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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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シャシャートの街のゴールディ


 俺の名はゴールディ。

 シャシャートの街の裏の顔としてそれなりに有名だと自負している。

 と言っても、俺が裏を仕切っているワケじゃない。

 下請けの下請けって所だ。

 だが、下請けの下請けでも部下の数は五十人を超えるそれなりの大所帯。

 正式じゃない部下を含めれば……二百人……いや、三百はいける。

 なので、そろそろ上を目指しても良いんじゃないかなって思ってたりする。

 そんな俺に、連絡が入った。

 路地裏組で、俺の庇護下にある娘っ子達が大量に雇われたという話だ。

 どういう事だ?

 雇ってくれるのは嬉しいが、連中に仕事を渡すのは俺の仕事だ。

 ちゃんとチェックしないと、どう扱われるかわからないからな。

 このシャシャートの街で、そういったルールを破るヤツはいない。

 ルールを破るのは、ルールを知らない余所者だ。

 なるほど、通達のあった連中か。

 手を出すなって言われているが、こっちにも面子がある。

 通す筋はしっかりと通して貰わないとな。

 今すぐ乗り込みたいが、連中は高い宿に泊まっている。

 護衛も腕利きだ。

 行っても会う事も出来ないだろう。

 となれば、狙うのは連中が街をうろついている時。

 俺は部下を数人、見張りに送った。

 ……

 すぐに帰って来た。

 怖い人に脅されたと。

 ……

 おいおい、お前ら。

 いくら優しい俺でも怒るぞ。

 その脅したヤツと俺、どっちが怖いんだ。

 え?

 向こう?

 俺、目の前にいるけど、それを言う事に躊躇しない?

 さすがに傷付くよ。

 あ、話にならないレベルで向こうが怖いと。

 なるほど。

 わかった。

 今日はもう休んで良い。

 大丈夫。

 怒ってないから。

 変な仕事を頼んで悪かったな。

 ……

 よし、この件は忘れよう。



 翌日。

 連中の一人が、俺を訪ねて来た。

 ビックリした。

 完全に油断していた。

 慌てて部下を呼び集めようとしたが、今朝方にあった緊急招集にほとんど全員を持っていかれたのを思い出した。

 なんでも急ぎで建てる現場があるらしい。

 うちだけでなく、周辺全部から男手が借り出されている。

 残っているのは十歳ぐらいの女の子が五人ぐらい……

 うん、俺を守ろうとしてくれているのはわかるが、やめて。

 流石にね。

 君達が頑張らなくても頼りになる番犬がいるから。

 え?

 散歩中?

 ……

 し、仕方が無いな。

 居留守にするか。

 さっき返事したから無理?

 そうだね。


 ……

 はぁ。

 今朝方にあった緊急招集に俺が参加していないのは、この目の前の男に雇われた女の子達が無体な扱いをしていないか心配し、夜通し探していたからだ。

 忘れようと思ったけど忘れられるわけがない。

 なんとか見つけ、当人達から扱いに問題は無いと確認できたので戻って仮眠していたのだが……

 一気に目が覚めた。

 よし。

 まず考えよう。

 相手は何しに来たんだ?

 昨日、俺が侵入したのがバレたのか?

 その報復?

 なら、堂々と来ないよな。

 考えてもわからん。

 わからんなら……思いっきり脅す。

 俺の怖さが伝われば、向こうも変な真似はしないだろう。

 鉄の板を磨いた鏡で自分の顔をチェック。

 よし、怖いぞ。


「よく来たな」

 なるべく低い声を意識。

 ふふふ。

 相手はどう見ても普通の人間。

 ビビッただろう。

 ……

 なぜだ。

 普通に挨拶を返された。

 俺が怖くないのか?

 え?

 用件は路地生活の女の子達を雇用した件の挨拶。

 あ、これはわざわざご丁寧に……

 できれば雇用条件などを確認させて頂ければ……

 その前に俺の顔はどうですか?

 怖くないですか?

 愛嬌があるとかお世辞を言われても嬉しくないんだからな。

 ……

 しかし、本当に怖がっていない。

 まさか、この男。

 メチャクチャ強いとか?

 …………

 確認だ。

 冒険者登録していればそのランクで判断できるのだが、彼が登録していないのは昨日、確認している。

 となると、ここ最近の俺が使っている相手の強さ判定法でやるしかない。

 特定の質問の応対で、どれぐらいの強さかを知る方法だ。

 これで俺は危険な相手との喧嘩を何度も避けている。

 これまで俺の身を守ってくれたこの方法に、俺は絶対の自信がある。

「ところで、このシャシャートの街で武闘会をやっているのは知っているかい?」

「そうなのか?」

 武闘会を知らない。

 つまり、腕自慢ではない。

 いや、慌てるな。

 彼はまだ街に来たばかりだ。

「街の外で魔物とかと戦った事があるなら、参加してみるのも手だぞ」

「あー……魔物はちょっとな。
 まだ一人で戦うなって言われているんだ」

 ……まだ一人で?

 つまり未熟って事?

 よーしよし、一般人。

 普通の一般人の確率がグーンッと上昇。

 彼の武力に怯える必要はないって事か。

「そうか。
 残念だな」

「ははは。
 まあ、この街に来た理由は商売だからな」

 よし、確定。

 彼は一般人だ。

 あとは……彼に戦うなって言ったヤツだな。

 強い護衛がいたら困る。

「そのアンタに戦うなって言ったヤツはどうだ?
 腕に自信があるなら参加を勧めてやってくれないか。
 実は俺はそういった参加者を集める仕事もしていてね」

 完璧。

 完璧な話の流れ。

 さあ、どう答える。

「いや、彼らは村だからな。
 この街に来た時に伝えてみるよ」

「そうか。
 それは残念だ」

 いえーす、いえす。

 何も問題なし。

 あ、問題あった。

 彼を含めたゴロウン商会の客に手を出すなって言われていたんだった。

 ……

 なんで手を出しちゃ駄目なんだ?

 いや、出す気はないけど。

 あ、今回の接触は向こうから来たわけだし、問題ないよな。

 ……

 あれ?

 昨日、俺の部下を脅した怖い人ってのは誰の事だ?

 話に聞いた、もう一人の女性の事か?

「武闘会か。
 ダガさんやガルフさんなら、喜んで参加しそうだな」

 ……

「ガルフ?」

「ん?
 ガルフさんを知ってるのか?」

「ひょっとして獣人族? 犬系の?」

「あっ、そう言えば前にガルフさんがシャシャートの街に行ったとか言ってたな。
 その時に武闘会に参加してたかもしれない」

 ……

 ガルフって、あのガルフ?

 街でメチャクチャ威張ってる奴らを片っ端から蹴散らし、武闘会を木刀一本で勝ち抜いたという……

 生きる武神、ガルフ?

 マジか。

 詳細不明で、魔王国の五人目の四天王とか噂されてるガルフだぞ。

 その知り合いって……

「ガルフと試合したりするのか?」

「俺が?
 まさか、練習に付き合ってもらうぐらいだよ。
 まあ、ボロボロにされるけどな」

 ……

 ガルフに剣を習いたいって連中が、貴族を含めて山のようにいるんだが……

 一人で戦うなってのも、ガルフ基準だと考えれば油断できん。

 いや、働かせろ俺の本能!

 目の前の男は危険だ!

 決して、敵にしてはいけない!

 終始、笑顔で会話を終わらせるんだ!

 そして、もう会う事はないだろう!

 雇用した女の子達の事、よろしくお願いします!


 帰り際、番犬として飼っている魔犬が散歩から帰って来た。

 やばい。

 魔犬は見知らぬ相手には吠え掛かる。

 場合によっては噛み付く。

 魔犬のリードを持ってるのが女の子って事で、彼が油断していれば……

 心配なかった。

 おかしい。

 どんな相手にも決して腹を見せない魔犬が、速攻で腹を見せている。

 全力で媚を売ってるな。

 俺にも見せたことが無い顔で。

「可愛い犬だな。
 俺もこの街に来る前に犬と仲良く……あ、狼だった」

 その狼、魔犬よりも怖い顔をしているのかな?

 考えないようにしよう。


 客の名はマルコス。

 俺の中で危険度ランキング一位をめでたく勝ち取った男だ。

 絶対に関わらん。

 そう思っていたのだが、十日ほど後にまた会った。

 あ、うん、また俺を通さずに路地裏の女の子を雇ったのね。

 いえいえ、挨拶に来てくれるなら構わないですから。

 ははは。

 雇用条件はこの前と同じ。

 あの、必要なのは女の子だけですか?

 男の子もいますよ。

 この前まで、ちょっと大きな現場で働いていたのですが、そこが終わったから……

 ああ、あの巨大な建物、マルコスさんのお店だったんですか。

 ははは。

 御用がある時はお願いしますね。

 リップサービスだ。



 リップサービスだって言ったじゃないか。

 どうしてまた来る。

 人員が欲しい?

 わかった。

 今度は男の子も。

 で、何人?

 ……その人数だと、俺の所の路地裏組がいなくなっちゃうんだけど。

 ありがとうございます。

 出来る事はさせてください。

 これはリップサービスじゃないですよ。



 呼ばれた。

 出来る事はさせてくれとは言ったが、遠慮の無い人だ。

 逆らう気がないので、俺は素直に彼の店に行った。

 今、シャシャートの街で一番の話題となっている巨大な店。

 そこで出されるカレーという食べ物に、みんな夢中だ。

 なのでメチャクチャ混んでる。

 その隙間を縫うように、路地裏組の連中が統一された綺麗な格好でせわしく働いている。

 頑張っているな。

 で、俺が呼ばれたのはこの混雑の整理。

 簡単に言えば列整理、喧嘩している連中を止める、などだ。

 俺、シャシャートの街ではそれなりに有名人なんだけどなぁ。

 まあ、仕事は仕事だ。

 あ、この魔犬はここに繋いでいて良いかな?

 魔犬の面倒を見る連中も雇われたから、アジトに放置できないの。

 でもって、俺にも後でそのカレーとやら食わしてもらうからな。

 良い香りさせやがって。



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