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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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冬と魔道具と盾


 冬が来た。

 寒い。

 しかし、家の中は温かい。

 今年も、何十匹かのザブトンの子供達が屋敷内で冬を越すようだ。

 ザブトンも屋敷で過ごせば良いのにと思うが、強制はできない。

 また春に会おう。



 クロ、ユキ。

 お前達は別に外で遊んでも構わないんだぞ。

 毛皮があるだろう?

 俺のコタツに入り続けるのはどうなのかな?

 コタツに入る前にちゃんと足は洗って……洗っているみたいだな。

 頭は出して、コタツに潜りこまないように。

 クロの子供達が順番待ちをしているのを含め、いつもの冬の光景だな。

 お前達用のコタツ、作ってやっただろ?

 そっちはそっちで使っている?

 だったら俺のコタツに拘らなくても……俺のコタツに入る事を名誉とかにしないで欲しい。




 ルーと魔法の道具に関して相談する。

 話によれば、魔法を封じた道具はそれなり数があるらしい。

 ただし、上流階級が独占。

 一般庶民は魔法の道具に触れる機会はないそうだ。

 そうか。

 残念。

 と思ったら……

「竜王や始祖様がお土産や出産祝いでいくつか持って来ているでしょ?」

 ……

 そう言えば、前にダンジョンの管理用アイテム“迷宮の輝石”を貰った事があった。

 他にもそういったのがあったのか。

 俺が求めるのはコンロ的な物や冷蔵庫的な物。

 キャンピング馬車を作っている時に、あれば良いなと感じたからだ。

「火を起こす魔道具や、水を出す魔道具はあるけど……料理をするのは厳しいわね」

「そうなのか?」

「基本、魔法は一つの事しか出来ないから。
 魔道具も一つの事しかできないのよ。
 例えば、火を起こす道具は、一定量の火力を一定時間しか出せないの。
 火力調整は出来ないから、料理には使えないかな」

「そうなのか?
 ドースから貰った“迷宮の輝石”は色々と出来るんじゃないか?」

「アレは例外中の例外。
 伝説級のアイテムよ」

「そうだったのか?」

「ええ」

「ラミア族に貸し出してしまったが……」

「持ってても仕方が無いし、使っているなら構わないんじゃないかな」

 確かにそうだな。


 その後、話を聞くが、魔道具は役に立つ場面が限定されているといった感じだろうか。

 必要とされる場面では、とても役に立つらしい。

 でもって、大樹の村にある魔道具達は……

 ほとんどが攻撃魔法と防御魔法。

 そうだよな。

 一つの事しか出来ないなら、そういった方向になるか。

 俺の願った物はなかった。

「仕方が無い。
 こうなれば作れる者に依頼するしかないか?」

「どういった魔道具を依頼するの?」

「言ったろ。
 料理に使えるヤツ」

「調整できないって言ったじゃない。
 なんでもかんでも同じ火力じゃ料理は出来ないでしょ?」

「そうでもないさ。
 火元からの距離で調整すればなんとかなるだろうし、なんだったら複数並べて貰っても良いしな」

「複数並べる?」

「ああ。
 楽器みたいに、火力を少しづつ違う魔道具を並べるんだ」

「それは……凄いわね」

「すでに誰かがやってそうだが?」

「魔道具を作るのにお金だけじゃなくて貴重な材料が必要になるから、そんな勿体無い事は誰もやってないわよ。
 というか料理に使うって発想がおかしいから」

「そうなのか?」

「ええ。
 実際、料理は……この村では色々やってるけど、外じゃそんなに手を加えないから」

 そう言えばそうだった。

「それに、料理に使う魔道具を作らせるぐらいなら、料理人を雇って普通の道具を与えた方が安上がりだからね」

「あー……確かにな」

「今の屋敷に不満があるわけじゃないんでしょ?
 そんなに必要なの?」

「そう言われると困るが……料理じゃなくても、馬車の中で温かいお茶が飲めたら良いと思わないか?」

「馬車の中でって……火傷するわよ」

 ……確かに。

「まあ、貴方が欲しがっているのだから頑張るわ。
 メモを書くからよろしくね」

「ん?」

「魔道具、欲しいんでしょ?」

「そうだが……え?」

 ルーは魔法、薬学以外にも、魔道具作りでも有名人だったそうです。

 渡されたメモには素材の名前と量が書かれていた。

「ゴロウン商会で手に入ると思うから。
 あと、村にある魔道具をいくつか潰すわよ」

「わかった」

 よろしくお願いします。





 俺は木材の前で精神を統一する。

 現在、俺の中の予定で作らねばならない物がある。

 その一つを一気に作り上げる。

 俺が形を作るんじゃない。

 木材が成りたい形にしてあげる。

 それだけだ。

 そして出来た直径一メートルぐらいの丸い盾。

 うん。

 良い。

「頼む」

 俺は出来上がった盾を横で待っていた山エルフに渡す。

 彼女が盾の内側にベルトを装着する。

 そのベルトに取っ手を取り付け完成。

 盾に取っ手を固定しないのは、持つ位置などを調整できるようにだ。

 これで最低限。


「では、どうする?」

 俺は山エルフに聞いた。

「変形ギミックを取り入れ、盾の大きさが変わるのはどうでしょう?」

「強度面で不足が出るんじゃないか?」

「敵の攻撃を一回防げたら、それで十分では?」

「重くなるのが問題か?」

「穴を空けて軽量化を」

「なるほど」


 二枚目の盾を制作する。

 一枚目と似た外見の盾。

 ただ、厚みが前回の二倍。

 やはり一枚目より少し重い。

 だが、持てない重さではないだろう。

 山エルフがベルトと取っ手を取り付ける。

 そして、取っ手に細めのベルトをセット。

 この細めのベルトがスイッチだ。

「試してみたいな」


 外は冬で寒いが動けないほどではない。

 というか動いている者がいる。

 リザードマンのダガと獣人族のガルフだ。

 俺の屋敷のホールで剣の練習していたが、鬼人族メイドのアンに睨まれて外に追い出されていた。

 二人を呼んで試してもらう。

 ダガが盾を持ち、ガルフが剣で攻撃。

「本気で攻撃しても良いのか?」

「ダガは構わないか?」

「もちろんです」

「なら本気で頼む。
 ダガは盾で受けて欲しいが、盾を信用し過ぎるなよ」

「どういう事です?」

「盾があっさりと砕ける可能性がある」

「それは怖いですね」

「盾の実験だから、盾が壊れたら終わり。
 忘れないように」

 ちなみに、ギミックに関してはダガには教えたが、ガルフには教えていない。

 実験開始。

 まずは普通にガルフの攻撃を避けたり盾で受けるダガ。

 問題は無さそうだ。

 ガルフの攻撃速度がドンドン速くなっていく。

 ダガは避ける回数が減り、盾で受ける回数が増えていく。

 しかし、ダガは一方的で攻撃を受けるだけでなく、時々盾で殴り返している。

 ガルフはそれを避けていたが、ついに受け損ねダメージを負った。

 それで完全に入ったのだろう。

 ガルフの怒涛の攻撃。

 ダガが盾で殴り返す隙がない。

 ガルフの攻撃で、盾が少し弾かれた。

 ガルフの視線に盾から身体を出しているダガ。

 そこだと振り下ろした。

 見物していた俺と山エルフは、同時に思った。

 今だ!

 ダガもそうだったのだろう。

 ベストのタイミングでギミックを作動させた。

 盾の側面、三箇所から木製の三日月ブレードが飛び出した。

 そのブレードの一枚が、ガルフの剣を受け止める。

 驚くガルフ。

 そして悲鳴を上げるダガ。


 盾の仕掛けは、盾の中央に歯車を仕込み、その歯車を回転させる事で連動させているブレードが盾の外側に広がる。

 そう難しいギミックではない。

 一瞬だが、盾の防御面積を広げる効果を狙った。

 それは上手くいった。

 予想外だったのは、拡がった防御面積を使用しているダガが理解していなかった事だ。

 三日月ブレードの一枚が、ダガの前に出していた太ももに刺さっていた。

「すまん。
 大丈夫か?」

 俺と山エルフはダガに謝った。

 急ぎ、フローラを呼んで治癒魔法を頼む。


 ダガの治療が終わると、感想を聞く。

「ビックリした」

 ガルフの素直な意見。

 試合とかなら通用しないだろうけど、実戦だと効果があるんじゃないか。

 との事。

 ダガも似たような感じ。

「初めてだったので拡がる大きさを理解していませんでしたが、なかなか面白いかと。
 木製のブレードではなく、鉄製にはできないのですか?」

「重量面がな」

「十分軽いと思いますが?」

「そうなのか?」

 ガルフに持たせてみる。

「鉄の盾に比べれば、全然軽い。
 倍になっても使えると思う」

 なるほど。

 他に意見がないか聞いてみる。

「少し気になったのですが盾の表面にもう少し取っ掛かりが欲しいですね。
 剣が流れるので捌きやすいですが、相手の剣を弾くには不向きです」

「あ、それは攻撃してて俺も思った。
 引っ掛けられて剣を折られる心配がないから、思いっきり攻撃できた」

「そうなのか?
 盾ってツルツルの方が良いと思ったんだけど」

「そういった盾を使う種族もいますが……
 こう盾を構えて攻撃された時、このまま剣が内側に滑ると足に当たってしまいますから」

「その分、盾に衝撃が来るから腕力が必要になるけどな」

 勉強になる。

「とりあえず、盾の表面には突起があれば良いのか?」

「そうですね。
 でも、そんなにゴツゴツさせる必要はないんですよ。
 例えば……これに村長が得意としている彫り物をする程度で」

 彫り物を得意としているつもりは無いが、そういった認識なのか。

「ただ、盾の端には返しが欲しいですね。
 さっき言った剣が滑った時の対処です。
 相手の剣を引っ掛ける時もそこを使いますから」

 ふむふむと意見を聞き、工房に戻る。


 改造。

 ブレードを鉄製にする案は悪く無いが、今すぐできないので保留。

 盾の表面に彫り物。

 相手を威嚇する為に、怒っているドラゴンをイメージして彫ってみる。

 山エルフはギミックの改良。

 三日月ブレードが三箇所では、受け止める範囲が狭いとの意見が出たからだ。

 なので三日月ブレードを六枚出るように改造だ。


 完成。

 六枚の三日月ブレードが飛び出す、怒れるドラゴンが彫られた盾。

 そして頭を下げているダガ。

「どうした?」

「私にそれを扱わせてください。
 使いこなしてみせます」

 ……

 これ、温泉地を守っている死霊騎士用なんだけど……

「お願いします」

 ……

 駄目。

 これは死霊騎士用。

 三日月ブレードも木製だしな。


 ダガには、後日に鉄のブレードで作って渡す事にした。

「え?
 彫り物のリクエストを聞いて貰えるのですか?
 か、考えます」

 悩むダガの横で、俺も盾を持った方が良いかなぁと考えるガルフだった。

 一枚目の盾なら……あ、ギミック付きを死霊騎士が嫌がる可能性があるか。

 考えてなかった。

 一枚目の盾にも彫り物と返しを付けて準備しておこう。


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