ティアが出掛けて冬が来る
ハイエルフが四十二名増え、現在は五十四名。
吸血鬼が二名。
鬼人族が二十名。
クロ達は……多い。
ザブトン達も……多い。
蜂も……巣が四つ分。
スライム……増えて数え切れない。
牛、四頭。
忘れてはいけない天使族、一名。
ティアは考えていた。
吸血鬼のフローラとそのメイドである鬼人族が増えたことで、勢力的に自分が弱くなったと。
ここは一つ、自分も呼び寄せるべきかと。
そして俺はメイドたちの手土産である牛に大喜びした。
してしまった。
「私も従者を連れてきます。
その際、旦那様が求めていた鶏を手に入れてきますので、ご期待ください」
ティアはそう言って、旅立った。
冬が目前なのに。
一応、予定では春ぐらいに戻ってくるとのことだ。
冬到来。
新しい住人たちとの交流を重視した。
新しく来たハイエルフたちに関してはリアたちが居るのでそれなりに安心だ。
問題はアンたちだろう。
別に南西エリアで家を建てて住むなら気にしないのだが、俺の家に住むのだからある程度は気にする。
こっちの世界でかなり改善されたつもりだが、俺はそれほど社交的ではない。
頑張らねばと思っていたら、それほど頑張る必要はなかった。
アンたちの俺に対する距離感は、凄く良かった。
最低限の事務会話プラスちょっとした世間話。
そのうえ、こっちを立たせることを忘れない。
全員が大会社の優秀な受付嬢みたいな感じだ。
会話の中で知ったが、彼女たちはルーやフローラの一族にメイドとして雇われてすでに数百年の歴史があり、その経験を持っている。
俺との距離感など、問題でもないのかもしれない。
掃除、洗濯は完璧で非常に優れていた。
唯一、家事で料理だけが駄目だった。
なぜか。
知識の無さだった。
食材を鍋に放り込んで煮るだけが彼女の知っている料理法のようだった。
なので、冬の間に俺の知っている料理の仕方などを教えた。
多分、春ぐらいには俺よりも上手くなっている可能性が高い。
アンたちの加入によって、家での暮らしは一気に賑やかになった。
これまで、夜の明かりなどはルーやティアが気になった時に点灯、消灯していたが、アンたちが管理するようになってキッチリとされることになった。
掃除や洗濯も俺が気の向いた時にしていたのが、毎日になった。
お陰でベッドシーツが毎日綺麗だ。
そうそう、ベッドの中に入れていた草だが、これまでは俺が良いと思った草を放り込んでいたが、リアたちがそういった用途に適した草を知っていたので全てそれに交換している。
お陰で中の草の交換のペースが半年に一回ぐらいで済むので、草を入れたベッドの上に別のシーツを掛けて汚れを防ぎ、寝るようになっている。
文化的。
火に関しても、細かく管理してくれている。
なので冬なのにかなり暖かく過ごせている。
うん。
良いことだ。
これまで、いかにいい加減だったかを感じてしまうが……気にしない。
それより、俺やルー、ティアがやっていた家庭的なことをアンたちに任せられるようになったのでやれることが増えた。
俺は小物作りに集中し、ルーとフローラは薬の研究に没頭するようになっていた。
ティアが居ないのが少し寂しい。
そういえばアンたちはザブトンやクロに驚いてはいたが、気絶はしなかった。
事前に聞いていたからだろうか?
果実エリアの蜂を見てアワアワしていたのは、聞いていなかったからかな?
ちなみに、新しく来たハイエルフたちは、ザブトンを見てしっかりと気絶している。
そんなに怖くないのにな。