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ランドシン伝記  (アーカーシャ・ミソロジー) 作者:キール・アーカーシャ

第0章  輪廻-編

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第Ω話  再誕 《終》

 第Ω話  再誕 《終》

 雪が降りしきる中、不死王テレ・ネアの消滅を感じ取ったのか、不死王アーバインはその方角に目を向けた。
『良い気分では無いな。残り一人となるも。まぁいい。王とは常に孤独なるものなのだから』
 (うれ)()(つぶや)き、アーバインはトゥセとアーゼに向き直った。
「ウオオオオオッッッ!」
 と叫び、トゥセとアーゼは同時に攻撃を繰り出した。
 しかし今、トゥセのカードはアーバインにかすりもせず、また、アーゼの拳もまたアーバインに手の平で防がれていた。
 それどころか、アーバインは一瞬にして反撃を示し、掌底をアーゼの胸に叩きこんだ。
 これにより、あまりにあっけなくアーゼの心臓は破裂した。
 力なく倒れるアーゼ。
 そんな相棒を見て、トゥセは半狂乱となる。
「テメェェッッッ!」
 叫び、トゥセはアーバインに迫りながらカードを最高速で放ち続ける。しかし、アーバインは両の手でそれらのカードをたやすく弾いていくのだった。
 さらに、わずかな隙をつき、アーバインは両拳からそれぞれオーラを飛ばすのだった。レーザーの如きそれらのオーラはトゥセに直撃し、彼の体を無惨に地に転がしていった。
「あ・・・・・・ああ・・・・・・」
 何とか起き上がろうとするも、トゥセは全身に力が入らないのであった。
 一方で、アーゼは完全に絶命していた。
「嘘、だろ?・・・・・・アーゼ?」
 よろよろと何とか歩みながら、トゥセは相棒に呼びかけた。
 しかし、死者より返事など有りはしなかった。
「チクショウッッッ!」
 とのトゥセの悲痛な叫びが天に(とどろ)いた。
 対し、アーバインは(あわ)れみを掛けた。
『カード使いのダーク・エルフよ。お前は良く戦った。仲間達のもとで、もう休め』
 刹那、アーバインより巨大な霊体の手が出現し、トゥセを押し潰さんとした。トゥセはとっさにそれを(かわ)し、空中にカードを召喚し、アーバインに向かい放った。
 だが、それらのカードはアーバインの前で灰燼(かいじん)と化して虚空(こくう)に消えていった。
『無駄だ。その技は見切った。結局の所、その召喚されしカード、それは魔導的な構成が甘い。何故なら、お前は魔導士では無く、単なるカード使いだからだ。故に、たやすくその構成を崩せる。もし真に私を倒したくば、実体のカードを使う事だ。すなわち、お前が元々、所有していたカードを』
「黙れッ!」
 トゥセは次々にカードを空中に召喚し、アーバインへと撃つのだった。しかし、それらはアーバインの説明の通り、一瞬で魔導的な構成を崩され、灰となるのだった。
『私は嘘は()かない』
「チクショウッッッ!」
 怒声を発し、トゥセは実体としては最後のカードを抜き放つのだった。これに対し、アーバインは右拳で軽くそれを弾いた。
『そうだ。その攻撃ならば、私も手を使わざるを得ない。だが、弾切れか?』
 とのアーバインの言葉に、トゥセは言葉を詰まらせた。
 もはや、トゥセはカードを一枚も持っていなかった。
『ならば、霊なる一撃で散るが良い』
 そう告げ、アーバインは霊体なる拳をトゥセに向かい繰り出すのだった。しかし、その攻撃がトゥセを吹き飛ばす事は無かった。
 同じく霊なる手と腕がトゥセの身を守護していたのだ。
 それらの腕は2本どころか4本であった。
『馬鹿な・・・・・・』
 思わずアーバインも声を震わせた。
 一方、トゥセの頬からは涙が伝っていた。
「アーゼ・・・・・・ガイン。やっぱり、お前達は心強いぜ」
 そうトゥセは死した仲間の名を呟くのだった。それらのたくましい腕は相棒のアーゼ、そしてかつて亡くなった仲間のガインの霊体なのだった。
『相棒、役立てなくてすまなかった。でも、力を貸すぞ』
『トゥセさん、私の力も役立てて下さい』
 と、アーゼとガインの霊は告げるのだった。
「ああ。ありがとうな、二人とも」
 涙を拭い、トゥセは答えるのだった。一方で、アーバインは驚愕(きょうがく)を禁じ得なかった。
『私と同系列の力?いや、違う。死した魂を守護霊として召喚しているのか?』
 などとアーバインは自問していた。
「理屈なんか、どうでも良い。不死王アーバインッ!どれ程に俺に勝ち目が無かろうと、俺は貴様を倒すッ!アーゼとガインと共にッ!」
 すると、霊なる声が響き、新たな霊体の腕が出現した。
『フンッ、ワシを忘れるで無いぞッ!』
 それらはドワーフのギートの声であり腕だった。
「ギート。お前も()ったか・・・・・・」
 さらに、腕は次々と増えていく。それらはヒヨコ豆-団の仲間達の魂によるものだった。今、皆が力をトゥセに貸していくのだった。
 トゥセの背後には無数の腕が出現しており、その(さま)はさながらに千手(せんじゅ)観音(かんのん)を思わせた。
『トゥセ』『トゥセさん』と死した仲間達の声が響き渡る。
「ああ、みんな。行こう、共に」
 そう優しく言い、トゥセは魔力を最大限に高めるのだった。
 これに対し、アーバインは畏怖(いふ)(いだ)かざるを得なかった。
 今、アーバインにはトゥセの背後にいるヒヨコ豆-団の魂をはっきりと霊視できていたのだ。
 しかし、彼も最強なる不死王、決して(ひる)みはしない。
『言葉は無用。来るが良い』
 その不死王の言葉を契機に、霊なる死闘が始まる。
 トゥセは無数の手をアーバインに繰り出す。
『クゥッッッッ!』
 渾身(こんしん)の魔力を解放し、アーバインは迫る敵の霊体を防いでいった。互いの霊体がぶつかり合い、ガラスの鳴るような透明な音が響き渡る。
 そんな中、徐々にアーバインは押されていった。
 アーバインの使う手は2本、一方でトゥセの放つ腕は無数。
 いかにトゥセがその力に使い慣れておらずとも、物量の差は圧倒的だった。
 そして、とうとうアーバインの防御が崩れた。それをトゥセが見逃すはずも無く、召喚したカードを神速で放つのだった。
 それらのカードは(なか)ば灰と化しながらも、アーバインに突き刺さっていった。
 しかし、最強なる不死王はここで終わらなかった。
『まだ、だ』
 刹那(せつな)、アーバインは第三の腕を出現させ、トゥセを襲った。
 この奥の手にトゥセは反応できなかった。成すすべも無く、トゥセに第三の手が迫る。
 その時、人影がトゥセをかばった。それは猫人(ねこびと)のリーゼだった。次の瞬間、リーゼとトゥセの体は吹き飛んで行くのだった。

 荒い息を発しながら、不死王アーバインは全身から血を(こぼ)していた。彼とて限界であった。しかし、限界の中で勝利をもぎ取れたのだ。
 リーゼさえ居なければ。
 そして、アーバインは倒れこむ二人を鋭く見据(みす)えていた。

「ウ・・・・・・ア・・・・・・」
 目を覚ましたトゥセは血まみれな事に気づいた。
 しかし、それが自身の血では無く、リーゼの血だと知るのだ。
 もちろん、トゥセの体からも所々、血は(あふ)れており、地面には二人による血だまりが出来ていた。
「リーゼ・・・・・・?」
 恐る恐るトゥセは横たわるリーゼに声を掛ける。
 すると、その声に反応したのか、リーゼが体をピクリと震わせた。さらに、リーゼの猫の顔が突如として、猫耳を除き()()に人間の女性の顔へと移り変わっていった。
「お前、その顔・・・・・・」
 他に言うべき事はいくらでも有ったが、トゥセの口から出たのはそんな言葉だった。
「あれ、もしかして戻った?呪いが解けて・・・・・・。えへへ、けっこう、美人でしょ?」
 と言うリーゼの顔からは死相が浮かんでいた。
 トゥセはうつむき涙しながら、何とか微笑みを浮かべた。
「ああ。想像以上だぜ。すごく綺麗だ。でも、猫の顔も本当はけっこう好きだったんだぜ」
 そんなトゥセに対し、リーゼは笑みを返すのだった。
「アハハ・・・・・・良かった。トゥセ、愛してるから」
 それきり、リーゼは物言わなくなった。
 彼女の体からは生命の(マナ)が虚空に散っていった。
 トゥセはそれを呆然(ぼうぜん)と見つめる事しか出来なかった。
「俺だって愛してたし、愛してるさ」
 そうトゥセも彼女の亡骸(なきがら)に向かい告白するのだった。

 すると、不死王アーバインがようやく口を開いた。
『どうする?もう止めにするか?』
 と、情けでアーバインは(たず)ねるのだった。
 対し、トゥセはゆらりと立ち上がり、叫んだ。
「冗談ッ、言ってんじゃねぇッッッ!」
 トゥセの魂の咆哮(ほうこう)が周囲を震わせた。
『なら全霊を見せよう。天魔よッ!』
 そう告げ、アーバインは自身の体を変化させていった。
 トゥセは手を出すこと無く、それをただ鋭く見据(みす)え続けた。
 吹き荒れる魔力の中、アーバインの体からは新たな腕が4本、
生えてきたのだった。合わせて6本の肉体の腕をアーバインは有する事となる。
『何故、攻撃してこなかった?』
 とのアーバインの疑問はもっともだった。
 力を解放する瞬間こそ、最も隙が生じるものだった。
 それを見逃す程、本来、トゥセは愚かでは無かった。
「あんたと同じさ。リーゼとの最期の時を、あんたは邪魔しなかった」
 そうトゥセは()()なく言うのだった。
『・・・・・・そうか。なら始めよう』
 と告げ、アーバインは6本の腕で究極なる構えを見せるのだった。
 それに気圧されること無く、トゥセは全力で攻撃を開始した。
 しかし仲間達の霊なる手、さらにカードをアーバインの4本の腕は易々と(はじ)いていくのだった。
『お前の力を(たた)え、教えておこう。6本の腕にはそれぞれ役割がある。下の2本は霊体の攻撃を無効化する。中の2本は魔導の攻撃を無効化する。上の2本は実体の攻撃を。故に、その霊体の手は下の2本の腕で、召喚したカードは中の2本で打ち消す事が出来るのだ』
「そうなんだろうなッ!」
 トゥセは攻撃を続けながら、叫び返した。
『唯一、弱点があるとすれば、上の腕、すなわち物理的な攻撃を防ぐ腕だ。これに関しては完全に無効化するという事は出来ぬ。特にお前程の使い手ならば』
「そうかいッ」
『悲しいかな、カード使いよ。もし、お前が格闘家か剣士でさえあれば、私に通用するかもしれない攻撃を繰り出す事が叶ったのだ。だが、今のお前は実体のカードを持たない。どうだ?
気づいたか、カードという武具を選択した愚かしさを?』
 すると、トゥセは狂ったように笑い出した。
「くだらない、くだらねぇんだよッ!お説教なら、あの世でいくらでも聞いてやるぜ。大体なぁ、このカードはなぁッ、団長が、アーゼが、モロンが、皆が、そしてリーゼが認めてくれたんだよッ!そうさ、お前の言うとおりさ。
カードなんて変な武器、使うべきじゃ無いって、何度も思ったさ。変えるべきだってな。でも、でも、みんな今のままで良いって言ってくれたんだ。ありのままの俺で良いって。
だから、俺はッ、この力で戦い続ける。そして、お前を倒してみせるッ!」
 そうトゥセは叫んだ。対し、アーバインは狂喜の笑みを浮かべた。
『なら、証明してみせよッ、孤高なるカード使いよッ!』
 と告げ、アーバインは天地一体の構えを示すのだった。
 その時、トゥセの両腕から血が(したた)り、それが集まる事で(あか)いカードを形成するのだった。
「喰らえよッッッ!」
 血で出来たカードは音速を超え、アーバインへ迫った。
 その不可避なはずの一撃を、アーバインは天性の反射神経で弾くのだった。しかし、アーバインの手も無事では無く、深く傷ついていた。
「アアアアアッッッッ!」
 トゥセはさらに血のカードを作り上げ、アーバインへと神速で飛ばしていく。
 対し、アーバインは無我夢中で上の2本の腕で、それらのカードを防いでいくのだった。
『グッッッ!』
 今、不死王アーバインは徐々に押されていた。他の4本の腕を使いたい衝動に駆られるが、もし、それを成せばトゥセは間違い無く霊体の手や召喚したカードで攻撃してくるだろう。
 そうなれば、血のカードに防御を割いてしまっている分、それらの攻撃を無効化する手立てがなくなる。なので、今アーバインに出来るのは、上の2本だけでひたすらに血のカードを弾く事だけだった。
 だが、トゥセの攻撃でアーバインの腕はヒビ割れつつあった。
 もはやこれ以上はトゥセのカードを防ぐ事は出来ない。
 その時、突如として攻撃が止まった。あと少しという所で、トゥセは力尽きたのだ。
 血を使い果たし、トゥセは力なく倒れこむ。
 深く傷ついている彼の体からは、もはや血が出る事は無かった。
『危なかった・・・・・・恐るべき敵だった』
 (かた)(ひざ)をつき、アーバインは(つぶや)くのだった。
『しかし、魔王アセルミアは記憶世界に飛んだか。今なら間に合うか?』
 立ち上がりながら、アーバインは言うのだった。
 その時だった。アーバインは背後よりただならぬ殺気を感じ、大きく距離を取った。
『まさか』
 身を恐怖で震わせながら、アーバインは言葉を漏らした。
 見れば、そこではリーゼに唇を重ねるトゥセの姿があった。
 トゥセは切なげに、彼女の口から唇を離す。
「すまない、リーゼ。力を貸してくれ・・・・・・」
 その言葉が届いたのか、リーゼの美しき亡骸(なきがら)は心なしか微笑(ほほえ)みを浮かべたかに見えた。
 刹那(せつな)、リーゼの体から彼女の血がトゥセの両手へと集まっていくのだった。そして、その血はトゥセに残されたわずかな血と融合し、新たなカードを形成するのだった。
「終わりだッ、不死王アーバインッッッ!」
 トゥセは叫び、最後のカード達を放っていった。
 今までで最高の速度で迫るカードが次々にアーバインに突き刺さる。しかし、トゥセの攻撃は止まらない。
もはや、無我夢中(むがむちゅう)でアーバインは6本の腕でカードを叩き落とそうとした。そうでなければ、トゥセのカードは彼の魂をも砕くだろう。
だが、当然、トゥセは次なる力を同時に繰り出すのだった。
 ヒヨコ豆-団の霊体の腕、さらに召喚したカードがアーバインに迫る。血のカードを含めた三種の力がアーバインに襲いかかる。
 これにより、アーバインの防御は許容を越え、彼の腕は1本また1本と砕けていった。
 そして、全ての腕を失ったアーバインは、トゥセの全ての力を受け、成すすべも無く吹き飛んで行くのだった。
 砕け散る不死王アーバインを見届け、トゥセはリーゼの横に倒れこんだ。それから、最愛の人の手を握り、満足そうにその人生を終わらせるのだった。

 ・・・・・・・・・・
 魔王アセルミアと、ウィル、ティアの最後の死闘はアカシック・レコードにて(おこな)われていた。
 すると、空間の全てが鳴動を開始した。
「これは・・・・・・」
 思わず、ウィルは(つぶや)いた。
『ハハッ!我が(コア)がアカシック・レコードと一体と化そうとしているのだ。もはや、誰にも止められぬ。とうとう、この日が来たのだッ!力、力が(あふ)れるぞッ』
 そう叫び、アセルミアは無数の魔刃を放ってきた。
 対し、ウィルはその攻撃を何とか防ぐも、衝撃で吹き飛ばされていった。
「ウィルッ!」
 しかし、ティアのその声は突如として()んだ。
 ティアの体から何十もの刃が生えていたのだ。
 彼女の背後にはアセルミアが瞬間移動しており、彼女の背から刃を突き立てたのだ。
 そして、その刃の一つはティアの心臓を無慈悲に貫いていた。
 戦闘において死は唐突(とうとつ)に訪れるものではあるが、それはあまりに切なくもたらされた。
「あ・・・・・・」
 何かをウィルに言おうとしても、それを紡ぐ事は出来ない。
 そして、全ての刃が引き抜かれ、ティアの体は地面に崩れ落ちた。
 ウィルは言葉にならぬ絶叫をあげ、アセルミアに襲いかかった。しかし、アセルミアは余裕の表情で、ウィルを軽くあしらうのだった。
『感情に(とら)われるとは愚かなものだ、ウィル・ザ・ハーケンスよッ!』
 そう告げ、アセルミアの刃はウィルの体を袈裟(けさ)()りにした。
 これをモロに喰らい、ウィルは鎖骨とその下の動脈を砕かれ、大量に出血しながら倒れていった。
 勝敗はついた。もはや、ウィルはアセルミアには敵わない。
 それが確定したのだ。
 今、アセルミアは勝利を噛みしめていた。
『アカシック・レコードよッ!我に全てを与えたまえッッ!』
 と、アセルミアは叫んだ。
 それに呼応するかに、アカシック・レコードは打ち震えながら扉を出現させた。
 これを見て、アセルミアは狂喜を浮かべた。
 ゆっくりと、魔王は扉へと進む。
 そして立ち止まり、魔刃を扉に突き立てた。
 これを受け、扉は分解されていき、ついには消失した。
 おぞましい笑みを浮かべ、アセルミアは中へと足を踏み入れようとする。
 次の瞬間、扉の内に広がる黒より、銀色の腕が現れた。
 その銀の手から波動がアセルミアへと放たれた。
 とっさに大きく後方に跳び、アセルミアはその攻撃を何とか(かわ)した。
 一方、扉の中からは銀色の甲冑(かっちゅう)(かぶと)に全身を包む騎士が出てきたのだ。顔すら完全に見えず、完全なる銀が騎士を覆っている。しかし、その雰囲気から男である事が(うかが)えた。
『貴様は・・・・・・まさか、ゼオスかッ?』
 と、アセルミアはその名を口にした。
 これに対し、銀色の騎士は無言で(うなず)くのだった。
 それを見て、アセルミアは焦燥(しょうそう)苛立(いらだ)ちで顔を(ゆが)めた。
『ゼオス、銀河を()べんとした皇帝ゼロスの模造品(レプリカント)。女神にも見捨てられた失敗作が、何故このような場に』
 とのアセルミアの言葉に、ゼオスはようやく口を開いた。
「失敗作か、違うな。母なる女神は俺が完璧すぎるが故に(おそ)れ、
封印したのさ、このアカシック・レコードの片隅(かたすみ)に」
 これを聞き、アセルミアは高笑いを発した。
『貴様が完璧?所詮はオリジナルに勝てなかったのだろう?』
「確かに、一度は敗れた。だが、それは経験の差だ。今の俺は奴にも負けはしない。あぁ、そうだ。もはや眠るのも()きた。誰だか知らないが、まずは、お前を倒そう」
 そして、ゼオスは銀に輝く宝剣(ほうけん)を抜くのだった。
 今、アカシック・レコードを(めぐ)る、新たな戦いが(まく)を開けるのだった。

 一方で、ウィルは何とか立ち上がろうとするも、力が入らずにいた。魔王の刃には禍々(まがまが)しい呪詛(じゅそ)()められており、それがウィルの肉体と魂を(むしば)んでいるのだった。
 そんな中、ウィルは(かす)む視界で、魔王アセルミアとゼオスの戦いを見つめていた。
(どうする・・・・・・どうすれば良い?あの二人、俺よりも(はる)かに強い。ティア・・・・・・ティア、教えてくれよ、俺はどうすれば)
 などと()(ごと)を思うのだった。それ程までに実力差は圧倒的なのだった。もちろん、ティアは死しており、何も答えてくれない。
 絶望の中、ウィルの脳裏に神聖なる声が響いた。
『ウィル、聞きなさい。世界を再誕させなさい。今の貴方(あなた)ではあの二人には到底(とうてい)(かな)いません。いえ、あの二人に対抗できる者は、この惑星に存在していないのです』
 これを聞き、ウィルは心の中で(たず)ねた。
(あなたは一体・・・・・・)
 すると、再び声が返ってきた。
『私は惑星アークレイの(せい)(れい)です。今、私の娘を亜大陸ランドシンの核として授けます。どうか、アカシック・レコードと娘の力を使い、ランドシン周域の閉鎖領域を輪廻(りんね)させて(くだ)さい』
(輪廻とは・・・・・・?)
『魔王の核からアカシック・レコードにアクセス出来ます。残った魔力を魔王の核、すなわちオーブに(そそ)()んで(くだ)さい。後は自動的に(おこな)われます』
 との言葉にウィルは戸惑った。しかし、他に選択肢は無いように思われた。
 ウィルは自身の直感を信じ、承諾する事にした。
(分かりました)
『ありがとうございます、光の勇者よ。わずかな時間を稼ぎます。その間にどうか』
 そう言い残し、声は消えていった。
 次の瞬間、光が生じ、アセルミアとゼオスの体を拘束した。
『これは・・・・・・』
 魔王アセルミアは突然の事に声を漏らした。
 また、ゼオスは冷静に自身を縛る光を打ち破ろうとするも、叶わなかった。
 一方、ウィルは意を決して、地面に埋め込まれている魔王のオーブへと駆け出した。
 手を伸ばし、オーブを(つか)む。刹那(せつな)、ウィルの全身を魔王の波動が焼き尽くしていく。しかし、ウィルは決して手を離さなかった。
 仲間達をティアを想い、ウィルは最後の力を振り絞り、魔王のオーブへと魔力をこめていった。
『やめろッ!貴様、何をしているッ!』
 との魔王の焦燥(しょうそう)の声が響く。
 しかし、ウィルの魔力により、アカシック・レコードは起動を開始した。かつてない程の鳴動が生じる。
 世界の再誕、転生が今、始まらんとしていた。
 一方でゼオスは全てを察し、高笑いを発した。
「ハハッ、これは良いッ!ならば俺も(いち)登場人物を演じる事としよう。楽しみにしているぞ、新たなる世界にて、お前と相対(あいたい)する時をッ!」
 とのゼオスの言葉は再誕の光に飲み込まれていった。
『無駄だ。何度、世界をやり直そうと私は復活を遂げる。だが、次にて今度こそ終わらせて見せよう』
 そうアセルミアは捨て台詞を吐くのだった。
 今、魔王アセルミアを含め、全てが消失していった。
 隔離されたランドシンの全てが次なる周回へと書き換わっていく。
 一方で、ウィルの魂は不可思議(ふかしぎ)な領域に存在した。
 映像が流れる。
 狂ったマザー・コンピュータによる宇宙での戦い。
 (おおかみ)の頭を持つ戦士ソルガルム。
 そして、準マザー級であるシャイネ。
 魔導アルマに乗るクオーツ。
 そのクオーツとシャイネこそ、後のクオンとシャインであり、救世の基盤であった。
 英雄なる彼らの魂の波動を感じ、ウィルは涙を(こぼ)した。
「どうか、お願いだ。早く、この惑星に来てくれ。
そして、この惑星アークレイを、亜大陸ランドシンを救う力を貸して欲しい。どうか俺達と共に戦ってくれ、どうか・・・・・・」
 その言葉は彼らに直接-届きはしなかったが、その想いは無意識なる領域を()て、彼らの魂に伝わる事となる。

 そして、新たな世界が誕生する。
 再誕せし亜大陸ランドシン。
 ウィル達が(いま)だ生まれはしない(いにしえ)の時、それが今、始まる。
 だが時は過ぎ、彼らはやって来るであろう。
 その時を惑星アークレイは、亜大陸ランドシンは待ち続けているのだ。



   ランドシン伝記 第1章へと


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