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ランドシン伝記  (アーカーシャ・ミソロジー) 作者:キール・アーカーシャ

 第1章  エストネア逃亡-編

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第3話 迷宮クエスト 《イラスト2点-追加》

第3話 迷宮クエスト

挿絵(By みてみん)
 《カシム》

 ヴィル達は迷宮に入っていた。
トゥセ「いやぁ、カビ臭いっすね」
ヴィル「情報によれば、この迷宮の難度は-それ程、高く無い
    らしいが、気を抜くなよ」
トゥセ「分かってますよ」
 すると、奥から魔物の咆哮(ほうこう)が響いた。
アーゼ「始まったって感じですね」
ヴィル「ともかく、俺達は慎重に進もう」
 そして、ヴィル達は-罠などを確認しながら、ゆっくりと
迷宮を進むのだった。

 ・・・・・・・・・・
トゥセ「結構、来ましたね」
ヴィル「だな。だけど、周りに他のギルドが見当たらない。
    妙だな。そんなに広い迷宮じゃないハズだが」
 すると、何かが(うごめ)く音がした。
 そして、奥から巨大なナメクジが数体、()ってきた。
ヴィル「まずいッ、トゥセ、早く倒せッ!」
トゥセ「りょ、了解ッ!」
 そして、トゥセはカードを巨大ナメクジに向かって投げつけた。
 すると、ナメクジから体液が-ほとばしっていった。
 さらに、何枚も何枚もカードを投げつけるとナメクジ達は
沈黙した。
ヴィル「フゥ・・・・・・だが、まずいな・・・・・・」
アーゼ「ですね・・・・・・・」
 見れば、周囲はナメクジの体液で-まみれていた。
トゥセ「団長・・・・・・この体液って、メチャクチャ粘るヤツです
    よね?」
ヴィル「ああ・・・・・・毒とかは無いが、粘るな・・・・・・」
アーゼ「団長、どうします?」
ヴィル「・・・・・・仕方ないだろ。ネバネバしながら進むしか無い
    だろう・・・・・・」
トゥセ「マジっすか・・・・・・」
 そして、ヴィル達はネバネバに足を突っ()むのだった。

 ・・・・・・・・・・
 一方で剣聖シオンのパーティは迷宮の最深部へと到達して
いた。他にも数組のギルドがおり、いよいよ、最深部を守る
巨大モンスターとの対決が始まるのだった。
 シオンが扉を開くと、そこには巨大な骸骨(がいこつ)が長刀を持って、
待ち構えていた。
 そして、骸骨はシオン達を認識するや、体中をカタカタさせて
笑い、襲いかかってきた。
シオン「行くぞッ!」
 とのシオンの叫びと共に、戦闘が開始された。

 ・・・・・・・・・・
 一方で、ヴィル達はネバネバの中、必死に前に進もうと、
もがいていた。
トゥセ「チクショウッ!何で、よりによって、ナメクジと
    遭遇しちまったんだッ!」
 と、片足を上げながら叫んだ。
アーゼ「お前が、もう少し、綺麗に倒せば-こんな事にならな
    かったんだよ・・・・・・」
トゥセ「お、俺のせいかよ・・・・・・クゥ、でも、これって、本当は
    魔法を使えば、ネバネバ取れるんですよね」
ヴィル「ああ、清めの魔法でな」
トゥセ「団長。やっぱり、女魔法使いはパーティに必要ですって」
ヴィル「はいはい。ともかく、今は出る事だけ考えような」
モロン「団長・・・・・・足、疲れたよ・・・・・・」
ヴィル「モロン・・・・・・我慢だ」
モロン「うん・・・・・・」
 そして、ヴィル達は-ようやく半分程を進んだ。
 すると、一人の男が前方から-やって来た。
 その男は-どこか浮き世ばなれしており、
不思議な雰囲気(ふんいき)をただよわせていた。
男「大丈夫ですか?」
ヴィル「貴方(あなた)は?」
男「私はカシムと申します。今回は、ソロ(一人)で迷宮の
  攻略に来たのですが、行き詰まってしまいまして」
トゥセ「ソロ?そりゃあ、すごいっすね」
カシム「いえいえ。魔物から上手く、隠れて進んで居るだけ
    です」
 と、カシムは(ほが)らかに答えた。
カシム「それで、よろしければ-その粘つきを解除しましょうか?」
アーゼ「い、いいんですか?」
カシム「はい。多分、私の術で解除できます」
ヴィル「ただ、カシムさん。俺達は今、お金もレアなアイテムも
    無くて、その-お礼の方がちょっと・・・・・・」
カシム「いえ。お礼は要りません。私はあなた達
    に興味が()きました。あなた達の
    オーラは輝いている。よろしければ、一時で良いので、
    同行させて(いただ)けないでしょうか?」
トゥセ「団長ッ!これぞ、渡りに船ですよ!」
ヴィル「ああ、そうだな。じゃあ、お願い出来ますか、カシムさん?」
カシム「ええ。では」
 すると、カシムは()を始めた。
 そして、大気に魔力が集結し、カシムが足で床を打ち鳴らす
や、一気に術式が完成し、(ねば)つきを浄化していった。
アーゼ「お、おお・・・・・・」
トゥセ「すげーッ!全然、(ねば)つかねー」
ヴィル「今の術式は一体?」
カシム「仙人術(せんにんじゅつ)と呼ばれるモノです。
    魔物の恨みの気を晴らしました。あの粘つきは、
    ナメクジの怨念(おんねん)が宿っていたのです」
ヴィル「魔物の怨念(おんねん)・・・・・・」
トゥセ「ぞっとしない話っすね」
モロン「え、えぇと、カシムさん、ありがとうございました」
カシム「いえ、お気になさらず」
 そして、ヴィル達もカシムに礼を言った。
ヴィル「えぇと、ではカシムさん。今回のクエストを同行して
    くださるのですよね?」
カシム「はい。よろしければ、ですが」
ヴィル「是非(ぜひ)、お願いします」
 そう言って、ヴィルは手を差し出した。
 その手をカシムは握り、二人は握手を(かわ)すのだった。

 迷宮をヴィル達は歩いていた。
トゥセ「いやぁ、しかし、ほんと、助かりましたよ」
カシム「いえいえ」
アーゼ「でも、ほんと、思わぬ所から助けが来ましたよね」
ヴィル「だな」
 すると、カシムが立ち止まった。
モロン「どうかしたんですか?」
カシム「いえ・・・・・・終わってしまいましたね・・・・・・」
ヴィル「え?」
 すると、笛の音が響いた。
 それは最深部の攻略が済んだことを示す音だった。
トゥセ「あ、あぁ・・・・・・間に合わなかった」
ヴィル「ともかく、音の方へ向かおう」
 そして、ヴィル達は駆け足で進むのだった。

 ・・・・・・・・・・
 骸骨(がいこつ)の魔物は力尽き、倒れていた。
 そして、剣聖シオンは-その聖剣を(さや)にしまった。
 周囲のギルド・メンバーはシオンに対し、惜しみない賞賛を
贈っていた。
シオン「フゥ・・・・・・」
エレナ「お疲れ、シオン」
シオン「あぁ。ありがとう」
ニア「しっかし、私の出番は無かったねぇ」
 などと、シオンのギルド・メンバーは-(なご)やかに
会話をしていた。
 そんな中、ヴィル達は-そこに辿(たど)り着いた。
ヴィル「お、遅かったかぁ・・・・・・」
 と、ヴィルは肩を落としながら言った。
シオン「先輩。すみません・・・・・・」
ヴィル「いや、いいんだ。実は道中でナメクジに会っちゃって
    さぁ」
シオン「あぁ・・・・・・あれは魔法使いがパーティに居ないと
    厄介(やっかい)ですよね」
ヴィル「そうなんだよ」
エレナ「・・・・・・シオン。番人を倒したんだから、奥の魔石を
    入手して、結界を張らないと。グズグズしてると、
    他の人達に取られちゃうよ」
シオン「おっと、そうだったな。じゃあ、みんな、行こう」
 そして、シオン達のギルドは-さらに奥へと進んでいった。

トゥセ「あーあ。惜しかったっすね」
アーゼ「いや、あんまし、惜しくは無いと思うぞ。むしろ、
    予定調和-的というか」
トゥセ「あんま、悲しくなる事、言わないでくれよ」
アーゼ「わ、悪い」
ヴィル「まぁ、ともかく、もう一段落したら戻ろう。幸い、
    他のギルドも死者は居ないみたいだし」
 とのヴィルの言葉に、皆は(うなず)いた。

 ・・・・・・・・・・
 その傭兵は番人攻略の笛を聞き、いらだっていた。
傭兵「クソッ、先を越されたかッ!」
部下「し、仕方ないですよ、今回は、剣聖が居たんですから」
傭兵「うるせぇッ!何で剣聖が-こんなへんぴな田舎に
   居るんだよッ!おかしいだろッ!くっそッ!
   どうせ、圧倒的な力を見せびらかして、俺達を
   見下してんだッ!そうに違いねぇッ!」
 と叫び、壁を思い切り叩いた。
 すると、壁が崩れ、隠し通路が出てきた。
傭兵「お・・・・・・おいおい、こりゃあ、ひょっとして、ひょっと
   するんじゃねぇか?」
部下「ヒョウタンから(こま)ってヤツっすね」
傭兵「だな。ともかく、先にすすも・・・・・・」
 そこまで言って、傭兵は言葉に()まった。
 その視線の先には、一体の何かが居た。
傭兵「ご、ゴブリンだッッッ!」
 と、傭兵が叫ぶや、その年老いた魔族は-さっと逃げ出した。

 ・・・・・・・・・・
 笛の音が鳴った。
 それはゴブリンの出現を意味する笛だった。
ヴィル「この笛は・・・・・・」
アーゼ「ゴブリン・・・・・・・」
 すると、シオンが駆けだしてきた。
シオン「先輩、今の笛ッ!」
ヴィル「あぁ・・・・・・。信じたくは無いが、ゴブリンが遺跡に
    居るらしいな・・・・・・」
シオン「ともかく、手分けして探しましょう」
ヴィル「・・・・・・ああ」
シオン「では、俺達は右へ、先輩達は左をお願いします」
ヴィル「分かった・・・・・・。行くぞ、お前等(まえら)
 そして、ヴィル達は左に進むのだった。

トゥセ「しかし、妙ッすね。ゴブリンの気配なんて全然、
    感じなかったっすよ」
アーゼ「確かに・・・・・・。居るとしても、少数なのか?」
ヴィル「・・・・・・ひそかに隠れて暮らしていたのか?」
 と、ヴィルは小声で(つぶや)いた。
 すると、カシムが口を開いた。
カシム「よろしければ、居場所を特定してみましょうか?」
ヴィル「出来るのですか?」
カシム「恐らくは。今、迷宮は最深部が封印され、気が
    弱まっています。比較的、探知しやすいと思わ
    れます」
ヴィル「・・・・・・頼みます」
カシム「はい。では、しばし-お待ちください」
 そう言って、カシムは人差し指を自らの額に当て、目をつむ
った。
 それから、数十秒後、カシムは突如(とつじょ)、目を開いた。
カシム「分かりました」
ヴィル「本当ですか?」
カシム「はい。ただ、場所は-ここからだと遠回りになります。
    それで、この迷宮の近道を利用しようかと思います」
トゥセ「近道、ですか?」
カシム「はい。ただし、これは迷宮の時空の歪みを利用する
    繊細(せんさい)な方法です。ですから、目をつぶっ
    たままでないと利用出来ません」
ヴィル「・・・・・・それ以外、方法は無いんですか?」
カシム「近道は-それだけです。私が手を引くので、全員、
    手を繋いでください。もし、よければ、ですが」
 とのカシムの言葉に、ヴィルは一瞬、考えこんだ。
ヴィル「お願いします」
トゥセ「まぁ、少し、怪しいですけど、仕方無いですよね」
アーゼ「こら、アーゼ。失礼だぞ」
トゥセ「あ、す、すいません」
カシム「いえ。普通なら信じて-もらえないでしょう」
ヴィル「カシムさん、早速、お願いして-よろしいですか」
カシム「はい」
 そして、ヴィル達は目をつむり、カシムの導きに従った。

 ヴィル達は目をつむったまま歩き続けていた。
カシム「ここから歪みに入ります。絶対に、目を開けないで
    ください」
モロン「だ、団長、少し、怖いよ」
ヴィル「大丈夫だ、モロン。俺を信じろ」
モロン「うん」
カシム「では、参ります」
 そして、カシム達は壁の中に入っていった。
 そこは異質の空間だった。
 ヴィル達は、重力と時の感覚が狂うのが分かった。
トゥセ「な。なんじゃこりゃッ!大丈夫か、これ?」
カシム「あと少しですッ!絶対に目を開けないでください」
 そして、カシム達は先を進み、壁から抜け出た。
カシム「もう大丈夫です。ゆっくり目を開けて下さい」
 すると、(あた)りは白い大理石で出来た通路になっていた。
ヴィル「これは・・・・・・普通の迷宮じゃないな」
アーゼ「ですね・・・・・・」
カシム「ヴィルさん、ゴブリンの気を二つ感じます。こちらです」
ヴィル「お前等(まえら)、戦闘態勢に入れ。カシムさんは、戦えますか?」
カシム「身を守る程度なら」
ヴィル「なら、モロンの(そば)に居てください」
カシム「承知しました」
ヴィル「じゃあ、進もう」
 そして、ヴィル達は先へと進むのだった。

カシム「そこです」
 と、カシムは-ただの通路の前に立ち、言うのだった。
ヴィル「隠し扉・・・・・・。開けよう」
 そして、ヴィルは隠し扉を開いた。
 そこは一つの部屋となっていた。
 その奥には二体の小さなゴブリンが居た。
 すると、年老いたゴブリンが口を開いた。
老人ゴブリン「待ってくだされ・・・・・・ワシらは、人間と争う
気は無いんじゃ」
トゥセ「ご、ゴブリンが-しゃべった」
ヴィル「・・・・・・争う気は無いと?」
老人ゴブリン「ワシと-この子は一緒に暮らしてきた。人に
       迷惑をかけた事は無い。本当だ。信じてくれ」
ヴィル「・・・・・・」
アーゼ「団長?」
カシム「・・・・・・このゴブリンの言っている事は本当かと思われ
    ます。気に-よどみが無い」
トゥセ「ま、待てよ。だからって、ゴブリンを放置じゃマズイ
    だろ?」
ヴィル「・・・・・・そっちのゴブリンは・・・・・・子供か?」
老人ゴブリン「そうじゃ。ワシの血縁では無いが、今年、13と
       なったばかりじゃ。ワシと違い、人間の言葉は
       話せん。お願いじゃ、ワシらをそっとして-おい
てくれ。魔石なら少しある。これで、どうか
       許してくだされ・・・・・・」
 そう言って、老人ゴブリンは魔石の入った袋を差し出した。
モロン「団長・・・・・・許してあげれないの?」
ヴィル「俺は・・・・・・俺は・・・・・・」
 ヴィルの脳裏に記憶が(よみがえ)った。
 多くの仲間の死・・・・・・。
『殺せッ!殺せッッッ!あのゴブリンども-をブチ殺せッ!』
『隊長ッ・・・・・・隊長ッ・・・・・・死にたく無い・・・・・・
 死にたく無い、です・・・・・・』
『いやだ、いやだ、いやだッ、母さんッ・・・・・・』

 そして、記憶は-さらに深層へと(いた)った。
 血まみれで笑う男。 
 その男に対し、ヴィルは斬りかかったのだった。

カシム「ヴィルさん?」
 カシムの声で、ヴィルの意識は現実に戻った。
ヴィル「あ、ああ・・・・・・」
 と、ヴィルは朦朧(もうろう)としながら答えた。
 ヴィルは心臓が早鐘(はやがね)を打つのを感じた。
トゥセ「団長・・・・・・」
 と、トゥセ達は心配そうに見守った。
 すると、足音が響いた。
アーゼ「ま、まずいッ」
 すると、傭兵達(ようへいたち)が駆けてきた。
傭兵「ッ、そこかッ!」
 傭兵達は、ヴィル達を押しのけ、隠し部屋へと
入り()もうとした。
ヴィル「や、やめろッ!」
 ヴィルは-そう叫び、傭兵を押し返した。
傭兵「は?はぁ?お前、手柄を独り占めにする気か?
   ふっざけんなッ!ぶっ殺すぞッ!」
ヴィル「違うッ!か、彼等(かれら)は敵じゃない。
敵じゃないんだ。非戦闘員だッ!」
傭兵「ひ、戦闘員―?なぁに、言ってんだ、こいつ?頭に
   ウジわいたか?ともかく、どけよ、こんな
雑魚(ざこ)ゴブリン、大した手柄じゃねぇだろ。
なんなら、その分の報酬はやるから、俺に
ゴブリンをぶっ殺させろ。いいな。
お前には、酒場の賭けで金をもらってるから
やっぱ、それで許してやる」
しかし、ヴィルは-どこうとしなかった。
ヴィル「彼らは敵じゃ無い・・・・・・」
 そのヴィルの言葉に、傭兵は目を()わらせた。
傭兵「おい、おいおいおい・・・・・・反逆者か、お前ら?」
ヴィル「違う、俺はッ」
傭兵「違わねーだろッ!ゴブリンの味方するなんてよッ!
   ぶっ殺すッ!やるぞッ!」
 との傭兵の言葉に、部下達は抜刀した。
ヴィル「やめろッ!」
傭兵「やめねーよッ!」
 そして、傭兵はヴィルに剣を振り()ろした。
 しかし、次の瞬間、傭兵の手首は(ちゅう)を舞った。
 そして、手首に付いた剣が地面に-ぶつかり、音を立てた。
傭兵「は?はぁ?お、俺の、俺の手・・・・・・俺の右手・・・・・・?」
 そこまで言って、傭兵は気絶した。
部下「た、隊長ッ!てめぇらッ!」
 しかし、他の部下達も、トゥセとアーゼの攻撃で-あっさりと
気絶するのだった。
ヴィル「ハァ、ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」
 と、ヴィルは荒い息をあげていた。
モロン「だ、団長・・・・・・どうするの?」
ヴィル「・・・・・・お前達、ここで-お別れだ・・・・・・俺は、この
    ゴブリン二人を安全な所へと送り届ける。お前達は
    別のルートで逃げろ。いいな」
 しかし、トゥセ達は(うなず)こうとはしなかった。
ヴィル「何してるッ!早く逃げろ。お前達だけなら、
逃げ切れるだろ?」
トゥセ「あの、団長。そういうの無しにしませんか?
今更(いまさら)っちゅうか」
アーゼ「そうですよ。俺達、仲間でしょう?」
モロン「ヒヨコ豆-団は、いつも一緒だよ」
ヴィル「お前等(まえら)・・・・・・」
 そう言って、ヴィルは目を(ぬぐ)った。
ヴィル「ありがとな。一緒に逃げよう」
 とのヴィルの言葉に、トゥセ達は(うなず)いた。
 すると、老人ゴブリンがヴィル達に近づいて来た。
老人ゴブリン「あ、あの・・・・・・どうして?」
ヴィル「分かりません。ただ・・・・・・貴方(あなた)(たち)
見殺しに出来なかったんです。だって、多分・・・・・・
貴方達も俺達と同じヒト・・・・・・だから」
 との言葉に、トゥセ達は(うなず)くのだった。
老人ゴブリン「おお、おお・・・・・・これは奇跡か・・・・・・。
       まさか、まさか、()の地で-このような
       冒険者-達と出会えるとは・・・・・・」
 すると、老人ゴブリンの胸に矢が()えた。
 見れば、傭兵が倒れながら、弓を片手にしていた。
傭兵「ざまーみろ・・・・・・」
 そう言って、傭兵は完全に気絶した。
 そして、老人ゴブリンは地面に倒れた。
 その体から血が-とめどなく流れ、その(せい)は失われよう
とした。
 それを見、幼いゴブリンは泣き叫びながら、老人ゴブリンに
駆け寄った。
 そして、血で汚れるのも気にせず、幼いゴブリンは老人に
必死に語りかけるのだった。
 それに対し、老人ゴブリンは何かを(つぶや)き、そして、
息絶えるのだった。
トゥセ「嘘・・・・・・だろ?」
 と、(つぶや)く事しか出来なかった。
 あたりには幼いゴブリンの泣き声が響いた。
 すると、ヴィルは幼いゴブリンに近づいた。
 それに対し、幼いゴブリンは(おび)えて後ずさった。
 ヴィルは幼いゴブリンに対し、両膝(りょうひざ)を着き、頭を下げ、
言うのだった。
ヴィル「俺はッ、俺は、あんたを守る。あんたを守る事を騎士として
誓うッ!この老人のゴブリンの(ぶん)まで-あんたを
    守る事を誓う。だからッ、ごめん、ごめんな・・・・・・」
 と、ヴィルは泣きながら、誓うのだった。
 それに対し、幼いゴブリンはヴィルを信じたのか、ヴィルの
腹に顔をうずくめ、泣きじゃくるのだった。
 それは神聖なる光景だった。
 本来、憎み、殺し合う人間とゴブリンが触れ合っているのだった。
カシム(これだ・・・・・・これだったのだ。私が、この地に導かれたのは。
精霊達は、私に-これを見せたかったのだ。
    そして、これこそが私の運命なのだ。彼らと共に、
    旅をし、彼らの運命を助ける事。それこそが、私の
    生まれてきた理由なのだ)
 と、カシムは悟るのだった。

 ・・・・・・・・・・




挿絵(By みてみん)
《ゴブリンの少女レクク》
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