ああ、なぜ、神はわたしをこの世に生まれさせたのか?
こんな何もないわたしにどうしてこの世に生きる居場所があるのだろう?
誰もわたしを必要としていないのに、
生まれてきてから今日までただ、「役立たず」「父なし子」と罵られるだけなのに・・・。
こんな辛い思いをするだけならば、いっそ最初から生まれてこなければよかった。
これ以上、どう頑張ればこんなわたしにも安らぎや幸せが巡ってくるのだろう?
どうしてこんな世の中に・・・、
人が人を狩って身包みはがそうとする、
こんな果てしない砂漠のど真ん中に
わたしは生まれてきてしまったんだろう?
それが分からず、イエスは泣いた。
悲しくて悲しくて、涙が滝のように溢れてきて息ができなくなるくらい激しく泣いた。
それでもどこからか声がしたり、何かが突然、頭上で光ったり、白い羽をはばたかせた天使らしき人物も何も現れなかった。
ただ、悲しい、どこまでも悲しいイエスの惨めな嗚咽だけが延々と続いていた。
そうして、イエスはどうしても神に聞きたくなった。
「神は、どうしてわたしにばかりこんな苦しみを与える?
わたしが一体、何をしたと言うんだ?」
その答えが知りたくて、どうしようもなく神にそれを聞きたくて、
イエスはふと、自分の手元にある律法書(旧約聖書)をそっと開いた・・・。
※
※
※
その時、ヨブは言った。
「わたしは何も悪い事なんてしちゃいない。
わたしはもう、自分がどうなったっていい。
ただ、もう自分の人生そのものが嫌だ。
結局、皆、一緒なのだ。善人も悪人も神にとっては一緒なのだ。
そして、神はどちらの人間も容赦なく滅ぼす。
きっと神は何も悪い事をしていない人間に災難をもたらしてその人間が絶望するのをあざ笑っているんだ。
だって、そうじゃないか。
だったら、どうして悪事を働く人間の方が安穏に暮らしていられるのだ?
しかも、長生きして好き勝手に権力を振り回して?
彼らは自分の子孫をその目で眺め、その人生も安楽で何の不安もない。
それで一体、いつ彼らの上に神の怒りが落ちたと言うのだ?
それどころか、彼らはますます富んでたくさんの人達から持ち上げられ、
それでいい気になっては酒を飲んで踊り明かし、
朝から晩まで笛やタンブリンの音に酔いしれている。
そうやって人生の大半を思う存分、笑って謳歌し、そしてその後、安らかに墓に入る。
だが、そんな彼らのほとんどが決まって神にこう言うのだ。
『ほっといてくれ。俺達は自由なんだ。
あんたの指図は受けないよ。神とやらの道なんて知りたくもない』、
『どこに全知全能の神とやらがいる?
その神様に祈ったら何かいいことでもあるのかい?』、
『神に祈るよりも自分の知恵で何とかした方がずっと確かだね』と。
そんな畏れも知らず、鼻持ちならない驕り高ぶった連中に
今まで神はどれほどの苦難や困難を与えたのだ?
どれほど悲しみや災難を彼らの上にもたらしてくれたことはあった?
何も、何もしてくれなかったじゃないか。
ああ、神よ、わたしは今までそんな連中のようにはなりたくないと思って
今まであなたに従ってきたつもりです。
なのに、どうしてわたしにこんなひどい仕打ちをなさるのです?
わたしが一体、何をしたとおっしゃるのです?
どうか、教えてください。
わたしが一体、どんな罪を犯したと言うのでしょう?
あなたはよくご存知でしょう、
わたしの人生がこれまで悩みと苦労の連続だったということを。
一体、わたしの親戚や友人達がこれまで一度でもこのわたしを助けてくれたことはあったでしょうか?
妻や子がこのわたしを支えてくれていたでしょうか?
いいえ。それまで散々、親戚や友人達によくしてやっても財産や地位を失ってしまえば
『ほら、見たことか、きっと裏では悪い事して稼いでいたんだよ』
と盛んにわたしの悪口を言い、こうして没落したわたしをあざ笑います。
道を歩けばその噂を聞きつけた見知らぬ子供がわたしに向かって唾を吐いてくるのです。
妻も病んだわたしの姿を見ると情けなくなるのか首を横に振っては
しょっちゅう『甲斐性なし』と怒鳴りつけてきます。
けれど、わたしはこれまで一生懸命、彼らに尽くしてきたつもりです。
なのに、こうしてすべてを失った途端、まるでこれまで何もなかったかのように
彼らはわたしを馬鹿にします。
さらにわたしがこれまで散々、悪事を働いて他人に迷惑ばかりかけてきた人間と同じように扱い、
わたしには身に覚えもない罪を非難して、何度も懺悔を迫ってくるのです。
ですが、今更、わたしが申し上げるまでもなく、
こういった事は神であるあなたならすべてご存知でしょう?
それにわたしの人生の日々がどんどん過ぎていき、もう終わり近くなっていることもあなたは知っていらっしゃるのに、
それでもあなたはこうやってわたしに苦難の矢をずっと撃ち続けるのですか?
ああ、神よ、教えてください。
一体、わたしが何をしたと言うのです?
わたしは嘘もついてませんし、人殺しも盗みもしていません。
それどころか力なき者達の力となれるようわたしは日々、努力してきたつもりです。
しかも、わたしはあなたにいつも感謝の祈りを捧げ、あなたを心から畏れ敬ってきました。
そうしてわたしは皆の無事と平穏(平和)を願ってきただけなのに、
どうしてわたしには“人の悪意”だけが残されるのでしょう?
わたしは光を求めたけれど、わたしの周りはいつまでたっても暗闇ばかりです。
わたしはその暗闇に閉ざされたままただ一人、あなたに救いを求めながら
“人々の”非難と中傷、そして罵りに囲まれて暮らしているのです。
だから、わたしは何より人が怖い。
死んだ人間よりも生きている人間の方が、
互いに群がって同調し、相手が弱いと見ればいたぶりつつき回して
時には殺そうとさえするそんな生きた“人間の群れ”の方がわたしには一番、怖い・・・。
そうして、わたしはどこへも行かず、もう誰とも話す気にはなれない。
だが、わたしがそう言うとあなた達はわたしに向かってこう言う。
『世の中、そんな人間ばかりじゃない。この世界はもっと広いんだ。
お前はまだ世の中をよく分かっちゃいない。だから、もっと外の世界を見てくるといい』と。
かつてわたしも若い頃、いろいろな人からそう言われて勇気を出して広い世界を見てみようと外に出た。
きっと地球の果てまで行けばそんな理想郷が広がっているのだと
わたしも“人を信じて”遠い外の世界にまでわざわざ足を伸ばして行ってみたのだ。
だが、そこには何もなかった。
ただ、“互いに使っている言葉の音と形が違うだけで”何もこことは変わらない、
全く同じような“人間の群れ”がうじゃうじゃといるだけだった。
だから、もうそんな気休めを言うのはやめてくれ。
わたしはもう、そんな嘘は聞き飽きたんだ。
あなた達の言うきれい事や建前を散々、信じて裏切られ続けてきたわたしには
今ではどれも陳腐で聞き飽きた言葉でしかない。
だから、今はただ、全知全能の神の答えが知りたいんだ。
わたしはただ、神からの答えが欲しい。
わたしは死ぬ前にどうしても聞いてみたいのだ。
『あれほど人が非難し、中傷するほどわたしの人生はそんなに間違っていたのか?』と」
ヨブがそこまで長々と話し終えると、彼に懺悔を迫って叱咤激励していた友人達は黙りこくってしまった。
しかし、その時、エリフという少年がヨブの言った言葉に矛盾と怒りを感じて
一人、すっくと立ち上がった。
「大変、失礼とは存じますが、どうかわたしにも一言、言わせてください。
わたしはこのようにまだ若年ですので、わたしが口を出すのはさぞおこがましいかと思って今まで黙っておりましたが、
どうにも皆さんのお話には納得いきません。
それに、わたしはこれまで人は年齢を取っていけば自然と智恵が出てくるんだろうとか、
たくさん学んだり、働いたりして経験を積み重ねていけば
その経験から何が正しいのかよく分かるようになるんだろうと思っていましたが、
どうやらそうではなくて、
年月や経験が人に智恵を与えるのではなく、“全知全能の神の息(精神)がその人の心に宿るからこそ”
人は初めて賢くなれるのだということがよく分かりました。
ですから、わたしの意見も聞いてください、皆さん。
今こそ、わたしの心からの意見に嘘偽りはありません。
お疑いでしたら、どうかその耳で味を確かめるようにわたしの話をじっくりと考えてみてください。
さて、皆さん。ヨブさんはさっき、私達にこうおっしゃいました。
『わたしは何も悪い事なんてしちゃいない。
わたしはもう、自分がどうなったっていい。
ただ、もう自分の人生そのものが嫌だ。
結局、皆、一緒なのだ。善人も悪人も神にとっては一緒なんだ。
そして、神はどちらの人間も容赦なく滅ぼす。
きっと神は何も悪い事をしていない人間に災難をもたらして
その人間が絶望するのをあざ笑っているんだ』と。
では、ヨブさん、言わせてもらいますが、
あなたはどれほどご自分が正しいと言い切れるんです?
あなたは神様よりもご自分の方がずっと正しいとおっしゃるんですか?
まさか、人間であるあなたの方が、
神様よりもずっと清く、正しく、美しいとでもおっしゃるつもりじゃないでしょうね?
だったら、あなたが最後におっしゃった事と矛盾しませんか。
『わたしは人が怖い。
死んだ人間よりも互いに群がって同調し、相手が弱いと見ればいたぶりつつき回し、
時には殺そうとさえするそんな生きている“人間の群れ”の方がわたしにはよっぽど怖い』という言葉と。
それに、ヨブさん、あなたがそれほど苦しむ境遇になったのは
“本当にすべて神様のせいなんですか?”
一体、どこで神様があなたを絶望させるよう仕向けたんです?
よく考えてみてください。
あなたを絶望させたのは、神様ではなくてあなたや周りにいる“人間達の方”でしょう?
違いますか?
“あなたと同じ人間という生き物”があなたを絶望に追いやったんじゃありませんか?
それでもあなたは人間の方が神様よりも清く、正しく、美しいとおっしゃるんでしょうか。
神様は、この天上におわす私達の神様は
地上に住むあらゆる人間や動物なんかとは比べ物にならないくらい桁外れの智恵を備えた偉大なお方です。
しかも、簡単に約束や誓いを破って少しも悪びれもせず誰かをすぐに裏切ったり、
嘘を大げさに言い立てて事実(真実)を誤魔化すような、そんな不誠実でいい加減な私達、人間なんかよりも
遥かに誠実で、誰よりも愛情深く、そして最も清純で、最も聖なるお方だからこそ
私達の祖先は人間とは区別してその偉大なお方を“神”と呼んだのです。
そして、そのお姿はあまりにも壮大で、宇宙のすべてをその手で包み込んでいらっしゃるため
宇宙の塵のようなささやかな存在である私達、人間の目には決して映りませんが、
それでも神様はこの地上のどんな小さな生き物であろうと、
たとえ人間よりもずっと小さな、たった一つの微生物の行方さえも
“知らない事など何もないのです”。
だって、この地球の果てに住む“どんな人やどんな動物であろうと分け隔てなく”
太陽の光が注ぐようこの地球を微妙に傾けて宇宙の星々と一緒に回してくれ、
海や陸、山や丘、木々や花々、人や動物、昆虫と、ありとあらゆるものをすべて創って整えてくださったのは、
他ならぬこの天上にいらっしゃる神様なのですから。
そうして神様は水を編み出し、それを蒸気させ、雲となるようちゃんと整え、さらにその雲が雨や雪を降らし、
田畑や木々を潤し、風が吹けばその雲が移動して、この地上のどこに住むどんな人や動物であろうとも
“全く同じ恵み”を受けられるようにしてくださった。
それほど神様は日々、私達に様々な恵みを与えてくれているのです。
だから、ヨブさん、この地上で水もなく生きられる生き物はいるでしょうか?
空気を吸わずに生きられる生き物はいますか?
家を作ったり、田畑を耕すだけでなく、毎日、無事に安全に歩ける土地を生んでくれたのは一体、誰のおかげなんです?
そうやって私達の目に見えるもの、目に見えないものがいろいろと調和し合っていつも働き、
この地上に住む一人一人の人生に、その他、どんな生き物であろうともその一つ一つの生命についてちゃんと考え、
それぞれに智恵を授け、常に変わりなく、そして一度として途絶えることなく恵みを与えてくれている、
それが私達の神様ではありませんか。
だからと言って、ヨブさん、今まで神様が私達に向かって
『おい、人間どもよ。これだけお前達の為に善い事をして働いてやったんだからお礼に何かしてくれよ』と
見返りを要求したことはあったでしょうか?
第一、こんな小さくてか弱い存在である私達、人間が
どうやってこの宇宙を司っていらっしゃる神様にお返しなんてできるでしょう?
はっきり言って、私達、人間がこの地上で何をしようと、どう生きようと、何を作ろうと
神様ご自身には全く何の得にもならないじゃありませんか。
例えば、私達、人間がお金を稼いで裕福になったからと言って神様も一緒に裕福になるんでしょうか?
私達、人間が“神様の創ってくれた木や土砂”を使ってお寺や教会、あるいは神殿を建てたとしても、
さらに金銀を掘ってそれで仏像や偶像なんかを飾り立てたとしても
それを見て神様が「ほう、すごいな。このわたしでさえこんな素晴らしい物は創ったことがない」なんて言って感心したりするんでしょうか?
また、私達、人間が勝手に粋がって神様の教えに逆らい、
盗みをしようと他人を裏切ろうと、殺そうと、戦争しようとも、あるいは一人で悩んで自殺しようと殉教しようとも、
それが一体、神様にどう影響すると言うんです?
地上で誰かが罪を犯したからと言ってあの天に何か届きますか?
地上で誰かが数万人の人に施しをしたからと言ってあの雲一つでも動くんですか?
よく考えてみてください。
私達が毎日、悩んで必死にやっている事はすべて自分や他の人の為、つまり“人間の為”ですよね?
裕福になりたいのも人間ならば、幸せになりたいのも人間、
願いを叶えて“欲しくて”神殿を建てるのも偶像を作るのも、祈りを捧げるのも、
その他いろんな物や商品を作り出すのも、
これすべて自分や他の“人間の為”ですよね?
その上、腹が立つから、イライラするからと人を虐めたり、殺したがるのも
単に自分が復讐したい、あるいはストレスを発散したいという“人間の我欲”であって、
戦争するのも、殉教するのも、自爆テロを起こすのも
これすべて自分と同じ仲間である“人間の利害の為”でしょう。
だから、どれも神様の為にしたわけじゃないのに
そんな何もしていないあなたがどうして神様に向かって
『わたしはこれまで散々、善い事してきたじゃないか。
それでどうしてあなたは何もしてくれないんだ』と文句や愚痴が言えるんでしょう?
それじゃ、あなたが途中でおっしゃってた、
『神を信じて祈ったら何かいい事、起きるんですか?』とか、
『いい子にしてたら僕の欲しいおもちゃをくれるんですか?』とか、
『この宗教に帰依したら良縁や金運などに恵まれるんでしょうか?』と
しょっちゅう『あれをしてくれ、これをしてくれ』と我欲ばかりを口にし、
“何でもやってもらって当然と思い上がっている”、そんな傲慢な人達と言っていることは同じじゃありませんか。
そうして、神様の為に一度として働いたわけでもないくせに、それどころか毎日、いろいろと恵んでもらっておきながら
どうにも自分が苦しくなったら『今すぐ天から降りてきてこのわたしを助けろ』とまぁ、偉そうに天に向かってわめき散らす人間を、
どうして神様がいちいち出てきてあれこれと世話をしてあげなければいけないんでしょう?
まして『人を殺すな』、『物を盗むな』、『弱い立場の人間を虐めるな』、『お互い仲良く暮らせ』と
何度も何度も“私達、人間の為を思い、私達、人間が幸せになるように”と親切に一人一人の心に良心を授けてやっても
それでもそれに逆らって好き勝手に悪事を行ってきた人間達の為に
なんでわざわざ神様が手助けしてやったり、望みを叶えたり、その人が幸せになるよう智恵を授けてやる必要があるんですか?
例えば、ヨブさん、あなたが神様だったらこんな人達に手を差し伸べますか?
あなたに向かって散々、悪態をついて唾を吐き、親切心で持って何度も根気よく教えてきた話ですら聞きもせず、
『ほっといてよ、わたしは好きに生きるんだから。
それに武器や爆弾を持ったり、他人を蹴落としてでも稼がないとわたしの方が生き残れないのよ』と嘘八百並べ立てて、
あなたが丹精込めて創り上げ、大切に育ててきて、しかもあなたにとても従順な人達を
不当に傷つけたり、裏切ったり、殺したりしてきた人達なんですよ。
それでもあなたはそれまでの罪など何もなかったかのようにすべてもみ消し、
不当に傷つけられたり、苦しんでいる人達などすっかり忘れてあなたはその意地悪い人達の方を先に救ってやりますか?
はっきり言って、真実を知りもせず、知ろうともせず、知っていても知らぬ振りをして
そんな意地悪で傲慢な人達をいつもちやほやしたり、かばい立てして贔屓しているのは人間達の方であって
誰よりも公平で平等な神様がそんな馬鹿な事をなさるわけないじゃありませんか。
だからヨブさん、あなたは大きな勘違いをしてらっしゃるのです。
あなたの絶望をあざ笑ったのは人間であって、神様ではありません。
あなたの不幸を何より喜んだのは人間であって、
決して神様ではないんです。
神様は、そんな悪(=人間)とは全く正反対の、
そんな悪(=人間)とは宇宙の果てぐらいかけ離れた
善そのもの、愛そのもの、正義そのもののお方なのです。
ですが、だからと言ってヨブさん、別に神様はすべての人間を嫌っているわけではありません。
もし、本気で神様が私達、すべての人間を嫌ったら、
私達はあっという間にこの地上から“跡形もなく消え去るだけ”です。
もし、神様がこの地上からその息を全部、引いてしまったら、
本当にほんの一瞬で地球上のすべての生物がただの塵と化し、
地球と呼ばれるこの小さな星が毎日、爆発して消えていく他の星と同じように宇宙からそっとなくなるだけです。
何せこの地上のすべての生き物を守ってくださっている私達の神様は、
“ありとあらゆる全てのものを知り、ありとあらゆる全ての能力を兼ね備えた”、
まさに“全知全能の神”なのですから。
それゆえ、その神様にできないこと、知らないこと、分からないことなど何一つないのです。
ですからヨブさん、もちろん神様はあなたの心が今、押しつぶされ、嘆き悲しんでいることもよくご存知です。
真実を申し上げるなら、神様は意地悪な人には見向きもしませんが、
その心に愛と正義と真実を持っている人ならば、誰であろうとその人から決してその御目を離したりなどしません。
“そんな心義しき人を神様は決して見捨てたりしないんです”。
ただし、ヨブさん、あなたがそれほど苦しむようになったのは今、申し上げた通り、
まず、あなたご自身が“神様(=善、正義、公平、真実)よりも意地悪な人間達(=悪、不正、不公平、嘘)を信じてしまったから”です。
あなたご自身が、『お前は間違った生き方をしたからそんな不幸な目に遭うんだ』と
理由もなくあなたを不当に非難した意地悪な人達の言葉に惑わされ、それをすっかり信じ込んでしまい、
神様が意地悪な人達と一緒になってあなたを不当に苦しめたと勝手に誤解したからです。
それでは、意地悪な人達があなたに対してしたように、
あなたご自身も、何一つあなたに対して悪い事などしていない神様を不当に非難したことになりませんか?
それにあなたは勝手にその想像を膨らませ、“物事を悪く悪く解釈して”、
神様がそれぞれに与えたあなたご自身の能力を信じず、また神様が与えてくれる朝をも信じず、
ご自分一人で『もう未来も希望もない』などとわめいて絶望していたのです。
だから、あなたはご自分でご自分の心をそうやって苦しめ、神様が約束してくれた言葉をあなたご自身が信じないのだから
神様も救いようがないではありませんか。
そしてヨブさん、あなたも気づかないうちにそうしてつい、意地悪な人達と同じ過ちを犯しませんでしたか?
それほどあなたもわたしも、人というのは過ちや間違い、誤解を犯しやすい生き物なのではありませんか?
つい、人の言葉に惑わされ、つい、人がつく嘘に乗せられて、
神様からいつも助けてもらったり、よくしてもらうのは“当然だ”と勘違いしていませんか?
“自分だけは特別に”神様からいつも恵みをもらえるはずだと知らず知らずいい気になっていませんか?
私達、人間はそうやって天から目に見えない恵みをいろいろ与えられると、すっかり満足しきっていい気になり、
ヨブさんのように心に義を持つ人でさえつい、意地悪い人達と同じような失敗を犯してしまいます。
ですが、ヨブさん、あなたはそうやって苦しんでみて初めて
今までどれほど神様から恵みを受けていたか身に染みて“分かった”んじゃありませんか?
あなたの知らないところで、あなたの目に見えないところで実に様々な人や物、事象や気象が動いて
あなた自身を、あなたの人生そのものを支えてくれていることを
あなたは神様からその“試練”を授けてもらって初めて気づくことができたんじゃありませんか?
どんな生き物でも楽して何かを得ることなんてできません。
例えば、オリンピック選手になるのに鍛錬も積まないで優秀な選手になれるでしょうか?
病に苦しんでいる人の立場を全く考えもせず、症状をよく診もしないでいい医者になどなれますか?
皆からちやほやされて欲しい物やおもちゃを与えられ、世話を焼いてもらうだけで世の中を何も知らない赤ん坊が
ある日、突然、何億万もの人々の暮らしを“責任を持って”平和に安全に整えてあげられる賢いリーダーになるでしょうか?
その他、歌手だろうと、画家だろうと、セールスマン、店員、主婦、清掃員だろうと
この地上におけるどんな職業の人であったとしても、それに携わる人、一人一人が
どうすれば良い物が作れるんだろう、どうすれば喜んでもらえるような働きができるんだろう、どうすれば役立てるんだろうと
何度も何度も考え、試行錯誤を繰り返し、他人には目に見えない厳しい練習や勉強を積んで努力するからこそ
“あなたも周りも幸せになれる”ような、皆に役立つものや仕事ができるんじゃないんですか?
だったら、あなたはそういった目に見えるもの、見えないものについていろいろと学ばせてもらえる
いい機会に恵まれた幸運な人ではありませんか。
神様が“あなたの為を思い、あなたの幸せな将来の為に”与えてくださった素晴らしい時間ではないでしょうか?
そこであなたが骨の髄までとことん苦汁をなめ尽くしたら、
あなたは二度と、あなたや他の意地悪な人達が犯してしまった同じ過ちを繰り返さないよう努めるはずです。
あなたなら、何より心から神(=愛と真実と正義)を愛するあなただからこそ、
与えられた試練や苦難に対して恨みつらみをその心に宿すのではなく、
そこから何かを学び取り、そこからあなた自身はもちろん、あなたの周囲をも共に幸せになれるような方法を生み出すはずです。
だから、神様はあなたを信じて、あなたなら辛い事も悲しい事も乗り越えて成長(進歩)していってくれるはずだと信じて
あなたにその試練を与えたのではありませんか?
さぁ、ヨブさん。これであなたもお分かりになったでしょう。
神様は、この天上にいらっしゃる私達の御父はあなたを、そして私達、人間を心から愛してくれていることを」
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