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ランドシン伝記  (アーカーシャ・ミソロジー) 作者:キール・アーカーシャ

第0章  輪廻-編

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 第Ω話  再誕 ②

 第Ω話  再誕  ②

 飛翔(ひしょう)(てい)にて邪竜達との死闘は激しさを増していた。
 しかし、先程ローが言った通り邪竜の数は『キリが無い』のだった。

 第2射、第3射が飛翔艇から次々と放たれるも、(いま)だ天空には無数の邪竜がひしめいていた。
 そして、邪竜達は取りつくように結界の内部に入りこみ、直接に爪や牙で飛翔艇を攻撃して来るのだった。

 この時にはローの部下である剣士達や、格闘家のアーゼが甲板に出て、飛翔艇に喰らいつく邪竜を斬り殴り倒していった。
 一方、飛翔艇の指揮官であるはずのドワーフのギートも指揮権を(おい)委譲(いじょう)して、その伝説なる(せん)()にて邪竜の(はらわた)を引き裂いていくのだった。

 この状況下、邪竜とウィル達、双方共が焦燥(しょうそう)(いだ)いていた。
 数の上では邪竜の方が圧倒的に有利であったが、彼らにとり味方がすさまじい勢いで(ほふ)られているのは事実であり、個々の竜からすれば逃げ出したくなる状況であった。

 しかし、邪竜達を(ひき)いる老成せし古代(こだい)(りゅう)は、撤退など死んでも許さなかった。
 それは言葉通りの意味であり、臆病風に吹かれ逃げ出すような竜の誇りを失いし者は、古代(こだい)(りゅう)の爪にかかり体を引き裂かれていくのだった。

《進め、進むのだッ!闇帝国に勝利をもたらさんとッ!》

 との古代龍による-おどろおどろしい竜語の響きが、天に木霊(こだま)した。
 さらに古代龍は、その口の先におびただしい量の魔力凝縮(ぎょうしゅく)させていった。
 絶大なる破壊の一撃が今、放たれんとしていた。

「総員ッ、対衝撃(たいしょうげき)ッ!」

 とローが叫んだ刹那(せつな)、古代龍より飛翔艇を包む程の巨大なレーザーが発されるのだった。
 その水平に伸びる光の柱は、飛翔(ひしょう)(てい)の結界を無残(むざん)に砕き散らせていった。

 激しい揺れが飛翔艇の全体を襲ったが、致命的な損傷は生じておらず、魔王城への飛行に支障(ししょう)は出ていなかった。
 今の所は、であるが。

 一方で人的(じんてき)な被害は生じており、弓兵や騎士達、数十名が結界のヒビより入りこんだレーザー光に焼き切られ、もしくは爆発に巻きこまれ死亡していた。
 狂戦士ローは部下達の死を(いた)(ひま)も無く、隊形を再編していた。

 彼自身は不幸中の幸いか、結界の破片による()(きず)(ほほ)()っただけですんでいた。
 ローは冷静に状況を見据(みす)えていた。

 すると、内部で大きな爆発が生じた。
 恐らく飛翔艇の中まで届いたレーザーが存在しており、その攻撃が時間差で爆発を引き起こしたのだろう。
 これにより飛翔艇は推進力を失っていき、重力に(あらが)いきれず、徐々に下降をしていった。

 さらに飛翔艇は守護の力を失っており、邪竜達の攻撃無防備(むぼうび)にその身をさらしていた。
 邪竜達にとり、これは絶好の好機と言えた。
 そして、彼らは炎弾を次々に放ち、一気に攻勢を強めるのだった。

 古代の叡智(えいち)の結晶である飛翔艇であるが、このままでは撃墜(げきつい)されるのは時間の問題であった。
 飛翔艇のあちこち、本来あらぬべき場所から蒸気と魔光(まこう)が噴き出しており、明らかに魔導器としての力は半減していた。

 それを見て、邪竜達は勝利を確信しつつあった。
 しかし、彼らは失念していた。
 結界が壊れ、魔導的な攻撃が飛翔艇に通るという事は、逆に飛翔艇からの魔導の攻撃が邪竜達にも届きうるという事を。

 ローは自身の象徴である狂戦士の仮面を装着し、魔刃(まじん)(オーラ)(そそ)いだ。

()け、《(かみ)宿(やど)()魔刃(まじん)》よッ!』

 その解放の言葉と共に、狂戦士ローの手に握られた魔剣から、(きし)んだ鳴動が響き出すのだった。

 邪竜達はその時、死神の(かま)が自身の首に()けられるのを幻視した。
 しかし、真に彼らを死に(いた)らしめる斬撃は、次の刹那(せつな)に放たれるのだった。
 不可避にして不可視の一撃が雲をも断ち斬り、世界を両断した。

 次の瞬間、()(ぷた)つとなった邪竜達が、綺麗な切断面を見せながら(ちゅう)を墜ちていった。

 一方で、ローの放った渾身(こんしん)の一撃は老成せし古代龍にも届いては居た。
 しかし、(はがね)よりも(はる)かに硬いその(うろこ)(はば)まれ、致命傷を()わす事が出来なかった。

 とはいえ、古代龍の体には横に線が走っており、そこから(あお)()()めどなく流れ落ちているのであった。
 古代龍は再生しない傷に対し、不快そのものの表情を浮かべていた。
 ローの(やいば)には毒と呪詛(じゅそ)()められており、そう簡単に傷は治癒(ちゆ)されないのだった。

 ただし、これだけの技を放つのに、何ら代償が無いはずも無く、ローは小刻みに身を震わせながら血を吐くのだった。

「ローッ!」

 そう友の名を叫び、ウィルは駆け寄った。

「大丈夫だ、それより来るぞ」

 と、口より血を拭ったローが答えるや、古代龍の怒れる咆哮(ほうこう)が天空に響き渡った。
 それは新たな攻撃の予兆(よちょう)に他ならなかった。

「クッ、虚無の力を・・・・・・」

 そう言い霊剣(れいけん)に手を()けるウィルを、ローは止めた。

「やめろ。その力は魔王を滅ぼす時に取っておけ」

「だがッ」

 ウィルの言葉からは(あせ)りが(にじ)()ていた。
 そんな中、古代龍はその巨躯(きょく)をしのぐ程の大きさを有する魔弾を構築し始めた。

「やべぇッ!」

 飛翔艇の側面で戦っているトゥセは思わず声をあげた。


「やるしか無いッ!」

 そう叫び、ウィルは霊剣を引き抜き虚無の力を一気に解放しようとした。
 まさにその時であった。
 突如、古代龍の形成する巨大な魔弾を()(じょう)の光が貫いた。

 次の瞬間、魔弾は爆発を引き起こし、その衝撃で
古代龍は大きく-その身をよろめかせるのだった。

「あれは・・・・・・」

 (つぶや)くウィルの視線の先には、黒く丸い何かが飛んでいた。
 それは愛嬌(あいきょう)のある、幼くも体の大きな天竜であり、ウィルやロー達の大切な仲間であった。
 特にその竜は狂戦士ローにとり、かけがえの無い存在であった。

「マニマニッ!」

 ローがその名を叫ぶや、黒き竜マニマニは『マニュッ』と可愛(かわい)らしく()くのだった。

 さらに竜マニマニの背後には、赤き聖なる天竜が飛翔しているのだった。
 彼女こそヒヨコ豆-団の一員であり、ウィルのパートナーとも言えるティアであった。

「ティアッ!」

 とのウィルの張り裂けんばかりの声に、ティアは『ウィルッ!』と答えた。

 すると、古代龍は同族の敵対者に対し、震え上がる程の威嚇(いかく)咆哮(ほうこう)をあげるのだった。
 それを受けマニマニは(おび)え、身を(ちぢ)こまらせた。
 一方で、それをティアは軽くいなし、返答の代わりに無数の追尾型レーザーをその口から古代龍に向けて放つのだった。
 曲射する極光(きょっこう)が次々と空中の邪竜達に命中していきその身を滅びへと導くのだった。

 その時に生じた閃光に、思わずウィル達は目を押さえた。
 すると、光が収まるやマニマニとティアの二人の竜は、飛翔艇の間近(まぢか)に来ており、その進路に沿()って飛行していた。

『ウィル、何やってんのよ!あんな相手に虚無の力を使おうだなんて。それは最初で最後の一撃なんだから』

 竜ティアのきつめの調子に、それでいていつもの口調に、
ウィルは苦笑(くしょう)を浮かべ答えるのだった。

「ああ。お帰り、ティア」

『ええ。ただいま、ウィル』

 ()わされた二人の短いやり取りからも、(ふか)(きずな)が見受けられるのであった。

『あのー。こんな時に、二人だけの世界を構築しないで下さい』

 との声が竜ティアのまさに頭の上から聞こえた。
 そこには茶猫のケシャがチョコンと乗っかっていた。
 ケシャもまたヒヨコ豆-団の大切な一員であった。
 大きく跳躍(ちょうやく)し、ケシャはティアの頭から甲板へと移るのだった。

「あ、ああ。ケシャも無事で良かった」

 とウィルは揶揄(やゆ)された事に照れながらも、素直に再会を喜ぶのだった。

『ええ。それより、早くあいつを倒しちゃって下さい。
団長』

 とのケシャの言葉に、ウィルは迷う事なく(うなず)いて見せた。

「ああ。行ってくる」

 そして、ウィルは竜ティアの背に跳び乗るのだった。
 また、狂戦士ローも竜マニマニの背にまたがっていた。

 竜ティアと竜マニマニの二人は古代龍へと、果敢(かかん)に立ち向かっていった。
 一方で、古代(こだい)(りゅう)は同族である二人の竜達、しかも子供と女性、と戦わなければならない事に顔をしかめた。

 とはいえ相手が誰であろうと、既に不退転(ふたいてん)の覚悟を決めていた古代龍にとり、戦い以外の道は無いのだ。
 固く覚悟を決め、古代龍は無数の炎弾を一気に放つのであった。

 ティアとマニマニはそれぞれ、炎の(うず)()し追尾してくる炎弾群を、急上昇と急下降して避けていくのだった。
 目標を見失った炎弾群は、虚空(こくう)(ひと)りでに(はじ)()っていくのだった。

 そして、ティアとマニマニの反撃が始まった。
 ティアとマニマニは赤と黒のレーザーを上方と下方より、古代龍に向けて放つのだった。
 二方向よりの強烈(きょうれつ)な攻撃を()らい、古代龍は意識を失いかけた。

 さらに先程、狂戦士ローから受けた魔刃の傷から、血が一気に噴き出していった。
 ローの刃に()められた()(どう)の毒も、少しずつ効いてきており、古代龍は全身の力が弱まりつつあるのを感じていた。

『いけるわッ!』

 との竜ティアの声が空に響いたその時、暗雲が魔王城より猛烈(もうれつ)な勢いで古代(こだい)(りゅう)へと近づいて来た。
 その暗雲は古代龍の頭上に渦巻(うずま)き、その中心部に巨大な爬虫類(はちゅうるい)(ごと)(あか)(ひとみ)を生じた。

『何をしておるのだ。古代龍グレゴリオ・エルトシアよ。神話時代に暴神ラギス・グードの右腕を()(くだ)いた力はどこになりをひそめた?』

 天より(とどろ)く暗黒の響きは、あまねく者達に深き(おそ)れを
植え付けるのだった。

「魔王ッ・・・・・・」

 ティアの背でウィルは、その瞳を(にら)み言うのだった。

 一方で古代龍も、その口から血を(あふ)れさせながら、難儀(なんぎ)そうに告げるのだった。

『魔王アセルミアよ。王城にて()すだけの貴様には分からぬだろうが、忌々しい事に、こ奴等(やつら)の力は本物ぞ』

 すると、魔王の嘲笑(ちょうしょう)とも自嘲(じちょう)とも取れる不気味な笑い声が木霊(こだま)した。

()すだけか・・・・・・違いない。ならば、分け与えよう。古代龍グレゴリオ・エルトシアよ。老いたその細胞をかつての若かりし頃へと、逆行(ぎゃっこう)たる変遷(へんせん)をさせようでは無いか』

 次の瞬間、古代(こだい)(りゅう)めがけ、黒き(いかずち)幾条(いくじょう)()(そそ)ぐのだった。

 大気を(ふる)わす雷鳴(らいめい)(とどろ)き、一瞬の(のち)に古代龍の肉体は変質していった。
 その(うろこ)は内側から(はじ)け、中から新たな(ひかり)(かがや)(うろこ)が肉と共に盛り上がって来た。

 ただでさえ通常の竜の数十倍の大きさを誇る古代龍であるが、その巨体は今さらに数倍に(ふく)れあがったのであった。
 さらに、それでいてその重量はほとんど変化しておらず、むしろ俊敏(しゅんびん)さは増していると言えた。

『オオ、オオッ!何という事だ。戻って来た。戻って来たぞ。我が(はる)追憶(ついおく)()もれし闘争の日々がッ!』

 そして古代龍は、いや神竜は天をも鳴動(めいどう)させる程の咆哮(ほうこう)をあげるのだった。
 その音波だけでも、通常の者なら震え上がり(おび)えすくんでしまうだろう。
 しかし、竜のティアとマニマニは必死に恐怖を()さえ()んでいた。

 ビリビリと体を音の波動が震わせるも、ティアは魔力を高め、それを(はじ)いた。

『伝説が(よみがえ)ってしまった・・・・・・』

 そうティアは思わず(つぶや)くのであった。

「こうなっては」

ウィルは霊剣に手を()けようとした。
彼には、かつての力を取り戻した古代龍の実力が嫌が応に分かってしまったのだ。
 その時、声が響いた。

「ウィル!その必要は無い。相手が伝説なら、私達で新たな伝説を打ち立てるまでだッ!」

 とのローの声が、マニマニの背に乗る彼から(はっ)されたのだった。
 それを聞きウィルは手を戻し、(かす)かに笑みを見せるのだった。

()(こと)、言うじゃ無い』

 珍しくティアもローを()めるのだった。

「これはこれは、お()めにあずかり光栄です。お嬢様(フロライン)

 そう(うやうや)しくローは答えるのだった。

「ローの言うとおりかもな。やろう、(みんな)ッ!」

 このウィルの言葉を契機(けいき)に、第二戦の(まく)が今開けるのだった。


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