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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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ヨウコ改


 俺はインフェルノウルフのジョン。

 一村の村長代行にそう名付けられた。

 気に入っているわけではないが、名無しよりはいい。

 まあ、主に名をもらえばこの名は捨てるがな。


 そんな俺にクロ様から使命が与えられた。

 新しくやってきた狐の見張りだそうだ。

 詳しくは知らないが、なんでも主の前で不遜な態度をとったらしい。

 許せぬ。

 ただ、すでに制裁は与え終わっており、俺の見張りは今後の経過を見る為だそうだ。

 なるほど。

 しかし、なぜ俺なのだろう?

 俺の担当は一村周辺なのだが……

 まあ、活躍できる場をもらえるのだから文句はない。

 しっかりと見張らせてもらおう。




 目標の狐の名はヨウコ。

 屋敷の客間で寝泊りしているが、このまま村に居つくつもりのようだ。

 主が認めているので、その点に関しては文句はない。

 子であるヒトエは、寝る時はヨウコと一緒だが、起きると子猫達の元に向かっている。

 微笑ましいことだ。

 ヒトエの方は見張る必要はないと言われているので、スルー。

 ヨウコに集中。


 ヨウコは人の姿になれるが、ここしばらくはずっと獣の姿らしい。

 尻尾を含めると俺達と同じぐらいのサイズだが、あれが本来の姿なのだろうか?

 ふさふさの尻尾が九つもあるのが特徴だが……あの尻尾は幻術だな。

 本物の尻尾は一つ。

 俺の目はごまかせん。

 制裁時に尻尾を消費させたと聞いているから、そのせいだろう。

 ちょっと可哀想だな。

 いや、情けは無用。

 厳しい目で見張る。


 今日の行動は……

 まず厨房に行き、鬼人族メイドさん達に挨拶。

 愛想を振り撒き、果実をもらう。

 ……

 ちょ、鬼人族メイドさん!

 前に俺がねだった時はくれなかったのに、なぜあんなにあっさり!

 すでに篭絡ろうらくされたか!

 え?

 俺にも?

 いや、そういったつもりではなかったのだが……

 くっ、静まれ俺の尻尾。

 ここだけの秘密?

 賄賂には負けんぞ!

 まあ、しかし、今回は……うん、美味い。



 自分の欲望に負けてしまった。

 深く反省。

 しかし、俺には使命がある。

 ヨウコの匂いを追跡。

 ……

 隠しているようだが無駄だ。

 俺の鼻からは逃れられん。

 ん?

 マクラの旦那。

 どうしました?

 え?

 狐はこっちじゃない?

 あっち?

 ……

 あざっす。



 誰にだって失敗はあるさ。

 これぐらいで、俺はめげない。

 ……

 よし、発見。

 ここは、ドワーフ達が酒を造っている場所だな。

 うん、少し離れたここまで酒の匂いがする。

 主が、子供達は絶対に近付いちゃダメって本気で注意していたからな。

 酒に弱いのは近付かない方が良いだろう。

 俺は平気だけどな。

 そんな場所にヨウコは入……らないのか。

 酒を造っている場所の隣に設置されたテーブルとベンチのある場所に向かった。

 ドワーフ達が昼飯を食べる場所か。

 時々、そこで宴会をやっているのは話に聞いている。

 ヨウコはそこにあるベンチの一つに座り、丸まった。

 少し早い昼寝か?

 ん?

 誰かいるのか?

 ……

 この気配は、酒スライム。

 酒スライムも同じようにベンチの一つに座っている。

 ヨウコと特に何かするわけではなさそうだ。

 しばらくそのまま。

 そこにもう五人、やってきた。

 先頭は聖女とか言われている女だな。

 その後ろには獣人族の女が四人。

 全員、手に大きな荷物を持っている。

 この匂いは……ああ、ドワーフ達の弁当か。

 五人がテーブルの上に弁当を並べていると、ドワーフ達がワラワラと出てくる。

 そしてそのまま昼食。

 どうやら交代で食事をするようだ。

 五人はまた戻って、次のグループの弁当を持ってくるらしい。

 ドワーフ達が美味そうに弁当を食っている。

 おっと、目的を忘れるところだった。

 ヨウコはっと……

 ドワーフ達から弁当をわけてもらいつつ、酒を飲んでいるな。

 酒スライムも同じか。

 ……

 あの狐は何をやっているんだ?

 食事なら屋敷に戻れば……ひょっとして、屋敷の食事だと酒は出ないから、ここで酒をもらっているのか?

 まさかな。

 ……

 ドワーフが三交代で食事をする間、ヨウコと酒スライムはずっと飲んでいた。



 ドワーフの食事が終わると、ヨウコは酒スライムと別れて移動。

 どこに行く気だ?

 ……

 北の……花畑?

 花畑近くを警戒している仲間に話を聞くと、ヨウコはこの時間に来てここで昼寝をしているらしい。

 なるほど。

 それで、ヨウコが寝ている場所にある物は?

 主が作ったヨウコ専用のベッド?

 くっ、羨ましい。

 いや、感情を殺せ。

 俺は見張りだ。

 ヨウコを冷静な目で見張るのだ。



 ……いつの間にか寝てしまった。

 不覚。

 ちょっと焦ったけど、大丈夫。

 ヨウコを見失ってはいない。

 なにせまだ寝ている。

 っと、ちょうど起きたようだな。

 大きなアクビだ。

 さて、次はどうするのか……

 ん?

 北?

 森に入るのか?

 ……

 追跡を続ける。



 ヨウコは森で巨大な猪を二頭、倒して戻ってきた。

 ただ、ヨウコは手ぶら。

 倒した猪は、近くにいたザブトン殿の子供達が協力して糸で縛ってゆっくり運んでいる。

 ……

 凄い速さと強さだった。

 たぶん、俺は勝てない。

 圧倒的な強者。

 それを感じる。

 そして、俺の見張りは気付かれてるな。

 その上で見逃されているのか。

 悔しい。

 だが、見張りは続ける。

 別に見張りがバレちゃいけないって言われてないしな。

 最後までやり遂げる。




 夜。

 屋敷に戻ったヨウコは、獣姿のまま食事。

 あるじ、獣姿のヨウコを心配していますけど、その必要はないですよ。

 主の妻達がガード。

 いいぞ。

 頑張れ。


 食事の後、ヨウコは主の妻の一人に酒で釣られ、研究室に。

 確か、魔道具の研究をしている部屋だ。

 色々と話をしている。

 細かい話はわからないが、なかなか白熱しているようだ。

 主の為になれば良いのだが。




 そして深夜。

 与えられた客室に戻って……寝ているヒトエのベッドに潜り込むと。

 うむ。

 本日の見張り、終了。

 ……

 反抗的な所はなかったな。

 まあ、力を回復するまで従順な振りをしているのかもしれないが……

 獣姿で甘える姿とか……あれが擬態、演技なのか?

 そうだとすると恐ろしいな。

 とりあえず、俺の直感では大丈夫だ。


 だが、一応、明け方まで見張ろう。

 夜中に抜け出すかもしれないしな。

 朝には別の者と交代の手筈。

 手柄になるようなことはなかったが、久しぶりに大樹の村で過ごせた。

 それで満足しておこう。




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