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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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ジャック前編


 俺の名はジャック。

 フーシュに集められた移住者のリーダーをやっている。

 移住者は顔見知りばかりだ。

 よく知ってるヤツもいる。

 妻の知り合いもいる。

 そんな中、俺がリーダーになったのは選ばれたからではなく、雰囲気でだ。

 いつの間にかそうなっていた。

 悪い気はしない。

 ただ、他の連中はもう少し前に出る気概があっても良いと思うぞ。

 前から思っていたけど、目立たないように一歩引く感じなのはどうなんだ?

 まあ、リーダーとして面倒は見てやるけどな。




 移住先では驚きの連続だ。

 他の奴らは見た事もない亜人達に驚いていたが、俺は案内された宿に驚いた。

 外見は木製の宿で期待しなかったが、部屋が豪華だった。

 ベッドがあるし、カーテンもある。

 しかも、椅子に座ってもガタガタしない。

 机の上は平らだ。

 デコボコしてない。

 凄い。

 しかも、この部屋を夫婦で?

 希望するなら個室もOK?

 破格の対応だ。

 普通、この広さの部屋なら十人ぐらい押し込む。

 酷い場所なら二十人ぐらい押し込む。

 ベッドなんて置いたり……ふかふかだ!

 良いのか?

 こんなベッドに俺が近づいて……

 俺は妻を見る。

 同じ気持ちらしい。

 俺達は呼ばれるまで、部屋の隅の床に座っていた。



 歓迎会だと言われた。

 だが、心の中には絶望しかない。

 なんだこの目の前の料理は……

 バイキング形式?

 好きなだけ取って食べて良い?

 何を言われているかわからない。

 駄目だ……俺達は殺されるんだ。

 これは最後の晩餐だ。



 最後の晩餐じゃないらしい。

 美味かった。

 感動するぐらい美味かった。

 これでも最上の料理じゃないらしい。

 急ぎで作った間に合わせで申し訳ないと頭を下げられた。

 これまでの自分の食生活を振り返り……涙が出そうになった。



 夜。

 部屋で寝る。

 ベッドは怖いので、床で寝た。

 妻も一緒だ。

 ぐっすりだった。


 起きた時、ちょっとだけベッドの上に寝転がった。

 やっぱりふかふか。

 凄い。

 俺の後で、妻もベッドの上に寝転がった。

 かなり気に入ってる。

 そのまま寝るのはちょっと……お前はヨダレを流すから。

 殴られた。




 朝食、昼食も美味しかった。

 こんな食事が続くはずが無いと戒めるも、次はどんな食事だろうと期待してしまう。

 だが、タダで飯を食わせてもらえるなど、上手い話はない。

 俺達を新しい村の一員として期待しているからこそ、飯を食わせてくれるのだ。

 わかっている。

 まずは馴染む事だ。

 ここの連中は変なヤツばかりだが、悪いヤツらではないだろう。

 フーシュも言ってた。

 普通に、ここで新しい生活をすれば良いと。




 説明を受けた。

 夫婦で一軒の家をもらえるとの話。

 その他、色々と説明してくれる。

 どれもこれも知りたい話だったが、肝心の内容を聞いていない。

 思わず、質問してしまった。

「村での生活に関しては大体、わかった。
 ただ、俺達はどんな仕事をすれば良いんだ?」

 そう。

 仕事の話だ。

 何をすれば良いんだ?

 言ってくれ。

 だが、期待した答えは返ってこなかった。

 返ってきたのは、とりあえずここでの生活に慣れろ。

 慣れろって……

 どんな生活も三日もあれば慣れるだろうに。




 俺達の住む場所に移動するらしい。

 馬車?

 どこの貴族の持ち物だ?

 おいおい、それに変なのを勝手にくっつけて大丈夫か?

 そりゃ、歩きたくはないけどさ。

 え?

 二人はケンタウロスに乗れ?

 ……

 リーダー特権だ。

 俺は馬車……いや、後ろの変なので良い。


 ジャンケンになった。

 これまでの人生で、一番真剣にやったジャンケンだと思う。


 なのになぜ、俺はケンタウロスに乗っているのだろう。

 妻が負けたからだ。

 夫として交代するのは仕方が無い。

「よ、よろしく、お願いします」

 俺は精一杯丁寧に、俺を乗せてくれるケンタウロスに頭を下げた。

 フーシュのところで学んだ礼儀ってヤツだ。

 ケンタウロスは怖いヤツじゃなかった。

 ゆっくり歩いてくれたし、色々と話もしてくれた。

 馬車やその後ろよりは良い場所だったかもしれない。



 到着。

 綺麗な村だ。

 そしてビックリ。

 宿のあった村にいた狼や蜘蛛達が整列していた。

 凄いな。

 俺達を驚かせる為に仕込んだのかな?

 いやいや、まさか……



 家を自由に決めて良いと言われた。

 ……

 俺は妻と相談し、家を決める。

 実はさっきから目を付けていた家があるんだ。

 妻もらしい。

 同時に指を差す。

 同じ家なら素敵なのだが、そうじゃなかった。

 二つを家を見比べ、片方に決めた。

 どちらの指が差した家かは秘密だ。





 家の中には家具が揃っていた。

 椅子、テーブル、棚。

 立派な家具だ。

 寝室にはベッドがあった。

 ふかふかを期待したが、枠だけだった。

 そんなに甘くないか。

 ちょっとガッカリしてたら、俺達の世話役になった獣人族のマムさんがフカフカ部分をくれた。

 しかも、人数分。

 こ、ここで寝て良いのか?

 良いんだよな。

 夢のようだ。



 家が決まるとその夜はまた歓迎会。

 昨日とは違った料理が並ぶ。

 これまた美味い。

 ひょっとして、とても裕福な村に来たのだろうか?

 だとするなら……俺はここに居たい。

 いや、住みたい。

 頑張ろう。

 俺は村長から貰った表札を、妻と二人で家の玄関に飾った。



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