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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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村の子供


 獣人族の男の子達は遊びまわっているようで、なかなか忙しい。

 村に来た時からやっている仕事、油絞り、砂糖絞り、塩作り。

 それに鶏の卵拾いの手伝いや、牛や山羊の乳絞りなど。

 細々した仕事をしてくれている。

 最近というか、ガットの娘のナートはこっちに来た時から。

 ウルザとグラルは少ししてから手伝うようになった。

 でもって、仕事の合間に勉強。

 読み書き、計算を中心に、礼法を教えている。

 教師はハクレン。

 ヒイチロウを妊娠していた頃や出産後しばらくは休んでいたが、今は元気に教えている。

 見学させてもらった事があるけど、思ったより丁寧な教え方だった。


 それ以外の時間は自由なのだが、自主的に剣や槍の練習をしている。

 ハイエルフやリザードマン達が時々、指導している。

 一緒にいるガルフも教えている側かと思ったら、教えてもらっている側だった。

 うーむ。


 さて、そんな彼らのグループに新たに入るのは我が息子、アルフレート。

 まだ早いんじゃないか?

 そんな声を主に俺が上げているが、そろそろ色々と勉強させないといけないらしい。

 そんなものかと納得。

 まあ、新たに入ると言っているが、互いに顔は知っているし、ウルザやグラルにすれば同じ屋敷で生活している。

 無茶はしないだろうと信じ、見守っている。

「あの、村長。
 なにをしているので?」

 通り掛かった文官娘衆の一人に聞かれた。

 見てわからないのだろうか。

「見守っている」

「知らない人が見たら、不審者ですよ」

「……」

 いや、しかしだな。

「大丈夫ですって。
 子供は勝手に育ちます。
 それに、ラムリアスが見ているでしょう?」

「そ、そうだが……」

 ラムリアスは鬼人族メイドの一人。

 獣人族の男の子達が小さい時から、獣人族の世話役を任せている。

 今も獣人族の男の子達の傍にいる。

「だが、ラムリアスは獣人族全体の世話役だぞ。
 子供達を全てみれるのか?」

 聞こえていたのか、ラムリアスがこっちを見ている。

 にっこりと微笑まれた。

 ……

 信用しています。

「ご理解頂けたなら、仕事をお願いします。
 魔王様とマイケルさんから手紙が来てますよ」

 俺は文官娘衆の一人に手を引かれながら、仕事に向かった。


 その日の夜。

 アルフレートが一日の報告をしてくれる。

 そうか、よく頑張ったな。

 ティゼルやトラインは羨ましがっているが、まだ早いぞ。

 よーしよし。

 まだ腕の中にいて欲しい。

 子供の成長は速いなぁ。



 その日の晩。

 猫を膝に抱えながら、俺はお酒を飲んだ。

 ……

 酒スライム。

 わけてやるから、ムードを壊さないでくれ。








 夏の暑さが穏やかになり、過ごしやすくなってきた頃。

 ウルザは槍を持ち、クロの背中に乗っていた。

 でもってそのまま森に……

 うおいっ!

 待て待て待て。

 止める。

「なに?」

「なにじゃない。
 どこに行くんだ」

「森」

「あー……そうじゃなくて、森に何をしに行くんだ」

「狩り」

「……」

 ウルザなら大丈夫っぽそうだけど、子供が森で狩りをするのを見逃していいのだろうか。

 クロが一緒だし、他にもお供が……ちょっと離れたところに、クロの子供達が数頭いる。

 ああ、クロサンやウノもいるな。

 クロ達はしっかりガードするつもりだな。

 木の上にはハイエルフ達の姿がある。

 ……

 許可すべきだろうか。

 考えるまでもない。

 以前はどうだったか知らないが、今のウルザはどう見ても子供だ。

 駄目だな。


 しかし、ここで駄目と言って聞くだろうか。

 この場は引き返すかもしれない。

 だが、またこっそり出かけるだけじゃないか?

 ハイエルフ達がウルザを止めずに見守るのも、その辺りではないだろうか。

 ……

「どうして狩りに行きたいんだ?」

「アルフレートがお肉が欲しいって言ってたから」

「……アルフレートが?」

 俺はクロを見る。

 嘘は言ってないですよと頷いた。

 なるほど。

 なるほどなるほど

 ここは一つ、父親として良い所を見せる場面ではなかろうか?

 ウルザさんや、その役目を俺に譲る気はないかね?

 駄目か。

 そうか。

 仕方が無い。

 一緒に行く事で手を打とう。

 駄目なら森に行くのは禁止だ。

 はっはっはっ、大人は汚いのだよ。



 さて、アルフレートが欲しがっているとなると……牙の生えた兎かな。

 しかし、肉が食べたいならルーかアンにでも言えば出てくるだろう。

 なぜウルザに言った?

 確かにウルザは子供達のまとめ役っぽいポジションだが……

 そんな話をしたら、ウルザが肉を求めて狩りにいくのは自然な流れ。

 まあ、獣人族の男の子達やナート、グラルを同行させていないのは良い判断だ。

 その辺りを一緒に連れて行くと、アルフレートも同行したがるだろうしな。

 おっと、兎だ。

 俺が【万能農具】を構える前に、ウノが一撃で仕留めた。

 ……

 ウルザのあっと出した声に、ウノがしまったという顔をする。

 いつものクセが出たんだな。

 一応、確認する。

「ウルザ、あの肉で良いか?」

「駄目。
 私が狩らないと」

 だよな。

 誰かが狩った肉で良いなら、ウルザは森に出かけずに食料庫に行くだろう。

 つまり、ウルザが狩らないと駄目。

 仕方が無い、俺はサポートに徹しよう。

 とりあえず、兎は血抜きしつつ……運ぶには少し重い。

 悪いが、護衛で同行している一頭に村に持って帰ってもらう。


 さて、次の獲物はどこかなー……

 木の上のハイエルフが合図を送ってきた。

 前方?

 そっちをみると……でっかい猪!

 んー……普段の猪よりも大きくないか?

 さすがにウルザにアレは厳しいだろう。

 と思ったら、ウルザを乗せたクロが猛ダッシュ。

 ウルザもやる気だ。

 槍をしっかり構えている。

 おいおい、大丈夫か?

 俺は慌てて【万能農具】の槍を出していつでも投げれる態勢をとる。

 心配は無用だった。

 クロの速度が乗ったウルザの槍は、でっかい猪の脇に命中した。

 クロは猪の横を駆け抜けたので槍はウルザの手を離れてしまったが、良い判断だろう。

 あのまま握っていたら、猪に刺さった槍ごと振り回されるところだ。

 しかし、槍をなくしたのでウルザに攻撃手段がなくなった。

 猪は脇に槍が刺さっているが、まだまだ動けるだろう。

 では、お手伝いをと思ったらウノが飛び出し、猪に刺さっている槍を咥えて引き抜き、ウルザの手に戻した。

 ……

 そして再度のアタック。

 えーっと、ウノ。

 そのまま槍を押し込むのは駄目なのか?

 兎の失敗を気にしているのか?

 確かにあの時は責めるような目で見てしまったが、気にしなくていいんだぞ。


 クロとウルザのアタック、そしてウノの献身で、でっかい猪は仕留められた。

 おいしく頂かせてもらいます。

 クロとウルザは仕留めた猪の傍で得意気だが、気付いているのかな。

 どうやって持って帰るか。

 ……あ、気付いた。

 ちょっと慌ててる。

 普段、でっかい大きい獲物を狩った時は、分割して運んでいる。

 しかし、クロ達に分割は無理。

 なので俺かハイエルフが呼ばれる。

 木の上のハイエルフ達が出て行きましょうかとジェスチャーしたので、俺は待てのジェスチャー。

 ここは俺の出番だろう。

 そう思ったらザブトンの子供のマクラがいた。

 お前もいたのか。

 過保護じゃないかな。

 いや、出番を取られたからそう思っているんじゃないぞ。


 マクラはでっかい猪を糸で縛り、そのまま引きっていく。

 なかなかのパワー。

 しかし、このままだと俺はただ見ているだけになるので、【万能農具】をフックのような物にして、でっかい猪に刺す。

 これで、でっかい猪は軽くなる。

 マクラの動きが一気に早くなった。

 よし、では帰ろうか。

 でも、マクラ君。

 張り切るのはわかるけど、その速度だと俺が振り落とされるから……

 俺が持ってないと駄目だから。



 村に到着。

 いつもなら手早く血抜きと解体をするのだが、今回は血抜きだけで獲物の姿を残しておく。

 ウルザはクロに乗ったまま、アルフレートを呼びに行った。



 アルフレートはウルザをベタ褒めだな。

 ウルザもまんざらでもなさそう。

 しかし、立場的には注意。

 今回は同行したけど、勝手に森に行かないように。

 見守っていたハイエルフ達やクロ、クロサン、ウノ、マクラにも、見守らずに止めるように注意。

 ウルザは大丈夫かもしれないけど、他の子達が真似をするから。

 ん?

 グランマリア、お前もか?

 あ、俺の護衛……

「森に行くなら、一声掛けていただけると助かります」

 そうだね。

 心配させて申し訳ない。



 で、アルフレートはどうして肉を欲しがったんだ?

 え?

 ルーが欲しがっていた?

 だから。

 なるほど。

 実験にでも使うのかな?

 それなら、俺に言ってくれれば良いのに……

 あー、だがアルフレートよ。

 母親へのプレゼントだと、自分の力で獲らないと駄目じゃないかな。

 確かに、森に行っちゃ駄目と常々言っているけど……

 お前の不用意な発言で、ウルザが頑張ってしまった。

 ウルザなら大丈夫だと思うが、万が一を考えると今後は注意するように。

 まあ、今回は頑張ったウルザに免じて、全部許そう。


 このでっかい猪は、今日の夕食だ。

 ルーには、食料庫から渡しておくから。

 人数を集めて、今から準備しよう。

 希望はあるか?

 外でお肉を焼く……ああ、バーベキューか。

 涼しくなって来たし、いいかもしれないな。


 その日の夕食は、なんだかんだで賑やかな宴会になった。





 夜。

「ルー。
 肉が欲しいんだって?」

「え?」

「アルフレートが、ルーがそう言っていたって」

「……あ!」

 思い当たったらしい。

「あはは。
 少し前まで暑かったでしょ。
 ちょっとダレ気味だったから、どうしたら良いかなって、アンと相談していたのよ」

「それで肉か」

「ええ。
 今日のバーベキューで解消しちゃったわね」

「だな。
 しかし、ダレ気味だったのか。
 すまない。
 気付かなくて」

「あはは。
 普段の生活には支障ないのよ」

「ん?」

「ダレ気味だったのは、その……夜の方で」

 ……

「そろそろ、もう一人……どうかなぁって」

 ガチャリ。

 ……今、扉の鍵が掛けられた音がしなかったか?

 誰が?

 わかっている。

 今年は誰も妊娠しなかったからな。

 焦ってはいないだろうけど、気にしている者達がいる。

 今日のバーベキューを食べていたメンバーを思い出す。

 うん。

 頑張るから。

 できれば、明日からにしない?

 まだ俺、父親モードだから。

 男モードじゃないから。

 無理なら、人数を制限する方向で。



 アルフレートよ。

 無駄な抵抗でもすると、温情はもらえる事がある。

 覚えておくように。

 お父さんからの教えだ。



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