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七五三のサンタ

作者:あまね
 七夕の日の願いを書かれた短冊が書かれた笹を流します、そうすると願いがかなうことがあるそうです。
 ミヤはそれを聞いて、さっそく七夕の夜に短冊に願いをこめて小さい笹と一緒に川に流しました。


「よいしょ」

 天の川から上がったのは一人の短冊の新人妖精タナでした。
 これから天の神さまに、自分のおでこに張られた願いをみせにいくところです。
 何せはじめてのお役目、失敗するわけにはいかないのです。

 ひとり、歩いていると大きな門の前にたち、いよいよ初めて天の神様にお目通りをお願いするのです、
そう思いながらわくわくしながら門をくぐろうとすると、門番にとめられました。

「キミどうした」
「はい天の神さまにお願いをしにきたのです」

 おでこの短冊を指さしながら、うれしそうにニコニコ微笑みながらタナはそういいました。
 そんなタナを見ながら門番は申し訳なそうに告げます。

「残念だけど謁見時間はおわっているぞ」
「えっだって七夕の時間はまだ終わっていませんよ」

 タナの言うとおり七夕の時間はまだ終わっていないので普通であれば、短冊の妖精たちは天の神様にお願いをいいにこれる時間なのです。
 それなのにタナは入れないことにびっくりしてしまいました。

「うーんキミにいっても仕方ないんだけど大人の事情ってやつさ」

 実は天の神様は、娘の織姫とその恋人の様子がきになってしまい、謁見時間を早めに時間を切り上げてしまったのでした。 
 門番はどうせだれもこないだろうと、上司である天の神様の言うとおりに承っていたため、七夕の時間にもかかわらず、短冊の妖精であるタナを追い返そうとしているのです。

 本来なら文句のひとつや二つでてもおかしくはありません。
 しかし新人のタナは門番の言った大人の事情の意味はわかりませんが、なるほどかっこいいと思ってしまい帰ることにしました。

「わかりました、お役所仕事がんばってください」
「あぁうん大体あっているんだけどあんまり大きな声でいわないでね」

 門番に応援をおくり、門から遠ざかったところで、タナはこまった事実に気づいてしまいました。

 そう、天の神様に会わないと、自分に願いを書いてくれたミヤちゃんの願い事が叶わないのです。
 だけども今更門番にやっぱり会いたいですとは言い辛くなりました。

「なんでこんなことになってしまったんだろう」

 どうしようもなく途方にくれるように、天の川のそばをうろちょろしているとタナが無意識で蹴った石が水面に落ちました。
 すると、魚が顔をだします。

「それはお前がどんくさいからだろう」

 大きな口をパクパクさせながらそういいました。

「大体、お前の願いごとかいた奴も馬鹿じゃないのかサンタとおしゃべりしたいって」
「ミヤちゃんはかわいいよ」
「だれもかわいさなんて聞いてねぇよ、バーカ」

 そういうと、魚はひょいと水面から飛び跳ねて、タナにぶつかりました。

 その時、タナの額の短冊を器用に口でちぎり、笑いながら悠々と言ってのけたのです。

「バーカ、バーカやっぱりどんくさいな」
「短冊がやぶけっちゃった、これじゃあ天の神様に報告できない」
「どうせ、元々できない願いなんだから一緒だよバーカ」

 そういうとぽちゃんと、音をたて水中に魚は戻っていってしまいました。

「どうしよう」

 そうつぶやきながら、ぐるぐるとその場を回っていますが、いい案が浮かびません。
 魚に破られた短冊の破片も川の奥底へと沈んでしまいました、このままではミヤちゃんの願いを届けることもできないとタナはだんだんと涙が込みあげてきました。

 どうしたらかいいのかわからなくなったときに後ろから女の人の声が聞こえてきました。

「キミ何をうろちょろとぐるぐるしているの?」

 タナが振り返ると、赤い着物や橙色のを幾重にも重ねてきた女の人が立っていました。

「おや見たところ短冊の妖精みたいだね」
「お姉さんは誰ですか」
「お姉さんは元雛人形の妖精マチだよ」
「短冊の妖精のタナです」

 泣きそうな顔をゴシゴシと拭きながらマチはやさしく聞いてきました。

「道に迷ってんならお姉さんが案内してあげるよ」
「違うんです、大人の事情なんです、お役所仕事なんです、魚が願いをちぎったんです」
「何を言っているのかさっぱりわからないね、ちゃんと説明してみな」

 タナは、マチに宥められ、なんとか混乱をしながらも門番に、天の神様には会えないということを伝えられて、ミヤちゃんの願いが叶わないことになりそうで、そして短冊も魚にちぎられてしまったとなんとか説明しました。

「それでタナはどうする」
「願い事とどけられないし、どうしたらいいのかわからないんです」
「天の神様が叶えられないなら、タナが叶えればいいんだ」
「ボクがですか」
「あぁそうとうも」
「はい」

 天の神様に会えなかったのは僕なんだから、せめてマチお姉さんのいうとおり、ミヤちゃんの願いごとを僕が叶えてあげようとそうタナは決めました。

「しかし、ミヤって娘はなかなか難しくて珍しい願いをしたものだね」
「そうなんですか」
「あぁお金持ちになりたい、世界平和とかく子供は多いけれど、サンタとおしゃべりというのは珍しい」
「サンタさんもしかして天の川にはいないんですか」
「たまにバカンスしに遊びに来ているよ、今年はまだみていないね」

 サンタとおしゃべりをしたいというミヤちゃんの願いを叶えてあげたいけれど、サンタがいないとなるとサンタ自身にお願いするのは難しそうです。
 それに、遊びに来ている人に仕事を頼むのは、心苦しい部分がタナにはありました。

「頼めないならどうしたらいいんでしょうか」
「これはタナがサンタになるしかないね」
「がんばります」
「よーしその意気だ、じゃあまずはトナカイ用意しないとねお姉さん心あたりあるよ」
「そうなんですか、お願いします」
「よーしちょっと待っててな」

 そういうとマチは天の川に、勢いよくとびこみました。
 マチはしばらくすると先ほどの一匹の魚を素手でつかんでつれてきました。

 タナがよくよく見てみると、それは先程タナの短冊をだめにした魚でした。

「こいつは鯉のぼりの妖精のマゴイで私の幼馴染で、自分が龍になる試験を何十年とおちてるもんだから、タナみたいなキラキラした子供をすぐいじめる、すごいだめなお兄さんだ」
「なにすんだよバーカはなせよ死ぬだろ」

 マチはニコニコとわらいながらも凄い力でしめつけているのでしょう、マゴイは悪態をつきながらバタバタと身をよじっていますが、一向にその手から逃れる事はできずにいます。

「こいつがさっきのお詫びでトナカイ役をやってくれるって良かったなタナ」
「本当ですか」
「誰がやるかバーカ」
「やるよな、マゴイ」
「やらねぇよいい加減放せよバツイチ女」

 なおもバタバタと身をよじり、悪態をつきながらどうにか隙をみて逃げ出そうとしたマゴイですが、どうにも上手く逃げ切ることができないでいます。

「タナ、お姉さんが合図するまで、目を閉じて耳を塞いでいてくれ、お姉さんとの約束だぞ」
「はい」 

 タナは何だろうと思いながらも素直に目を閉じて耳を塞ぐ事にしました、タナが目を閉じた事を確認するとマチはマゴイを川原に親の敵のようにたたきつけました。

 マゴイは声にならない悲鳴を上げ川原をゴロゴロところがっています。

「八つ当たりして迷惑をかけたんだよな、マゴイ」 

 もう一度つかみ、さらに勢いよくたたきつけようとします。

「待て、お前それでもお雛さまか、子供もみているだろう」
「お前も知ってのとおり、バツイチの私はお雛さまは休業中だよ」

 どうにか怒りを静めようとタナをダシにしようとしていますが、タナはマチの言いつけを守り目をギュッとつぶって耳を塞いでいます。

「幼馴染のよしみで、あと数秒まってあげよう」
「やる、いややらしてください、トナカイやってみたいんです」
「タナもういいぞ、トナカイ役やってくれるそうだ」

 マゴイをぽいっと投げ捨て、タナの頭を優しくなでて合図をおくるとタナは目をあけました、そしてそこにはゼーゼーと息を切らしながら、まな板の上の鯉というのにふさわしくどうにでもなれという気配に満ちて力なくうなずくだけでした。

 マゴイの気力が回復をするのをまって、作戦会議をすることにしました。

「さて、マゴイはやく大きくなって、タナを送りな」
「いや大きくなったところでトナカイにはみえないだろ」
「そこらへんは代車ということでどうにかなるだろ」

 ならねぇよというマゴイの至極まっとうなボヤキはマチのひと睨みでかき消されました。

「まぁ代車でもいいけどよ、さすがにコイツじゃサンタとして小さすぎだろ」
「ボク頑張って成長します」
「バーカ、ミヤってガキも成長する事を忘れるなよ、何十年単位で待たせる気だよ変身しろよ」

 こんな風にとマゴイは手本をみせてくれますが、タナは大きくなる変身の方法を取る事ができないですと
申し訳なさそうにいいました。

「お前なにができるんだよ」
「うぅすいません」
「タナ気にするな、マゴイも何十年と龍になれていない男だからな」
「うるせぇ」
「それにプレゼントを届けるという事と願いを誰かに届けるそう違いはない、サンタはタナだ」
「ボクがサンタだったんですか」

 いや、ちがうからという至極まっとうなマゴイの突っ込みも盛り上がっているタナの耳には届いていないようです。

「タナ、これを着ていろサンタといえば赤い服だからな」

 マチはそういうと一番上の赤い着物をタナに羽織らせました、そして二人の妖精をのせてマゴイは天の川を泳ぎ、空をわたりながら、どんどんと進んでいきついに、ミヤの住む家のまどに近付きます。

 コンコンと小さくノックをタナがしてみると、ミヤは眠りから目がさめたようで窓近くにノソノソと近付いてきて窓がひらきました。

「どうもミヤちゃん、サンタのタナです」

 タナがぺこりとお辞儀をするとミヤちゃんはにこにこと笑いながら嬉しそうにいいました。

「あわてんぼうだね、サンタさんまだ七夕だよ」

 そうマチもマゴイもサンタが十二月のクリスマスに出現するという事をすっかり忘れてしまっていたのです。

「ミヤちゃんがおしゃべりしたいと短冊に願ったので、あわててやってきました」
「本当うれしい」

 天の川が見える七夕の日にタナはサンタとしてミヤと楽しく、ミヤが眠りにつく時まで仲良くおしゃべりをしました。
 そんな二人の様子をほほえましく、どこか若い時間を羨ましそうに見ている二人の妖精がいました。


 翌朝不思議な事にミヤの窓辺には2枚の短冊が置かれていました。

『次こそ合格できますように』
『サンタさんとけっこんできますように』

 とりあえず昨日の夜の不思議な時間を思い出しながら、ミヤはこの短冊を来年の短冊と一緒につるしてあげようとそう思いながらミヤは宝箱の中にしまいました。





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