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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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クロイチ達の旅立ち



 寒さが完全になくなり、良い感じで暖かくなったある日。

 クロイチ、クロニ、クロサン、クロヨンが真剣な顔をして俺の前に並んだ。

 急にどうした?

 額の角は完全に生え変わりが終わり、前より少し立派な角が生えている。

 クロイチが代表して一吠えした後、四匹はバラバラの方向に走り出した。

 え?

 なんだ?

 変だ。

 俺が動揺していると、クロとユキが寄ってきて身体を擦り付けてきた。

 えっと……

 俺がクロとユキを見ると、クロとユキが俺に見せるように身体を寄せ合った。

 ……あっ。

 俺は察した。

 クロイチ達は、パートナーを探しに出掛けたのだ。

 あー、あー、あー……

 なるほど。

 納得。

 そして、寂しい。

 あうう。


 クロイチ達が帰って来ないようになった翌日ぐらいから、クロとユキが励むようになった。

 何がとは言わない。

 ただ、俺に気遣うようにしているのはありがたいが、余計に心が痛い。

 俺も嫁が欲しい。


 クロイチ達がいなくなったので、俺の傍にクロ達の誰かがいるという習慣が無くなった。

 クロかユキのどちらかが傍にいようとしてくれたが、狩りをしてもらいたいと訴えたのでそうなった。

 畑の見張りに関しては、ザブトンの子供達が頑張ってくれた。

 糸を投げ縄のようにして、畑に近寄る鳥を狩ったり追い払ったりしてくれている。

 また、作物に取り付いた虫もそのまま食べてくれるのでありがたい。

 難点は、俺が畑に入る際に足元に注意しないといけない事だ。

 拳大のサイズとは言え、油断すると踏みそうになる。

 地面を歩かず、なるべく高い場所にいてもらいたい。

 そう思っていると、畑の上空五メートルぐらいの高さに糸を張って器用に移動し、下に用事がある時はバンジージャンプのように飛び降りるようになった。

 凄い。

 そして、ザブトンの子供の数の多さに少し驚いた。

 百匹以上いるな。

 ザブトンの子供達への名付けは諦めた。



 俺の活動は、畑の世話と収穫、クロ達の狩ってきた獲物の処理、そして水路作り。

 岩塩探しもしたいが、クロイチ達が居なくなったので無理はしない。

 とりあえずは水路作りだ。

 水田云々もあるが、風呂に入りたい。

 特にザブトンがタオル地っぽい布も作れたので尚更だ。

 ザブトンが来るまでは布が無かったので身体を拭くのも葉っぱだった。

 しかし、ザブトンが来てくれたお陰で布で身体を拭けるようになり、風呂欲求が強まってしまった。

 水路作り、頑張ろう。

 頑張った。

 クロイチ達が居なくなってから六十日ぐらい。

 水路は半分ぐらいの長さまで完成した。

 途中、ザブトンの子供達が脱皮し、拳大サイズから雑誌サイズぐらいの大きさになり、水路作りを手伝ってくれた。

 主な内容は土運び。

 俺がスコップやシャベルで柔らかくした土を、大きな葉に乗せて包み、運んでくれた。

 一回の輸送量は少ないが、数をこなせば馬鹿にならない量の運送になる。

 また、これまでは俺が自分で土を柔らかくし、運び、盛って、固めるという作業を適当にやっていた。

 しかし、ザブトンの子供達のお陰で、俺が一つの作業を集中してやれるという点も大きい。

 ザブトンの子供達に名前を付けてやれないのが申し訳ないぐらいに、感謝している。

 しかし、このザブトンの子供達。

 ザブトンに似ていない。

 足が短く、全身に毛があるのは同じなのだが、なんだか模様が違うので別の種類に見える。

 まだ成長途中だからだろうか?

 これから脱皮を繰り替えして、大きくなっていくのかな?

 単純に俺の知らない父親似なだけの可能性もあるか。

 ともかく、手伝ってくれたザブトンの子供達にジャガイモを食べさせる為にも、畑作りも頑張る事にしよう。


 水路作りと畑。

 どっちもしなければいけないのが大変だ。

 とか思っていた頃、南の方角からクロニが帰って来た。

 クロニより少し大きめの真っ黒な犬を引き連れて。

 無事にパートナーを見つけたのか。

 そして、ここに戻って来てくれたのか。

 少し涙が出てしまった。

 クロニのパートナーは、最初は俺を威嚇しようとしたが、クロニやクロ、ユキ、それにザブトンが間に入ってくれた後、大人しくなった。

 説得してくれたのだろうか。

 ありがとう。

 ともかく、クロニが無事で良かった。

 怪我らしい怪我はしていないように見える。

 パートナーとも仲が良さそうだ。

 後は無事に馴染んでくれたら良いのだが。

 あと、名前をどうしよう。

 クロニの嫁だから、クロニヨメ?

 流石に酷い。

 じゃあ、メスだからユキニ?

 クロサンはメスだぞ。

 クロサンがパートナーを連れて戻って来た時、どうするんだ?

 しかも、ユキのお腹には子供が居る。

 まだお腹は目立たないが、クロがそれなりに励んでいたのだから確実に居ると思う。

 困る。

 困って数日後、西の方からクロサンが戻って来た。

 クロサンと同じぐらいの体格で真っ黒な毛に額に角のある犬をパートナーに。

 クロサンが無事に戻って来てくれた事に感謝しつつ、クロサンのパートナーが傷だらけな事に驚く。

 歩く足はしっかりしているので、大丈夫なのだろうが……

 何があったんだと心配そうにクロサンのパートナーを見ると、何かを悟ったような顔で「なんでもないっすよ」と答えた気がした。

 ……まさか、クロサンがやったのだろうか?

「貴様、気に入ったぞ。
 私の夫になれ」

 とか言ってクロサンの方からアタックしたとか?

 いやいや、クロサンに求婚者が多く、そこでの戦いで負傷した事にしよう。

 うん、それが良い。

 クロサンのパートナーも同意するように頷いてくれた。

 頑張れ。



 そして、数日後にはクロイチがパートナーを連れて、その日の午後にクロヨンがパートナーに連れられて戻って来た。

 全員、戻って来てくれたか。

 クロイチは堂々としており、そのパートナーはクロイチにベタぼれしているのが見ていてわかる。

 俺にパートナーを自慢しているような感じだったので、頭を撫でてやった。

 クロヨンは傷だらけで、クロサンのパートナーと同じ雰囲気をさせている。

 パートナーにやられたのだろうか?

 違うな。

 パートナーを獲得する男の戦いに挑み、勝ったのだろう。

 幸せな家庭を築いて欲しい。



 しかし、戻って来てくれたのは嬉しいが、名付けが困った。

 うーむ。

 これはザブトンの子供と同じく、諦めた方が良いだろうか。

 なにせ、この後はそれぞれが出産するのだろう。

 一つのカップルが三~五匹を産むと考えると、凄い事になりそうだ。

 食べ物の事を考えると、畑の拡張も考えないと駄目だろうか。

 ……

 色々と頑張ろう。

 俺は心を新たにした。


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