《序章》
季節は春がはじまった頃。不思議と全てを新しく始められるような気持ちになる暖色の空気。時折に過ぎる冷たい風が、理由もなく宙に浮いた気分を現実へと引き戻す。
―ずっとずっと待ってるから…
悠奈は住宅街の片隅に狭い砂場と小さな滑り台があるだけの、こじんまりとした公園のベンチに座り、雲のない霞みがかかった青空をゆっくりと仰いだ。
―いつまでも、ここで待ってるから…
目の端に映る桜の木は、今にも弾けそうなつぼみを抱えている。
その薄ピンクに焦点を合わせるように目を細めた彼女は、何かを感じたかのように微かに瞳を開いて、幸せそうな笑みを浮かべた。
―ずっとずっと、あなたに届くように祈ってたのよ…
―感じる。もうすぐ、あなたに逢えること。
―逢いたい。
―地獄に堕ちてもいいから
―逢いたい。
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