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異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
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移住者とドース


 新たにやってきた男女十組二十名。

 すでに相手が決まっているので、色恋で揉める事はないだろう。

 その点はありがたい。


 とりあえず、全員を宿に。

 なんだかんだで疲れているのだろう。

 気を失う人が多い。

 一部は怖がって気絶したようだが……

 苦手な人がいるのは認める。

 だが、移住してくる以上、慣れてもらうしかない。



 その日の夜は宿の一階の広間で歓迎会。

 フーシュ達もと誘ったのだが、急いで帰らないといけないらしい。

 宗教関係のお偉いさんも大変だな。

 気絶しっぱなしの人は大丈夫かな?

 あー、始祖さんが送るのね。

 でもって護衛に目隠しさせるのは……護衛は下っ端だから、始祖さんに目通りできないって事かな?

 フーシュだけでなく、護衛にもお土産をそれなりに持たせてあげた。

 個人で楽しんで欲しい。

 始祖さんも帰らないといけないらしい。

 本当に大変そうだ。

 始祖さんにもお土産を渡す。

 あ、お酒がもう少し欲しいのね。

 どうぞ。





 歓迎会は……まず、並んだ料理に動揺した移住組をなだめる事から始まった。

 別に最後の晩餐じゃないから。

 ちょっと良い料理が並んでるだけだから!

 ほら、他の者達も食べるから。

 いや、君達が食材ってそんなワケ無いでしょ。

 別にクロ達は怖くないぞ。

 頭だって撫でれるし、お腹も……

 ザブトン達も平気だろ?

 え?

 違う?

 そっちは諦めた?

 怖いのはハイエルフ?

 ハイエルフが怖いのか?

 マンイーター?

 なにそれ?

「誤解です。
 大丈夫ですから」

 リアが俺に代わって説得する。

 同族の行いで広がった噂らしい。

「あんな軟弱な連中と一緒にしないでください」

 最後の一言、余計じゃないかな。

 納得しかけていた移住組がまた怯えだしたじゃないか。

 少し疲れた。



 食事が始まれば、美味いを連呼してくれるので気分が良い。

 マナーもしっかりしているし、良い人達ばかりのようだ。

 さっきまでは、見知らぬ環境に来て緊張していたのかな。

 えーっと、ルー?

 何をしているんだ?

 ルーが移住者の一人を連れ出そうとしていた。

 え?

 治療?

 彼女、どこか病気なのか?

 パートナーの男が心配そうにしている。

「命に関わる病気じゃないから。
 でも、できるだけ早く治療した方が良いかなって」

「どんな病気なんだ?」

「えーっと……ちょっと言い難いかな」

 そ、そうか。

 つまり、男である俺には言い難い内容……

「治療はすぐに終わるから」

 ルーはそう言って、彼女を連れて別室に。

 どうしてウルザを同行させたのだろう?



 治療はすぐに終わった。

 本当にすぐだった。

 別室に行って一分も掛かってない。

 治療魔法だろうか?

 確かに病気だと言われた娘は前よりも明るくなった感じがする。

 パートナーの男の子も喜んでいるし、めでたしって事かな。

 ところでウルザが持ってる高そうな剣はなんだ?

 玩具を与えるなら、もう少し女の子っぽい感じのものにして欲しい。

 お人形とか。

 俺がそう考えると、土人形が存在を主張した。

 お前がいたな。

 土人形はウルザの部屋で門番をやっている。

 門番というかルームキーパーだな。

 小さい身体で一生懸命やっている。

 それは良いが、お陰でウルザは自分でお片付けが出来ない。

 なんでもかんでもお前がやるんじゃなくて、ウルザにもさせるようにして欲しい。

 大丈夫です。

 死ぬまで私が付き従いますから。

 いや、そうかもしれないけどなー。


 ……いかん。

 もう酒が回ったか?

 主役の移住組を放置して、土人形と話をしていた。



 移住組を見ると……

 大丈夫のようだ。

 移住組の中に獣人族と人間のハーフの者達がいるのだが、ガット夫妻が話し相手になってくれている。

 なんだか高貴な雰囲気を漂わせる者はフラウや文官娘衆が相手をしている。

 後はドワーフが酒の話、鬼人族メイドが料理の話で……

 移住組で一人、集中できない娘がいるな。

 特定の方向を気にしている。

 そっちに何かあったっけ?

 ……ああ、俺の屋敷だよな。

 その向こうとなると牧場?

「いや、娘が気にしているのはドラゴンだ」

 俺の疑問に答えてくれたのはドース。

 ……

 ドース?

 え?

「娘の懐妊を祝いに来るのがそんなに変か?」

「いや、ライメイレンに来るのは駄目って言われたんだろ?」

「だから、直接は会いに行ってない。
 遠くから見守るだけだ。
 その話は後でするとして……あの娘は竜の巫女だ」

「竜の巫女?」

「簡単に言えば、竜の血を飲んだ一族の末裔だな。
 我らと人の間を取り持つ役目を持つ」

「取り持つって……取り持たなくても普通に話ができるだろう?」

 今、こうやって。

「細かい事は気にするな。
 そんな役目があったという過去の話だ。
 すでに滅んだと思っていたが生き残っていたのか……」

「それで、屋敷を気にしているのは、ハクレン達を気にしてるのか?」

 ハクレンは宴会に参加せず、屋敷に残っている。

 妊娠を祝いに来たライメイレン達とのんびりしてもらいたいからだ。

 正直に言えば、ハクレンが宴会に参加すると他のドラゴン達も参加するだろうから、移住者を祝うどころじゃなくなってしまうという心配もあった。

「ハクレン達を気にするなら、ドースはどうして気にされないんだ?」

 ドースの方が近くにいるだろう?

「気配を遮断しているからな。
 見ていろ」

 ドースが言い終わると同時に、屋敷の方を気にしていた娘がビクッと大きく驚き、ドースをガン見した。

「な」

「なるほど」

 俺が納得したのを見て、ドースは気配を遮断し直したのだろう。

 娘はしばらくこちらを気にしていたが、また屋敷の方を気にしだした。

「竜の巫女はドラゴンを気にするだけなのか?」

「んー……確か、その歌声はドラゴンの怒りを静める効果があるとかないとか聞いた覚えがあるな」

「あやふやだな」

「ワシですら会うのは二人目だ。
 一人目は……何百年前だったかな」

「害は無いんだな?」

「ワシらにはな」

「巫女にはなにかあるのか?」

「そっちも無い。
 強いて言えば、娘の身体にドラゴンの鱗……人間サイズになったものが出るぐらいだな」

「女の子にそれは可哀想じゃないか?」

「防御力は高まるぞ」

「一般人の防御力が増えてもなぁ」

 しかし、血を飲んだ末裔か……

「ああ、それは言い伝えでそうなっているだけで、実際に血を飲んだ程度ではそんな風にはならん」

「え?」

「食べて力を取り込めるなら、我らは食べ尽くされておる」

「確かにそうだな」

 食べて力が手に入るなら、どんな手段を使っても相手の血肉を手に入れるだろう。

 強いといわれているドラゴンならなおさら。

 人間が群がる様が想像できてしまう。

「娘の方は放置しておけば良い。
 これまで感じなかったドラゴンの存在を近くに感じ、戸惑っているだけだろう。
 すぐに慣れる」

 以前の竜の巫女もそうだったと説明してくれる。

「竜の巫女に関してはこれぐらいにして……だ」

 ドースは咳払いをし、改めて俺を見る。

「ハクレンの懐妊。
 よくやってくれた」

 なんだかテレるな。

 しかし、そうか。

 ドースが義父になるのか。

「これからも娘をよろしく頼む」

 ドースの父親っぽい笑顔に、俺は笑顔で答える。

「任せておけ」

「ははは。
 それで、できればワシの事もよろしくお願いしたいのだが……」

 急に情けなくなったドースの背後には、人間姿のライメイレンが立っていた。

 たぶん、さっきの気配を遮断していたのを止めた事で気付かれたのだろう。

 義父も大事だが、義母も大事。

 俺は笑顔で、ライメイレンに引き摺られていくドースを見送った。

 一応、屋敷の方に向かったから……ハクレンに会わせないって事はないのだろう。

 嬉しすぎて暴走するだけらしいしな。




 歓迎会という宴会は、互いを知る為の交流会でもある。

 特に移住組からすれば、これからの生活に関しての不安があるだろう。

 食事はガッツリ食べつつも、酒は控えめ。

 一部、酒を控えられなかった者もいるようだが……

 話し相手から、色々と情報を聞きだそうしている。


 主な内容は……人間関係だな。

 誰がトップで、誰に逆らっちゃ駄目で、誰が頼りになるか。

 聞かれている方も、一方的に情報を出すだけでなく、移住組の個人情報や人間関係を引き出そうとしている。

 それが上手くいっているかどうかは置いておいて、歓迎会としては成功だろう。

 ドラゴンが気になって宴会に集中できなかった娘も、お酒を飲んで楽しそうに……ベロベロになっている。

 お酒に逃げたのかな?

 慣れるとドースが言っていたから、頑張って慣れて欲しい。



 さて、ところでなんだが……

「じゃあ、頼りにするなら?」

「ルーさん、ティアさん、フローラさん、フラウさん……あたりかな。
 話しやすさならフラウさんが一番よ」

「なるほど」

 ……

 どうして頼りにする人の中に、俺の名前が出ないのかな?

 いや、名前を出して欲しいわけじゃないが、一応は村長。

 頼られる立場だと思うのだが?

 褒められたいワケじゃないが、少しは頼りになると褒めてくれても良いんじゃなかろうか?


 しばらく聞き耳を立てたが、俺の酒量が増えるだけだった。

 土人形が気を使って慰めてくれる。

 ありがとう。


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