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ランドシン伝記  (アーカーシャ・ミソロジー) 作者:キール・アーカーシャ

第2章  プロローグ、 魔王の系譜-編

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第31話  家族

 第31話  家族

 そして、ニュウの出産が始まった。
 それは満月の深夜だった。
 ニュウは苦しげに声をあげていた。
 それは絶叫にも近い声だった。
リコリス「ニュウちゃん、ニュウちゃんッ!あなた」
ロイス「仕方ない。痛みを取る。ペインレスの術式を
    構築してくれ」
リコリス「分かったわ」
 そして、リコリスはペインレスの術をニュウの下半身にかけた。
 すると、ニュウは大分、落ち着きを取り戻した。
リコリス「大丈夫?ニュウちゃん」
ニュウ「は・・・・・・はい・・・・・・」
ロイス「ニュウ、下半身の感覚が薄れているだろうから、
    リコリスの合図に従って、いきんでくれ」
ニュウ「はい・・・・・・」
 そして、その後は、すんなりと分娩は進んだ。
 それから十時間が経ち、半透明な赤児が無事に、生まれた。
 赤児が泣き出すのを聞き、ロイスとリコリスは目に涙を
浮かべた。
ロイス「ニュウ、君の子供だよ。立派な赤ちゃんだ」
 と手の平に乗るサイズの赤児をニュウに見せた。
ニュウ「赤ちゃん・・・・・・私の赤ちゃん・・・・・・。抱かせてもらって
    良いですか?」
ロイス「もちろんだとも、もちろんだ」
 そして、ロイスはニュウへと、慎重に赤児を渡した。
ニュウ「私の赤ちゃん・・・・・・私の赤ちゃん。可愛い、赤ちゃん」
 と、ニュウは涙をこぼしながら、言うのだった。

 それから、ニュウの赤児は、特に問題も無く、母乳を
飲み出した。
 母乳といってもニュウの胸の部分から分泌される透明な
液体で有り、その赤児は夢中で-それを飲み続けるのだった。
ロイス「ニュウ。その子の名前、考えておいたかい?」
ニュウ「はい。でも、ええと、その・・・・・・」
 と、恥ずかしそうにした。
リコリス「どんな名前でも良いのよ。本当の愛情がこもっていれば」
ニュウ「はい・・・・・・」
 そして、ニュウは考え抜いた名前を言うのだった。
ニュウ「ニョモ、という名前なんですが、どうでしょうか?」
 と、ニュウは-おどおどとしながら、言った。
リコリス「あら、可愛(かわい)い名前じゃない」
ロイス「ああ、いい名前だ。きっと、良い子に育つよ」
 との二人の言葉に、ニュウは嬉しそうにした。
ニュウ「良かった。ニョモ、ニョモ、これが今日から-あなたの
名前よ。ね、ニョモ」
 と、ニュウは幼い我が子に、語りかけるのだった。

 それから、数ヶ月、穏やかな生活が続いた。
 ニョモは少しずつ育ち、早くも母乳以外のモノも
食べれるように-なっていた。
 しかし、そんな時、島全体に爆発音が響いた。
ロイス「何だ?まさか(いくさ)が・・・・・・?」
リコリス「そんな、最近、戦争も(おさ)まってたのに」
 すると、ゴブリンの少年クトクが診療所に駆け込んできた。
 その頃、クトクは少し成長しており、背も伸び、体格も
よくなっていた。
クトク《大変だよ、先生。ウチの魔術師達が、変なのを召喚
    しちゃった》
ロイス《変なのとは何だい?》
クトク《分からない。黒いスライムみたいなの。でも、
    スライムと違って、(すご)く強いんだ。しかも、
    ゴブリンとか人間とか関係無しに、喰らって
    いくんだ。魔術師達は、ほとんど食べられ
    ちゃったみたいなんだ》
 との言葉に、ロイスとリコリスは顔を見合(みあ)わせた。
クトク《怖い・・・・・・怖いよッ・・・・・・。あんなの、見た事が
    無い。みんな、漁船に乗り込んで逃げ出してる。
    もう、この島も-お終いなんだ。
    先生達も早く逃げて。絶対だよ》
ロイス《分かった。私達は後から必ず逃げるから、クトクは
    君達の部族と、先に逃げるんだ。いいね》
クトク《うん。絶対だよ》
 そして、クトクは駆け去って行った。
 それを見送り、ロイスは-ため息を()いた。
リコリス「あなた?」
ロイス「ああ、急ぎ、逃げよう。ただ、怪我人が居るかも
    知れない。最低限、治療具を持って-いかねば」
リコリス「ええ、急ぎ、支度(したく)をしましょう」
 そして、ロイス達は-すぐに支度を(ととの)え、騎士達の管理する
漁船へと向かった。
 山道を降りていくと、爆発音と、人の叫び声がした。
 見れば、黒い何かが海岸沿いを浸食していた。
 そして、騎士達が-それを倒そうと剣技を放って居るも、
黒い何かにはダメージは無いようであり、逆に黒い何かが
発動したであろう魔術により、騎士達は吹き飛んで行った。
 それから、黒い何かは騎士達の体を己が内に入れ、溶かして
いくのだった。
 騎士達の中には、意識のあるモノも居て、絶叫をあげながら、
全身を溶かされていくのだった。
ロイス「何だ、あれは・・・・・・。化け物なんてレベルじゃ無いぞ」
 と、ロイスは思わず立ち止まって、(つぶや)いた。
リコリス「あなた、急がないとッ!」
ロイス「すまないッ」
 と、返事をし、ロイスはリコリス達と共に山道を(くだ)るのだった。
 ロイス達が小さな港に着くと、そこでは一隻(いっせき)の船が
停泊(ていはく)していた。
 すると、船に乗っていた一人の兵士が駆け下りてきた。
兵士「先生ッ!良かった。人をやろうかと思ってたんです」
ロイス「何が起きてるんだ?」
兵士「分かりません。ゴブリン共が、化け物を放ってきやが
   ったみたいです。チクショウッ!あいつらめッ!」
ロイス「逃げ遅れている者は居るのか?」
兵士「いえ、あらかた船に乗って逃げてます。万一に(そな)えて、
   船を用意しといて、本当に良かった。
   しかし、先生、この島は-もう駄目ですぜ。
   逃げないと、奴に飲み込まれちまう。
   幸い、この船には-まだ余裕があるんで、そっちの
   ニュウでしたっけ、と一緒に、船に乗って下さい」
ロイス「分かった。待て・・・・・・しかし、逃げ遅れている者が
    居ないなら、何故、出航しない?」
 とのロイスの言葉に、兵士は口ごもった。
兵士「いえ、ですね。実は、司令達が-まだ帰って来て
   無いんですよ。まったく、困ったモノですよ。
   こっちとしては、パッパと逃げてもらった方が
   楽なんですがね。傭兵としては、雇い主が死ぬと
   金を払ってくれる人が居なくなっちまう。まぁ、
   一応、もう少し、待って、そしたら出航しますよ」
ロイス「司令殿は、何処(どこ)に向かわれたんだ?」
兵士「えぇと、洞窟に魔石を取りに行かれましたよ。
   しかし、魔石を爆発させただけで、あの化け物
   を倒せるとは思えないんですがね」
ロイス「洞窟(どうくつ)か・・・・・・」
兵士「ちょっと、先生?まさか、向かわれるつもりじゃ
   ないでしょうね?」
ロイス「司令殿には-お世話になった。それに、村に逃げ遅れた
    者が居るかも知れない」
兵士「先生・・・・・・本気ですか?」
 との兵士に対し、ロイスは「ああ」と、はっきりと答えた。
兵士「分かりました。30分、待ちます。それまでに帰って
   来て下さい。ただ、奴が近づいて来たら、その時は
   先生が戻って無くても、船を出しますんで、恨まない
   で下さいよ」
ロイス「ああ。分かった。じゃあ、ニュウとニョモと、
    リコリスは、先に船に乗っててくれ」
リコリス《私も行くわ。ニュウちゃん達は船に乗ってて》
ニュウ《でも・・・・・・》
リコリス《大丈夫、必ず戻るから》
ニュウ《・・・・・・はい》
 と、ニュウは(うなず)いた。
ロイス「よし、行こう、リコリス。
    ニュウ、ニョモちゃんをしっかりと守るんだぞ」
 とのロイスの言葉に、ニュウは-こくりと(うなず)いた。
そして、ロイスとリコリスは駆け出して行くのだった。

 村には誰も居ない(ふう)に見えた。
ロイス「誰かッ!誰か、残って居ませんかッ!」
 と、叫ぶも、返事一つ無かった。
リコリス「あなた、もう、みんな逃げたのよ」
ロイス「よし、なら洞窟(どうくつ)へ急ごう。司令殿-達が心配だ」
リコリス「ええ」
 そして、二人は急ぎ、洞窟へと向かうのだった。

 ・・・・・・・・・・

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