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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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ハクレンの出産



 ハクレンが産気づいた。

 慌てる。

 慌てるが、何も出来ない。

 ハクレンの傍には、ドライムが連れて来た二十人の悪魔族のベテラン助産婦が揃っている。

 さすがに二十人全員が傍にいると邪魔なので傍にいるのは一人か二人。

 残りは村の女性陣に助産を教えていた。

 その助産婦達が、見事な手並みでハクレンのいる部屋を占領する。

 うん、邪魔な俺は排除ね。

 抵抗しない。



 さて、ハクレンが頑張っている部屋を出て、屋敷を出た外。

 そこではウルザと、ウルザと同じぐらいの女の子が睨み合っていた。

 その二人から少し離れた場所にドースと、これまた見知らぬシブいオッサンが並んで座り、お茶を飲んでいた。

 その座っている椅子、屋敷から持ち出したのかな?

「生まれたのか?」

「いや、まだだ。
 産気づいたから、追い出された?」

 ドースの疑問に答えつつ、隣のシブいオッサンを見る。

「すまん。
 紹介が遅れた。
 暗黒竜ギラルだ」

「ギラルだ。
 娘の付き添いで来た。
 世話になる」

 声もシブいな。

 娘の付き添いって事は、ウルザと睨み合っている女の子の事かな?

「娘のグラルだ」

 俺が疑問を口にするより先に答えてくれる。

 良い人だ。

 よくよく見れば、ラスティと同じように頭に二本角。

 お尻にドラゴンの尻尾がある。

「で、そのグラルが、どうしてウルザと睨み合っているんだ?」

 口にした疑問には顔を逸らされたけど。

 ドース……も逸らしてるな。

 俺としてはウルザが失礼な事をしていなければと思うのだが……

 困っていると、少し離れた場所からドライムが手招きをしていた。



「あれは……まあ、その竜族の女の本能的なものでな」

「ん?」

「自分の伴侶がこの世に生まれると感じると真っ先に駆けつけ、他者を排除して獲得しようとする」

 …………………………………………………………

「つまり……あのウルザと同じぐらいの子が、今から生まれてくるハクレンの子供を狙っていると?」

「多分」

「男とはまだ決まっていないが?」

「ここに来ている事から、男だろう」

 ……

 半信半疑だが……嘘は言ってないんだろうなぁ。

 女の子の名前候補は無駄になってしまったか。

 いや、そうじゃなくてだ……

「それはわかったが、どうしてウルザと睨み合っているんだ?」

「そりゃ、普通に考えれば女の戦いだろう」

「……」

 見た目、双方共に五歳ぐらいなんだけど?

「何歳でも女は女だ。
 下手につつかない方が正解だぞ」

 それは感じる。

 その後、ドライムから妻のグラッファルーンは年下だったから生まれた瞬間はセーフだったけど、それはそれで大変なんだぞと語られた。

 なるほどな。

 しかし、母親達は何も言わないのか?

 ドラゴン姿の時は出産ではなく産卵になり、その後は放置だから特に気にしないと。

 逆に卵を守ってくれるから、手間が省けて良いと喜ぶ者が多いらしい。

 人間姿での出産は……滅多にないから良くわからないそうだ。

 ドライムは卵から孵ったらしいが、誰も守りに来なかったからまた女かと思われていたとか……

 ほほう。


 だが、それだと……ラスティやハクレンはどうなるんだ?

 ひょっとして将来的に運命の相手が出るんじゃないのか?

 あ、結婚してたら大丈夫。

 ドラゴンの女は浮気しないから安心しろと。

 なるほど。

「懐き方を見てれば、何も問題ない。
 特に姉上に関しては別人のような変わり方だ」

 是非ともこのままよろしくお願いしますとドライムに頭を下げられた。

 もちろんだと答えておく。


 ドライムと一緒にドース、ギラルの所に合流し、さて、これからどうしようと思っていたら、グラルとウルザに動きがあった。

 無言のまま二人は近づき、握手。

 そのまま肩を並べて森に向かった。

 ……

 森?

 こら、一人で森に行くなと言ってるだろう!

 あ、グラルがいるから一人じゃないという理屈か?

 気付いたクロの子供達が数頭、追いかける。

 俺もドライム、ドース、ギラルと共に追いかけた。

 というか二人で森で何をする気だ?

 握手してたから決闘じゃないよな。

 となると……

 ……

 追いつかない。

 グラル、ウルザの足が想像よりも速い。

 そして、ドライム、ドース、ギラルの足が思ったより遅い。

「この姿で走る事など、何百年振りか……」

「ワシ、初めてかもしれん」

「俺もだ。
 ドースの息子はどういった理由で走ったのだ?」

「ははは。
 妻とちょっと……思い出させないでください」

「グラッファルーンか。
 姪がすまん」

 ギラルとグラッファルーンは、叔父、姪の関係らしい。

 竜の世界、狭いな。


 先行するグラル、ウルザに追いついた。

 二人はデッカイ猪を攻撃していた。

 グラルは竜の姿になっていたが、小さい。

 全長五メートルぐらいか?

 猪よりは大きいが、弾かれている。

 ウルザはどこから出したのか剣をデッカイ猪に刺しているが……仕留めきれてない。

 ……

 …………

 うわぁぁぁぁっ!

 俺は【万能農具】でデッカイ猪を仕留める。

 そして二人を叱る。

 何をやっているのだと。

 生まれて来る子の為に何かプレゼント?

 考えは悪く無いが、森に入らないように。

 一人じゃなかった?

 よーし、その言い訳をハクレンに言ってみような。

 そう、素直に謝れば良いんだ。

 今のハクレンを心配させちゃ駄目だろ。

 グラルは人間の姿に戻り……ギラルが甘やかしているな。

「グラルはすごいなー、もうちょっとで倒せたよなー」

 シブい声で猫撫で声……聞きたくなかった。

 ドースを見る。

 後でアイツの奥さんにチクっておくからという目で返された。

 よろしく頼む。


 まあ、仕留めたデッカイ猪は、ありがたく食料として持ち帰ろう。

【万能農具】で引っ掛けて……あ、ギラルがドラゴンの姿で運んでくれる。

 グラルを運ぶついででも、助かる。



 村に戻った俺達は、盛大なお祝いの最中に戻った。

 うん、無事に生まれたそうだ。

 男の子。

 それを竜族達が取り囲んでいる。

 ハクレンの母親、ライメイレン。

 ハクレンの妹、スイレン、セキレン。

 スイレンの夫、マークスベルガーク。

 マークスベルガークとスイレンの娘、ヘルゼルナーク。

 ハクレンの弟、ドマイム。

 ドマイムの妻、クォン。

 セキレンの夫、クォルン。

 ドライムの妻、グラッファルーン。

 ドライムとグラッファルーンの娘、ラスティ。

 そこにドライム、ドース、ギラル、グラルが加わる。

 もちろん、俺も。

 うん、元気な子だ。

 良かった。

 ハクレンもベッドに横になっているが……元気そうだ。

 良かった。

 ウルザ。

 遠慮するな。

 お前も来て見てやれ。

 ウルザが少し迷っていたが、ハクレンが誘うと近づいてきた。

 お姉ちゃんだな。

 あ、グラルとのやり取りから……妻になるのか?

 今は考えないようにしよう。

 無事に生まれてきてくれた事に感謝。

 さて、赤ちゃんを抱かせて……悪魔族の助産婦達にブロックされた。

 俺、ドライム、ドース、ギラル、グラル、ウルザが輪から外される。

「お風呂に入ってからお願いします」

 ……

 まったくもって当然の話だ。

 先ほどまで森にいた俺達は、急いで風呂場に向かった。




 名前に関して。

 竜族は、ある程度の名前のルールがあるらしい。

 ドースの息子には頭にドが付き、ライメイレンの娘は終わりにレンが付く。

 マークスベルガークの娘には終わりにクが付く。

 グラッファルーンの娘には終わりにンが付く。

 ギラルの息子は頭にギが付き、娘は頭にグラだそうだ。

 息子は頭で、娘は終わりと思ったらその辺りに決まりはないそうだ。

 簡単に言えば、息子、娘が明確にわかるようにとの事。

 ただ、このルール。

 絶対じゃないそうだ。

 産んだ父と母が自由に付けて良いらしい。

 なるほど。

 しかし、参考にはさせてもらう。

 ルールにのっとると……俺の名前、火楽ひらくの“ヒ”か“ヒラ”を頭に付けた名前?

 一応、考えていた男の子の名前がほぼ全滅した。

 残っているのは火一郎ひいちろう

 前の世界感を残しまくった名前。

 ヒイチロウ。

 俺からの提案という事でハクレンに伝える。

 最終決定はハクレンに任せた。

 任せたが、後で良いんだぞ?

 あと、なぜウルザと相談しながら決める?

 ウルザが可愛がってくれる名前が良い?

 いや、そうかもしれないが……

 早く決めないと、ドース達が参戦してくる?

 ライメイレンも意外とこういった事に口を出すのが好き?

 孫という名目なら自重しない可能性?

 グラル、なぜすでに参加している?

 息子の妻になりたければ、この俺を倒してから……数年後はヤバいか?

 ドラゴンだもんな。

 いや、息子よ!

 この俺が出来る限り……守ってやるからな!

 そしてギラル。

 娘が嫁に行くからと泣かないで欲しい。

 まだ受け取ってないからな。

 大体、人質ならぬ竜質としてドースの所に預けた時に……あ、ギラルもそのままドースの所にいたのね。

 なるほど。



 命名、ヒイチロウ。

 竜族に盛大に祝われた息子である。


 アルフレート、ティゼルも見てやってくれ。

 お前達の弟だ。

 仲良くするように。

 リリウス、リグル、ラテ、トライン。

 まだ小さいからわからないだろうが、お前達の弟だ。

 仲良くな。

 兄弟喧嘩はよくないからな。


 よし、ではウルザとグラルが狩って来たデッカイ猪を食べようか。

 ん?

 ああ、俺じゃない。

 あの二人が、お祝いとして狩って来たんだ。

 ははは。

 アルフレート、心意気が嬉しいが真似はまだ早いぞ。

 そのうち、リア達が狩りを教えてくれるからな。

 勝手に森にはいかないように。

 喜ばせたいのはわかるが、心配させたら駄目って事だ。


 その日は夜遅くまで賑やかだった。


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