挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
異世界のんびり農家 作者:内藤騎之介
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

144/291

留守番


 ワシの名はドノバン。

 ドワーフだが、そこらにいるドワーフとは少し違う。

 エルダードワーフと少し偉そうな種族だ。

 そこいらのドワーフとの違いは……なんだろうな。

 よくわからん。

 シンプルに腕力なのか、寿命なのか。

 酒に対する強さかもしれない。

 酒。

 そう酒だ。

 酒があれば後はどうとでもなる。

 酒がすべて。

 酒が人生。

 それがドワーフの生き方であり、ワシの生き様だ。



 だから、美味い酒の噂だけで、死の森に入ったワシの事を笑う者はいない。

 ああ、やっぱり行くんだ。

 ぐらいにしか思わなかっただろう。

 そこに美味い酒があるならワシは行くのだ。



 そうしてワシは大樹の村に辿り着き、酒造りに専念する事になった。

 ワシは飲むだけの男ではない。

 自分で生み出す事だってできるのだ。


 村の作物はとても酒向き。

 いや酒に向くような品種を育ててくれる。

 ありがたい。

 そして、酒造りの為の施設もガンガン建ててくれる。

 新しい酒造りの方法や、新しい酒の飲み方も編み出してくれた。

 各地に散っていたエルダードワーフ達も次々と集まってきた。

 みんな、酒の誘惑には抗えんようだ。

 死の森に飛び込んでくるのだからな。

 だが、危機を乗り越えた先に待つのは美味い酒だ。

 誰も文句を言わん。

 そしてまだ来ない連中の事を哀れに思う。

 まあ、来ない連中の分まで飲んでやればいいだけの事だ。

 この村に来ての数年が、ワシの長い人生でもっとも酒に触れられている。

 美味い酒が詰まった樽の山を見て、ワシは死ぬんじゃないかなとか思ってしまった。

 いや、死なん。

 まだまだ美味い酒を生み出し、そして飲み続ける。





 さて、そんなワシだが、頼りにされて無碍にするほど腐ってはいない。

 村長から留守を頼むと言われれば、10の酒造りを9にして村の留守を守ろうと心に誓う。


 誓ったのに、村長が三十分ぐらいで風呂に戻ってきた時は驚かされた。

 そしてまた出掛けたと思ったら三十分ぐらいで戻ってきて、今度は料理の手伝いが欲しいと言ってきた。

 ピンと来た。

 宴会だ。

 ……

 ワシは参加できないのかな?

 留守番だしな。

 出来ないよな。

 ……

 ワシの気持ちが通じたのか、村長は村で宴会をする事にした。

 流石は村長だ。

 宴会は盛大に行われた。

 みんなの芸も上手くなっている。

 ワシらも何か芸をした方がいいだろうか。

 今度、練習しよう。


 しかし、留守番って、一時間ぐらいの事だったのか?


 違った。

 翌日、村長達は再出発した。

 二時間ぐらいは、すぐに帰ってくるんじゃないかと構えたが、大丈夫だった。 



 よし、留守番。

 と言ってもする事などない。

 各自、仕事に専念しているし、見張っていないとサボるような者は村にはいない。

 客と思われる吸血鬼の始祖と、天使族の長の娘とやらは村長に同行した。

 少し前まで酒造りを手伝ってくれたラミア族の者達は、冬が近くなってきたので南のダンジョンに帰っていったので世話からも開放されている。

 となればワシも自分の仕事に専念なのだが……

 実は冬の為の準備も、酒造りの仕込みもほぼ終わり。

 保存食の味見を兼ねて、新しいツマミを考えるべきだろうか。

 いや、村長のいない今でなければ、やれない事を考える。

 ……

 特にないな。

 村長に言えば、よほどの事でなければ許可をくれる。

 こっそりやる必要などない。

 言った方が色々と手配してくれたり、手伝ってくれるしな。

 うーん。





 ワシが困っていると、用件が向こうからやってきた。

 門番竜だ。

 最初は滅多に会話せんやつだったが、今では村の一員並に馴染んでいる。

 馴染んではいるが、客だ。

 これはワシの日頃の行いだろう。

 ふふふ。

 門番竜をしっかりとお世話するのは、留守を任された者の仕事。

「ようこそお越しくださいました」



 同じ事を考えていたのが二人いた。

 ワシと同じように留守を任された魔族の娘フラウと、山エルフのヤーだ。 

 小娘どもめ。

「ここはワシに譲らぬか?」

「こういったのは女性の仕事です」

「そうであるなら、私でも構わないだろう」

 ワシらが醜い争いをしている間に、門番竜はザブトン殿が持て成していた。

 しまった。

 この時期、ザブトン殿は活発に動かなくなるから油断していた。

 目の前の小娘どもよりも手強い存在だ。

 いつもの宿に門番竜を案内すると、いつの間に指示を出していたのか、鬼人族メイド達が料理を用意している。

 向こうではエルフ達や獣人族の娘っ子達が芸の準備に始めている。

 完璧。

 完璧だ。

 くっ……ザブトン殿。

 ここは素直に負けを認め……ああっ!

 その酒樽は秘蔵のヤツ!

 村長にも内緒で隠していたのをなぜ!

 いや、それを持ち出したという事は……

 待て、待つのだ!

 門番竜に飲ませるのは勿体無いと思わないか!

 どうだろう。

 ワシとザブトン殿で仲良く分けるというのは?

 隠していた事は謝る。

 謝るから。


 ワシはザブトン殿と会話ができない。

 だが、ワシとザブトン殿の間にはこれまで築いた信頼がある。

 届け、ワシの想いっ!

 ……

 駄目だったぁっ!

 考えてみれば、ザブトン殿とそれほど一緒に行動してない!





 こ、こうなれば……

「いくぞ、小娘ども」

「え?」

「なにをするのだ?」

「ワシらも混ぜてもらい、門番竜を歓迎しようではないか」 

 留守を任された者として、客である門番竜を持て成したのはザブトン殿。

 それは認める。

 他人の手柄を奪うような真似はせん。

 だから、秘蔵の酒を飲み干される前に参加させてください!



 酒の前にはプライドも何もない男。

 それがワシ、エルダードワーフのドノバンだ。








 ハイエルフと獣人族の娘

「ドライムさん、妙に緊張しているように見えるけど……気のせいかな?」

「ザブトンさんにお世話されてるからかな」

「ははは。
 まさか。
 あ、ザブトンさんの新作の服、着せてもらってる」

「いいなぁ。
 私も新作欲しい」





ドライム 心の叫び(人見知り発揮)

「村長……どこ?
 娘……どこ?
 助けて」




クロの子供達

「村の安全は我らの手に委ねられている。
 各位、油断せぬように」

「おうっ」




すみません。
出張の為、少しの間、更新が止まります。
(次回は、次の土曜日と日曜日の間の0時に更新予定です。
 土曜日に時間が取れるからそこで書けるだけ書きます。
 誤字が怖いけど)
詳しくは活動報告を見てください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ