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愛のモノリス 作者:稲葉孝太郎

第2章

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作られた物語

 ドアの向こう側で神楽たちを待ち受けていたのは、先ほどと似たような子供部屋。
 しかし、全く同じではない。ドアのちょうど前方に勉強机、その左手にベッド、さらに神楽の左手の方向には、本棚がしつらえてある。
 その棚の前には、いくつか絵本が散乱していた。
 神楽は用心深く部屋の中に立ち入ると、室内をじっと観察する。
「どこから気配を感じる?」
「そこと……」
 かぐやは、まず散乱した絵本を指差す。
「あそこです……」
 もう一ヶ所は、目の前の勉強机だった。
 神楽はどちらにも興味を示さず、かぐやの方へ向き直る。
「この部屋のどこで目が覚めたか、覚えてる?」
「え、目が覚めた場所ですか……? それは……」
 かぐやが、奥にあるベッドを指差す。
 神楽は遠目に、シーツがくぼんで乱れていることを確認した。
「起きた後、何かしたことは? 物に触れたとか?」
 かぐやは、首を左右に振る。
「いえ、神楽さんがいないことに気付いて……それで不安になって部屋を出ました。記憶の欠片らしき気配はすぐに察したんですけど……先に神楽さんを探そうと思って……」
「なるほどね……」
 賢明な判断だと感心し、神楽は再び視線を部屋の方に戻した。
 どちらから手をつけるのか、かぐやが入口のそばで興味深そうに伺っている。
「少し他の部屋を見てみましょう」
「え?」
 かぐやの喫驚に、神楽が体を入口へと向けた。
 冗談を言っているようには見えない。
 しかし、なぜ肝心のアトラクタを放置するのか、かぐやには見当もつかないようだ。戸惑いの眼差しを送りながら、彼女は神楽に質問を投げ掛けた。
「ロスト・メモリーはどうするんですか……?」
 そんなかぐやの前で、神楽は既に敷居を跨いでいた。かぐやも急いで廊下に出る。
「時間はまだ十分も経ってないわ。メモリー候補が複数見つかった以上、第三、第四のそれがないとも限らないから……。それに、他の部屋の状況から、何かヒントが掴めるかもしれないし」
 その説明にようやく合点がいったのか、かぐやは大人しく神楽の行動に従った。
 神楽は廊下の左右を一瞥し、この階層の地理を把握しようと務める。彼女が目覚めた部屋を一番奥にして、同じ側にさらに扉がふたつ。反対側の壁に目をやると、そこにも扉が三つある。但し、神楽が目覚めた部屋のちょうど正面にあるドアは、他の部屋のものとは違い、厚い鋼鉄でできていた。
 そのドアを神楽が訝し気に見つめた瞬間、かぐやがハッと声を上げた。
「あ、あの扉、見覚えがあります」
 神楽は少女の方へ首を曲げ、先を続けるよう目で指示する。
 かぐやは昨晩のことを思い出しながら、震える唇を開いた。
「あ、あれは、泰人さんと訪れた夢の中にもありました。確か……廊下を塞ぐ非常口のようなものだったと思います」
「非常口……ね……」
 神楽はしばらくの間、かぐやが非常口と呼んだそれを見つめていた。
 この先に、泰人たちが悪戦苦闘した空間が続いているのだろう。いわば記憶と記憶を繋ぐワープホールということになる。となると、ここはよほどのトラウマハウスなのだろうか。神楽はそんなことを考えながら、ひとつ右の扉に移る。
「この扉は、私がいた部屋のものと一緒ね……」
 神楽はそう言いながら、とりあえず今出て来た部屋の正面にあるドアノブを回した。
 扉が開き、神楽たちを中へと迎え入れる。
「……ん?」
 部屋の中に足を踏み入れた途端、神楽は奇妙な感覚に襲われた。
 部屋の構造には、別に大した違いはない。これまで訪れたふたつの部屋と同様に、カーテンのそばにベッドが置かれ、クローゼットがひとつと、勉強机に本棚がひとつ。
 ただ、彼女が違和感を覚えたのは、それらの家具の雰囲気だった。最初の部屋が幼稚園児用、二番目の部屋が小学校低学年用だとすれば、ここはまるで、小学校高学年程度の部屋に思われる。
 神楽は本棚に歩み寄り、並んでいる本の背表紙を追う。結構な数の漢字が入り交じったタイトルの列に、少女は自分の直感が正しいことを察した。
「……かぐやさん、妹がいたっていう記憶はない?」
「え、妹ですか……?」
 かぐやは、困ったように唇に指を添え、しばらく考え込んだ。
 神楽はその仕草を見て、期待薄であることを悟る。もし妹がいるなら、あるいは妹の存在が重要であるならば、既に何らかのリアクションを起こしているはずだ。
 神楽は部屋を出るようにかぐやを促し、さらにもうひとつ右の扉に入る。
 そして、ある結論に達した。
「なるほど……そういうことね……」
 かぐやの視線を背中に感じながら、神楽は勉強机の上を漁った。
 数学や物理の参考書が、無造作に放り出されている。
「あの……何か分かりましたか……?」
「ええ、少しだけ」
 かぐやの問い掛けに、神楽は肩越しに答える。
「この部屋は、おそらく月代さんの寝室だったんでしょうね。そして、どういう理由かは分からないけど、月代さんの年齢が上がる度に、部屋を変えたらしいわ……私が目覚めた部屋が一番幼いときの寝室で、ここは中学生の頃の部屋」
 神楽にそう言われ、かぐやは何の変哲もない部屋の中に視線を走らせた。クローゼットの上に積み木の城が置かれているだけで、それ以外に子供心を残すものは何も無かった。
「そ、そう言われれば、ここはさっきの部屋より大人びてますね……」
「となると、最後の部屋は……」
 神楽は黙って廊下に出ると、反対側の扉に飛び込んだ。
 かぐやも、慌てて後をついて行く。
「やっぱり……」
 神楽は、目の前に現れた部屋を軽く一瞥し、そう呟いた。
 部屋の構造は、中学生の頃の部屋と全く同じ。
 ただ、もはやメルヘンチックな装飾は消え去り、いかにもかぐやの性格に合いそうな、清潔で簡素なデザインになっている。
「多分、ここが本来のかぐやさんの部屋なはず……」
 そこで、神楽にある推理が閃く。
「月代さんは高校生?」
「え?」
 いきなり年齢当てクイズを始められ、かぐやは返答に詰まった。
 神楽はもう一度部屋の中を見回しながら、推理の根拠を提示し始める。
「ここで部屋が終わってるってことは、大学生にはなってないと思うんだけど……。もちろん、実家を離れたとか、そういう可能性を度外視すれば、の話よ……」
 そこで、神楽は頭を掻く。
「帰ったらフブキに、十五歳から十八歳の間で、失踪届けが出されている人物を、片っ端から調べてもらうことにしよう」
「わ、分かりました……でも、さっきの部屋でロスト・メモリーを再生すれば、それで解決しちゃうかもしれないんですよね?」
 期待を含んだ声で、かぐやがそう尋ねた。
 それは保証できないと言いたいところだが、ネガティブな気分にさせる必要もない。そう考えた神楽は、なるべく気軽な返事を返す。
「ま、それが一番ね。最後に、ちょっとだけ廊下の奥を見ておきましょうか」
 神楽は部屋を出ると、右手の方向に進路を変えた。
 数歩先で、廊下は左へ直角に曲がっている。おそらく階段だろうと考え、神楽はさらに歩を進めた。
「え?」
 神楽は、自分の眼を疑った。
 神楽の予想通り、そこには階段があった。だが上りしか無く、しかもその階段は、なぜか途中で途切れているのだ。数段先でフッと空中に消えたように、足場が無くなっていた。
「こ、これはどういうことですか?」
 かぐやの声に、神楽は我に返った。
「神楽さん、この消えてる階段は何ですか?」
 同じ質問を繰り返すかぐや。
 神楽は階段の切れ目を見つめながら、そっと答えを返す。
「多分……多分だけど……月代さんは、この階段を上ったことがないんじゃないかしら……だから、記憶もここで途切れて……」
 そのとき、神楽はある可能性に気が付いた。
 上り階段しかないことの意味。その重大性に、神楽はその場を駆け去る。
「か、神楽さん⁉」
 神楽は高校の部屋に飛び込むと、ベッドの上に乗り、カーテンに手を掛けた。
 そして、それをサッと左右に開く。
「窓が……ない!」
 ドア枠に顔を覗かせたかぐやも、それを神楽の肩越しに見てしまった。
 顔が真っ青になり、かぐやは第一階層で見た部屋の光景を思い出す。
「こ、ここは……地下……?」
 それが、かぐやの辿り着いた結論だった。
 そしてその結論が、かぐやを様々なおぞましい空想へと誘う。
「わ、私……私、まさかここに監禁されて……」
 クライアントの精神が不安定になったことに気付き、神楽は自分の失敗に舌打ちした。
 もう少し慎重に潜入を進めるべきだった。
 神楽はかぐやに寄り添うと、彼女の震える肩に手を掛けた。
「大丈夫、その心配はないわ。ここであなたが普通の学生と同じ生活を送っていたことは明らかだし、あなたの性格や知識を見ても、地下生活を送っていたとも思えないから……。おそらくあなたのご両親は、何か特別な事情があって、地下室に子供部屋を設けたのよ」
 半分は言い繕いだったが、半分は本気だった。
 それぞれの部屋の様子や、昨晩泰人のマンションへ向かう途中で聞かされた話などを総合してみると、かぐやが暴力的な犯罪に巻き込まれていた可能性は低い。むしろ、特殊な病気を患っていたのではないか。それが、神楽の現段階での推測だった。
 そして、口にこそしなかったが、その病気を巡って、何か違法な企みが蠢いているのではないかと、神楽はそんなことを考えていた。忘れ屋たちの動きも、それに関連する記憶の抹消を狙っているのかもしれない。
 神楽はかぐやを落ち着かせ、先を続けた。
「とりあえず、このブロックは全部調べたから、メモリーの再生に取りかかりましょう」
「は、はい……」
 ふたりは、かぐやが目を覚ました部屋に戻り、室内を確認する。
 床の上と机の上。どちらの気配から取りかかるべきか、神楽はしばらく逡巡した。
 そして、おもむろに床の上へ身を屈める。
「この本が怪しいのね……」
 神楽はそう言って、本の数を数えた。全部で三冊。全てページが開いたままで、カラフルな挿絵と大きく印字された平仮名の多い文章を速読する。
「全部絵本ね……しかも、童謡だわ……」
 神楽は、とりあえず一番近くにあった絵本を手に取り、表紙を読み上げた。
「シンデレラ……」
 神楽は、開かれていたページに戻り、挿絵からそれが何の場面かを見て取る。ちょうど十二時の鐘が鳴り、シンデレラがお城を抜け出すシーンだった。脱げたガラスの靴が、長い長い階段の途中に転がっている。
 それ以上の情報を得られなかった神楽は、絵本をもとの場所に戻し、二冊目を手に取った。
「あら、これは面白いわね」
 神楽は、場違いな興奮を見せる。
 何が面白いのかと、かぐやが肩越しに覗き込んできた。
「そんなに面白いお話なんですか?」
 かぐやの質問に、神楽が顔を上げる。
「お話が、じゃないわ。とにかく見て」
 神楽は開いていたページに親指を挟んだまま、パタンと絵本を閉じた。
 十二単を着た面長の女性が、表紙の中で月を見上げている。
 そう、それはあまりにも有名なお伽噺……。
「かぐや姫よ。あなたと同じ名前だから、お気に入りだったのかしら?」
 神楽は、少しからかうような口調でかぐやにジョークを飛ばした。
 ところが当のかぐやは、じっと表紙を見つめたまま動かない。
 いきなりヒントにぶちあたったのかと、神楽の顔が真剣味を帯びる。
「月代さん、何か思い出した?」
「い、いえ、そうではなく……」
 かぐやは首を斜め四十五度に曲げた後、ゆっくりと唇を動かす。
「このタイトル、初めて見たもので……どういうお話なんですか?」
 かぐやは、いたって真面目にそう尋ねた。小難しい作家の名前か、あるいは古典の聞き慣れる題名を問うような、そんな口ぶりだった。
 神楽は、驚いたように表紙を見返す。まさかタイトルを見間違えたのではないかと、神楽はサッと題字を追った。
 確かに、それはかぐや姫だった。
「月代さん……かぐや姫の話を知らないの? 有名なお伽噺よ?」
 かぐやは、何だか申し訳なさそうに首を左右に振る。
「す、すみません……もしかすると、私はあんまり本を読まないのかも……」
「読書量なんて関係ないわ。誰でも知ってるお話。むしろ、知らない人を探す方が……」
 そこまで言って、神楽はふと口を噤んだ。
 表紙からもかぐやの顔からも視線を逸らし、じっと宙を見つめる。
「そうか……これがブロックされてる記憶への鍵なんだわ……」
 意外な一言を聞いて、かぐやが息を呑んだ。
「お、お伽噺がヒントなんですか?」
 かぐやはますます身を屈め、神楽ににじり寄ってくる。
 艶やかな髪が神楽の頬に触れ、何とも言えないよい香りが辺りを包んだ。
「神楽さん、どんなお話なんですか?」
 神楽は、絵本へ手を伸ばしたかぐやの腕を掴み、それを表紙から引き離した。
 何をするんだと、かぐやは不機嫌そうに神楽の顔を見る。
 だが、神楽は冷静に言葉を返す。
「月代さん、本当にこの話を知らないのね?」
 神楽の確認に、月代はぽかんと口を開けた。
 そして、はっきりと答えを返す。
「はい、知りません」
「微塵も? 一部だけ覚えてるとかは?」
「いいえ、全く」
 その答えに満足した神楽は、絵本を背中に隠し、かぐやに視線を戻す。
 事情の分からないかぐやは、混乱したように黙ってその視線を受け止めた。
「月代さん、これからちょっと連想ゲームをしましょう」
「はい?」
 かぐやの声が上ずる。神楽が何を言っているのか、理解できなかったようだ。
「連想ゲームよ。リンゴと言ったら赤とか、そういう単純な遊び。但し……」
 そんなことをしている場合ではないと抗議しかけたかぐやに、神楽は素早く人差し指を向ける。
「テーマはこの物語よ。私が今から物語の一部だけを話すから、その先を自由に考えて話を続けて欲しいの。要するに、かぐや姫のフリーシナリオってわけ」
 これはお遊びではない。かぐや姫のストーリーが少女の記憶から消えている以上、そこに何らかのトラウマがあるはずだ。そう読んだ神楽が仕掛けたゲームである。かぐやは神楽を信頼したのか、それともその場の勢いに呑まれたのか、まごついたように両手を胸に当て、神楽のスタートを待った。
 神楽は、どこから始めたものかとしばらく考え、おおよその見当をつける。
「やっぱり最初からね……。用意はいい?」
「は、はい」
「昔々あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんはある日、竹薮の中へ竹を取りに行くと、あるものを見つけました。それは、何だと思う?」
「えっと……竹薮の中ですよね……」
 かぐやは頬に指を当て、しばらく考え込む。
 これはいけないと、神楽が口を挟んだ。
「ごめん、連想ゲームだから、考えちゃ駄目なの。直感で答えて」
「直感……ですか……」
 それでもかぐやは回答に手間取る。どれだけ几帳面な性格なんだと、神楽は若干呆れてしまった。
 しかし、そう思ったのも束の間、意外な答えが返ってきた。
「えーとですね……おじいさんは、竹薮の中で宇宙船を見つけます」
「え?」
 思わず声を上げてしまった神楽。
 しまったと自分の口を押さえるが、後の祭りである。
「へ、変でしたか?」
 かぐやが、少し心配そうな顔をした。
 神楽は首を左右に振ると、かぐやが疑問を持たないうちに先を続ける。
「じゃあ、その宇宙船を見つけたおじいさんは、何をどうしたの?」
「おじいさんは……いえ、おじいさんは何もしません。宇宙船の扉が開いて、中から奇麗な娘さんが出て来ます」
 メチャクチャなスタートを切った物語が、いきなり本線へと戻ってしまった。これには、さすがの神楽も驚きを隠せない。
 しかし、ここで不自然な顔をすると、またかぐやの連想を阻害してしまう。
 そう考えた神楽は、すぐに三番目の質問に取りかかる。
「おじいさんは、その娘をどうしたの?」
「家に連れて帰ります」
「その後は?」
「うーん……幸せに暮らします……」
 いきなり話が終わってしまった。
 おかしい。かぐやの思考回路が、ではない。何の兆候も示さずに、物語が無事終わってしまったことがだ。もしかして、本当にかぐや姫を知らないだけなのかと、神楽は奇妙な徒労感に襲われかけた。
 そのとき、ふいにかぐやが唇を動かす。
「あ、待ってください。まだ先があります」
「ん……? どんな?」
 神楽の好奇心を受けて、かぐやは先を続ける。
「その娘は、若い男の人に恋をします。その若い男の人も、娘のことを愛していたので、ふたりは仲良く結婚するんです」
 なぜか恋愛話になってしまったかぐや姫だが、神楽の中で希望が蘇る。これだけ具体的に話を繋げられるということは、やはり何かあるのだ。
 神楽は、何とかこの物語を進めようと頭を捻った。
「結婚して、どうなるの?」
「そうですね……しばらくは幸せに暮らすんですが……」
 かぐやは、すっかりストーリーテラーになっていた。
 楽しそうに先を続ける。
「ある日、宇宙船で月へ行くことになるんです」
「つまり、帰るわけね?」
 神楽は、うっかり話の続きを口走ってしまった。
 ところが、かぐやはそのケアレスミスに便乗しない。
「帰る……? 私、娘が月から来たって言いましたっけ?」
 もはや神楽には、この物語の行き先が見えなくなっていた。
 神楽は、慌ててかぶりを振る。
「い、いえ、私の勘違いよ。なんで宇宙船で月へ行くことになったの?」
「それはですね、月から石を持って帰るのと、もうひとつ……」
 かぐやは唇を止め、しばらく口をパクパクさせた後、全く繋がりのない言葉を続けた。
「で、その月の石を持って帰るために、宇宙船に乗って……」
「待って、もうひとつ何?」
 神楽は、かぐやにストップを掛けた。かぐやが言わなかったこと、それこそ彼女の記憶の真相に迫るキーワードだと、神楽は判断した。
 ところが、かぐやは神楽の質問には答えず、かといって勝手に話の先を進めることもしなかった。いや、そもそも神楽の存在が消えてしまったかのように、遠い目をして宙を見つめている。
 神楽は最初、かぐやが自分自身のアイデアに驚いたのかと思った。
 そうではなかった。かぐやは両腕を抱き締め、身を震わせながら背中を丸めた。おこりに掛かったように全身を痙攣させ、荒い息を吐き始める。
 神楽が体を支えようと駆け寄った瞬間、かぐやの口から悲鳴が漏れた。
「焼ける……体が焼ける……! 誰か助けて! 早く! 早く誰か!」
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