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ランドシン伝記  (アーカーシャ・ミソロジー) 作者:キール・アーカーシャ

第2章  プロローグ、 魔王の系譜-編

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第30話  漂着

 第30話  漂着(ひょうちゃく)

 約7年前、診療所の外では今と同じように嵐が吹き荒れていた。
 そして、ゴブリンの少年が-ずぶ濡れになりながら、診療所に
駆け込んできた。
少年《ロイス先生ッ!大変、大変ッ!》
 それに対し、今と比べ、まだ若さを残すロイスは口を開いた。
ロイス《どうしたんだい、クトク?そんなに(あわ)てて》
クトク《変なのが海にッ!大変、大変ッ!》
 と、ゴブリンの少年クトクは言うのだった。
ロイス《変なのとは、どういうモノだい?
    モンスターだったりするかい?》
クトク《もしかしたら、そうかも。少し、()けてて、ブヨブヨ。
    変なの》
ロイス《・・・・・・ええと、そのブヨブヨなのは、海の中に、
    居るのかい?それとも、海岸に打ち上げられて
    いるのかい?》
クトク《海岸、海岸。早く、来てッ!》
ロイス《分かった。リコリス、診療所を頼む》
 と、ロイスは妻に言うのだった。
リコリス《ええ。気を付けて》
ロイス《ああ。じゃあ、案内してくれ、クトク》
クトク《うん》
 そして、ロイス達は海岸へと急ぐのだった。

 クトクの案内で海岸へとロイスが着くと、そこには、
半透明で大きめの何かが-横たわっていた。
ロイス《これは・・・・・・》
 と、(つぶや)き、ロイスは慎重に-それに近づいた。
 そして、それに触れてみると、半透明な体液が-べったりと
付いた。
ロイス(これは、生き物だ。しかし、見た感じモンスターとは
    違う。魔力の循環(じゅんかん)がモンスターとは違う。
    それに、魔族とも違う。
    むしろ、これは、魔力的には人間に近い。
    しかし、これは・・・・・・)
 と、ロイスは考え込んだ。
クトク《先生、こいつ、怪我してる?》
ロイス《ああ、みたいだね》
クトク《治してあげれないの?先生?》
 との言葉に、ロイスはハッとした。
ロイス(そうだ、私は何をしている。私は医師だ。
    そして、ここに傷ついた者が居る。
    ならば、それを救うのが当然では無いのか?)
 と、ロイスは悟るのだった。
ロイス《クトク。一緒に運んでくれるか?》
クトク《うん。オイラ、力だけは-あるからさ》
ロイス《よし、じゃあ、そっと運ぼう。そっちの足みたいなのの方を
    持ってくれ》
クトク《うん》
 そして、ロイスとクトクは、半透明な何かを診療所へと
(はこ)ぶのだった。
 それから、驚くリコリスに事情を説明し、手術台へと
運ぶのだった。
 そして、ロイスとリコリスは懸命に、半透明な何かに
治療を施した。
 (きよ)めの魔法で、器具を(きよ)め、縫合(ほうごう)を開始した。
 しかし、ヒトに対する治療とは勝手が違い、中々、
治療は-はかどらなかった。
 さらに、本当に-この治療で回復するのか、半信半疑(はんしんはんぎ)のまま、
ロイス達は手術を(おこな)っていった。

 治療から半日が過ぎた。
 そして、ロイスは縫合(ほうごう)()ませた。
ロイス「終わった・・・・・・」
 と、ロイスは(つぶや)いた。
リコリス「お疲れ様、あなた」
 そう言って、リコリスはロイスの汗をタオルで(ぬぐ)った。
ロイス「リコリスもね」
 との夫の言葉に、リコリスは微笑(ほほえ)んだ。
リコリス「でも、この子は(なん)なのかしら?」
 と、リコリスは半透明な何かを見て言った。
ロイス「分からない。しかし、(おす)(めす)で言ったら、(めす)
    分類されるとは思う」
リコリス「そうね。魔力的にも女性な感じがするわ」
ロイス「とはいえ、もし、傷が治って、暴れでもしたら
    どうしたモノか・・・・・・」
リコリス「・・・・・・その時は、責任を持って、私達が倒しましょう。
     とても、悲しい事だけど」
ロイス「そうだな。念の(ため)に、結界を張っておこう」
リコリス「ええ」
 そして、ロイスとリコリスは力を重ね、半透明な何かの周囲
に結界を張った。
ロイス「これで良い。後は、回復を待つだけだ」
 との言葉に、リコリスは(うなず)いた。

 それから、数日後、その半透明な何かは目を覚ました。
ロイス「おはよう。私の言葉は分かるかい?」
 と、ロイスはエストネア語で話し()けた。
 すると、半透明な何かは、確かに言語を(つぶや)いた。
リコリス「この子・・・・・・。この言葉、サーゲニア語?」
ロイス「ああ。運が良い。医術を学ぶ際、サーゲニア語
    は習わされたからな。ともかく、話をしてみよう」
 そして、ロイスはサーゲニア語で話し()けた。
ロイス[私はエストネアの医師、ロイスだ。君の名は?]
 との言葉に、半透明な何かは反応を示したが、上手く声を
出せないようだった。
ロイス[無理にしゃべらなくて良いよ。君は深い傷を負って
    いたんだ]
 すると、半透明な何かは[水・・・・・・]と(つぶや)いた。
ロイス[分かった。ただ、弱った体に純水は良くないから、
    塩と砂糖を入れたモノで良いかな?]
 との言葉に、半透明な何かは、(かす)かに(うなず)いた。
 それから、塩水を用意し、ロイスは結界の一部を解いて、
半透明な何かに飲ませた。
 そして、半透明な何かは眠ってしまった。
 その様子を見て、ロイスとリコリスは部屋の外で出た。
ロイス「サーゲニアの魔導士か何かなのかな?
    魔導士は自身の体を変化させる術を
    使うと言うが」
リコリス「でも、それにしても、体の構造が根本的に違い過ぎない
     かしら?」
ロイス「確かに。ただ、話が通じたのは良かった」
リコリス「ええ。もう少し、様子を見たら、結界を解いて
     みましょう」
ロイス「そうだね」
 そして、二人は安堵(あんど)し、微笑(ほほえ)み合うのだった。

 半透明な何かは少しずつ、自身の事を話し出した。
 その半透明な何かは-記憶が無いらしく、何故、海岸に打ち上げられて
いたかは、分からないようだった。
 ただし、一つのビジョンが時折、脳裏に浮かぶようであり、
そのビジョンとは、人々が光で吹き飛んで行く光景との事だった。
ロイス[フム・・・・・・。しかし、困ったな。身元が分からないと
    故郷に帰す事も出来ない]
半透明[すみません・・・・・・]
リコリス[いいのよ。あなたさえ良ければ、この島に-ずっと
     居てくれて-いいのよ]
 との言葉に、半透明な何かは、その瞳から(しずく)をこぼした。
半透明[すみません]
リコリス[あらあら、泣いちゃったのね。よしよし]
 そう言って、リコリスは半透明な何かの(ほほ)を布で(ぬぐ)うの
だった。
ロイス[しかし、名前が無いのも不便だろう。何か、名前を
    付けた方が良いだろうな]
リコリス[じゃあ、ニュウちゃん、何てどうかしら?
     動くと、時々、ニュウ、ニュウって可愛(かわい)い音が
     するから]
ロイス[おいおい、そんないい加減な名前じゃ]
半透明[いえ、嬉しいです。とっても・・・・・・嬉しいです。
    ニュウって名前、大切にします]
 と、半透明の何かは、言うのだった。
リコリス[じゃあ、ニュウちゃん、これからも-よろしくね]
ニュウ[はい]
 と、半透明なニュウは答えるのだった。

 それから数ヶ月が()ち、ニュウは診療所に完全に馴染(なじ)んでいた。
 初めニュウを怖がっていた人々も、ロイス達の説明もあり、
段々とニュウを受け入れだしていた。
 そして、ニュウはゴブリンや人間やエルフの子供達と
庭で遊ぶようになっていた。
 そんな時、ニュウの腹部が(かす)かに(ふく)らみだしていた。
ロイス「これは・・・・・・」
 と、ロイスは診察をしながら、驚きを禁じ得なかった。
リコリス「どうしたの、あなた?」
ロイス「もしかしたら、ニュウは妊娠しているかも知れない」
 とのロイスの言葉に、ニュウはキョトンとした。
 一方で、リコリスは目を丸くしていた。
リコリス「そ、それって、ニュウに赤ちゃんが出来てるって
     事なの?」
ロイス「みたいだ。恐らく、元々、妊娠していたんだろうな。
    手術の時も、違和感を感じたんだが、切ったりしないで良かった」
ニュウ「あの・・・・・・良く分からないのですが。
    私、病気なのですか?」
リコリス「違うの、違うのよ。ニュウちゃん。あなた、
お母さんになるのよ」
 そして、リコリスはニュウに詳しく説明するのだった。

 それから、数ヶ月が経ち、ニュウの腹部は大きさを増して
居た。
 とはいえ、その(ふく)らみは、人間の妊婦ほどの大きさでは
無く、中に-うっすらと見える赤児(あかご)らしき子も、20センチ程
の大きさしか無かった。
ロイス「ニュウ、体調に変化は無いか?気分が悪くなったり、
    たとえば、吐き気がしたり」
ニュウ「いえ、大丈夫です。ただ、お腹が()きます」
リコリス「じゃあ、いっぱい、ご飯を食べましょうね」
 と、ニコニコしながら言うのだった。

 それから、段々と、ニュウは部屋の外に出ようと
しなくなった。
 一日中、ぽやーっと窓から外を(なが)め、時折(ときおり)、お腹を
自身の小さな手で-さするのだった。
 一方で、ロイスとリコリスは不安を抱えるように
なっていた。
 深夜、二人は寝室で話すモノだった。
ロイス「しかし、きちんと出産を手伝えるか自信が
    無いよ。これが人や人に準じるモノなら、
    自信もあるんだが」
リコリス「そうね。今までのノウハウが全く通じない
     ものね」
ロイス「最善を尽くそう。ニュウは大切な家族なんだ」
リコリス「ええ、そうね。そして、家族が-もう一人
     増える事になるのね」
ロイス「ああ・・・・・・。私達の間には、子供は-いない
    が、こういう形で家族が増えるのは、本当に-
    喜ばしい事だよ」
リコリス「ええ」
 と言って、リコリスは微笑(ほほえ)むのだった。

 ・・・・・・・・・・

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