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ランドシン伝記  (アーカーシャ・ミソロジー) 作者:キール・アーカーシャ

第2章  プロローグ、 魔王の系譜-編

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第39話  ゴブリンの勇者

 第39話  ゴブリンの勇者

「ククリ島の存亡(そんぼう)に関わる事態なのですわ」
 という植物族の長・リステスの言葉に、ゴブリンの長老達は
顔を見合(みあ)わせた。
大長老「存亡に関わる事態ですか・・・・・・?」
 と、大長老は(おそ)(おそ)(たず)ねた。
 それに対し、リステスは流し目を送り、語りだした。
リステス「かつての大戦にて、(わたくし)は人間のエストネア
     でしたっけ?そこに(おもむ)き戦いました。
     とはいえ、後の-剣聖だか何かに、体を斬られ、
     あまり活躍は出来なかったのですが。
     結局、私達は敗北し、逃げ帰ったわけですわ。
     それは私にとりも、非常に苦々しい記憶ですの。
     とはいえ、私は逃げる前に、種をまきました」
大長老「種・・・・・・ですか?」
リステス「ええ。その種は人間共(にんげんども)の土地に
     芽吹(めぶ)き、そして、花を咲かせ、毎年、
     私に花粉と共に情報を送ってくれていますの」
 と言って、リステスはフフッと笑った。
大長老「つまり・・・・・・今回の件は人間が(から)んでいると?」
リステス「ええ。その通り。奴等(やつら)、戦争の準備をしている
     ようですわ。さらに、船まで用意して。
     恐らく、この島に攻めてくるのでしょう」
 とのリステスの言葉に、場は-ざわついた。
大長老「そ、それは確かなのですか?」
リステス「さぁ?私の(いと)しい花たちが嘘を()いていなければ」
 それに対し、大長老は黙り込んだ。
大長老(これは、本当に、本当なのかもしれん。リステス様は
    滅多(めった)な事では動かれない。それが-わざわざ、ここまで
    (おもむ)かれたというのも、余程の事態なワケで・・・・・・。
    これは大変な事となった)
 今、大長老の背には、嫌な汗が伝っていた。
 すると、銅鑼(どら)の音が鳴り響いた。
 さらに外から『勇者カル・ヘトが狩りより戻られたぞッ!』
との声が響いた。
 それを聞き、リステスは嬉しそうにするのだった。
ラフア『勇者、勇者様!ゴブリンの勇者様!』
 と、一つ目の花ラフアは、口々で言うのだった。
 すると、扉が荒々しく開かれ、四本の腕を持つ巨躯(きょく)
ゴブリンが(とも)を連れ入って来た。
 彼こそはゴブリンの英雄にして勇者カル・ヘトであった。
カル・ヘト「久しいな、リステス」
 との横暴な言葉に、リステスは不敵に笑みを見せた。
リステス「これは勇者カル。久しぶりですね。
     十年ぶりかしら?」
 と、親しげに言うのだった。
カル・ヘト「・・・・・・そうなるな」
リステス「本当は-あなたの顔を見たかったのだけど、
     あの人間の剣聖から受けた傷が中々に、
     治らなくてね。ごめんなさいね」
カル・ヘト「お前が居ないと静かで良い」
リステス「これは、冷たいですわね。あなたに力を与えて
     あげたのは、私だというのに。
     まだ、うら若くて、可愛(かわい)かったあなたは
     何処(どこ)へ行ってしまったの?」
 との言葉に、カル・ヘトは顔をしかめた。
カル・ヘト「その話は止めろッ!それより、何をしに-
      来た?せっかくの狩りでの開放感が台無し
だ」
 とのカル・ヘトに対し、大長老は慌てて、駆け寄った。
大長老「勇者カル・ヘト。リステス様は、重大な情報を
    お持ちになられたのじゃ。あまり、そのような」
カル・ヘト「重大な情報?何だ?」
リステス「人間が攻めてくるんですわ。大勢で。
この島を滅ぼせる程の人数で」
 とのリステスの言葉を聞き、カル・ヘトの表情が
変わった。
カル・ヘト「それは(まこと)なのだな?」
リステス「ええ」
 そして、カル・ヘトは-深く息を吸った。
カル・ヘト「号令を出せッ!(いくさ)だッ!(いくさ)が始まるぞッ!
      人間どもが、この島を攻めようとしている。
      皆殺しにするのだッ!」
 との声が要塞中に響き渡った。
 それを聞き、大長老は感心していた。
大長老(良い戦士とは、声が通るモノと言うが、流石(さすが)は、
    勇者カル・ヘト。
あの声を聞けば、雨季で沈んだ心のゴブリン達も、
(たけ)り-(ふる)い立つであろう)
 との大長老の予想は当たった。
 すぐさま、銅鑼(どら)が鳴らされ、ゴブリン達の(とき)の声が
響いた。
リステス「あら、信じてくださったの?」
 と、リステスはカル・ヘトへと言うのだった。
カル・ヘト「お前は、嘘は()かん」
 との言葉に、リステスはフフッと笑った。
リステス「それで、勇者様は、これから-どうするおつもりで?」
カル・ヘト「決まっている。穴を掘るのだ。我等(われら)はゴブリン。
      この島全体に穴を張り巡らせ、腐った人間どもを
      (むか)()つのだ」
リステス「この雨季に穴を掘っても、埋まってしまうのじゃ
     ないかしら?」
カル・ヘト「木枠(きわく)で補強しながら作れば、問題は無い。
      確かに、手間はかかるが、仕方ない」
リステス「そう・・・・・・なら、私は森に罠を仕掛けましょう。
     甘い甘い罠を・・・・・・」
カル・ヘト「お前の《甘い》は真逆だからな」
リステス「フフッ。とはいえ、色々と話したい事があるので、
     私自身は-もう少し、ここに(とど)まらせて
     (いただ)きますわ」
カル・ヘト「・・・・・・好きにしろ。おい、彼女等(かのじょら)に部屋を用意
      してやれ」
 と、世話人に(めい)じるのだった。
 それを聞き、世話人は急ぎ、部屋の支度(したく)に駆けて行った。
カル・ヘト「さぁ、戦士長-達よ。待ち望んだ(いくさ)だッ!
      刃と火を愚かな敵に与えてやれッ!」
 とのカル・ヘトの言葉に、(そば)(ひか)えていたゴブリンの
戦士長-達は歓声をあげるのだった。

 ・・・・・・・・・・
エストネア皇国(おうこく)にて、剣聖シオンは-いよいよ王都カーンへと
豪雨の中、到着した。
シオン「ようやくだ・・・・・・」
 と、外套(がいとう)の中で、シオンは(つぶや)いた。
フォウン「でも、戦いは-これからでしょ?」
 と、ダーク・エルフのフォウンの言葉に、シオンは(うなず)いた。
シオン「ああ。その通りだ。大任を(うけたまわ)る事になりそうな以上、
    気を引き締めて行かないと」
 と、自分に言い聞かせるように言うのだった。
 すると、見上げる程の高さの城門が音を立てて、開いていった。
シオン「王都か・・・・・・。しかし、久しぶりだな。
    あまり、この魔窟(まくつ)には立ち寄りたくは-
なかったのだが」
 との(つぶや)きは、雨の中、消えていった。

 ・・・・・・・・・・
 王城にて、第1皇子のエギルフィアは重装備に身を包み、
王家専用の稽古場(けいこば)で大剣を振るっていた。
 そして、エギルフィアは剣技を発動した。
「お見事です、閣下」
 との老人の声が掛けられた。
エギルフィア「(じい)。この程度で()めるな。単なる素振りと
       変わらぬ」
 と、剣を休め、自身が生まれてきた時から(つか)えてきた執事に
言うのだった。
(じい)「いえいえ。これ程の重装備と大剣で、息切れ一つ起こされ
     ないとは、やはり、生まれ持っての魔力が凡夫(ぼんぶ)とは
     違うのでしょうな」
 との歯の浮くような言葉に、エギルフィアは苦笑した。
エギルフィア「この程度、聖騎士ならば、誰だって出来る。
       そして、奴、クオツェルナスにもな・・・・・・」
爺「・・・・・・あの(かた)の事は-あまり-お考えにならない(ほう)
  よろしいのでは?あの方は、既に王位継承権を失って
  おります。ただの平民に(ひと)しいのです」
エギルフィア「だからこそだッ!奴は-だからこそ怖ろしい。
       奴は王家でありながら、王家を否定した。
       それは愚かな民衆には、とても魅力的に
       (うつ)る事だろう。
       もし・・・・・・もしもだ。
       奴が、かつてのミズガルドで黒の女皇帝が
       (おこな)ったように、《市民革命》をしようとし
       たら、どうなる?
       恐らく、地方領主の重税に苦しむ農民達は、
       喜んで、貴族を倒すために、立ち上がるだ
       ろう。
       そして、クオツェルナスは、それを(ひき)いる
       だけの力とカリスマを持つ」
爺「しかし、あの方も貴族でしょう・・・・・・」
エギルフィア「女皇帝も、貴族制を否定しておきながら、
       ミズガルドを統一した唯一皇帝であった。
       とんだ、欺瞞(ぎまん)だ」
爺「女皇帝は伝説の人物に過ぎません。クオツェルナス様に
  同じ真似が出来るとは-とても思えませぬ」
エギルフィア「・・・・・・だと良いが」
爺「それよりも、(じい)は、エギルフィア閣下の身が心配に
  ございます。ククリ島は危のうございます」
 との言葉に、エギルフィアは顔をしかめた。
エギルフィア「はぁ・・・・・・お前も母上と同じ事を言う。
       母上といい、お前といい、心配し過ぎだ。
       私も、今年で28だ。あまり、子供扱い
       するな」
爺「しかし、セレス姫は-どうなさいます?
  本来、今度の春にて、国をあげての盛大な
  挙式が行われるはずでしたのに・・・・・・」
エギルフィア「どれ程、遅くとも夏には戻るさ。
       夏に挙式も悪く無い」
爺「・・・・・・だと良いのですが」
エギルフィア「ともかく、皆、心配し過ぎだ。
セレス姫や伯父上(おじうえ)-くらいだよ、私に
うるさく言わないのは」
 と言って、ため息を()くのだった。

 ・・・・・・・・・・
 激しい雨は、離宮にも降りつけていた。
 その離宮の一角の地下室にて、甘く-くぐもった声が
響いていた。
 そして、しばらくして、その声は(おさ)まった。
 そこでは、ベッドにエルフの男女が(はだか)で体を寄せていた。
女「この季節は嫌いですわ。ジメジメとして汗が
  ひりつくようで・・・・・・」
男「ほう、私としては-王妃(おうひ)(さま)の違った肌触(はだざわ)りを
  堪能(たんのう)できて、嬉しいのですがね。それに、雨の音で
  私達の声もかき消える」
 と言って、クックと笑った。
女「いけませんわ・・・・・・。(おう)陛下(へいか)に知られたら・・・・・・」
男「あんな老人、私には何も出来はしない。
  第一、私達の密会も、短くは無いだろう?」
女「それは-そうですが・・・・・・」
男「それに、あの老人とお前は、所詮(しょせん)は夫婦であっても
  他人だ。しかし、私とお前は違う、同じ血の絆で-
  結ばれた腹違いの兄妹なのだから」
女「・・・・・・ええ、そうですわね。それがルーテス家の絆
  なのですね」
男「ああ、そうだとも。父の代でルーテス家は公爵(こうしゃく)へと
  登りつめた。そして、私の代で国王が誕生する」
女「私の可愛(かわい)い息子エギルフィア・・・・・・。王位継承が確定し
  ているのに、ククリ島へと(おもむ)き、ゴブリンと戦おうだな
  んて・・・・・・。ねぇ、義兄(にい)(さま)、エギルフィアを説得なさって
  (くだ)さらない?どうか・・・・・・」
男「君のうるんだ瞳には昔から弱いが、今回ばかりは本人が
  決める事だ。それに、彼には精鋭を付けさせるから安心
  すると良い。もちろん、前線には出させない。
  万一、聖騎士団が壊滅しようとも、エギルフィアだけは
  すぐに船で逃げさせるさ」
 との言葉を聞き、王妃はホッと息を吐いた。
男「さぁ、せっかくの()()きの機会だ。
  これで終わらせるなど、とんでもない」 
 そして、その男、カレギエ公爵の行為(こうい)を、王妃は
息を(あら)げ、受け入れるのだった。

 ・・・・・・・・・・

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