと思うけど」
少女「うるさいわねぇ。ほんと、デリカシーが無い弟ね」
シオン「良く分かんないけど、馬鹿にされてる気がする」
 と言い、シオンは(ほお)をふくれさせた。
少年「お前は、すぐにフグみたいに-顔をふくらませるな」
少女「確かに」
 と言い、二人は笑い合うのだった。
 それが面白くなく、シオンは-さらに頬をふくらませるのだった。
 すると、初老の男が歩いて来た。
男「おーい、シオン、ゼオス、コーリア。(めし)の時間だぞー」
 との男の言葉に、3人は「はーい」と答え、駆け出すのだった。

 シオンと-兄のゼオスは、競い合うように、食事を胃に
詰め込んだ。
男「こらこら、よく()んで食べなさい。戦場で食糧不足に
  なった時、飲み込むように食べる者から死んでいくの
  だぞ」
 との男の言葉に、シオン達は「はーい」と答えるのだった。
 しかし、しばらくすると、二人は-また、急ぎ食べ出すのだった。
男「全く、まぁ、戦場では食事を摂る時間が無い事も多いから
  早く食べれる-というのも、重要な技術では-あるがね」
 すると、シオンの姉のコーリアが口を開いた。
コーリア「もー、お父さんったら、どうして-いつも戦いに
     結びつけて考えちゃうのよ」
男「はは、すまなかった。昔の(くせ)でな。
  傭兵(ようへい)稼業(かぎょう)も長くてな」
 と、かつてを(しの)ぶように言うのだった。

 シオンとゼオスは剣を打ち合っていた。
 その動きは、もはや少年のモノでは無く、下手な騎士よりも
手練れと言えた。
 とはいえ、その技には-ややつたなさが残り、やはり子供と
言えた。
シオン「やぁぁぁッ!」
 と、叫び、シオンは剣を振り下ろした。
 しかし、シオンは剣を弾かれ、逆に-剣を顔の前に寸止(すんど)
されていた。
シオン「う・・・・・・」
ゼオス「シオン。お前は剣を強く(にぎ)りすぎている。
    だから、逆に(はじ)かれてしまうんだよ」
シオン「えぇ・・・・・・」
 と、シオンは文句を言った。
 すると、シオンの養父のガルンが(うなず)いた。
ガルン「シオン、ゼオスの言うとおりだ。
    何度も口ずっぱく言っているだろう。
    《(にぎ)調子(ちょうし)(やわ)らかに、
     しめず-ゆるめず、小指-離さず》
     とな」
シオン「でも、父さん。前に、それやろうとしたら、剣を弾かれた時、
    剣が-すっ飛んでっちゃったよ」
ガルン「お前は手首の(きた)(かた)が弱いんだ。だから、すぐに
    強く(はじ)かれてしまう」
シオン「でも、握力は鍛えてるよ」
ガルン「手首を鍛えるとは、手首の全体を鍛える事だ。
    握力のみを鍛えようとすると、手首の内側の部分しか
    強くはならない」
シオン「そっかぁ」
 と、シオンは納得するのだった。
シオン「でも、兄さんは-すごいな。ちゃんと出来てるんだから」
ゼオス「まぁ、本に書いてあった事を実践(じっせん)しているだけさ」
ガルン「しかし、中々(なかなか)、出来る事では無い。兵法の本には-
    無駄な知識、さらに常人では真似(まね)できない事も多く
    書かれている。それを取捨(しゅしゃ)選択(せんたく)するとは、
    さすがは我が息子だ」
 と言って、ガルンはゼオスの頭を()でた。
 それを見て、シオンは頬をふくらませた。
ガルン「シオン。お前も光る才能が-あるのだぞ。
    お前の剣は誰よりも()()ぐなのだから。
    それを覚えておけ」
 と言って、ガルンはシオンの頭を撫でた
シオン「はーい」
 と、シオンは首をかしげながら、答えるのだった。
 すると、姉のコーリアが-やって来た。
コーリア「こらぁ。水くみは-どうしたの、二人とも。
     お父さんも、剣術の事になると、急に二人に
     甘くなるんだから」
 と、コーリアの雷が落ちるのだった。
 そして、ガルンはバツが悪そうに苦笑し、シオン達は
急ぎ、水くみに走るのだった。

 そんな(おだ)やかな日常。
 俺達に血の(つな)がりは(まった)く無かったけど、
それでも俺達は家族だった。
 だけど、次第(しだい)に暗雲が立ちこめて来たんだ。

 ・・・・・・・・・・

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