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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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交易という名の物々交換市



 今年は春先から来客が続いたが、いつも通りにザブトンの子供達は旅立っている。

 クロの子供達は、今年もパートナー探しに出なかった。

 身内で済むようになってしまったというか、それが許される数になったというか……

 そのまま繁殖かと思ったが、一部は今年も妊娠しなかった。

 自分達で出産調整するとは、流石だ。

 などと思っていたら、クロの子供達の一部が群れで出掛けた。

 三十頭ぐらいだろうか。

 何をしにいくか知らないが、雰囲気からしばらく帰って来ないようだ。

 怪我しなければ良いが……



 なんだかんだで夏になり秋になり、あっと言う間にハウリン村と交易という名の物々交換市に参加する日になった。

 当然、俺が行こうと思ったのだが、周囲に止められた。

 いきなりトップが行くと、足元を見られるとの理由だ。

 そんなものなのだろうか?

 ともかく、トップは軽々と動かないものらしいと説得された。

 その後、激しいジャンケン大会を経て、俺の名代としてティアが行く事になった。

(ジャンケンの文化は俺が持ち込むまでもなく、すでにあったのだが、種族毎に手の形や出し方、掛け声に差があってトラブルになるので、俺の知ってるジャンケンで統一された)

 他のメンバーとして、ダガを含めたリザードマン五名。

 最初はリザードマン全員のつもりだったが、卵を見守らなければならないので減らした。

 もうすぐ孵化するらしい。

 減ったリザードマンの代わりに、ハイエルフが十名参加する。

 これはクジ引きで決められた。


 以上、総勢十六名が荷物を担いで移動する事になる。

 移動に十日、市の前日に到着して向こうの村で二泊、帰りに十日の予定だ。

 予定だったが、急遽変更になった。

 竜のドライムがタイミング良く遊びに来て、ワイン一樽で輸送してくれるとの事だった。

 このドライム、初めて来た日より、ちょくちょくやってきては料理を食べ、酒を飲んで愚痴を吐くようになっていた。

 翌日ぐらいに執事が迎えに来るのがパターンになっている。

 この村を居酒屋か何かと勘違いしていないだろうか。

 迷惑と言えば迷惑だが、キッチリと手土産を毎回持って来るので断り辛い。

 いや、利益的に言えばかなり儲けさせてもらっているらしい。

 宝石や武具類に関しては詳しく無いが、ルーやティアが何も言わないのがその証拠だろう。

 まあ、ドライムが来たら宴会になるから酒を飲む口実として許容しているだけかもしれないが……

 そのドライムからの提案だったので、素直に受ける事にした。

 キッチリと送り迎えどころか、向こうでの宿泊にも付き合ってくれるそうだ。

 そこまでしてワインが欲しいのかと理由を聞いたら、なんでもここのワインを他の竜に自慢したら、過去の弱みを持ち出されて持って来いと脅されたらしい。

 竜にも色々あるんだなぁ。


 ともかく、ドライムに運んでもらえるとなると行きの行程はほぼ無くなる。

 ドライムの言葉を信じれば、荷物に気遣いながら飛んでも一時間も掛からずに到着するらしい。

 逆に時間が掛かるのは背中に荷物を積む作業だと言われた。

 なるほど。

 とりあえず、移動の十日を積荷作りに費やした。

 なるべく同じサイズの木箱を用意し、その中に交換する予定の荷物を入れる。

 ドライムに運んでもらえるとの事で、多目に持っていけるのが嬉しい。

 出発するメンバーに変更は無し。

 事前に何度か打ち合わせをし、こちらの作物の価値と村に必要な物を考えた。

 交換する事に抵抗は無いが、不当に低く見られるのは困る。

 まあ、行って見なければ判らない事も多く、最終的には現場の判断でティアが決める事になった。

 問題は無い。

 ただ、いきなり揉め事は避けたいなぁ。

 俺の欲しい物は、しっかりと教えておいた。



 交換に持って行ったのはリンゴ、ナシ、カキ、ミカンなどの果実系。

 小麦、大麦、大豆、米、トウモロコシなどの穀物系。

 後はニンジンやダイコンなどの輸送に耐えられそうな硬い作物。

 トマトやイチゴとかはちょっと厳しいと思う。

 今回は初めての参加なので、できるだけ種類を多くした。

 作物以外はワインを十樽ほどと、調味料系を少々。

 ワインを十樽は持って行き過ぎかもしれないが、余ったら向こうで飲んでいいと言っておいたからドライムが頑張って飲むと思う。

 飲み過ぎて、帰りに事故ったりしないよな。





 ハウリン村

「……大樹の村から本当に来るのか?」

「大丈夫だろう。
 開催する日はしっかりと伝えた」

「それにしては、まだ山に入っていないようだが……ん?」

「どうした?」

「あれはなんだ?」

「あれ?」

「ほれ、あれだ」

「どれだ?」

「空を飛んでおるあれだ」

「…………竜?
 あれ?
 こっちに向かって……」




 ティア達を見送ってからは、俺の生活は普段通りだ。

 畑の世話、クロ達の遊び相手。

 後、村人から相談を受ける。

 相談と言っても、村の施設に関しての希望要望だ。

 こういった施設が欲しい。

 ここに水路が欲しい。

 次はこの作物を多めにしましょう。

 ワイン、飲んでも良いですか?

 そんな感じの要望を聞きながら、過ごして行く。

 もちろん、お腹が大きくなっていくルーを気遣う事は忘れない。

 ああ、出産に関してはそれほど心配ないらしい。

 ハイエルフや鬼人族の何人かが出産に立ち会った事があり、知識はあるとの事だ。

 変な心配をしなくても良いと、一同に言われた。

 心配するよりも、もっと励んで欲しいとの副音声は気にしない事にした。



 ティア達は予定通りに帰って来た。

 ドライムの背に行きと同じように荷物があったので、交換できなかったのかと思ったが違った。

「全部、交換できました」

 ドライムの背から荷物を降ろすのをダガに任せ、ティアが報告してくれる。

「村の作物は、どれも好評でした。
 最初は私やハイエルフ、リザードマンに遠慮していたのか、なかなか近寄ってもらえませんでしたけど、旦那様が言っていた試食をやってみてからは人が集まり、市の半ばで全ての交換がまとまりました」

 試食はティアが行く前に提案しておいた。

 騙すような真似はしたくなかったので、こっちの作物の味を知ってもらってから交換して欲しかったのだ。

 まあ、試食できるのはそのまま食べれる果実系がメインになっただろうけど。

 好評でよかった。

「ワインが残らなかった」

 その好評の裏で、ワインが交換される度にドライムが暗くなっていたらしい。

 現在も少し拗ね気味だ。

「ティア。
 今晩の食事は報告会も兼ねよう。
 ドライム、その席でワインを出すよ」

「流石は村長。
 労わり方を知っておる」

 期待させてしまったからな。

 多過ぎると思った十樽のワインが全て交換できてしまうとは……


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