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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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村長とキャンピング馬車


 前々から言われていた俺の呼び方。

 他に村を作ったので、そこの村長と呼び方が被るのでなんとかして欲しいと言われていた件が解決した。

 俺の呼び方は“村長”。

 変わらず。

 他の村の村長達を“村長代行”もしくは“代行”と呼ぶ事になった。

 まあ、公式というか大樹の村に来ている時や客がいる時だけだ。

 各村では村長で構わないだろう。

 これは種族代表の会議で決定した。

 長々と問題になっていた割には、あっさりと決まってしまった。

 本当にみんな、これで良かったのか?

 一応、俺も考えていた呼び方があるのだが?

 今回は自信作だぞ。

 ん?

 アンは聞いてくれるか。

 優しいな。

 では、ごほん。

“村長長”

 どうだろう?

 ……

 なぜ笑顔しか返さない?

 どうして目を合わせない?

 駄目なら駄目と言ってくれて良いんだぞ?






 屋敷の工房には、三台の馬車がある。

 サスペンション以外にも何か改造できないかと、マイケルさんやビーゼルから渡された馬車だ。

 うち、一台を俺が自由にして良い事になった。


 自由にして良い馬車。

 次に俺の頭に浮かんだ言葉は、キャンピングカー。

 正直に言おう。

 憧れていました。

 移動する家、いいなぁと。

 浪漫を感じると。

 やっちゃうよね。


 馬車の中は意外と広い。

 三人掛けの長椅子が向かい合って設置されている。

 しかし、この長椅子。

 大人三人が並んで座ると少々窮屈。

 二人でゆったり座るぐらいがベスト。

 つまり、この馬車は四人でゆったり乗る事を前提にされている。

 だが、俺のコンセプトはキャンピングカーならぬキャンピング馬車。

 といっても、現実問題、馬車内で火とかは使えないだろうし、水場やトイレの設置は厳しいだろう。

 なので一人乗りの快適空間を目指す。


 まずは長椅子を二つとも撤去。

 代わりに一人用の肘掛け付きの椅子を用意。

 木でマッサージチェアのような椅子の土台を作り、ザブトンの布や毛皮でコーティング。

 全面ふっくら仕様。

 リクライニング機能も搭載し、足も伸ばせるように……うん、ベッドにもなるな。

 ふふふ。

 これを馬車の中央寄り、リクライニング機能を邪魔しないように設置。

 馬車の出入り口は真ん中にある。

 ちょっと出難い。

 なので後ろの方に設置し直し。

 くっ、ベッドになるぐらいにまで倒せない……

 いや、椅子の機能があれば十分だ。


 周囲の空間が広い方が落ち着く人と、色々あった方が落ち着く人がいると思う。

 俺はどちらかと言えば色々あった方が落ち着く。

 しかし、圧迫感は無い方が良い。

 なので……

 椅子の肘掛ぐらいの高さの箱を椅子の左右に設置し、収納を確保。

 箱の上面に開閉式の蓋を設置し、テーブル代わりに。

 でもって椅子に座ってみる。

 うん、悪く無い。

 しかし、食事をする時用に正面にもテーブルが欲しいな。

 となると……

 椅子の横から稼動して正面に出てくるテーブルを設置。

 ここのギミックに二日掛かった。


 この辺りでいつの間にか山エルフが数人、作業を手伝い始めていた。

 そのままお願いする。


 次は……窓だな。

 現在、窓は馬車の両側面と、正面。

 正面の窓は、御者との連絡用の小窓だ。

 椅子に座ると、それが正面に来る。

 見栄えが悪い。

 窓を大きくするのはどうだろう?

 馬車の構造上、正面の窓を大きくしても見えるのは御者の背中や後頭部になる。

 駄目だ。

 じゃあ窓を無しにする?

 椅子に座って壁を見つめるのか?

 想像してみる。

 ……中断。

 山エルフ達と相談する。

 椅子の設置方向と位置を変更。

 馬車の進行方向に対し、横向きに。

 そして椅子の正面に窓が来るように、椅子は片側に寄せる。

 この位置も椅子は倒せないが、悪く無い。

 出入りもしやすいしな。

 では、もう片側に棚を設置。

 書斎っぽくなってきた。


 椅子に座ってみる。

 正面に窓。

 椅子の横から出てくるテーブル。

 棚。

 うん、良いんじゃなかろうか。


 この馬車。

 当然ながらサスペンションを装着済み。

 となれば……

 実際に乗ってみたくなる。

 山エルフの一人が御者に立候補し、馬を……途中でケンタウロス族にインターセプトされたようだ。

 ケンタウロス族を連れて来てくれた。

 さっそく出発。

 ……

 椅子は進行方向に向けて横に設置している。

 この椅子の横にある棚。

 簡単に言えば、棚は御者側にあり、椅子は後ろ側にある。

 馬車が出発した瞬間、棚に置いている物の三分の一が落下した。

 これはケンタウロス族の勢いある出発に文句を言うべきだろうか。

 いや、構造的な欠陥だな。

 そして、それほど移動していないのに棚に置いた物は全て落ちている。

 これまでの馬車の中に、物があまり置かれていない理由が理解できた。

 反省。

 棚を改良すべきだろう。

 船などの棚には落下防止のガードがついている。

 それをつけた棚にすべきだった。

 あと、棚の角度も。

 それと同時に、椅子と棚の位置を変えた方が良いかもしれない。

 やはり実際に乗ってみると色々と問題点が出る。

 良い事だ。


 ここで山エルフ達から質問があった。

「この馬車はどういった時に使うのですか?」

「当然、移動だが?」

「お一人で移動されるのですか?」

 ……

 元々はキャンピンカーならぬキャンピング馬車を目指した。

 移動する家。

 台所、シャワー、トイレがある感じ。

 しかし、現実問題で一人乗りの快適空間にシフトした。

 これが間違いだったのか?

 俺が一人で馬車を使って移動する事があるだろうか?

 ないな。

 それに、馬車の中が俺一人だとしても、御者かケンタウロス達が同行する。

 ……

「俺は間違いに気付いた」

 初期コンセプトのキャンピング馬車を忘れるべきじゃなかった。

 移動する家。

 必要なのは台所、シャワー、トイレだ。

 省くべきは快適空間。

 俺が乗る場所。

 俺は別の馬車に乗る。

 いや、御者台に座っても構わないぐらいで考えるべきだった。


 やり直し。

 人が乗って移動する事を前提とせず、移動する馬車に同行させ快適な旅を提供する事をコンセプトにする。

「つまり……今の車体では駄目なのでは?」

 山エルフの言葉に俺は頷く。

「手の空いてるハイエルフ達を呼んで来てくれ」

「……やるんですか?」

「お前達は車輪関係を頼む」

 車体作りが始まった。





 十日後。

 一台の馬車が完成した。

 見た目は普通……より少し縦長の四輪馬車。

 これには車内に乗車スペースがない。

 御者台と、馬車の後方に作った台に座れる程度。

 この馬車の本領は停車時の変形にある。

 そう変形。

 まず御者台と前車輪が前に移動、後方の車輪が後ろに移動。

 同時に車体が下に沈む。

 そして、地面に設置するギリギリの所で足が出て車体が固定。

 さらに車体が縦に半分に別れ、左側が九十度開く。

 開いた左側に現れるのは所狭しと収納された料理道具。

 組み立て式のテーブル、椅子を取り出し、馬車の上面から日除けの布を伸ばし、張れば立派な台所になる。

 流石にかまどが乗せられなかったが、野外で火さえ起こせれば十分な料理ができるだろう。


 そして残った右側。

 こちらは食材と八枚の縦長の木の板が収納されている。

 食材は食事用。

 八枚の縦長の木の板は四枚一組で立て、シャワールームとトイレの空間を作る。

 屋根は布で取り外し可能。


 シャワールームは、馬車の上部に設置された水タンクから竹水路を使って水を引き、シャワーが使えるようになる。

 下は竹を組んだスノコのような物。

 さらにシャワールームに入るまでの目隠し、着替え場所として各種紐とカーテンを用意。

 シャワーに使った水はそのまま捨てるので設置場所に注意しないといけないのが難点。


 トイレの本体は、馬車の外側に取り付けられているオマルを使う。

 そのままでも十分に使用できるが、衛生面を考えてスライムを一匹、同行させたい。

 トイレ用の手洗い場、尻拭き用の葉っぱも備蓄できる場所も用意している。

 馬車に作る案もあったが、台所や食材置き場と近いので却下となった。


 この馬車の最大の工夫は、変形だが、降ろした車体を持ち上げるジャッキ機構と、車体上部の水タンクに水を送り込む小型の手押しポンプも自慢だ。


 馬車の変形、シャワールーム、トイレの設置には、慣れた者達三人いれば五分で完了する。

 元に戻すのには少し時間か掛かって十分。

 うん、満足な出来だ。

「完全に貴族用ですね」

「料理人を同行させないと駄目よね?」

「トイレの管理をする者も専用に欲しいですね」

「上部の水タンクに台所分とシャワー分、トイレ分……重量的に一頭では厳しいですよね」

 文官娘衆達からの評判が厳しくとも、満足だ。

「技術的には色々と参考になる部分が多かったですから。
 特に変形は最高です」

 山エルフ達は理解してくれている。

 ありがとう。

「ジャッキ機構と小型ポンプだけで良いんじゃない?」

 ルーが浪漫のない事を呟いてくれる。

 わかってる。

 俺も途中で気付いてるから。

 この馬車の量産は流石にしないさ。

 だが……

「作ったからには使ってみよう。
 食材だなんだと積み込んであるしな」



 日帰り予定なのでシャワールームは使わなかったが、トイレはそれなりに活躍。

 台所には俺と鬼人族メイド達が立った。

「流石に百人近い数は厳しいのでは?」

 希望者だけだったのだが、意外と同行者が多い。

 食器は使っては洗ってのフル回転。

 護衛のクロの子供達が獲物を狩って来てくれなかったら、危なかった。

 水辺に近いので水の心配は無し。

 ドワーフ達は酒を飲んでるしな。

 まあ、みんな楽しんでくれたようだし、馬車も問題なく機能した。

 アルフレート、ティゼル、ウルザ、ナート、グラル、獣人族の男の子など小さな子達が、馬車の変形に目を輝かせてくれたので良しとしよう。



「あの、村長?
 こんな場所でみんな集まって……何をしているんですか?」

 定期的に各村を移動しているケンタウロス族の者に質問された。

「ピクニックだ」

 場所は大樹の村と一村の間の川を渡している橋の近く。

 村から五キロぐらいの場所である。

 馬車でいける場所など限られているのだ。


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