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ランドシン伝記  (アーカーシャ・ミソロジー) 作者:キール・アーカーシャ

第2章  プロローグ、 魔王の系譜-編

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第24話  嵐

 第24話  嵐

 海原には嵐が訪れていた。
 激しく上下する海面を、一隻(いっせき)の漁船がなすすべも無く、
流されていた。
トゥセ「ちょっと、これ、やばいッ!マジで死ぬッ!
    (かざ)()りの人を連れてくるべき-でしたよッ!」
 と、叫びながら、ダーク・エルフのトゥセは()をたたむ作業を
行っていた。
アーゼ「今更、言っても仕方ないだろ?」
トゥセ「そりゃ、そうだけどさぁ」
 すると、カシムが叫んだ。
カシム「島が見えますッ!」
 確かに、カシムが指し示す方向には、島らしきモノが小さく
見えていた。
 それに対し、ヴィルは顔を(けわ)しくした。
ヴィル「違う、着くのが早すぎる。あれはククリ島じゃない。
    もっと小さな、地図にも載ってない島だ」
トゥセ「団長ッ!ともかく、あそこの島で嵐が(おさ)まるのを
    待ちましょうよッ!ずぇったい、そうすべきです
    って」
 とのトゥセの必死な言葉に、ヴィルは考え込んだ。
ヴィル「よし、あの島を目指そう。荒天用(こうてんよう)の小型の()
    張るぞッ!」
 との言葉に、トゥセ達は急ぎ、作業に取りかかった。
 すると、茶猫のケシャがヴィルに近づいた。
ヴィル「ケシャ、危ないから、船内に居てくれ」
ケシャ『問題ありません。魔力で床に足をくっつけながら、
    歩いてますので』
ヴィル「そうか、それで何か用か?」
ケシャ『はい。島に行くにせよ、こう視界が悪く、しかも
    波が強いと座礁(ざしょう)する危険が高いのでは?』
ヴィル「確かに・・・・・・」
ケシャ『それで、私とカシムで船底に結界を張りましょうか?』
ヴィル「出来るのか?」
ケシャ『はい。ですが、そうすると、船全体にかけた結界が
    弱まって、船が横転する危険もあります』
ヴィル「分かった。なら、上陸するギリギリに船底に結界を
    かけてくれ」
ケシャ『了解しました。そのタイミングはヴィルさんに-お任せ
    します』
ヴィル「分かった。合図するから」
ケシャ『では、カシムにも伝えて来ます』
ヴィル「ああ、頼む」
 そして、ケシャは激しい揺れをモノともせず、テクテクと歩いて
いくのだった。
 すると、風が-さらに強まった。
ヴィル「ギートッ、ドローグを出してくれッ!」
 と、ヴィルはドワーフのギートに叫んだ。
 それに対し、船尾に居るギートは叫び返した。
ギート「ドワーフが何だってッ?!」
ヴィル「ドワーフじゃ無くて、ドローグだッ!海に投げ入れて、
    船のスピードが出すぎないようにする傘みたいな道具
    だッ!」
ギート「ドローグくらい知っておるわいッ!ドワーフだからと
    言って、(うみ)音痴(おんち)では無いわッ!」
 と、答え、ギートはドローグを海に投げ入れた。
 そして、心なしか、船の揺れはマシになったように見えた。
ヴィル(遠いな・・・・・・ククリ島は・・・・・・。予感がする。俺達が
    レククを無事にククリ島へと送り届けてしまった時、
    何かが変わると。そして、何かしらの魔の力が-それを
    阻止しようとしている。そんな気がするんだ・・・・・・。
    だが、負けるモノかッ!たとえ、神であろうと悪魔で
    あろうと、レククを傷つけさせは-しない。
    進もう、荒れた-この道を)
 と、ヴィルは覚悟を定めるのだった。
 そして、漁船は孤島へと徐々に近づいていくのだった。

 ・・・・・・・・・・
 本土でも大雨が降り注いでいた。
 そんな中、(かざ)()りのサリアは-老人の医師に治療を
受けていた。
医師「他に-どこか痛む所は-ありますか?」
サリア「いえ・・・・・・大丈夫です。少し、体の調子は良くない
    気もしますが、それも自業自得(じごうじとく)です。私は感情に
    流されてしまいました。ヴィルさんが止めて下さらねば、
    あの人の仲間は死んでしまっていたかも-知れません。
    いえ、もしかしたら、本当は私の風で何人か()くなって
    いるのかも知れません」
 そう言って、サリアは-うつむくのだった。
医師「そう自分を責めては-いけませんよ。彼等(かれら)は反逆者なの
   ですから」
サリア「ですが、風守りは常に平静で-あらねばなりません。
    船の安全を監視する者として、そして、風の精霊と
    契約を(かわ)した者として、心をざわつかせては-いけない
    のです。それが、風守りとしての掟なのです」
医師「なる程。しかし、そうして、心を強く縛ろうとすれば
   するほど、人の心というのは反発し、爆発してしまう
   ものではないですか?」
サリア「かもしれません・・・・・・。その通りなのでしょう。
    ですが、私は風守りとしての自信を無くしてしまい
    ました。いえ、何もかもが分からなくなってしまい
    ました。ヴィルさん達が本当に間違って居るのか。
    それも・・・・・・考えれば考える程に、分からなくなって
    しまうんです」
医師「・・・・・・皇国(おうこく)(つか)える身として、このような事を
   言うのは不適当やもしれませんが、そのヴィルという反逆者の
   思想は-もしかしたら正しいのやも知れません。しかし、
   今の時代には-あまりに早すぎたのかも知れませんな。
   あと、数百年の後には、もしかしたら、彼の考えが
   当たり前で、むしろ我々の考えが古くて間違って居る、
   などと言う事も-ありうるでしょう。
   今から千年前に奴隷(どれい)が間違っていると言ったら、鼻で
   笑われたでしょうしね」
サリア「はい・・・・・・」
医師「価値観など時代と共に変化し続けるモノ。ですが、
   人は、固定観念に()らわれ、異質な思想を排除しよう
   とする。悲しい事です」
サリア「はい・・・・・・」
医師「ともかく、あまり思い詰めない事です。あなたは、
   あなたの最善を尽くした。それで良いのではない
   ですか?」
サリア「そう思えたら、どれ程、楽でしょう」
医師「なら、あなたは-どうしたかったのですか?」
サリア「それは・・・・・・」
医師「安心して下さい。患者の情報は-たとえ騎士様に
   命じられても、教える事は-ありません」
サリア「・・・・・・私はヴィルさんが好きでした。
    でも、私は-ためらってしまったんです。
    本当に-あの人を愛しているのなら、何も
    ためらう事なく、あの人と共に進むべき
    だったんです。でも、私は-それが出来なかった。
    私には、あの人を愛する資格が無かったんです」
 と、サリアは瞳を涙で-うるませながら言うのだった。
サリア「やり直したい、やり直したいですッ・・・・・・。
    でも、駄目ですね。もし、同じ状況でも、私は
    同じ選択をしたんだと思います。
    私はッ・・・・・・」
 そして、サリアは-さめざめと泣くのだった。
 その様子を老医師は静かに見守るのだった。

 ・・・・・・・・・・
 一方、雨の中を、男達が手錠をされ、歩かされていた。
 それは護衛民のレイヴン達だった。
 いや、正確には元-護衛民と呼ぶべきだろう。
 彼等(かれら)はヴィル達を逃がすのに協力したため、国家反逆の罪で
拘束され、監獄へと送られようとしていた。
 馬に乗る騎士達がローブを着て、雨に濡れないようにしている中、
レイヴン達は-ずぶ濡れの状態だった。
レイヴン(やれやれ、(ひど)い目に-あってるな。これじゃ、風邪(かぜ)
     ひいちまうぞ。まぁ、反逆者に対する処遇なんて
     こんなモノか。むしろ、その場で処刑されなかった
     だけ、もうけモノさ)
 そして、レイヴンは遠く港の方角を向いた。
レイヴン(ヴィル。お前達は無事に旅立ったか?この嵐の中、
     羅針盤(らしんばん)を見失わずに、進んで居るか?光を見失う
     な、ヴィル。俺には分かる。今は-たとえ嵐の中に
     あろうとも、お前達の進む道の先には、黄金の光
     に満ちていると。
     だから・・・・・・俺も後悔は無いのさ)
 と、思い、レイヴンは目を(つむ)り、微笑(ほほえ)むのだった。

 ・・・・・・・・・・

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