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ランドシン伝記  (アーカーシャ・ミソロジー) 作者:キール・アーカーシャ

 第1章  エストネア逃亡-編

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第19話 聖十字の剣

 第19話 聖十字の(つるぎ)

 子供達が港町の(はず)れの砂浜で遊んでいた。
 そこを風守りの女性が歩いて来た。
少年「あ。サリアお姉ちゃん」
 と、少年は手を止め、嬉しそうに言った。
サリア「みんな。今日も元気そうだね」
 との風守り-サリアの言葉に、子供達は元気よく答えた。
少女「お姉ちゃん。お話、聞かせて」
サリア「お話?そうね。じゃあ、今日は少し昔の話を
    しようかな」
少年「獣魔-大戦の?」
サリア「そう。この街の英雄の話を・・・・・・」
 そう言って、サリアは語り出すのだった。

 今から、十数年前、魔族達がヒトの国々に攻めてきました。
 その時、この国、エストネアにもゴブリンの大部隊が
押し寄せて来ました。
 でも、エストネアは海軍が弱く、ゴブリンの海兵隊に、
次々と軍船は沈められ、上陸を許してしまいました。
 その後、何とか戦線を持ち直したエストネアは残った海軍を
王都-周域を守護する形で配備しました。
 でも、その結果、そこから外れた海岸には海軍は置かれま
せんでした。
 そう、この港町クーリカにも・・・・・・。
 軍の偉い人達は、ゴブリンが上陸しても、陸の上で叩けば
いいという考えだったの。

 すると、子供達は-あくびをし出した。
サリア「ご、ごめんね。今日は難しく(はな)し過ぎちゃったね。
    えぇとね。でもね、危険なのに港町からは避難命令
    が出なかったの。それで、ヒトが大勢いる中、
    ゴブリンの軍船が押し寄せてきたの。この街に」
 と、説明し、サリアは記憶を呼び戻した。

 人々は悲鳴をあげて、港町から脱出しようとしていた。
 しかし、多くの者が大きな荷物を抱え、のろのろと逃げるのだった。
 そして、ゴブリンの船は-あっさりと上陸をし、烈火(れっか)(ごと)くに
侵略が開始された。
 自治組織である護衛民も必死に立ち向かったが、すぐに、
その(のど)をかっきられていった。
 当時、幼いながらも風守り-であったサリアも必死で闘った、
 しかし、すぐに魔力と体力は底を尽き、ゴブリンの戦士達に
囲まれてしまったのだった。
 サリアが死を覚悟した時、音が聞こえた。
 角笛の音。銅鑼(どら)の音。敵を威嚇(いかく)する-その音と共に、
騎士の遊撃(ゆうげき)-中隊が騎馬に乗って駆けつけて来た。
 そして、騎士達は騎馬から降り、一気にゴブリンへと
襲いかかった。
 その-すさまじい混戦の中、サリアは一人の聖騎士に
助けられた。
 それこそ、若きヴィルであった。
 そして、ヴィルはサリアに-大した外傷が無い事を見るや、
部下に彼女を任せ、騎馬に乗り、指揮を再開するのだった。
 結果、わずか数時間で、ゴブリンの部隊は撤退し、船に
乗って逃げ帰るのだった。
 夕暮れの中、無事に戻って来たヴィルを見て、思わず、
サリアはヴィルに抱きつくのだった。
 それに対し、ヴィルは困った表情を浮かべるも、
サリアの頭を優しく()でるのだった。

サリア「ヴィルさん-は、本来、この街は守護する部隊では
    無かったのに、助けに来てくださったの。
    『後で、怒られる』って言ってたわ」
 そう言って、サリアはクスクス笑うのだった。
少女「サリアお姉ちゃん、本当にヴィルさん-が好きなんだね」
サリア「そ、そんな。べ、別に・・・・・・好きとか、そんなんじゃ
    無くて、ただの憧れで・・・・・・」
 と、サリアは顔を赤くしながら言うのだった。
少年「嘘だー。だって、お姉ちゃん、この話する時、すごく
   楽しそうだもん」
 との少年の言葉に、子供達は『ねー』と相づちを打つのだった。
サリア「も、もー」
 と、サリアは困ったふうに言うのだった。
 すると、遠くから、黒い鎧に身を包んだ騎士達が歩いて来た。
サリア「みんな、ごめんね。少し、下がってて」
 そして、騎士達はサリアの前で足を止めた。
騎士「風守(かざも)りのサリア殿ですね」
サリア「はい・・・・・・」
騎士「ヴィル・・・・・・という剣士の名をご存じですか?」
サリア「はい・・・・・・」
騎士「それは良かった。話し-が早い。そのヴィルが反逆者と
   なりました」
サリア「反逆者?・・・・・・そんな・・・・・・何かの間違いでは?」
騎士「いえ。剣聖シオン殿の証言も-あります。ヴィルは
   ゴブリンをかくまおうとし、現在、共に逃亡して
   おります。そして、彼らの目的地はククリ島です」
サリア「あ、あの・・・・・・突然すぎて、おっしゃっている意味が
    良く分からないのですが・・・・・・」
騎士「申しわけありません。詳細は-この書状に(しる)してあります。
   ですが、反逆者ヴィルは、この港町の船を利用して
   ククリ島へと向かう可能性が高いのです。どうぞ、
   反逆者、捕縛の-ご協力を」
サリア「あ、あの・・・・・・一つ、よろしいでしょうか?」
騎士「はい」
サリア「もし、捕縛されたとして、ヴィルは・・・・・・どうなって
    しまうのでしょうか?」
騎士「・・・・・・確定的な事は言えませんが、無罪と言うワケには
   いかないでしょう。しかし、今回の場合、色々と複雑で
   あり、恐らく、情状酌量(じょうじょうしゃくりょう)の余地がある
   と見なされ、恩赦(おんしゃ)が出ると思われます」
サリア「なら、ヴィルは-その、ひどい目には-あわないのですか?」
騎士「大人しく投降すれば、禁固数年-程度の罰で済むでしょう。
   しかし、万一、彼がククリ島へと辿(たど)り着いてしまった
場合、もし、再びエストネアの大地を踏めば、死罪を
覚悟する必要が出るでしょう」
サリア「し・・・・・・死罪・・・・・・」
騎士「ともかく、ご協力の程を、風守(かざも)り様」
サリア「わかり・・・・・・ました・・・・・・」
 と、サリアは青ざめた顔で、何とか返答するのだった。
 (あた)りは風が強まり、嵐の訪れを予感させた。

 ・・・・・・・・・・
 一方、白百合-騎士団と第三皇子のクオーツは騎士団の
地方支部へと辿(たど)り着いて居た。
エリー「何とか、雨の前に辿(たど)り着けました」
 と、聖騎士エリーはホッとしたように言った。
クオーツ「ええ。ところで、隊長さん-は大丈夫ですか?
     ずいぶんとショックを受けていたみたいです
     が」
エリー「はい。ですが、ミリト様は-お強い方です。今回の
    件もバネにして、必ずや成長なされる事でしょう。
    ですから、今は護衛も付いている事ですし、そっと
    しておこうかと・・・・・・」
クオーツ「信じられているのですね、聖騎士ミリトさん-の
     事を」
エリー「はい」
 と、エリーは嬉しそうに答えるのだった。
 すると、支部から二人の男が歩いて来た。
クオーツ「あれは・・・・・・」
エリー「せ、聖騎士ロー殿ッ。全体、止まれ」
 と言って、エリーは行進を止めた。
エリー「聖騎士ロー殿に敬礼ッ!」
 そして、白百合-騎士団は一斉に敬礼をした。
 それに対し、ローは敬礼を返し、そして、解いた。
ロー「ああ。今は、そうかしこまらないでくれ。私などより
   よっぽど尊い方が-おられるのだから」
エリー「全体、休めッ!」
 とのエリーの言葉で、敬礼が解かれた。
ロー「皇子殿下・・・・・・よくぞ、よくぞ、お越し下さいました」
 と、ローは(かた)(ひざ)を着きながら、言うのだった。
 さらに、ローの従者とおぼしき小柄の男も、それにならった。
クオーツ「どうか、顔を上げて下さい」
ロー「ご命令とあらば」
 そう言って、ローと小柄な男は立ち上がった。
ロー「本来ならば、騎士が総出で迎えるべきでしょうが、
   今回の件は内密に済ませたいため、このような歓待
   で終わる事をお許しください」
クオーツ「いえ。聖騎士ローさんが直々に出迎えてくださり、
     嬉しいです」
ロー「もったいない-お言葉。さ、どうぞ、中へ。雨で殿下の
   御髪(おぐし)が濡れてしまっては-いけませぬ」
 と言って、ローはクオーツを支部に招くのだった。

 ・・・・・・・・・・
 クオーツとエリーと、ロー達は談話室に居た。
ロー「ここは、結界が有りますので、盗聴の恐れがありません」
 とのローの言葉にクオーツはホッとした様子を見せた。
ロー「しかし、無茶をなされる。まぁ、今回の件は私が責任を
   持ってもみ消しておきましたが」
クオーツ「ありがとう-ございます」
ロー「いえ。とはいえ、元老院や王宮の諜報部(ちょうほうぶ)には-どうしても
   情報は漏れるでしょう」
クオーツ「でしょうね」
ロー「皇子殿下。今回、何故、エシュタス皇がククリ島への
   侵攻を強行されようと-しているか、ご存じですか?」
クオーツ「いえ」
ロー「まず、これには元老院と王宮との対立があります。
   我がエストネア皇国は、王宮をエルフ、元老院を人間、
   というように、種族により、政治的な地位が違います。
   そして、王宮と元老院は互いの権力を奪い合い、少し
   でも自分の力が増すように暗躍しているのです」
クオーツ「それは・・・・・・わかります・・・・・・」
ロー「しかし、それは内戦を引き起こしかねない非常に深刻な
   問題です。では、皇子殿下、その対立を解消するには-
どうすればよいと、思われますか?」
クオーツ「共通の敵を作る・・・・・・」
ロー「その通りです。それこそがエシュタス皇の狙いかと、
   私は考えます」
エリー「なる程、確かに-そう考えると-つじつまが合いますね」
ロー「ええ。今回の遠征は-その正否は重要で無い。種族の対立を、
   仮想敵へ押しつけたのです」
エリー「聖騎士ロー。それ以上は、皇族批判に当たります」
ロー「これは失敬。ですが、皇子。となると、皇子殿下が
   ゴブリンと仲良くされたら、困る者達も居れば、
   喜ぶ者達も居るワケです」
クオーツ「はい・・・・・・」
ロー「ともかく、お気をつけください、皇子殿下。貴方は
   今、非常に重要な立場に-おられるのですから」
クオーツ「分かりました。しばらく、身を潜めようと思います」
エリー「しかし、元老院や王宮は-どのように動くと考えますか?」
ロー「難しいですね。そもそも、元老院と王宮は表だって争う
   気は無いのです。内戦などとなれば国力がおち、
近隣諸国や魔族の-いい餌食(えじき)でしょう。
とはいえ、中には純血派も居ますからね。
特にエルフでは-その思想に染まっているモノも多い。
彼らは人間とエルフの子供、ハーフ・エルフを差別し、
(さげす)む。もちろん、人間の中でも、ハーフ・エルフを
忌み嫌う年寄りは居ますがね」
エリー「ですが、エシュタス皇の-お働きにより、差別は大分、
    解消されたと思いますが」
ロー「ええ。そして、その意思を最も濃く継いでいるとされるのが、
   クオツェルナス殿下、貴方なのです。貴方は他の皇子殿下と違い、
   人間からの支持を圧倒的に得ている。だからこそ、まぁ、色々と
   問題に-なっているワケですが」
クオーツ「はい・・・・・・」
エリー「となると、今回の一件は純血派にとり、大きなネタ
    でしょうね。もし、今回の一件が公になれば、
    ククリ島への侵攻に疑問を持つ国民も出て来る
    やも知れません。そうなれば、国民の目は外から
    内に向かい、エルフと人間の両種族の対立が増す」
ロー「さらに、皇子殿下の人気が落ちれば、人間種の王家への
   信頼も下がるワケで、これも純血派にとっては-おいしい
   ワケですね」
クオーツ「すみません・・・・・・良く考えずに行動をしてしまい」
ロー「いえ。ですが、結果的には良いのかも知れません」
エリー「と言いますと?」
ロー「皇子殿下の人気は圧倒的です。そんな中、今回の件が
   噂になれば、国民も、魔族とヒトが争う無意味さを悟る
   でしょう。その時、エルフと人間が争う無意味さも同様に
   悟るやも知れません」
エリー「なる程・・・・・・。しかも、今回の一件、決定的な証拠
    が無いため、何が真実かを国民は議論するでしょう。
    そうなれば、より一層、深く種族に関して考察する
    事になるでしょうね」
クオーツ「な、なる程・・・・・・。な、何か他人事みたいに聞いて
     るんですが、俺は-どうすれば良いんでしょうか?」
ロー「ともかく、今は身を潜めてください。今回の件で、
   皇子殿下が目立(めだ)てば、最悪、他の王位継承者から暗殺者
   が送られる可能性もあります。考えたく無い話し-ですが」
クオーツ「いえ。だからこそ、俺は王位継承権を捨てて、放浪の旅に
     出ているワケなんですが」
ロー「まぁ、皇子殿下ほどの実力ならば、毒も奇襲も効かない
   でしょうが、万一もあります。この従士カポルを連れて
   いって下さいませんか?きっと、お役に立つと思います」
 と、ローは小柄な男のカポルを紹介した。
クオーツ「・・・・・・分かりました。じゃあ、よろしく、カポル」
 と、クオーツは手を差し伸べた。
カポル「は、はいッ!お、オイラ、が、頑張りますッ!」
 と、カポルは-どもりながらも、返事をし、手を服で必死に
こすって綺麗にし、おそるおそるクオーツの手を握った。
ロー「さて、では、善は急げ-です。この支部の中も安全とは
   言えません。ローブを用意して-あります。よろしければ、
ここの-隠し通路から、どうぞ、お出になって下さい」
 そう言って、ローは黒いローブをクオーツに差し出した。
クオーツ「何から何まで-ありがとうございます」
ロー「いえ。実は騎士団の中にも裏切り者が居るようなのです。
   エルフを憎む、純血派が・・・・・・」
クオーツ「ええ。私も以前、騎士団の宿舎で毒を盛られた事が
     あります・・・・・・」
エリー「そ、そんな事が・・・・・・」
クオーツ「ともかく、俺を軍事や政治に関わらせたくない者
     が居るのは確かです。今の所、旅の間は、暗殺を
     受けた事は-ありません。ただ、これからは今-以上
     に気をつける事にします」
ロー「是非、そうしてください。じゃあ、カポル。皇子殿下の
   案内と護衛を頼んだぞ」
カポル「了解」
 と、答え、カポルは床の隠し扉を開いた。
 すると、ローは奇妙な感覚に捕らわれた。
 自分の手の平から、光の(しずく)が-こぼれ落ちる感覚。
 ローの背筋に嫌な汗が伝った。
ロー「カポル・・・・・・」
カポル「隊長?どうしました?」
ロー「・・・・・・いや、何でも無い。気を付けろよ」
 そう言って、ローはカポルの頭を軽く()でた。
カポル「はいッ」
ロー「・・・・・・じゃあ、行ってこい」
カポル「はい。じゃあ、皇子殿下。付いて来てください」
クオーツ「分かった。あ、そうだ。俺の事は-これからは
     クオーツって呼んでくれ。いいかな?」
カポル「は、はい・・・・・・クオーツ様。では、参ります」
 そう言って、カポルは隠し階段を降りていくのだった。
クオーツ「では、聖騎士ロー、聖騎士エリー。失礼します」
ロー「ご武運を」
エリー「偉大なる(おう)末裔(まつえい)に栄光あれ・・・・・・」
 そして、二人の聖騎士はクオーツに対し、敬礼をするのだっ
た。
 それに対し、クオーツは軽く敬礼を返し、急ぎ、隠し階段を
降りていくのだった。

 ・・・・・・・・・・
 雨が降り出していた。
 女騎士達の声が響いた。
女騎士A「ミリト様ッ!どこに-いらっしゃるんですッ!
     ミリト様ッ!」
 と、女騎士Aは叫ぶも、返事は無かった。
 すると、別の女騎士が駆けてきた。
女騎士B「おられたッ?」
女騎士A「駄目ッ!何て事。雨も-ひどくなってきてる
     のに」
女騎士B「私が一瞬、目を離したから・・・・・・」
女騎士A「仕方ないよ・・・・・・。まさか、用を足されると、
     嘘をおっしゃってまで-お逃げになるなんて・・・・・・」
女騎士B「でも、何処(どこ)()かれたの?」
女騎士A「分からないよ・・・・・・。でも、探そう。命に代えても
     探さないと」
女騎士B「そうだね・・・・・・」
 そして、二人は別れ、それぞれ聖騎士ミリトを探すのだった。

 一方、聖騎士ミリトは-うなだれながら野原に倒れていた。
ミリト「フフ・・・・・・雨、心地良い。フフ・・・・・・私が馬鹿だ。
    フフフ・・・・・・。私は求められていない。皇国のため、
    今日まで身を削って、鍛錬(たんれん)を積んできた・・・・・・。
    でも、全て否定された。否定されちゃったよ。
    実力も理念も・・・・・・全て・・・・・・。
    ふ、フフフ・・・・・・。
    私、どうしよう。どうすれば-いいのかな?
    何の(ため)に生きれば-いいんだろう。
    フッ、お嫁さん-にでも、なろうかな・・・・・・」
 そこまで言って、ミリトは高笑いをあげた。
ミリト「出来るワケが無い・・・・・・。もう、淑女(しゅくじょ)には戻れない。
    騎士にもなれず、妻にもなれず、中途半端で使えない
    私・・・・・・。
    私、私、私・・・・・・。私・・・・・・」
 すると、ミリトは立ち上がった。
ミリト「違うッ!私は、私は-こんな所で終わりはしないッ!
    いずれ、あいつらに目に物を見せつけてやるッ!
    私、私はッ、こんな所で負けは-しないッ!
    天よッ!もし、私に生きるべき価値があるのなら、
    それを示してみよ。もし、無いのなら、その(いかずち)
    我が肉を焼き尽くせッ!天よッ!」
 次の瞬間、雷光が-ほとばしった。
 一瞬、遅れて轟音(ごうおん)が響き、ミリトの意識は白に包まれた。
ミリト「う・・・・・・」
 気付けば、雷は間近に落ちており、周囲の草が-かすかに
燃えていた。
 地面は(えぐ)られ、周囲は-わずかに帯電していた。
 その中心に一本の剣が落ちているのをミリトは見た。
ミリト「こ、これは・・・・・・」
 そう言って、ミリトは剣に触れるも、剣に残っていた雷が
ミリトに流れ込んだ。
ミリト「ッ・・・・・・」
 痛みで顔をしかめるも、ミリトは-その剣を手放さなかった。
ミリト「この剣の紋様は・・・・・・聖十字?」
 と、ミリトは(つぶや)くのだった。
 しかし、彼女は知らない。
 その紋様は正統なる聖十字とは違い、微妙に歪んでいた事を。
 その時、ミリトの頭に鐘の音が直接-鳴り響いた。
ミリト「な、何ッ?」
 すると、いつの間にか雲は晴れ、雲の切れ目から光が差し込み、
ミリトを照らしていた。
ミリト「え・・・・・・」
 見上げれば、そこには白い(ころも)をまとった神秘的な老人が
(ちゅう)に浮かんでいた。
ミリト「あ、貴方(あなた)(さま)は・・・・・・」
 すると、老人が口を開いた。
老人「聖騎士ミリトよ。そなた-は選ばれた。そなた-は神の教えを
   この亜大陸に広めるという聖使命を持つのだ。
   獣魔を(はら)え。邪教を砕け。しかし、何も恐るる事は無い。
   そなた-は神の加護と共に-あるのだから」
 そして、老人は天へと昇っていった。
 ラッパを吹き鳴らす小さな天使達が老人の周りを飛び、
ミリトを祝福していた。
 気付けば、ミリトは意識を戻していた。
 (あた)りは、依然(いぜん)として、雨が強く降り(そそ)いでおり、
ミリトの体を冷たく濡らしていた。
ミリト「夢・・・・・・?違う。私は確かに、得た・・・・・・。
    得たのだ・・・・・・天恵(てんけい)を・・・・・・」
 と、言って、震える手で聖十字の剣を(かか)げるのだった。

 ・・・・・・・・・・

+注意+
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