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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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九尾狐


 俺が畑作業をしていると、クロの子供の一頭が俺を呼びにきた。

 何事かと思ったが、どうも子狐が迷い込んできたらしい。

 狐?

 頭の隅に“害獣”という言葉が浮かんだが、イメージで決め付けるのはよろしくない。

 見てからにしよう。


 一度、屋敷に戻るとすでにウルザとグラルが子狐を抱えて戻って来ていた。

 ヌイグルミみたいに大人しい。

 あ、手足をジタバタはさせているのか。

 鬼人族メイドの一人が、子狐を取り上げウルザとグラルを注意。

 ああ、子狐はかなり汚れているな。

 それを抱えたものだから、服が真っ黒だ。

 さすがに怒られる。

 あー、鬼人族メイドよ。

 首を摘む持ち方は、かわいそうだ。

 もう少し、やさしく。

 この段階で、俺は子狐を飼うことをほぼ決めていた。

 名前は……狐だからコンでどうだろう?

 悪くないと思うのだが?





「名をヒトエと申します」

 本人から拒否された。

 むう、すでに名前を持っているなら仕方がない。

 いやいや、本題はそこじゃなかった。

 子狐は人間の姿になっていた。

 しかも、幼女。

 俺は慌てて近くの服を与えようとしたが、長い時間を人間の姿ではいられないようだ。

 すぐに子狐の姿に戻ってしまった。

 以後、人間になった時にちょっとずつの会話で情報を得ていこうと思った。

 その必要はすぐになくなったけど。





 始祖さんがげっそりした顔でやってきた。

 なんでも聖女関連で面倒なことになって、人手が必要らしい。

 その説明をしている時に、子猫とじゃれている子狐のヒトエを見て硬直。

 俺が人間の姿になれる子狐だと教えると、その場でヘナリと崩れ落ちた。



 始祖さんは、聖女の受け入れ先を探していた。

 候補をいくつか用意していたのだが、大半の場所がなんらかのトラブルがあったらしい。

 トラブルが発生していなかった場所を中心に受け入れ準備をしていると、急に奇襲された。

 怒れる九尾狐に。

 強さ的に始祖さんクラスらしい。

 無軌道に暴れる九尾狐を放置できず、始祖さんが応戦。

 数日間の死闘を続けた後、停戦。

 九尾狐が暴れるのは子供がさらわれたからとのことで、始祖さんはその子供救出を約束。

 九尾狐に大人しくしてもらった。

 その後、近隣のコーリン教の教徒を使い、子供を攫った者を特定。

 万全を期す為、フーシュとフーシュの部下を使って、相手のアジトを奇襲。

 子供を攫った者の大半を制圧、捕縛したのだが、最後の最後でミスをした。

 相手のボスが転移魔法を使って逃げたのだ。

 転移魔法と言っても、始祖さんやビーゼルの使う便利な転移魔法ではなく、行き先は不明な不便なもの。

 主に自分に使わず、相手に使ってどこか遠くに送る危険回避用の魔法。

 相手のボスはその魔法を、自身と子供に使った。

 自身に使ったのは逃亡する為。

 子供に使ったのは嫌がらせだろうと推測されるらしい。

 その嫌がらせは効果的だった。

 なにせ始祖さんは、九尾狐に子供の救出を約束していたのだから。

 始祖さん、全力で各地のコーリン教に指示。

 不眠不休で二週間。

 探しに探した。

 しかし発見できず。

 やばい。

 死んでる可能性もあると焦り、ここに応援をお願いしようと来たら、その子供が子猫とじゃれていた。

 名前も確認。

 本人で間違いないらしい。

 始祖さんは説明をした後、子狐を抱えて戻った。


 親元に戻れるのは良い事だが、いきなりの別れは少し寂しい。

 子猫達も同じようだ。



 再会は翌日だった。

「我が娘を保護していただき、感謝する」

 和服っぽい服を着た黒髪ロングの美人さん。

 その背中にふっさふっさの尻尾が九つ。

 手には、子狐が抱かれていた。

 その横に、転移魔法を使った始祖さんが倒れそうな感じでいた。

 挨拶はこっちでするから、始祖さんは休んでて。


 とりあえず、その日は宴会になった。

 親狐こと、九尾狐さんの名はヨウコ。

 奥ゆかしい人で、始祖さんと戦ったなんて信じられない。

 それが手ですよと、ルーやティアが俺の傍から離れないのはなぜだろう。

「ふむ。
 なかなか見事な酒と料理。
 この酒をもう一杯。
 そっちの大きい器に頼む」

 料理よりは酒の方が好みらしく、大酒飲みのようだ。

 ドワーフ達がすでに仲間認定をしている。

 子狐のヒトエは、子猫達と一緒に食事。

 果物中心だが、お肉も食べる。

 鬼人族メイドが小さく切ったお肉を、ガジガジと食べている。


 ヨウコさんは、ブルガとスティファノと顔見知りだった。

 昔、一緒に暴れたことがあるらしい。

 若気の至りと赤面しているが、思い出話からスケールが想像できない。

 王国一つを焦土にしたとかはさすがに盛った話だよな?

 ヨウコさんを知っているのかドライムは少し困った顔で離れた席に座り、ハクレンは堂々とヨウコさんの正面に陣取った。

 腕試しの相手に丁度良いとか言ってる。

 村では暴れないように。

 森でもダメだぞ。

 ラスティは……出産が近いので、宴会はパス。

 そろそろなんだよな。

 無事に生まれてほしい。



 大きな宴会は当日のみで、以後は小規模な宴会が続いた。

 とりあえず始祖さんが復活するまで続けるかと思ったけど、始祖さんの復活は遅かった。

「このまま百年ぐらい寝ようかと思いました」

 恐ろしいことを言う。

 まあ、五日で目を覚ましてくれたのは良かったのかな。

 始祖さんの為に、もう一日だけ宴会を続ける。

 後はお土産を用意して、お別れの時だ。

 子狐のヒトエよ。

 また会おうな。

「いや、帰らん。
 ここに住む」

 抵抗したのはヨウコさん。

 えーっと……

「ここは猛者が多い。
 ここなら安全にヒトエを育てられる。
 我がここを支配してやろう。
 お主らは我らの為に働くがよい」

 いやいや、それはちょっと待ってほしい。

 俺が抗議しようとしたら、始祖さんが笑顔でストップ。

 ヨウコさんを転移魔法で外に連れ出した。



「なんぞ?
 またやりあう気か?」

「いや、勘違いしているようだから教えてあげようと思ってね」

「我が何かを勘違いしていると?」

「うん。
 君はあの村長を見て、何を思った?」

「ただの人であろう。
 多少の神気は感じるがの……我の敵ではない」

「そうかい。
 じゃあ、賭けをしよう」

「賭けとな?」

「そう賭けだ」

「おもしろい」

「いや、おもしろくないよ。
 絶対にこっちが勝つからね」



 転移魔法で戻ってきた始祖さんは、今度は俺を連れ出した。

 場所は……

 死の森だが、村からはかなり離れた場所だな。

 西かな?

 正解らしい。

 そして、ワイバーンを落とした槍を、ヨウコさんに投げて欲しいとのこと。

 いやいや、さすがにそれはちょっと……

「人の姿が邪魔か?
 では、これでどうだ?」

 ヨウコさんは、めちゃくちゃデカい狐になった。

 高さ……十メートルぐらい?

 尻尾は数えていないけど九房あるんだろうなぁ。

 しかも、その姿のまま空を駆けられるの?

 凄い。

「九尾狐、もっと離れた方が良いぞ」

 始祖さんがヨウコさんにそう声を掛ける。

「距離を取れだと?
 馬鹿にするな。
 我は人など恐れん」

「そう。
 じゃあ、村長。
 お願いするよ」

「いや、しかし……」

「彼女は大樹の村を支配したいらしい」

 ……

 それは……困る。

 俺は手に【万能農具】の槍を出す。

 そして狙う。

 怖い顔の狐だが……さすがに頭は気が引ける。

 足を狙った。





 ヨウコさんが俺の前で土下座してた。

「これまでの無礼な言動、まことに申し訳ありません」

 その後ろで妙にスッキリした顔の始祖さん。

 いや、まあ、こっちも槍投げちゃったし。

 足、大丈夫?

 大丈夫っぽい。

 良かった。

 まあ、村の支配とかは撤回してくれたので、始祖さんの転移魔法で村に戻る。

 戻ったら、今度はザブトンがヨウコさんを縛り上げ、引きずっていった。

 えーっと……

 どこに連れて行くのかな?

 ザブトンはこれまでヨウコさんの前に姿を見せていなかった。

 なぜだろうと思っていたのだが……

 顔見知りだったのかな?

 引きずられていくヨウコさん、顔が青くなっているもんな。


 子狐のヒトエは、子猫たちと遊んでいた。





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