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ランドシン伝記  (アーカーシャ・ミソロジー) 作者:キール・アーカーシャ

第2章  プロローグ、 魔王の系譜-編

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第29話  医師

 第29話  医師

 ヴィル達は一旦(いったん)、小屋から船へと戻っていた。
 そして、ヴィルは小屋での話をアーゼ達に話した。
アーゼ「なる程。事情は分かりました。しかし、その夫婦さん
    は信用できるんですか?」
ギート「確かに・・・・・・こんな孤島に二人きりで住み続けるのも
    怪しいのう」
 と、ドワーフのギートも言うのだった。
ヴィル「いや、あの人達は信用できると思う」
アーゼ「何故です?」
ヴィル「何と言うか、優しいオーラを感じた。嘘吐(うそつ)きとも違う
    感じだよ。もっとも、確かに信用し過ぎるのはマズイ
    かもな。だから、常に、半分の人数は船に残っていよう。
    そうする事で、万一の時に対処できる」
トゥセ「考え過ぎじゃないですかぁ?」
 と、ダーク・エルフのトゥセは言った。
アーゼ「トゥセ、お前は甘すぎるぞ。世の中、何が起きるか
    分からないんだからな」
ギート「そうじゃ、そうじゃ。もし、その二人が食人鬼じゃったら-
    どうするんじゃ?油断して、眠り薬でも盛られで
    もしたら、おお、怖い怖い」
ヴィル「まぁ、ともかく、明日、また会いに行くから、今度は
    二人が付いて来てくれ」
 とのヴィルの言葉に、アーゼとギートの二人は(うなず)くのだった。

 ・・・・・・・・・・
 しかし、翌日、アーゼとギートは小屋にて-くつろいでいた。
 夫のロイスは和やかに二人と話していた。
ギート「いやぁ、ロイス殿は(まこと)、話の分かる方ですなぁ。
    ハッハッハ」
アーゼ「いや、本当に。食料まで分けて下さって、ありがとう
    ございます」
 との二人の様子をケシャは-シラーと見ていた。
ケシャ(早くも懐柔(かいじゅう)されてますね・・・・・・。まぁ、私は-そう
    簡単に、気を許しませんけど。フッ)
 と、茶猫のケシャは思うのだった。
 すると、妻のリコリスがケシャの前で-しゃがみこんだ。
リコリス「ケシャちゃんは良い子ね、よしよし」
 そう言って、リコリスはケシャの頭を()でた。
ケシャ(クッ、こんな事で屈するワケには・・・・・・)
リコリス「あ、そうだ。ミルク、持って来ようかしら?」
 とのリコリスの言葉に、ケシャは目を輝かせるのだった。
ケシャ「ニャア、ニャア」
 と言って、ケシャはリコリスに甘えだした。
 その様子をヴィルは見て、ため息を()いた。
ヴィル(まぁ、この人達は99%、いい人達だと思うけど、
    皆の命を(あずか)る身としては、注意しておかないとな。
    もっとも、大抵の毒や眠り薬なら、俺には効かない
    けど。ただ、あのハンターの使ったような特殊な
    猛毒(もうどく)を使われたら、やばいけど。
    とはいえ、そんな猛毒は(にお)いとかも(すご)いからな、
    大抵は気づくとは思うけど。とはいえ、注意は
    しておこう)
 と、ヴィルは思うのだった。
ヴィル「ところで、ロイスさん。お二人は-どうして、こんな
孤島に住まわれているのですか?やはり、不便では
ないですが」
 とのヴィルの言葉に、ロイスは(うなず)いた。
ロイス「確かに、その通りだよ。しかし、長年、住んでしまうと、
    案外、居心地(いごこち)も良いモノだよ。それに、本国に
    私達の居場所は無いだろう」
ヴィル「どういう事ですか?」
ロイス「私達は反逆者とも言えるんだ」
 とのロイスの言葉と共に、雷音(らいおん)が鳴り響いた。
 小屋の中には、雨の音-以外、静寂(せいじゃく)が満ちた。
ヴィル「詳しく(うかが)って-よろしいでしょうか?」
ロイス「ああ」
 そして、ロイスは-かつてを語り出すのだった。
ロイス「私と妻のリコリスはエストネアの軍属だった。ただし、
    通常の兵士では無く、救護軍として、働いていた」
ヴィル「つまり、軍医や看護師として、という事ですか?」
ロイス「ああ。私が軍医として、リコリスが看護師として、
    13年前に大戦に参加していた。その時、リコリスと
    出会い、戦火の中、結婚を誓ったのだよ・・・・・・」
 と、ロイスは-かつてを思い出しながら、言うのだった。
ヴィル「その大戦とは獣魔-大戦の事ですか?」
ロイス「今は-そう呼ばれているのかい?大規模な魔族達の
    侵攻だった。エストネアにもゴブリンの軍勢が押し
    寄せ、危険な情勢が続いた。ルネ島は真っ先に奪われ、
    そこを拠点にゴブリン達は攻めて来た」
ヴィル「はい。俺も聖騎士として、戦いました」
ロイス「聖騎士?聖騎士様でしたか・・・・・・。これは、ご無礼を。
    どうか、お許し下さい。聖騎士様」
 と、ロイスは深々と頭を下げた。
ヴィル「あ、いえ、違うんです。そんなつもりで言ったワケ
    では無くて、俺は-もう、聖騎士では無いんです。
    首になっちゃいまして」
ロイス「そ、そうでしたか」
ヴィル「あ、はい。ともかく、あまり-お気になさらないで
    下さい。大体、軍医の方が階級は上ですし。
    それに、そもそもロイスさんの方が、年は上な
    ワケですし」
ロイス「・・・・・・分かった。じゃあ、普通に接しさせて
    もらうよ。丁度、私達が戦場に送り込まれたのは、
    剣聖シオンが覚醒(かくせい)した時期だ。
    つまり、戦況が、大きくエストネア側に(かたむ)いて来た
    頃だ。
    それでも、本土の一部も、ゴブリン達により侵略され、
    少なくない被害が生じていた。
    しかし、それから、一年が過ぎると、本土での決戦に
    エストネア側は勝利し、残るのはルネ島と、その周辺
    の諸島となった」
ヴィル「はい。俺もルネ島での戦いに参戦しました」
ロイス「私とリコリスも同じだ。しかし、私達の任務は-それで
    終わらなかった。ルネ島の先の、テヒス島へと着任するように
    命じられたのだ。
    そして、私とリコリスは船団に乗り込んだ。
    しかし、その時、不運な事に、雨季でね。
    嵐で船団の多くが沈んだ。
    そして、私の乗っていた船は-この島に辿(たど)り着いた。
    しかし、そこはゴブリンの支配下にあった」
 と言って、ロイスは言葉を区切った。
ロイス「悲しい戦いだった。互いに逃げ場が無かったから、
    必死に戦う事となった。多くの騎士達が死んだ。
    私達は血まみれになりながら、それこそ命懸(いのちが)けで
    治療を施したが、ほとんど救う事は出来なかった」
 と、ロイスは重々しく言うのだった。
 部屋には沈黙が()りた。
ロイス「正直、この島が何処(どこ)なのかは私には分からない。
    恐らく、元々、ゴブリンの所有していた島なのだろう。
    ただ、安心して良い。この島には、もう私達しか居ない。
    皆、逃げ出すか、死ぬか、どちらかだった。
    残ったのは私達だけだ」
ヴィル「何が-あったのですか?」
ロイス「・・・・・・島での戦いは-ひたすら続いた。そんな-ある日、
    戦争が終わったとの(うわさ)が流れた。それは捕虜にした
    ゴブリンからの証言だった。しかし、騎士達は-それを
    信じようとは-しなかった。とはいえ、私は-それが真実
    だと思った。何故なら、多くのゴブリンが船で逃げ出して
    行くからだった。恐らく、人側の勝利で終わったのだろうと、
    私達は思った。今から、10年前の事だ」
 とのロイスの言葉に、ヴィルは口を開いた。
ヴィル「はい。確かに、獣魔-大戦は10年前の夏に終結しています」
ロイス「やはり、そうだったか・・・・・・。
    だが、騎士達は戦いを挑み続けた。
    一方で、島に残る原住民的なゴブリンもおり、
    応戦してきた。
    (むな)しい戦いだった。
    その頃、私達はゴブリンの言語を習得していた。
    そして、私とリコリスは-ある大きな決断をした。
    島の中央、戦略拠点とは全く無縁な-この場所に、
    診療所(しんりょうじょ)を作った。
    そこで、人間もエルフも、ゴブリンも、全て
    ()(へだ)て無く治療する事にした」
ロイス「最初、騎士達は怒り狂って抗議してきた。
    剣を私に突きつけ、(おど)してきた。
    しかし、彼等(かれら)も根は悪くない人達だ。
    私達の決意が固い事を知ると、帰っていったよ」
ロイス「それから、私達の診療所(しんりょうじょ)では、多くの患者が
    訪れるようになった。ゴブリンと人、両者が」
ヴィル「診療所の中で、争いは起きなかったのですか?」
ロイス「初めは-あった。だけど、元々、訪れる者達は
    分かってて来るわけだからね。あまり、大した
    争いは無かったよ。
    それで、いつしか、この診療所の周囲では戦争は
    しないような取り決めが自然と出来ていた。
    外の庭では、ゴブリンと人の子供達が遊んで
    居たりした」
 と、ロイスは(なつ)かしむように言った。
ロイス「そんなある日、そう、こんな嵐の日に、ゴブリンの
    子供が血相(けっそう)を変えて飛び込んできたんだ」
 そして、ロイスは当時を回想するのだった。

 ・・・・・・・・・・

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