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ユーザとアキアカネの森の幸せの木

作者:時計はいらない ロク助
アキアカネの森の奥の奥、そこに幸せの木はありました。
幸せの木は、大きくて立派な木なのです。
アキアカネの森の中でも、それはそれは大きな大きな木なのですが、それを見たことがあるという人間を誰も聞いたことがありません。
なぜなら、アキアカネの森はとてもとても大きくて、深い深い森だったからです。

森があんまりにも大きすぎて、その森の一番、一番深いところにある幸せの木を、人は誰も見ることができないのです。
でも、この世界の人間はみんなアキアカネの森に幸せの木があることを知っていました。

なぜならこの世界では子供が10歳になると、アキアカネの森に住む森の使いの大フクロウが、子供の10歳の誕生日に幸せの木になる幸せの実を1つ、運んできてくれるからです。
だから、この世界の人たちはみんな幸せの木のことを知っているのです。

幸せの実は、食べると誰もが幸せになる不思議の実。
だからこの世界に住む人たちは、みんなみんな幸せでした。

「どうしてぼくのところには大フクロウはこないんだろう?」

でも、ある村に住んでいるユーザという少年のところには、ユーザが10歳になっても、なぜか大フクロウはやってこなかったのです。
このユーザという少年のお母さんとお父さんは、ユーザが小さいころに流行り病で亡くなっていて、ユーザはそれからずっとおじいちゃんとおばあちゃんとこの村で一緒に暮らしていました。

「よし。自分で取りに行こう」

ユーザは幸せの実を手に入れるために、誰にも内緒で村を旅立ちました。

「ああ、ユーザがいない」
「かわいい私たちのユーザはどこに行ったんだ」

ユーザが突然いなくなり、おじいさんとおばあさんは悲しみました。





ユーザは、深くて広いアキアカネの森を一人で歩き続けます。
何日も何日も一人で森を歩きました。でも、幸せの木は見えてきません。
なぜなら幸せの木があるのは深くて広いアキアカネの森の奥の奥。誰も見たことがないのです。

ユーザはひとり森の中、ついにしゃがみ込んでしまいました。

「もう歩けないよ。ぼくここに何をしに来たんだったっけ?」

そこに茂みの中から、アキアカネの白ウサギが飛びだしてきました。

「ユーザ、君は幸せの木を探しに来たんだよ」

「ぼくは、どうして幸せの木を探しに来たんだっけ?」

「幸せの実を手に入れるためだよ」

「幸せの実……」

「そう、ユーザのところには幸せの実が運ばれてこなかったんだろ?」

「そうだ。どうしてぼくのところには幸せの実が運ばれてこなかったの?ぼくにお母さんとお父さんがいないから?」

「知らない。ぼくはアキアカネの白ウサギ。幸せの木の大フクロウじゃないからね」

「そうか。そうだね」

「うん。そうだよ」

「ぼくこのまま死ぬのかなぁ。もう、歩けないよ」

「知らないよ。ぼくはアキアカネの白ウサギ。○○○○様じゃないからね」

「そっかぁ、そうだね」

「うん。そうだよ」

「ああ、おじいちゃんとおばあちゃんに会いたいなぁ」

「もうっ、ぼくはアキアカネの白ウサギ。そんなことはできないよ。ユーザはさっきからそんなのばっか。ぼくいらない子なの?」

「白ウサギは何ができるの?」

「ぼくはね、ユーザを幸せの木まで連れて行けるよ」

「ほんとに?」

「ほんとだよ。ユーザは幸せの木まで行きたいの?」

「うん。行きたい」

「やったぁ、よーしっ。まかせてよ」

アキアカネの白ウサギが飛びだしてきた茂みが大きく口を開け、真っ白に輝く光りの道ができました。

「ユーザ!行くよ!」

ユーザは白ウサギの後について、光りの道に入っていきました。

「うわっ、まぶしい。………あれっ?」

ユーザはあまりのまぶしさに光りの道に入った瞬間、目を閉じてしまいました。
しかし、すぐにまぶしくはなくなり、ユーザは目を開けました。
するとユーザの目の前には、大きい大きい立派な立派な、ユーザがこれまで見たことのない木がそびえ立っていたのです。

「うわーっ。大きな木。これが幸せの木なんだね。あれっ?白ウサギさんがいないや」

「白ウサギは案内人。仕事が終わったから帰ったよ」

幸せの木のほうから声がしました。
ユーザが幸せの木のほうに近づいていくと、大きい大きい木の小さい小さい一本の枝に、一匹の大フクロウがとまっているのが見えました。

「ああ、幸せの木の大フクロウさん。どうしてぼくのところに幸せの実を運んできてくれなかったの?ぼくにお母さんとお父さんがいないから?」

「ちがうよ。私にはユーザを見つけられなかったんだ。ユーザが幸せの実の力を信じていなかったから」

「ぼくのせい?」

「そうだよ」

「ぼくのお母さんもお父さんも幸せの実を食べていたのに死んじゃった。おじいちゃんもおばあちゃんもいっぱいいっぱい悲しかったんだって」

「そうだね。だけどお母さんもお父さんも幸せだった」

「どうして?」

「それはユーザがいたからさ。おじいちゃんとおばあちゃんもいっぱいいっぱい泣いたけど、幸せさ。
どうしてだって?それはユーザがいるからさ」

その大フクロウの言葉を聞いたユーザは、心がポワポワとものすごくあったかくなりました。
ユーザの心がポワポワとあったかくなると、それまで閉じていた大フクロウの大きな目がゆっくりと開いていきました。

「ユーザ。見つけたよ」

そう言うと、大フクロウはユーザのところまで飛んできて、ユーザに幸せの実を渡しました。

「ありがとう」

ユーザは大フクロウから渡された幸せの実をキレイに全部食べました。

「あれ?何も変わらないよ」

「フフフッ。ユーザの心はポワポワしているだろ?」

「うん」

「それが本当の幸せの実なのさ」

ユーザは目をつむり、自分の胸に手を当てました。
目を閉じて動かないユーザの頭のうえに、どこからか飛んできた一匹の赤とんぼがとまりました。
そしてユーザは、さっきの大フクロウのようにゆっくりと両目を開くと、大フクロウのほうを見ながら、にっこりと太陽のような笑みを浮かべたのです。

「さぁ、ユーザ。もうお帰り。おじいちゃんとおばあちゃんのいる村へ。この光りの道を抜けたらすぐに、お前の家のある村だ。
それとユーザ。お前のお母さんとお父さんは、いつもユーザのことを見ているよ」

「うん!」

ユーザの頭から飛び立つ一匹の赤とんぼ。
幸せの木になる幸せの実は、食べると誰もが幸せになる不思議の実。
アキアカネの森の奥の奥、そこに幸せの木はあるのです。


<おわり。>




一気に書き上げた作品です。
童話を読むことはほとんどないのですが、書いていくうちにいつかどこかで聞いたことのあるストーリーなような気がして・・・短いだけに不安です。
童話って難しいですね。

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