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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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秋と新しい住人


 秋。

 収穫の季節。

 手の空いている者達で収穫をしていく。

「今回も豊作ですね」

 文官娘衆の一人がそう言って、嬉しそうに収穫量を記録していく。

 俺も嬉しい。

 うん、豊作は気持ちが良い。

 問題は、また倉庫を増やさないといけない事だろうか。

 良い事だと思おう。

 脱穀作業が必要な物は、脱穀を。

 山エルフ達が、色々と弄った水車が大活躍。

 騒音が少し問題だな。


 ワインの為にブドウを潰す作業。

 大量だ。

 一大産業と思える。

 超大型の樽を造った方が良いかな?

 いや、運べなくなるか。


 今年もまた雇われたラミア族がブドウの皮と種を取って白ワイン造りを行っている。

 数は増えて二十人。

 報酬は去年と同じ、作業中の衣食住と作物。

 ん?

 去年作った白ワインが欲しい?

 誰だって自分のやった作業の結果は知りたいよな。

 いいぞ。


 そして今年の新顔というワケではないが、北のダンジョンに住む巨人族。

 油などを絞る圧搾作業の為に、五人ほど雇っている。

 報酬はラミア族と同じく作業中の衣食住と作物。

 住む場所をどうしようかと少し悩んだが、洞窟で良いとの事なので掘った。

 地下室と同じだが、そこで火を焚くのは大丈夫なのか?

 あ、魔法?

 違う、精霊魔法?

 風の精霊に頼んで、常に換気しているから問題なし。

 なるほどなー。


 あと、彼らが来る時に珍しい物を持って来てくれた。

 なんとブラッディバイパーの卵。

 一個がバスケットボールぐらい。

 それを百個ほど。

 お世話になるのでと持って来た。

 気にしなくて良いのに。

 あー、ラミア族、別に良いから。

 取りに行かなくて良いから。


 これはどうやって食べるんだ?

 丸呑み。

 巨人族は可能かもしれないが、俺達には無理だな。

 よし。

 普通に茹でて食べよう。

 まず一つ。

 茹でて殻を剥くと、透明な物体がぷるんっと出てきた。

 白身が白くならずに透明のまま固まったのかな?

 しかし黄身がないが?

 とりあえず実食。

 スプーンを刺した感じは、少し硬いゼリー。

 口に運ぶと……濃厚な卵。

 うおおおおおおっと言ってしまった。

 美味い。

 凄く美味い。

 味付けを何もしていないのに、こんなに美味いなんて!

 俺の感想に、周囲の者達もスプーンを持って参戦。

 みんな驚き、そして喜んでいる。

 というか、巨人族。

 お前達も驚くのはおかしくないか?

 あ、茹でた事はなかった?

 丸呑みは生臭いから、こっちの方が美味いと。

 なるほど。

 ここにいる間に、料理も覚えて帰ろうな。

 調味料も分けてやるから。

 あ、うん、ラミア族にも分けてやるぞ。


 さて、ブラッディバイパーの卵は、夕食などで出す事にして……収穫を続ける。

 ハイエルフの何人かにキノコ類の収穫を頼む。

 少し前にマツタケを採ったが、他にも色々なキノコを育てている。

 シイタケ、ヒラタケ、エノキ、シメジ、マイタケ……

 万能農具でまた育てるが、一応は数本は残しておいてもらう。

 トリュフのある場所は印を付けているから、そこを掘ってくれ。

 一応、クロの子供を一頭、連れて行けば採り損ねはなくなるぞ。

 同時に竹の伐採も頼む。

 これは食べる用ではなく、冬の作業用。

 竹林の位置は……知ってるな。


 果実系の収穫は、ザブトンの子供達が頑張ってくれる。

 自分の身体と同じぐらいの果実をバケツリレーする様子は、なかなか可愛い。


 なんだかんだで収穫が終わるのに二十日ほど掛かった。

 ワイン造りや脱穀、圧搾作業はまだ掛かる。

 それに発酵食品作り、ワイン以外の酒作りが加わる。

 頑張って欲しい。

 それらが終わったら、次は冬に向けての準備。

 まだまだ忙しい。



 今年、忙しいのはラスティだった。

 ハクレンが妊娠中でドラゴンの姿になれないからだ。

 ラスティには長距離のドース、ライメイレンの所への作物の輸送を頼み、近場のドライムの所へはラミア便に頑張ってもらう。

 問題はハウリン村との交易。

 どうしようかと考えていると、ドライムが手伝いに来てくれた。

「姉上に頼まれてな。
 遠慮なく使ってくれ」

 ありがとう。

 ハウリン村の交易品を運ぶ事をお願いした。

 交易の代表者は、ティア。

 よろしくお願いする。



 色々と作業があるなか、確認しなければいけないのが二村、三村の様子。

 自力での農業をやってもらったが、どうだったのだろう?

 二村ミノタウロス族世話役のリザードマンのナーフと、三村ケンタウロス族世話役の文官娘衆のラッシャーシと話し合う。

「二村の収穫量は……予定よりも若干少なめですね。
 ただ、これは慣れてなかったからだとの報告を受けています」

「三村の収穫量は悪くありません。
 ただ、いくつか予定を下回った作物があります。
 対策を二村と相談して検討中です」

「なるほど。
 それで、その収穫量で各村はやっていけるのか?」

「二村は現状のままでは少し厳しいかと。
 労働力はなんとかなるので畑の拡張を希望しています」

「三村も同様ですね。
 こちらも来年の畑の拡張をお願いします」

「わかった。
 来年、畑を拡張しよう」

 現状、二村、三村で出来た作物は全て大樹の村……というか俺の物。

 わかりやすくいえば、二村三村の住人は俺が雇っている下作人という扱いだ。

 当面は生活の安定の為に仕方が無いと受け入れたが、将来的には各村で独立して欲しいと俺は考えている。

 その為には独立採算が出来る程度の収穫を期待したい。

「二村、三村とも収穫は完了し、いつでもこちらに運び込めます」

「了解。
 じゃあ、半分だけ運んでもらって、残りはそのまま各村の食料に。
 貰った分、大樹の村からは……希望リストは出ているか?」

「はい」

 各村、まだ作っている作物の種類が少ないからな。

「そうだ。
 希望リスト以外に、追加で食料を渡す。
 各村で収穫祭をやっても良いと伝えてくれ」

「よろしいのですか?」

「楽しみはないとな」

 本格的なのは武闘会でやるとしても、小さな収穫祭は大樹の村でもやるしな。


「もちろん、一村も構わないぞ」

 まだ本格的に農業をやっていないので話に入ってこれなかった一村の世話役、獣人族のマムに伝える。

「よろしいので?」

「仲間外れはよくない。
 それに頑張っているのだろ」

「はい。
 それはもう」

 マムは一村移住者達の頑張りを語ってくれる。

 成果は小さいが、脱落者もなく頑張ってくれているのはありがたい。




 ドースとライメイレンの所に向かったラスティと、ハウリン村との交易に出たティアとドライム達が戻ると、話に出た小さな収穫祭を行う。

 ホームパーティーよりは豪華だが、お祭りよりは規模が小さい。

 収穫を祝うので、俺が大樹の社に収穫物の一部を納めるのがメインだ。

 なぜかいる始祖さんが、頑張って仕切っていた。

 いいのか?

 疲れているんじゃないのか?

 気にするなとの事で、頑張ってもらった。


 それが終わるとちょっと豪華な飲み会だ。

 野外に作られた会場に料理が並ぶ。

 酒も並ぶ。

 そして、出し物もある。


 まず、冒頭の挨拶として花火。

 という名のクロ達の角爆破。

 武闘会の本番に向けての練習を兼ねてとの事。

 上空に七つの天使族が一列に並ぶ。

 右からコローネ、グランマリア、クーデル、ティア、キアービット、スアルリウ、スアルコウ。

 キアービットは収穫中にやってきた。

 スアルリウ、スアルコウは双子の天使族。

 キアービットに同行してきた。

 三人が来た目的は、移住。

 大樹の村に住むらしい。

 一方的な通達だったが、受けた。

 断る素振りを見せたら、泣きそうだったから。

 スアルリウ、スアルコウは前にグランマリアが移住を誘った天使族。

 キアービットが持ち帰った大樹の村の果実を食べ、急いで移住の準備を始めたらしい。

 その七人が、綺麗に並んで高高度からの急降下。

 目標は、地上に空けられた七つの穴。

 その穴に向け、一斉に投下。

 全てが綺麗に穴の中に落とされ、爆発。

 縦に長い爆炎が七つ、吹き上がった。

 百メートルぐらい上がっていると思う。

 ただの地面に落とすより、穴の中に落とした方が派手に高く爆炎が上がると判明してから、彼女達は熱心に練習していた。

 穴のサイズを広げたら良いんじゃないかと思うが、その提案はプライドを刺激したらしい。

 現在、全員が八十センチの穴なら間違いなく落とせると豪語されている。

 いや、あまり小さ過ぎると逆に爆炎が上がらなくなるから。

 大体、二メートルぐらいで深さが五メートルが最適って実験結果が出てるから。


 ともかく、花火という名の爆炎が綺麗に上がった後。

 次の出し物が始まる。

 ハーピー族のラインダンス。

 獣人族の集団ショートコント。

 ドワーフの組体操。

 クロの子供達による玉乗り。

 ハイエルフの全身を使った自然表現。

 リザードマンの剣舞。

 ザブトンの子供達による影絵。

 酒スライムと猫による癒しタイム。

 山エルフの合唱。

 文官娘衆の創作ダンス。

 そして本命。

 ウルザ、ナート、獣人族の男の子達を中心とした演劇。

 ウルザ、迫力のあるセリフ回しが板についているな。

 ナート、頑張ってる。

 獣人族の男の子達、ウルザに迫力で負けてるぞ。

 あ、ルーやフローラも出てるのか。

 ルーが敵役ね。

 フローラは……ルーを操っている影のボスか。

 陰謀を語るシーンは妙に馴染んでいるな。

 ザブトンと土人形も参加か。

 豪華だな。

 ザブトンはウルザがピンチの時に駆けつける謎の神様役。

 土人形はウルザの肩に乗る妖精みたいなポジションらしい。

 頑張っていた。




 なかなかの盛況。

 この収穫祭で、キアービット、スアルリウ、スアルコウの三人。

 そして、ハウリン村から帰って来るティアに同行した獣人族のガルフとその奥さん、息子、娘が一人ずつの四人。

 計七名が新しい村人となった。


 ガルフがここに移住したいと言ってきた時は驚いたが、ハウリン村に問題がないなら受け入れる。

 一番喜んでいるのは、先に移住していたガルフの娘だろうな。

 あ、ダガも喜んでいるな。

 尻尾がビタンビタン地面を叩いている。

 奥さんがいるから、無理矢理連れ出して特訓は駄目だぞ。

 でもって俺も喜んでいる。

 ガルフの息子。

 十五歳ぐらい?

 健康な獣人族の男性!

 諦めていた男性。

 ありがとう。

 本当に来てくれてありがとう。

 ……え?

 ハウリン村に心に決めた女性がいる?

 結婚の約束までいってる?

 連れて来なかったのは、向こうの両親を説得できなかったから?

 遠距離恋愛でも頑張る。

 あ、う、うん。

 応援するよ。

 ところで二人目の奥さんは……あ、不要。

 はい。

 すみません。


 ごほん。

 まあ、新しい住民は、ここでの生活に慣れて欲しい。

 移住者七人のうち、キアービットとガルフ以外はすでに何度かの気絶と着替えを行っている。

 クロ達やザブトンの子供達はそんなに怖くないぞ。

 大丈夫。

 すぐに慣れるから。

 大丈夫。

 本当に大丈夫だから。



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