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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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ジャック後編


 いざって時に戦う為だろうか?

 武具を渡された。

 最初は鉄製の鎧を渡されたが、装着すると満足に動けなかったので皮製に交換してもらった。

 皮製の鎧だって立派な物だ。

 街で見かける冒険者達が装着している物にだって負けてないと思う。

 よくわからないけど。

 武器は色々あった。

 最初は見た目から剣を選んだ。

 他の連中も同じようだった。

 だが、素振りをしてわかった。

 剣を扱うのはそれなりに技量が必要だ。

 素直に、武器を管理しているリザードマンに扱いやすい武器を聞く。

 槍を渡された。

 振り回さず、突く事に集中しろとアドバイスされる。

 昔の俺なら反発していただろうが、素直に受け入れられた。

 二~三回、突く動作をしてみた。

 うん、悪くない。

 単純かもしれないが、何倍にも強くなった気がして気分が良い。

 街にいた武器を持つゴロツキ達も同じ気持ちだったのかな。

 だが、俺はあいつ等とは違う。

 この武器で、村を、みんなを守るんだ。



 牙の生えた兎と戦わされた。

 牙の生えた兎って、あれだよな。

 キラーラビット。

 死を告げる兎。

 歴戦の冒険者達を震え上がらせるって有名なヤツ。

 俺は周りの連中の顔を見る。

 青ざめている。

 うん、間違いないようだ。


 勝てなかったけど、俺達は頑張ったと思う。

 だって、まだ生きているのだから。

 俺達は互いの生存を喜びあった。

 絆が深まった気がする。

 そして、俺達は狼達の強さを知った。

 あの兎を一撃で仕留めるなんて……

 絶対に逆らわないようにしよう。



 その後、色々と作業をさせられた。

 俺達の適性を見る為だろう。

 合わない仕事をさせられるより何倍もマシだ。

 とりあえず、全力でやってみた。

 全力だぞ。

 本当に本当に全力でやった。

 こんなに頑張ったのは初めてだってぐらいだ。

 だが、成果は芳しくない。


 俺達が建てた小屋はすぐに倒壊した。

 酒作りは、酒の匂いで酔ってしまった。

 砂糖や油を絞る仕事は……力が足りなかった。


 悲しくなる。

 村長があっと言う間に風呂や倉庫を作っているから、なおさらだ。

 悔しい。


 小物作りで頑張った。

 褒められた。

 ちょっと嬉しい。


 発酵食品作り。

 臭いがキツいが、耐えられる。

 それに、今は臭いけどあんなに美味い物になるんだ。

 試作品を食べさせてもらったが、美味かった。

 頑張るしかないだろう。

 気を失いそうな時は、あのキラーラビットを思い出す。

 キラーラビットと戦う事を考えたら、臭いなんかへっちゃらだ。


 鍛冶。

 熱過ぎる。

 そして重労働。

 限界まで頑張ったが、倒れてしまった。


 目が覚めた時、怒られた。

 倒れた事をではなく、無理はしないようにと。

 焦らなくても良いとも言われた。

 ……

 焦っていたのだろうか。

 少し反省。

 そうだよな。

 村長も世話役のマムさんも、ここでの生活に慣れる事だと言ってた。

 ……

 色々やって結構日数が経ってしまったが、慣れたとは口が裂けても言えない。

 いや、慣れない。

 飯は朝昼晩と三回、十分過ぎる量を食べられる。

 日によってはおかわりだって出来る。

 夜は強盗に怯える心配もなく、きっちり寝れる。

 トイレは清潔。

 水もすぐ近くにある。

 しかも、タダ。

 フーシュのところで文字や礼節を学んだ時の生活も凄いと思ったが、そこよりも良い。

 これまでとの生活が違い過ぎて困惑しかない。

 なるほど、まずは慣れろというワケだ。

 いいだろう。

 この生活に慣れてやる。

 あ、今日の晩御飯はシチューですか?

 キラーラビットの?

 美味いですよね。

 頑張って働いて、腹を空かせてきます。




 さて。

 色々とやっているのだが……時々、思い出さずにはいられない。

 この村ではなく、フーシュに連れられて到着した村での夜の事。

 歓迎会が開かれ、各自が部屋に入った後で呼び出された。

 素直に従ったら、歓迎会をやっていた場所に移住者全員が集められていた。

 何があるんだと不安になった。

 なにせ、歓迎会にいた数よりも多くの者達が待っていた。

 馬鹿デッカイ蜘蛛や、やたらと迫力のある狼もいる。

 なのに、そこには村長がいなかった。

 それが妙に不安だった。

 いない村長の代わりに場を仕切ったのが、村長の奥さん。

 若くてビックリするほど美人だ。

 名前はルールーシー。

 伝説の吸血姫と同じ名前だと、少し笑ってしまった。

 こっちの不安を紛らわせてくれたのだろうか?

 まあ、本題はそれじゃない。

 村長の奥さんがかなり真剣な顔をして、俺達に注意事項を教えてくれた。

 それはこの村で生きる為に必要な事。

 全部で三つ。

 一つ、畑で遊ばない。
 作物を無駄にする事を絶対に許されない。

 一つ、トイレは清潔に使う。
 特に使用後の手洗いは忘れずに。

 一つ、村長と敵対しない。
 甘えるのは構わない。
 厳しくするのも構わない。
 迷惑を掛けるのは……出来るだけ避けて欲しいが、構わない。
 だが、敵対行動は避けるように。

 どれも強く言われた。

 納得できる内容だ。

 畑で遊ぶなってのは当然だ。

 食い物を粗末にするヤツはロクなヤツじゃない。

 トイレを清潔にってのも知ってる。

 これは病気対策だ。

 トイレの手洗いをサボって病気なんて馬鹿らしい。

 水も十分にあるらしいので、絶対に洗うと心に決める。

 最後のは……まあ、規律重視って事だろう。

 どこだって同じだ。

 トップに逆らって良い事なんてあるわけがない。

 敵対行動?

 するワケが無い。



「今日の晩飯は俺が作るぞー」

 村長が小さな家ぐらいのサイズの首の無い猪を引き摺ってくる。

「これ、村長が?」

「ああ。
 こいつらが俺の所に誘導して来たからな。
 横着して俺に仕留めさせるんだ。
 まったく」

 村長が何頭もいる狼の頭を撫でる。

 つまり、それだけの狼達で仕留める猪って事だな。

 ……

 村長は俺達の前で首のない猪の血抜きを行い、解体、料理……

 村長の作る料理は、美味かった。

 ……

 敵対行動?

 するワケが無い。

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