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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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責任者


 朝。

 畑の見回りが終わったあと。


 ハンモック。

 吊った布や網のベッド。

 いや、俺が勝手にベッドと思っているだけで、実際には別の使い方をするのかもしれないが。

 完成のイメージはある。

 なので作ってみる。

 場所は……野外だな。

 ハンモックは野外のイメージ。

 屋敷の庭、木陰にポールを二本、立てる。

 よし。

 じゃあ、後はポールの間に布か網を張れば完成だな。

 ……

 なかなか難しい。

 だが、試行錯誤を重ねてなんとか完成。

 網は途中で絡まったので、布製のハンモック。

 うん、悪くない出来。

 おっと、安心するのはまだ早い。

 ハンモックを使うのにもテクニックが必要なのだ。

 まず、横から……ふぬっ、うおっ。



「村長、先ほどから何をされているのですか?」

 ハイエルフのリアが、いつの間にか傍にいた。

「ハンモックを使おうと思ってだな」

 地面に叩き落されているだけだ。

 気にしないでくれ。

「こうですか?」

 あっさりとハンモックに乗られた。

 そして横になるリア。

「ハンモックは、縦よりも横、もしくは斜めに乗るのがコツですよ」

「えーっと、ハンモックを知っているのか?」

「ええ。
 森で生活している時、使っていました」

 熟練者だったか。

 ならば仕方がないな。


「なにこれ? なにこれ?」

 ウルザとグラル、アルフレート、ティゼルがやってきた。

 今日の勉強は終わったらしい。

「揺られて寝る場所だ。
 おっと、乗るのにはコツがいるんだぞ」

 ……

 全員、簡単に乗っているな。

 そんな気はしたけど。

 ハンモックが子供たちに占領されてしまったので、ここで終了。

 リアをみる。

「わざわざ来たってことは、俺に何か用事でもあったか?」

「そうでした。
 フラウが五村ごのむらの会議をすると村長を探してました」

「村の名称はまだ未定だぞ」

 フラウのいう五村は、転移門を設置する村のことだ。

 少し前から本格的に動き出した。

「便宜上です」

「そのまま正式名称になりそうだな」

「でしたら、先に新しい村の名前を考えては?」

 んー……

「門の村」

「え?
 転移門の存在は隠すのですよね?」

 そうでした。

 当面は五村でいいか。

 ウルザ、グラル、アルフレート、ティゼル。

 お昼御飯が近いから、遠くに行かないように。

 えーっと……子供たちを見張っているのはクロサンたちか。

 すまないが頼むぞ。




 俺は会議室に足を運ぶ。

 会議の内容は当然、五村関連。

「誰が煎れたの?
 すごく美味しいコーヒーなんだけど」

「私、頑張りました」

「確かに良い香りね」

「これも悪くないけど、私は紅茶の方が好きかな」

「えー、紅茶って渋くない?
 砂糖をガンガン使うのはちょっと抵抗があるし」

「お茶請け、もらってきたよー」

「お昼前に食べるの?」

「別腹、別腹」

 わいわいガヤガヤ。

 ……

「五村関連はどうした?」

 俺の言葉を最後に、静まり返る会議室。


 文官娘衆は基本的に真面目だ。

 フラウがいれば、特にだ。

 会議室で雑談することはあっても、こうまで逃避するのは珍しい。

 なので、その理由を確認。

 えーっと、魔王国側から送られてきた責任者リストに偉い人がズラッと並んでて、怖い?

 だから逃避気味?

 偉い人って……先代四天王の二人か?

 違う?

 その人達も偉いけど、その下に凄いのが並んでる?

 どういうことだ?

 えー、先代四天王の孫がいたよな。

 三人。

 一人、代表して説明してくれ。

「は、はい。
 えーっとですね。
 例えば、リストの中ほどに書かれているこの方。
 ザイアッシュ様。
 先代様の側近なのですが、先代様が四天王として活躍している間、先代様の領地の経営を一手に行っていた方です」

「やり手の内政官ということか?」

「はい。
 ですが、当時。
 頑張り過ぎて余所から恨まれ、他領から妨害を受けることになりました」

「妨害か。
 自分が頑張るより、他者の足を引っ張るほうが楽と思う者はどこにでもいるな」

「残念ながら。
 そしてザイアッシュ様は、そういった行為を酷く嫌う方でして……
 妨害してきた他領に一人で向かい、関係者を全員、殴り飛ばしたというエピソードがあります」

「ええっと……内政官なんだよな?」

「内政官です」

「さらに、その後にもエピソードが続きます。
 領地と領地の争いですから、上位者として魔王様が出てきます。
 本来なら公平中立なのですが、魔王様の派遣した担当者が相手の領地から賄賂をもらっていました。
 ザイアッシュ様を一方的に“悪”と判定したところで、殴り飛ばされました」

 ……

「向こうに非はあるとはいえ、肩書きは魔王様の派遣した役人です。
 その後、懲罰部隊が送り込まれましたがそれも撃退。
 最終的に当時の魔王様と将軍たちが出てきて、将軍を二人倒したところで制圧されました」

「そいつが将軍をやった方が良いんじゃないか?」

「かもしれませんね。
 まあ、こういったエピソードを持つのがザイアッシュ様です」

「なるほど。
 確かに怖いな」

「そしてこの魔王国側の責任者リストにいるメンバーなのですが……先代様二人を除くと、このザイアッシュ様が一番、大人しいです」

「……魔王国の文官は武闘派揃いなのか?」

「ある程度の武力がないとまとまらない時代がありましたから」

 つまり、この魔王国側の責任者リストは、そういった時代に活躍した文官が並んでいると。

 それにビビッて、困惑している文官娘衆ということか。

 ちなみに、制圧されたザイアッシュは当時の四天王によって庇われ、その後も領地の経営を続けたそうだ。

 だが、その後も同様の事件を二回起こしているらしい。

 うーむ。

 俺も怖い。

 そんな人達を相手にするのは嫌だ。

 筋は通しているのかもしれないが、暴力は困る。

 こういった時は、我が村の外交担当のラスティにお願いするのだが……

 今、妊娠中だからな。

 そういえば、もうそろそろ出産だそうだ。

 ドースやドライムたちが来る頻度が上がっている。

 気持ちはわかるが、あまりプレッシャーを与えないでほしい。

 あと、ドース。

 ギラルにまだ生まれていない曾孫を自慢しない。

 というかドースにしろ、ギラルにしろ、よく来るな。

 ギラルはグラルに会いたいのかもしれないが、大丈夫なのか?

 大丈夫?

 それなら構わないが……

 ……

 おっと、いけない。

 逃避していた。

 これか。

 うーむ。

 問題を先送りにしても何も解決しないが……とりあえず、お昼御飯を食べてからにしようか。

 お昼御飯の後は、逃げずに戦おう。

 現実と。




 ハンモックの場所にいるウルザたちを昼食だと呼びに行ったら、四人そろってハンモックで寝てた。

 よく見れば、子ザブトンの糸がハンモックの各所を引っ張っており、バランスを取ってくれていたみたいだ。

 手を振って、感謝を伝える。

 ああ、見張ってくれていたクロサンたちも、ありがとう。

 そして気持ち良さそうに寝ているが、悪いが昼食だ。

 起きるように。




 昼食後、会議を再開。

 とりあえず、こちら側の責任者を決めようと思う。

 実務の責任者だ。

 自薦がなければ、くじ引きで決めようと思うが……

 文官娘衆の数人が、少し待ってくださいと出て行き、戻ってきた。

 獣姿のヨウコを数人で抱えて。

 ……

「ヨウコさんが大樹の村の実務責任者で。
 もちろん、私達、文官娘衆は総力でサポートします」

 俺はヨウコにいいのかと聞く。

 問題ないとの返事。

 賄賂とか裏取引はないらしい。

 ヨウコか。

 悪くはないと思うが……

 まだ村に来て日が浅い。

 大丈夫か?

 俺の不安を不満に思ったのか、ヨウコは人間の姿になる。

「安心して、我に任せよ」

 獣姿より説得力はあるけど、なぜ全裸?

 その所為で、フラウたちに目を隠されてしまったのだけど?

 魔力温存?

 服は魔力で作っていたから。

 最近、ずっと獣姿でいるのも魔力回復の為。

 なるほど。

 ヨウコは獣姿に戻ったので、俺の目が解放される。

 俺の目の前にお座りの姿勢で待つヨウコ。

 わかった。

 任せよう。

 文官娘衆も、サポートを頼んだぞ。

 いい返事だ。


 さて、細かい話を詰める前にだ。

 さっき、俺の目が塞がれている時に過剰なスキンシップをした者がいるな?

 正確に言えば、俺の尻を撫でたな。

 素直に前に出るように。

 大丈夫。

 わかっている。

 一人じゃないってことは。

 少なくとも三人はいた。

 安心しろ。

 お仕置きは俺はしない。

 するのはフラウだ。

 任せたぞ。

 ……

 あー、まて。

 犯人の一人が判明した。

 フラウか。

 なにをやっている?

 いや、隙があったからって……お前なぁ。

 フラウと自首してきた四人に、今日のオヤツ抜きの刑を言い渡した。



 会議を終え、ハンモックの場所に。

 少し疲れたので休憩と思ったのだが……

 ハンモックには酒スライムと猫が乗って、気持ち良さそうに寝ていた。

 ……

 休憩は諦め、畑の見回りに行くとしよう。



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