獣人族と交易成果
ティアから移住の話を聞いた直後から、ハイエルフたちと共に居住エリアに家を建て始めた。
三十人ぐらいが住める大きな家。
個室も作ったが、基本は部屋を大きくして二人から四人で使ってもらう形にした。
いきなり個室では寂しいだろうとの配慮からだ。
ここでしばらく生活し、村に慣れてもらう。
移住でやってきたのは二十五名。
うち、三名は幼稚園児ぐらいの男性。
残りの女子で一番上が移住者代表のセナで、頑張って高校生ぐらいに見える。
他の移住者は頑張って中学生、基本は小学生な感じだ。
彼女たちだけで生活できるのかと少し不安になったが、これまで家事などの手伝いはしていたようで問題は無かった。
しかし、ハウリン村の人口は五百ぐらいと聞いていたが、二十五人も外に出して大丈夫なのだろうか?
次世代を考える余裕が無いぐらいにヤバイのか?
その辺りをやんわりとセナに聞いたが、今回の移住者は多人数家族の次女以降が中心で、村には女性がまだまだ残っているので大丈夫とのことだ。
ただ、メンバーが若すぎるので、内向きにも外向きにも村長の娘のセナも移住に加わることになったらしい。
内向きには、村長が娘を出すことで移住は悪い案じゃないと宣伝するため。
外向きには、村の役立たずを押し付けたワケじゃないとの言い訳。
後、隠された意図としてはセナを自由にしていいから、他のメンバーをよろしくお願いします。
といった感じらしい。
来た当初のセナの悲愴な感じも理解できた。
こっちは欠片もそんな気はない。
獣人が駄目だとか、セナが好みじゃないとかじゃない。
俺の心の安定のために!
だから、セナさん。
俺の寝室に来る必要は無いんだよ。
振りじゃないからね。
絶対に来ちゃ駄目だからね。
強く言ったのにどうして俺の寝室に居るのかな。
あれ?
扉が勝手に閉まった?
開かない?
外鍵なんて作った覚えないんだけどっ!
「覚悟を決めて来た女性ですから、手を出さない方が失礼です」
「ハウリン村との関係のためにも、手を出す必要があります」
後日、聞かされた俺には理解し難い内容。
前の世界とは違うというか、日本とは違うということか。
「ハウリン村からの移住者に目立った問題はありません。
労働意欲に溢れており、何か仕事は無いかと催促されるぐらいです」
世話係のラムリアスから報告を受けながら、移住者の慣れ具合を確認する。
「目立たない問題はどんなのだ?」
「何人かが……主に小さい子ですが、ザブトンさんの子供を見て泣きます」
「あー……」
「クロさんたちを見て、漏らします」
「……」
目立った問題じゃないかな。
悪いが、俺にすればザブトンの子供やクロ達の方が優先だ。
頑張って慣れてもらった。
ちなみに、獣人族の小さな男の子たちは、獣人族の女の子に面倒を見させている。
将来的なことも考えての判断だ。
是非とも、お世話してくれるお姉さん好きになってもらいたい。
ハウリン村との交易で得た物。
鉄製の調理器具。
包丁、フライパン、寸胴鍋、半寸胴鍋、大鍋、中鍋、小鍋などを複数点ずつ。
これで料理がやりやすくなる。
主に俺とアンたちが喜んでいる。
銀製の食器。
ナイフ、フォーク、スプーン、平皿、深皿、カップ、グラスなどを複数点ずつ。
高級感が出るので、来客用に俺の家と宿で確保。
すでに一部がドライム専用になっていたりしている。
ガラス製の瓶。
調味料や薬などを保管するのに活躍。
それなりの数を持ち帰ってもらったが、欲しい人が確保に走って一気に無くなった。
俺は調味料入れとして、五つほど確保できた。
その他。
山刀、斧、蝋燭、針、毛糸、皮、小物類など。
山刀や斧は、リアたちやアンたちが来た時の持ち物だけで、後は俺の作った石製しかなかったのでありがたかった。
蝋燭。
魔法で明かりが灯せるが……蝋燭は大事だ。
魔法が使えない俺にとっては特に。
そして、蝋燭って……石油製品だったと思っていたが、石油が出回る前の時代から蝋燭はあったはず。
目の前にある蝋燭の現物。
原材料を聞けば、木だった。
育てることにする。
針や毛糸、皮などはザブトンが持っていった。
ここでの縫製は私の仕事と主張されたようだった。
感謝しています。
小物類は、小箱や小袋、皮製のベルトなどだ。
欲しい人が持っていった。
現状、村の中に通貨は無い。
物々交換が基本だが、個人の物はここに来た時に持っていた物だけだ。
ここでの作物や生産物は全てが共有状態だ。
人が増えると、この辺りも見直していく方が良いのだろうか。
他の者に相談したら、そろってこう返ってきた。
「全て旦那様(村長)の物ですから、お気になさらずに」
……
それが普通の考え方なのだろうか。