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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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天使族の槍


 グランマリア達の持つ槍はランスのような形で、使い方は真っ直ぐ突撃。

 重量と速度を威力に変えた攻撃だ。

 威力を見せてもらったが、鉄の盾を軽く貫いていた。

 しかし、デスボールには役に立たなかった。

 止まっているデスボールの外皮には全力で攻撃すれば貫けた事から、デスボールの回転がやっかいなのだろう。

 ザブトンの子供達がいればデスボールは怖くないとはいえ、グランマリア達はこのままで良いのだろうか?

「いえ、強くなりたいです!」

 グランマリア達の声。

 まあ、努力は個々でやってもらうとして……

 俺が手伝えるのは武器。

「槍以外は使えるのか?」

「一通りは。
 ですが、飛びながらの攻撃を考えるとこの槍が一番合ってます」

 剣だと接近戦になるし、それなりに速く飛べる利点を潰して斬り合うメリットが少ないらしい。

 となると。

 新しい槍を作るのが良いかな?

 ガットに相談してみる。

「槍先の素材が肝心だな」

 そう言われた。

 グランマリア達の槍は、それなりの素材で作られているので鉄では逆に弱くなる。

「とりあえず、村にある素材で……」

 ハクレン、ラスティの鱗を持って来て渡す。

「うむ。
 これを粉にして鉄に混ぜて……俺達だけじゃ駄目だな」

 手が空いてるハイエルフを集め、ガットは頑張った。

 俺はその横で槍の竿を黙々と作っていた。


「完成だ!」

 木製の竿に、竜の鱗を混ぜた鉄の槍先。

 普通の槍だな。

 グランマリアに持ってもらった。

 ……

 なにか違う。

 たぶん、みんな思った。

 槍を回収。

 グランマリア、すまない。

 戻って良いぞ。



「グランマリアの持ってるランスみたいな形にすれば良いんじゃないか?」

「あの形にするのは……この村の設備だと少し厳しいかな」

「そうなのか?」

「作れる鉄量がどうしてもな。
 継ぎ足すと、強度が脆くなる」

 なるほど。

 となると……別案。

「グランマリア達の槍の先に装備する物を作ってみたらどうだろう」

「それなら鉄量は少なくてすむが……刺した後に取れてしまわないか?」

「あー……そうか」

 衝撃のかかる部分だからな。

 相手が巨大だと、槍先部分だけ相手の体内に残る事もあるだろう。

 それもそれで有りだな。

 その方向で考えていると、クロの子供の一頭が情け無さそうな顔でやってきた。

 どうしたと思うと同時に違和感。

 そのクロの子供はそれなりに大きかったのに、額の角が無かった。



 事情を聞くと、クロの子供はジェスチャーをしてくれた。

 獲物を見つけて、走ったら滑って……角が木に刺さった。

 身動きが取れず、もがいていたら根元から折れたと。

 俺はガットとハイエルフ達に断って、クロの子供が案内する場所にいく。

 普通の木の根元に、クロの子供の角が刺さっていた。

 手でひっぱっても抜けない。

 放置……も、これを見る度にクロの子供が悲しい思いをするのは忍びない。

【万能農具】を小刀にして木を少し削り、角を抜いた。

 返しても……仕方が無いよな。

 生え変わりの角を保管している場所においておこう。

 俺は角の無いクロの子供の頭を撫でる。

「うん、角が無い分、撫でやすいな」

 失言だった。

 あー、他のクロの子供達、角を岩とかにぶつけない。

 ワザと折るのはよくないぞー。



 俺はガット達のところに戻る。

 俺は閃いていた。

 クロの子供達の角。

 これ、槍先に使えないだろうかと。

 クロの子供達は、どうぞとアクションしてくれたので竿に取り付けてみる。

 特に槍先の加工の必要もなく、槍が出来た。

 後はこのクロの角の強度だな。

 ガット達と共に広い場所で実験。

 目標は鉄の盾。

 とりあえず、あれを貫けないと話にならない。

 槍を構えて突撃……

 意外と難しい。

 槍を平行に持つのも一苦労。

 なのに走るなんて無理。

 ガットやハイエルフ達も無理。

 住んでいた場所が山や森で、槍を振り回す環境じゃなかったから練習していないとの事。

 なるほど。

 試作でグランマリア達を呼ぶのは気が引けるが、仕方が無い。

 クーデルに来てもらった。

「クロさん達の角ですか」

「ああ、硬さを確かめたいから、あの鉄の盾を攻撃してくれないか」

「わかりました。
 ただ、普通の槍ですから……投げても良いですか?」

「ん?」

「私、投げる方が得意なんですよ」

 投げる用の槍ではないが、大丈夫との事。

 なら問題は無い。

 任せた。

 ついでに竜の鱗を混ぜた鉄で作った槍の威力も試してもらおう。

 グランマリア達の槍の先に付けようと思ったが、強度的に大丈夫か確かめたい。

「どちらから?」

「じゃあ、竜の鱗を混ぜた鉄の方から」

 こっちが本命だからな。



 鉄の盾を横に置き、上に向ける。

 クーデルは大空に高く飛翔。

 高高度から鉄の盾に向かって一気に降下、地上三十メートルぐらいで槍を投擲。

 クーデルは速度を落とさす、角度を変えてまた上空に飛び抜けた。

 綺麗な飛行だ。

 投げられた槍は綺麗に鉄の盾のど真ん中に命中。

 槍は鉄の盾を鈍い音と共に貫き、下の地面に深々と突き刺さっていた。

 地面から抜いても、槍先に欠けは無し。

 良い出来のようだ。

 ただ、やっぱり投げるとなると運用に問題が出るかな。

 投げるのが得意なクーデルも、ランスのような槍を持っているワケだし。

 武器に合わせてスタイルを変えさせるのも悪い。

 やはり先ほどの計画通りに槍の先に装着する物を作ろう。



 さて、続いてクロの子供達の角を使った槍。

 新しい鉄の盾を横に置く。

 先ほどと同じ軌道を描き、クーデルが槍を投げた。

 槍は鉄の盾に命中し……

 大爆発した。

 え?

 上空二十メートルぐらいに昇る爆炎と雷。

 見学していた俺やガット、ハイエルフ達は不意の爆風で飛ばされた。





 被害。

 槍先は消えていたが竿は少し焦げた程度で無事だった。

 鉄の盾は跡形もなく吹っ飛んだ。

 現場には浅いクレーターが出来た。

 クーデルは無事。

 良かった。

 飛ばされた俺達はかすり傷。

 近くの畑に問題なし。

 ザブトンの子供達が何匹か爆発の衝撃で落下したが、無事。

 かなり遠い俺の屋敷でお昼寝していたアルフレート、ティゼル、トラインが驚いて起き、号泣。

 後で出頭しなさいとアンからの伝言を俺が受け取った。

 たぶん、リリウス達の所にも謝りに行った方が良いんだろうな。



「どういう事だ?」

 クーデルは、特に魔法を使ったわけじゃないとの説明。

 となるとクロ達の角が問題となるが……

 角が爆発する危険物だとすると……木にぶつかった時に爆発してないか?

 いや、これまで爆発していないのが不思議だ。

 よくわからない。

 わかりそうな人に聞く事にした。

 丁度、アンのクレームを伝えにルーが来ている。

「マジックアイテムよ。
 あれ」

「え?」

「頭に生えている時は、魔法の杖みたいな役割をしてるでしょ。
 取れた後は、効果と属性が固定されたマジックアイテム……知ってるから保管しているんだと思っていたけど?」

 成長の記念で飾っていただけです。

「えーっと……危なくないのか?」

「別に乱暴に扱っても爆発しないわよ。
 角を持って明確な攻撃意思で……魔法の発動と同じかな。
 だから、火の中に放り込んでも爆発しないわよ」

 なるほど。

 とんでもない武器を作って……いや、見つけてしまったようだ。

 犬小屋や地下室にはクロ達の角が結構な数、保管されている。

 全部が全部、今の威力だとすると……

「上級魔法クラスだと思うけど、威力を再確認したいわね」

 ……

 クロ達に許可を貰い、保管している角を持ち出す。

 新たな竿に括りつけ、完成。

 次のターゲットはハクレンの鱗。

 これを先ほどの盾のように横に置いてみる。

 そして……クーデル、頼んだ。



 クーデルの急降下攻撃。

 また、見事に命中させた。

 同時に大爆発。

 おおっ。

 今回は事前に構えていたので飛ばされる事もない。

 いつの間にか、周囲には俺達以外の見学者がいた。

 ドワーフ、山エルフ、リザードマン、獣人族、文官娘衆……

 彼らの関心は、ハクレンの鱗がどうなったか。

 爆炎が収まった後、俺達は用心してハクレンの鱗を確認。

 ……

 キラリと光るハクレンの鱗。

 だが、パキッと音がしたと思ったら砕けるように割れた。

 周囲から歓声があがった。

「ドラゴンの鱗を割る……上級じゃなくて特級クラスの魔法みたいね。
 属性は炎と雷……インフェルノウルフの属性と同じだから、コキュートスウルフだと氷と雷になるのかしら?」

 ルーが妙に嬉しそうだ。

「えーっと、村長。
 凄い威力だが、これを武器にするのか?」

 ガットが聞いてくる。

 ……

「やめておこう」

 危ないから。

 ウルザとかが持ち出したら被害が凄い事になりそうだし。

 グランマリア達の槍のパワーアップは、竜の鱗を混ぜた鉄による槍先で。

 ただ、この爆発は盛り上がるのでお祭りや武闘会の開始の合図で使ってもいいかもしれない。

 生え変わる度に補充できるしな。



 さて、後はガット達に任せた。

 俺の視線の先には、どう見ても怒ってますポーズのアン。

 一回目を謝る前に二回目をやったのは失敗だった。

 反省。

 だが、言いワケをさせて貰えるならルーが……あ、はい。

 すみません。

 ごめんなさい。


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