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ランドシン伝記  (アーカーシャ・ミソロジー) 作者:キール・アーカーシャ

第2章  プロローグ、 魔王の系譜-編

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第26話  七英雄

 第26話  七英雄

 ヴィル達は船から(いかり)を降ろし、地面に固定していった。
 さらに、ケシャとカシムが-結界で固定を強化していった。
 そして、ヴィル達は船の中で一休みしていた。
ヴィル「しかし、嵐も弱まってきたし、何とか-なったな」
アーゼ「ですね」
ギート「とはいえ、ここは何処(どこ)の島なのかのぅ。人間の
    管轄(かんかつ)かゴブリンの管轄かで大きく違ってくると
    思うぞい」
ヴィル「確かに・・・・・・だけど、地図には載ってないからな、
    恐らく、人間は住んでないと思うけど。
    トフクさん、ゴブリンの方は-どうでしょう?」
 と、黒猫に憑依(ひょうい)している老人ゴブリンのトフクに
(たず)ねた。
トフク『フム・・・・・・ワシの知る限り、このような島にゴブリンは住まぬ
    と思う。そもそもゴブリンは集団生活を尊ぶ
    モノで、しかも海を越える事を基本、嫌うからの」
ヴィル「なる程。となると、ここは無人島の可能性が高いという事ですね」
トフク『恐らくはの。もっとも、ワシやレクク様のように-逃げ隠れ
    ているゴブリンは、おるやも知れんがの』
 とのトフクの言葉に、ヴィルは考え込んだ。
トゥセ「ともかく、明日になったら見回りに行きましょうよ。
    食える果物とか探しに」
アーゼ「お前は-いつも食い物の事ばっかだな」
トゥセ「いや、でも果物は重要だぜ。今回、急いでたから
    あんまし船に積めなかったけど、果物不足だと、
    船乗りは病気になるって言うし」
ヴィル「まぁ、確かに-それはあるな。とはいえ、ここに
    生えている植物が、俺達の知っているモノだと
    良いけど」
 すると、カシムが口を開いた。
カシム「お任せ下さい。大抵の植物なら、食べれるか判別が
    つきます」
トゥセ「おお、流石(さすが)、カシム」
アーゼ「いやぁ、カシムは物知りだなぁ」
カシム「いえいえ、仙人術を学ぶ上で知っただけですから」
 と、照れくさそうに言った。
トゥセ「ところで、ゴブリンって何を食べるんですか?
    良く考えたら、俺、レククが何かを食べるの
    見た事、無いんすけど」
ヴィル「ああ、ゴブリンとか魔族ってのは、いわゆる人とは
    食うモノが違うんだ。というか、土さえあれば、
    生きていけるんだよ、彼等(かれら)は」
トフク『その通りじゃ。基本、土が-あれば生きていける。
    とはいえ、魔力のこもった土で無ければ、食べても
    意味は-あまり無いがの。とはいえ、人が食べるような
    食事も少量なら食べるモノじゃよ。ワシもケーキや
    酒は大好きじゃったしの』
 と言って、トフクは笑うのだった。
 それに対し、ゴブリンの少女レククはキョトンとした。
トゥセ「なる程な。じゃあ、魔族が人間を食うってのは
    嘘っぱちって事か」
トフク『そりゃそうじゃ。体の構成が全然、違うんじゃからの』
ヴィル「まぁ、そういう噂を出す事で、魔族に対する憎しみを
    増やそうとしているんだと思います」
トフク『悲しい事じゃよ・・・・・・』
 そして、沈黙が流れた。
 しかし、モロンとレククが二人で積み木をして遊びだした。
ヴィル「いやぁ、(なご)むなぁ」
トフク『まったく-もって。しかし、もし、モロン殿がゴブリンで
    あったのなら・・・・・・いや、何も言うまい』
 そして、トフクの憑依(ひょうい)する黒猫は眠ってしまった。
ヴィル「じゃあ、俺達も休もう。明日は孤島の探索だからな」
トゥセ「よっしゃ、腕が鳴るぜ。寝よ、寝よ」
ヴィル「あ、ただ、念のために、見張りを置いておこう。
    とりあえず、俺とトゥセで3時間、見張りな。
    その後は」
トゥセ「え?俺、けっこう眠いんすけど」
ヴィル「我慢だ。あと3時間したら-いっぱい眠っていいから」
トゥセ「うう・・・・・・そんな、見張り、後の番じゃ駄目っすか?」
アーゼ「お前、それ前にも言って、起きてこなかっただろ」
 とのアーゼの突っ込みに、トゥセは言葉を失った。
トゥセ「チクショウッ!団長ッ、3時間、エロ・トークしましょう。
    うぉぉ、何か、眠すぎて逆にテンション、上がって来たぞーーッ!」
 と言って、トゥセは立ち上がった。
ケシャ『キモイです・・・・・・』
 とのケシャの-ぼそりと言った言葉に、トゥセは口をあんぐり
と開け、絶句するのだった。

 ・・・・・・・・・・
 一方、エストネア皇国の騎士団-本部では、軍師や将軍達が
軍議を()り広げていた。
 会議机(づくえ)には図上演習用の盤面が置かれており、その上には、
兵士や騎士を意味する駒が置かれていた。
軍師A「このラインを(おも)な補給線とするとして、島の中央部
    までの移動は、およそ一週間ほどか?」
 と、コンパスで距離を(はか)り、言った。
軍師B「いや、パン焼きを3日に一度、(おこな)わねば-ならない。
    10日は見ておいた方が良いだろう」
 すると、一人の軍師が盤上を指し示した。
軍師C「しかし、この隘路(あいろ)(狭い道)において強襲を受けたら、
    こちらの軍団が分断される恐れが-あるのでは?」
軍師B「確かに。とはいえ、このルート以外だと、地図が
    不鮮明だからな」
軍師A「ただ、この地図も何処(どこ)まで正しいかは分からない。
    小まめに偵察を繰り返し、地形を把握(はあく)せねばな」
軍師B「まったくもって、嫌な戦いに-なりそうだ」
 との言葉に、軍師達は-ため息を()いた。
 するとダンファン将軍を口を開いた。
ダンファン「さて、今回のククリ島-侵攻は絶対的に情報が-
      足りなすぎる。なので、上陸後の作戦に関しては、
      大きな変更も起きうるだろう。しかし、だ。
      上陸作戦に関しては少ない情報でも問題なく
      決める事が出来るだろう」
 との老将軍の威厳(いげん)ある言葉に、軍師や聖騎士達が
(うなず)いた。
聖騎士D「となると、上陸地点を何処(どこ)にするか-ですな」
軍師B「上陸地点を中心に橋頭堡(きょうとうほ)(きず)く事となります。
    そして、その橋頭堡(きょうとうほ)を陣地として、以後の作戦は
    (おこな)われます。
    それで、その候補地として、次の5つを考えて
    あります」
 そう言って軍師Bは盤面に5つマークを付けた。
聖騎士E「この(うち)のいくつを橋頭堡とするかだな。一つ
     というワケにもいくまい」
軍師B「ええ、橋頭堡(きょうとうほ)を一つしか(もう)けない場合、
    その一つを敵に奪われると、撤退が非常に困難となり、今回の
    作戦の性質上、全滅の恐れも御座(ござ)います」
ダンファン「とはいえ、あまりに多く作り、各個を撃破され
      ても困るな」
軍師B「はい。ですので、私としては、この3ヶ所に
    橋頭堡を築く事を提案いたします」
 との軍師Bの提案に、皆は考え込んだ。
ダンファン「なる程。悪く無いだろうな」
聖騎士D「とはいえ、管轄は-どうなるのでしょう。
     つまり、我々、人間を中心とした聖騎士団と、
     エルフを中心とした王立-騎士団と、どちらが
     いくつの橋頭堡を管轄するのか、という問題です。
     橋頭堡の数が二つなら問題ないのですが、三つだと、
     片方が二つ、もう片方が一つとなり、バランスに
     欠けます」
軍師B「確かに・・・・・・それは盲点でした。どちらが多いかで
    政治的な意味合いも違って来るでしょうし」
軍師A「しかし、王立-騎士団も基本的な作戦を全て、こちらに
    立てさせて、それに文句を付ける形というのは、正直、
    好きになれませんね」
軍師C「それを言っても始まらないだろう。しかし、
王立-騎士団の事だ。自分達が一つで、こちらが
二つなら必ずや文句を付けるに違いない」
軍師B「とはいえ、向こうは遠征に()ける戦力も人員も少ない
    ワケで、戦略的には、聖騎士団が二つの橋頭堡を管轄(かんかつ)
    するのが最上かと。しかし・・・・・・」
 そして、皆が黙り込んでしまった。
 すると、従士が入って来た。
従士「申しあげます。聖騎士ロー殿が戻って参られました」
 との報告に、皆は注目した。
聖騎士D「これは丁度いい。ローなら、何か、奇抜な考えを
     思いつくやも-しれない」
ダンファン「あいつは、騎士としての腕だけで無く、戦術や
      戦略にも長けているからな。到着そうそうで悪いが、
      急ぎ、ローに来るように伝えてくれ」
 とのダンファンの命に、従士は『ハッ』と、敬礼しながら
答え、急ぎ-去って行った。
 そして、しばらくすると、ローが歩いて来た。
ロー「どうも、皆様、お久しぶりです」
ダンファン「ローよ、良く戻ったな。して、例の件は-どう
      なった?」
ロー「後ほど、報告させて頂きます。まぁ、上手く-やったとは、
   自負(じふ)してますが」
ダンファン「そうか。実は、少し困った事となってな。
      お前の意見を聞きたい」
ロー「偉大なる7英雄が一人、老将軍ダンファン殿に-そう
   申されては、断るワケには-いきませんな」
 との妙に(うやうや)しい言葉に、ダンファンは苦笑した。
ダンファン「全く、お前は相変(あいか)わらずだな。まぁいい。
      おい、ローに説明して-やってくれ」
 とのダンファンの言葉に、軍師Bは「は、はい」と
答え、説明し出した。
 それをローは何度も(うなず)きながら、聞いていた。
 そして、軍師Bの話が終わるや、ローは口を開いた。
ロー「なる程。まぁ、一つ妙案を思いつきました」
ダンファン「ほう、話して見てくれ」
ロー「まぁ、つまり、王立-騎士団も聖騎士団に対抗心を
   燃やしているワケで、でも、逆に言えば、管轄する-
のが名目上、聖騎士団で無ければ問題ないワケです
よね」
ダンファン「どういう事だ?」
ロー「ええと、橋頭堡の一つを王立-騎士団、もう一つを
   聖騎士団、そして、最後の一つが問題なワケですが、
    それを聖騎士団が管轄する事を変えるのは不可能な
    ワケです。なら、聖騎士団であって、聖騎士団-
    で無い組織が-その残りの一つの橋頭堡を管轄す
    れば良い」
ダンファン「なる程。だが、具体的に-どうする?」
ロー「剣聖シオンを使いましょう。7英雄の一人である
   彼を中心とした騎士団を作れば-いいのです」
ダンファン「なる程。その配属は聖騎士団を中心として、
      (おこな)えば良いのか」
ロー「ええ。とはいえ、多少は王立-騎士団の人員も
   入れねば-ならないでしょうね」
ダンファン「では、そのように手配する事にしよう。
      しかし、となると、編成が面倒だな」
ロー「正直、遠征まであと少しとは思えない準備状態ですよね」
聖騎士D「此度(こたび)の遠征は陛下の突然の(めい)だ。仕方あるまい」
ロー「おっと、それ、皇族(おうぞく)批判に取られかねませんよ」
聖騎士D「勘弁(かんべん)してくれ・・・・・・連日の軍議で疲れてるんだ」
 との言葉に、皆は笑いを()らすのだった。
軍師B「しかし、流石(さすが)は聖騎士ロー殿。確かに、エルフ達の
    間でも剣聖シオンの人気は高いですからね」
ロー「彼の人気は異様な程だからなぁ。私としては同じ
   7英雄なのに、あまり目立っていないダンファン
将軍の方が、よっぽど好きですよ」
 とのローの言葉に、ダンファンは苦笑(にがわら)いをした。
ダンファン「まったく、お前という奴は、本当に-はっきりと
      モノを言うというか。まぁ、ワシは何故、7英雄
      と呼ばれるか分からない程、(かげ)が薄いからのぅ。
      というか、ワシが7英雄だと知らない者も多い
      のでは無いか?孫も、7英雄を6人までしか、
      思い出せなくて、最後の一人が誰か、ワシに
      聞いて来た事が-あったぞ。お(じい)ちゃんだよ、
      と答えておいたが」
ロー「ああ、ありましたね。その場には私も居ましたから。
   ちょうど、剣聖シオンも居たパーティでしたよね」
ダンファン「そうじゃ・・・・・・」
ロー「まぁ、他国ではダンファン将軍の名は-とどろいて居る
   んですがね。エストネア本国だけですよ、将軍の名が
   あまり広まっていないのは」
聖騎士D「王宮の情報操作という話も-あるな。7英雄が二人も
     人間の聖騎士団から出るなんて、許せないのだろう」
ロー「そこら辺は複雑だよな。王宮のエルフ達にも困ったモノ
   だ。とはいえ、7英雄とは、諸国の中で大きな活躍を
   示した者で、それが、エストネア皇国には二人も居る
   というのは、(すご)い事だよな、改めて思うと」
 とのローの言葉に、ダンファンを除く皆は(うなず)いた。
ダンファン「だが、英雄とは作られたモノだと-しみじみと
      感じるよ。ワシは老いて、もはや英雄と呼ばれる
      程の力は間違い無く-ないだろう。
一方の剣聖シオンだが、彼も優秀な剣士では
あるが、私としては他に剣聖としてふさわしい
者も居るとは思う。あえて、誰とは言わぬが。
しかし、危険だな、此度(こたび)(いくさ)は・・・・・・。
      王宮も慢心(まんしん)しているのだろう。
      7英雄を二人、使えば勝てると安易(あんい)に考えておる
      のだろう。
      だが、(いくさ)とは-そうたやすいモノでは無いのだ。
      ワシは-そう感じるよ」
 と言い、ダンファンは言葉を区切った。
ダンファン「とはいえ、万が一にも此度(こたび)(いくさ)で、
      何かが起きたとしてもエストネア皇国(おうこく)は崩れは
      せぬ。
      英雄という名の(いつわ)りの権威が消え去ったとしても、
      この国には多くの有望な若者達が居る。
      彼等(かれら)は-やがて成長し、そして、この国を守るだろう。
      だが・・・・・・願わくば、その一人に彼もなって欲しかったモノだ。
      いや、それも無理な話か。
      あの男にとり、一国は狭すぎる。
      彼は渡り鳥のように、国々を旅していくのだろうな。
      そして、その地をそれぞれ救っていくのだろうな。
      うらやましいモノだ・・・・・・ワシも-そのような
      自由な生き方をしたかったモノだ」
 と言い、ダンファンは押し黙った。
ダンファン(ヴィルよ・・・・・・我等(われら)皇国(おうこく)の剣なら、
      お前は恐らく、この亜大陸(あたいりく)ランドシンの、そして、
      世界の-剣とでも呼ぶべき存在なのだろうな。
      ワシは-お前を祝福するよ。
      自由に生きよ、ヴィルよ。
      それが-お前にとり、最も正しく、そして美しい
      生き方なのだから)
 と、ダンファンは遠くヴィルに対し、心の(うち)(つぶや)くの
だった。

 ・・・・・・・・・・

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