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ランドシン伝記  (アーカーシャ・ミソロジー) 作者:キール・アーカーシャ

第2章  プロローグ、 魔王の系譜-編

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第25話  風の精

 第25話  風の精

 海原では嵐は-さらに強まっていった。
トゥセ「ハハッ、こうなっちまうと、もう運を天に任せるしか
    ないっすねッ!」
 と、トゥセは叫んだ。
ヴィル「ああ・・・・・・」
 そして、ヴィルは-近づくようで遠ざかる孤島を見据(みす)え、
思うのだった。
ヴィル(もはや、俺達が生きるも死ぬも(てん)-次第(しだい)だな。
    だが、いいさ。やれる限りをやろう。
    その上で、天に任せれば良い。
    人知(じんち)()くして、天命(てんめい)を待つ・・・・・・だ)
 そして、ヴィルは-ニヤリと笑うのだった。
ヴィル「よし、お前等(まえら)ッ!島まであと少しだ。気を抜くなよッ!」
 とのヴィルの声に、皆は『オオッ!』と答えるのだった。

 ・・・・・・・・・・
 一方で、(かざ)()りのサリアは病室のベッドで、半身を起こして、
外を見つめていた。
サリア(私は-どうすれば・・・・・・)
 という沈んだ思考を延々(えんえん)と繰り返して居た。
 すると、扉がノックされる音がした。
サリア「はい」
 と、サリアは弱々しく言った。
 すると、扉が少し開かれ、子供達が顔を(のぞ)かせた。
サリア「みんな、どうしたの?」
 との言葉に、子供達はサリアのベッドに近づいて答えた。
少年A「サリアお姉ちゃんが心配だったから」
少女B「お姉ちゃん、大丈夫?」
 そして、他の子供達も(そろ)ってサリアの体を心配した。
 それに対し、サリアは涙ぐむのだった。
サリア「ごめんね・・・・・・ごめんね、駄目な-お姉ちゃんで。
    こんな嵐の時こそ、(かざ)()りとして仕事しなくちゃ
    いけないのに・・・・・・ごめんね」
 と、涙を(ぬぐ)いながら言うのだった。
少年C「大丈夫だよ。騎士様の命令で船は一隻も出てない
    ハズだから。サリア姉ちゃんは休んで大丈夫だよ」
 との少年の言葉に、サリアは顔をわずかに-ほころばせた。
サリア「そうなんだ。じゃあ、少し、休んじゃおうかな」
 と言って、サリアは微笑(ほほえ)んだ。
 その時、サリアには風の声が聞こえた。
 その声は老婆のモノだった。
『サリア、あなたは本当に-それで良いの?』
 との聞き覚えのある声がサリアに響いた。
サリア(お(ばあ)ちゃん?)
 と、サリアは心の内で(つぶや)いた。
 そして、サリアは-かつてを思いだした。

それは祖母(そぼ)が幼いサリアを抱えて椅子に座っている情景
だった。
祖母『サリア、忘れては-いけないわよ。風守りは-その力を
   私利(しり)私欲(しよく)のために使っては-いけないの。
   決して、風の精霊様を使い物にしては-いけないのよ』
サリア『うん』
 と、幼いサリアは答えた。
祖母『でも、サリア、誰かが困っていたら-その力を()しみなく
   使うのよ。そのための力なのだからね』
サリア『うん。私も-お婆ちゃんみたいに、立派な風守りに
    なるよ』
 との幼いサリアの言葉に、祖母はニッコリと微笑(ほほえ)むのだった。

 そして、サリアの意識は現実に戻った。
サリア(ああ、そうだ。私は忘れていた。漁船を守るのが
    風守りでは無いんだ。それは役目の一つでしか無くて、
    真に困っている人達を救うのが風守りなんだ。
    そして、今、きっと困っている人達が居る。
    その人達のために、私は何か出来るかも知れない。
    ヴィルさん、これが私からの-せめてもの罪滅ぼし
    です)
 そして、サリアは目を閉じ、開いた。
サリア「みんな、詠唱をするから、少しだけ静かにしててね」
 とのサリアの言葉に、皆は口を手で押さえて(うなず)いた。
 そんな子供達の愛らしい仕草(しぐさ)を見て、サリアは微笑(ほほえ)み、
そして、目を閉じ-詠唱を開始した。
 その()んだ音律と(こと)()は、波動と化して、(はる)
遠方へと運ばれて行った。
サリア(届け・・・・・・(おも)いよ、風となりて・・・・・・)
 その想いを風の精は確かに聞き届ける-のだった。

 ・・・・・・・・・・
 ヴィル達は大嵐の中で-なすすべもなく流されていた。
 この状況下ではヴィルの脳裏を暗い不安が()めていった。
ヴィル(駄目なのか?あと少しだと言うのに・・・・・・。
    ここまで来てッ!)
 と、ヴィルは早鐘(はやがね)のように鳴る心臓を感じながら、
思うのだった。
 その時、何かがヴィルの横を次々と通り過ぎていった。
 そして、霊なる声が響いた。
『ヴィル・・・・・・あなたを守護しましょう。風は-あなた達を
 祝福します』
 との風の(せい)の声が優しく響いた。
 その言葉を聞き、ヴィルは不思議と心が落ち着くのを感じた。
ヴィル(感謝いたします。風の精よ・・・・・・)
 と、ヴィルは心の(うち)で言うのだった。
『礼なら、若き(かざ)()りに言いなさい。私達は彼女の願いを
 聞き入れた-だけなのですから』
 そう言い残し、風の精は過ぎ去っていった。
ヴィル(そうか・・・・・・サリア、ありがとうな)
 と、ヴィルは思うのだった。
すると、天候(てんこう)に変化が(しょう)じた。
 嵐は急激に弱まりつつ-あった。
 雨脚こそ変わらぬモノ、波も高低が少なくなり、かろうじて
(かじ)が効くように-なっていた。
ヴィル「いけッッッ!」
 と叫び、ヴィルは(かじ)を思い切りきった。
 すると、船の向きは変化していき、島へと前進していった。
トゥセ「オオッ、何か-いけるんじゃ無いですか?団長ッ!」
ヴィル「ああ、行こう、みんな。今、風は俺達と共にある」
 そして、どんどんと島は近づいて来た。
ヴィル「ケシャ、カシムッ!船底に結界を張ってくれ!
    早くッ!」
 との声に、ケシャとカシムは了解の返事をし、結界を
船底に張り出した。
 しかし、一方で、船全体を覆っていた結界が弱まり、
船は大きく揺れだした。
アーゼ「団長ッ!これはマズイんじゃッ」
ヴィル「大丈夫だッ、俺を信じろ。いや、風を信じるんだ。
    この船は倒れる事は無いッ」
 そして、ヴィルの言葉どおり、船は転覆する事なく、
上陸目前まで迫っていた。
 その時、ギートが声をあげた。
ギート「ヴィ、ヴィル殿ッ、マズイぞッ、後ろ、後ろを
    見てくれッ!」
ヴィル「どうした?」
 そして、ヴィル達が後ろを振り返ると、そこには、
かつてない大波が迫っていた。
 それは-さながらに悪魔の口のようであり、ヴィル達を
飲み込もうとしていた。
ヴィル「クッ」
 ヴィルは(かじ)をきり、波に逆らわない方向へと船の向きを変えた。
 そして、大波は船を持ち上げていった。
 今、漁船は大波の上で、進み続けていた。
トゥセ「た、(たか)ッ!」
 と、トゥセは船に(つか)まりながら叫んだ。
 今、漁船は数十メートル程の高さにあった。
 そして、波は海岸にぶつかり、漁船は一気に落ちていった。
ヴィル「(つか)まれッ!」
 と言うまでも無く、誰もが船に-しがみついていた。
 そして、着地の衝撃が船を襲うも、(いま)だ船は残った波に
流されていた。
 すると、島の木々が漁船に迫っていた。
 このままでは漁船(ぎょせん)は木々に激突する事となった。
アーゼ「マズイッ!」
ヴィル「トゥセッ!やるぞッ!」
トゥセ「了解っす!」
 そして、ヴィルは遠距離用の剣技『飛燕(ひえん)』を、トゥセは
爆発用のカードを、それぞれ木々に向かって放った。
 次の瞬間、木々は次々と倒れていった。
カシム「クッ!」
 一方で、カシムは前方にも気を集中し、結界を張った。
 そして、船は倒れた木々へと突っ()んでいった。
 気づけば、船は止まっていた。
 それから、ヴィル達は傾いた船の上で立ち上がった。
ヴィル「ハハッ、ハハハッ、やった。やったぞッ!
    生き残った、生き残ってやった!」
 と、ヴィルは叫んだ。
 それに対し、他の皆も歓声をあげるのだった。
ヴィル(本当に-ありがたいな・・・・・・。風の精、そして、
    サリア、俺達を助けてくれた。大丈夫、大丈夫だ。
    多くの苦難が俺達を待ち構えるだろう。
    でも、それでも何とか-なっていく。
    何とか-していける。
    進もう、この苦難の道を)
 と、ヴィルは嵐の中、決意をさらに強く固めるのだった。

 ・・・・・・・・・・

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